4月にリリースとなる2ndアルバム『Rust & Gold』から、「Isabella」のMVが公開されています。Isaac Delusion(アイザック・デリュージョン)は、フランスのドリーム・ポップ・シーンにおける筆頭バンド。現在、彼らは〈microqlima Records〉に在籍しており、盟友・L’Impératrice(ランペラトリス)と同様、〈Cracki Records〉からの移籍となりました。
この、美にひどく執着したような内容を踏まえると、曲名を「Isabella」としたのは、バンド名から”Isaac”と、ラテン語で美しいを意味する”bella”を掛けてのことだと思われます。
当記事の終わりに、「Isabella」のMVから考察されるタイトルの意味について書いてみました。楽曲自体には無関係なのでここでは割愛しますが、筆者はそれも音楽の1つの作用や役割だと信じていますので、一読して頂ければ幸いです。*
というわけで、音楽的な点で言えば、ドリーム・ポップやベッドルーム・ポップなどの、淡い音像を彼らは描いています。その良さは1stアルバム『Isaac Delusion』から、代表曲「Midnight Sun」を聴いて頂ければ一目瞭然です。寝室を抜け出すと、そこには雄大な山々と、暗く耀く湖が広がり、眼は今にも星の瞬きへと吸い込まれそうになる。そんなイメージが湧き上がります。
上の2曲のように、夜更け過ぎから夜明けにかけて聴きたいドリーミーなサウンドを得意としながらも、そこはやはりフランスのバンド。ダンス・ナンバーも勿論あります。一昨年リリースされたシングル「How Much (You Want Her)」がその好例です。よりダンサブルにエレクトロになった2017年バージョンが、新作に収録される予定で、既に先行配信が始まっています。
* 「Isabella」のMVを単純に眺めてみても、(美学とは異なった形での)”美への執着”は不善だと形而上的に捉えてみても、この映像の中に”醜さ”を確認することはできるでしょう。でもそれは、(他にも例はあるとして)”ブロンドヘアこそ美しい”という既成観念に囚われた姿に起因する、表面的なもののはず。”美に非ず”と言うべきは、むしろ、その凝り固まった価値観そのものです。
その理由は、私の考えですが、美醜が互いに対立するものではないから。”醜さ”をも包容するほどに”美”は完全であり、その(イデア的)光の当たり方によって世界は全ての角度から覆われ得ます ―― すなわち、”美しい”の反対は”美しくない”であり、”醜い”ではないのです。
しかし、不足する我々が光を屈折させてしまうが故に、美しさの中に大きな差が生じてしまうことは確かです。それに意識の中に、醜さへの判断基準が在ることには違いありませんし、美醜の分別をつけることは美しく生きる上で必要だと思います。とはいえ、醜さとはただの”差分”の表れに過ぎません。(私たち不完全な者にとっては、悲しいかな、完全な物こそ醜悪に感じる場合もありますね。自身の欠陥をまざまざと見せつけられるので)
これまで、美の概念はほんの一部ばかりが切り取られて来ませんでしたか。つまりは最も光り輝く部分だけ、もっと正確に言えば、単なる”反射光”の強い箇所だけです。でもそれにすがったからといって、美しいとは限らない。何が美しいかに惑わされず、美しさとは何かを見抜くべき ―― そうしたアンチテーゼをIsaac Delusionは表現したかったのだと考えられますし、その意味も含めて「Isabella」というタイトルなのかもしれませんね。
(2017年02月28日 07時14分 更新)
【リリース情報】
Isaac Delusion 『Rust & Gold』
Release Date:2017.04.07 (Fri.)
Label:microqlima Records
Tracklist:
1. Isabella
2. Black Widow
3. The Sinner
4. Voyager
5. Cajun
6. Luck & Mercy
7. Distance
8. Bittersweet Fruit
9. How Much (You Want Her) 2017
10. Take the Crown
11. A Few Steps
12. Mother Shelter