「孤高の存在」――この言葉がここまでシックリくるバンドは、今の日本において彼ら以外にはほとんどいないと言ってもいいのではないだろうか。国内シーンやトレンドへの目配せなどは一切感じさせない、アーティスティックかつ原始的な快楽度の高い作品を産み出し続けるOGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)。
昨年、バンド活動10周年を記念して初のライブ・アルバム『workshop』をリリースし、それを祝した東阪ワンマン公演なども話題となったが、そのようなアニヴァーサーリーを挟んでの次のアクションとして、通算7作目となる最新作『ハンドルを放す前に』が2016年11月にリリースされた。
1stアルバム以来となるセルフ・プロデュースに挑み、バンド史上最長の製作期間を費やした本作は、高い評価を獲得した前作『ペーパークラフト』以上に音と音の間の余白を活かした緊張感溢れる構成となっていながらも、そのコード感やメロディからはこれまで以上にポップな面も垣間見れる、摩訶不思議な魅力を擁した比類なき傑作。
シーンや界隈に属することもなく、自分たちだけの世界観を探求し続け、結果それが高く評価される。ある意味ひとつのミュージシャンとしての理想系とも言える活動スタイルを貫く、非常に彼ららしい作品とも言えるだろう。
公開が遅れてしまったが、そんな本作のリリース直後に、制作の中心を担う出戸学(Gt./Vo.)と馬渕啓(Gt.)に行った本インタビューでは、彼らの掴みどころのない素顔と、本作の制作の裏側を訊くことができた。
Interview and Photo by Takazumi Hosaka
https://www.youtube.com/watch?v=v44iuuZgaII
(L→R:出戸学、馬渕啓)
―およそ2年ぶり、7作目となるオリジナル・アルバムがリリースされましたが、このタイミングで振り返って、今作に対して抱く思いや感想といったものを聞かせてもらえますでしょうか?
出戸:あくまで僕個人の感想なんですけど、何かすごい響いて「本当にいいアルバムだなぁ」って思う瞬間と、「あれ、こんなんだったか?」って思う瞬間が結構いったりきたりしてて……。今2往復ぐらいしてます(笑)。
—「あれ?」って思う瞬間というのは、具体的には「ここをこうすればよかった」みたいな感じなのでしょうか?
出戸:「こうすれば〜」とかじゃなくて、「こんなんだったっけな?」っていう感じなんですよね。
—アルバムを作ってリリースすると、いつもそういった感想を抱きますか? それとも今回だけ特別な感じなのでしょうか?
出戸:今までもそういう感じはあったんですけど、でも、今回が一番自分の気分次第で印象が変わっちゃいますね。今まではわりとその……例えば『ペーパークラフト』は「うん、『ペーパークラフト』だよな」っていう感じで、良くも悪くもある程度印象が固まってたんですけど、今回のアルバムは何かその……まだ捉えきれてないのか、すごい悪く聴こえたり、めちゃめちゃよく聴こえたりするんですよね。だから……それが謎です(笑)。
自分の中でここまで振れ幅があった作品はたぶんなかったと思いますね。
—自分の作品はあまり聴かない方とかもいると思うのですが、毎回アルバムを完成させてから聴き返すタイプですか?
出戸:今回はめっちゃ聴いてるかもしれないですね。
—そもそも制作はどのタイニングからスタートしたのでしょうか。
馬渕:曲作り自体は去年の6月ぐらいからやってましたね。
—前作『ペーパークラフト』の頃と同じように、今作も楽曲制作のプロセス的には出戸さんと馬渕さんが別々で作ったものを中心に組み立てていったのでしょうか?
出戸:そうですね。制作プロセス的にはこれまでと一緒なんですけど、今まではコンセプトが割と早めの段階で固まったり、どういうアルバムにしようかっていうことを2人で結構話してから作ってたことが多かったんですけど。今回は言葉で先に固めるのではなくて、お互いが持ってきた音が先にあった、という感じです。
—お互いが持ち寄ったものに対してどう思いましたか?
出戸:まぁ、お互い完成型じゃないんで、渡されたときにはたいてい「どうすんだこれ」ってのが多いです(笑)。
馬渕のはアレンジはしっかりしてるんだけどメロディがなくて、僕の場合はメロディとコードだけだったりとか、そういうことが多いんで。それを二人の間で行ったり来たりさせて作るんで、最終的にはそれぞれが作ってるっていうよりも、ほとんど二人で作ってるって感じなんですよね。
最初に断片だけ渡された時は「これにどういう歌を乗っければいいんだ?」とか、「これ、どうアレンジすればいいの?」みたいな感じで、お互いクエスチョンマークが多いですね。
—コンセプトのようなものが決まる前に作り始めたとのことですが、それは敢えて決めなかったのでしょうか?
出戸:そうですね。敢えてです。作り始めた頃は、最終的にThe Beatlesの『ホワイト・アルバム』(=『The Beatles』)ぐらいに、いろんな飛び散り方というか、僕が作った曲と馬渕が作った曲がハッキリと分かれててもいいかな、って話してたんです。でも、結局は二人で作ってくことになり、混ざり合ってしまったので、そこは最初考えていた通りにはならなかったんですけど。でも、それぐらい今までと違った感じでやろうとは思ってました。
—お二人から見て、今作は最終的に統一感が出たと思いますか?
出戸:最終的に曲が出揃ってきた時に、もっと色々な曲調になるかと思いきや、割りとまとまったなって感じました。何ていうか、自分たちのテイストというか、そういうカラーにまとまったな、というか。あんまり突拍子もないことって、意外とできそうでできないんだなっていう(笑)。
—前作に対して掲げたキーワードは「ミニマルメロウ」、コンセプトは「居心地のいい悲惨な場所」だったかと思うのですが、今作に何かそのようなテーマやコンセプトを掲げるとしたら?
前作は曲を作る前に「ミニマル・メロウ」という言葉があったので、一言で言えたんですが、今回はコンセプトなしで作ったので、一言で言える感じではないし、敢えて言わなくても良いかなと。
https://www.youtube.com/watch?v=ZG070-ZoFqc
—個人的には本作のサウンドもそうですが、出戸さんが手掛けたこのアートワークからも、人間味がないというかどこか冷たい印象を受けました。
出戸:アルバムがほぼ出来上がってきて初めてタイトルを付けて、その後にアートワークも作ったんですけど、なんかこう、『ハンドルを放す前に』って、何かが起こりそうな予兆みたいなものが全体にあって。でも、実際にはアルバムの中では何も起こらない。ドラマチックなことは何も起こってないんだけど、何かが起こりそうな雰囲気だけは漂ってるっていう感じで。だからジャケットも飛込み台だけあって、「飛び込むんだろうな」っていう雰囲気なんですけど、実際は別に何も起こってない、みたいな。そういうニュアンスですね。
—今回のアルバムはデビュー作以来のセルフ・プロデュースですよね。そもそもセルフ・プロデュースでやろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
出戸:何か明確なキッカケみたいのはなくて、曲を作っていく間ににじわじわと、「やる?」「やらない?」「やる?」「やらない?」みたいな感じで話してました。
—自分たちで?
出戸:はい。今までやってきた方法を変えるってことなので、なんとなく不安な部分もあるし、新しいことをやってみたい部分もあるしっていうので、ずっと迷ってはいたんです。
馬渕:「じゃあ、やってみようか?」って。
—久しぶりに自分たちだけで舵取りを行ったレコーディングはどうでしたか?
出戸:久しぶりっていうか、実際のところは初めてなんですよね。「ファースト・アルバム以来となるセルフ・プロデュース」って資料にも書いてあると思うんですけど、ファースト・アルバムは「CD作る?」ってライブハウスで言われて、小室哲哉さんのスタジオに連れてかれて、何もわからず作ったっていう感じなので(笑)。
ポップスを作るスタジオで、ポップスのエンジニアの人に録ってもらったんで、音色もポップスなんですよね。でも、楽曲は全然ポップスじゃない(笑)。
そのアンバランスな感じが今となってはおもしろいなって思うんですけど。当時は「なんでこんな音になってるんだ」っていう風に、結構理解ができなくて。それで、これはスタジオ作業とか録音についてわかってる人が必要だなって思って、プロデューサーに入ってもらうことにしたんです。それ以降はずっとプロデューサーありでやってきたし、自発的なセルフ・プロデュースは今回が初めてなんですよね。
—なるほど。
馬渕:まぁでも、今回のレコーディングは時間がかかりましたね、やっぱり。音を決めるのにすごい時間をかけたんですけど、自分の欲しい音というものはそんなすぐ見つかるわけじゃなくて、すごい時間かかりましたね。
—音の質感とか音色みたいな部分も、制作を進めながら決めていったという感じなのでしょうか?
出戸:そうですね。最初に12inchシングルを先行リリースすることが決まってた「寝つけない」から仕上げていったんですけど、一番最初に録ったテイクが割とミックスもアレンジも派手だったんですよ。最終的なVer.よりも大分アッパーな感じになってて、これは……。
馬渕:「ちょっと違うかな」ってなって。
出戸:そこで、今回のアルバムをどういう感じにするのか、どういう方向性にするかっていうのをしっかりと再確認するために、ほぼ完全に完成していたテイクを全部捨てて、もう一回最初から録り直したりしたんです。で、収録したバージョンの「寝つけない」が完成した辺りからは、全体的に割とスムーズにいったと思いますね。最初にどんな感じにするかっていう落とし所みたいなのを見つけるのは……結構苦労したね。
馬渕:うん。なかなか見えてこなくて。
—試行錯誤しながら、みたいな。
馬渕:そうですね。
出戸:あとそもそもレコーディングする前に先にライブでやってたのが苦労の原因の一つで(笑)。ライブでやってそのライブの勢いのまま曲を録るっていう方法もあると思うんですが、そういう感じが今回は上手くいかなかった。「寝つけない」は制作段階でみんなの共通意識として、ライブのテイストが残ってたので難しかったです。
馬渕:うん。それがダメだった。
出戸:それが派手になった要因で。でも、自分たちが聴きたいレコードはこれじゃないっていうのに立ち返り……。
馬渕:初心に帰ったっていう感じだよね。
出戸:そうそう。たぶん、先にライブで披露してなかったらあの間違いはしなかったかもしれないよね。
—ライブでプレイしてなければ、もっとスムーズにいったと(笑)。
出戸:はい(笑)。
—そこがすごいOGRE YOU ASSHOLEの特殊なところですよね。今回のアルバムも、かなりシンプルに削ぎ落とされているように感じたんですけれども、ライブでどうやっていくんだろうって気になっていました。
出戸:でも、汚していくのはね、得意だからね(笑)。
馬渕:そうね。すごい楽なんですよ、汚すのは。
—逆にシンプルでかっちりした聴ける作品を作り上げていく方が大変ですか?
出戸:そうですね、一個の質感がちょっと変わるだけで、もう全然違ったジャンルになっちゃったり、一個の音色を変えるだけで着地する場所もだいぶ変わってきちゃうんで、そういう作業は大変でしたね。
—その、自分たちで着地点を決める感覚というのは、やはり言語化はできない感じですか?
馬渕:う〜ん、言語化は……。
出戸:やっぱりそこで色んな機材とかを試してみて、「あ! これこれ!」っていう感じなんですよね。
—そういうのは、結構メンバー全員が同じようにピンとくることが多いですか?
馬渕:曲によってはそうですね。まぁ基本的には最初に作ったイメージみたいなものがあって、それを優先的に探していって、それでも見つからなかったら違う方からアプローチしてみるっていう、そういう感じですね。
—セルフ・プロデュースでやっているが故に、どこで終わりにするか、どこで完成とするかみたいな部分の判断っていうのは難しくありませんでしたか?
馬渕:確かにミックスは後から色々と細かいところを変えたりはしましたね。
出戸:でも、レコーディングに関して言ったら、録ったら録ったで結構「終わった!」って思ったよね。
馬渕:うん。だから、まあ、こんなもんかなっていう風に思いました。
—個人的にはちょっとファンクっぽい感じのグルーヴを今作からは感じたんですけど、そこら辺の黒っぽさとかは意識されたりしましたか?
出戸:まあ、何年か前からAORみたいなものとサイケデリックなものを掛け合わせるような感じはやってたんで、その延長線上で黒っぽく聴こえるのかもしれません。もちろんリスナーとしてはCurtis Mayfield(カーティス・メイフィールド)の初期の頃の作品なんかは普通に好きだし。でも、意図としてあんまり黒くなりすぎないっていうか、ブラック・ミュージックの雰囲気は内包してるとしても、全く違うものを作ろうとは思ってます。
—あとはやはり前作とか以上に音と音の隙間みたいなものを意識されているように感じました。よりシンプルな方向にいこうというようなムードっていうのはあったりしましたか?
出戸:ドラムの音を響きがない感じで録ったので、隙間はある様に聴こえるかもしれないんですけど、楽器の重ねものに関して言えば、もしかしたら前作『ペーパークラフト』よりも多くなったんじゃないかなって。
馬渕:うん。多くなってると思いますね。
出戸:楽器もいろんなものを使ってるし、トラック数も多いかもしれないですけど、一個一個の音色があんまりこう、埋め尽くさない音色を使ってるっていうか。
馬渕:結構「切れてる」音が多いからだと思うんですよね、ギターに関しても、小節のなかに部分的に置いてあるというか……16分のアクセントで置いていくとか、裏で置いていくとか、そういう風にできてる曲が多いと思いますね。
—それは、やっぱり今それが気持ちいいから?
馬渕:そうですね、あと今回はデッドな感じでドラムを録ったので、それに合う感じの音を探っていったら、自然とこういう感じになりましたね。
—デッドなドラムを録ろうと思ったのは、どういう経緯やキッカケからなのでしょうか?
馬渕:前からやってみたいと思ってて。聴いてる音楽でも、例えば最近J.J. Caleって人の初期の方の作品の質感とかを「いいね」って話してたり。なんていうか、「止まってる音」が特徴的なんですよね。そういうのが今は好きで。
—ちなみに、曲作りは去年の6月頃から始まっていたとのことですが、レコーディング自体はいつ頃からやられてたのでしょうか?
馬渕:今年(2016年)の6月ぐらいから9月の頭くらいまでですね。だから、期間で言えば3ヶ月くらい。
出戸:結構長かったですね、レコーディングとしては。
馬渕:そうだね。
出戸:3ヶ月くらいまるまるスタジオに入ってました。
—今作は過去最長の制作期間ということで、その間に何か変化したり分岐点となるようなポイントはありましたか?
出戸:まあ色々な曲がボツになったり、色々な曲のアレンジがどんどん変わっていったり。
馬渕:曲を作り始めてから、レコーディングを開始するまでに1年ありましたからね。まぁ好みも変わっていくし、作ったものが古いなと思ったりするようにもなるし。そういう部分はありましたね。
出戸:製作途中で今までで一番変わっていったんじゃないかな、ボツ曲も多いですし。
—さきほど「寝つけない」はライブを念頭に置いていて苦労したという話がありましたが、昨年リリースしたライブ盤『workshop』や、各地で開催した10周年記念ワンマン・ライブなどでの経験が何か影響をもたらした部分っていうのはあると思いますか? 良い点でも悪い点でも。
出戸:「寝つけない」に関しては……。
馬渕:自分がバンドに持っていったデモの時点では、あの曲はオルガンと木琴で主旋律を弾いたりしてるんです。裏打ちもオルガンでやってて。でも、ライブだとギターとか違った楽器でやることになるし、ステージとしてまとまるようにアレンジしていく。そうするとだんだん曲のイメージが変わっていくんですよ。で、元とかけ離れてしまったイメージが、知らず知らずのうちに中村(宗一郎)さんも含めて全員の頭にこびりついてて。いざ録音しようってなると、客観的に見れなくなってたというか、レコーディングで作る作品として、一番いい形で音を置いてなかったってことに後から気付いたって感じです。
出戸:流れ作業になってたね。
馬渕:うん。
出戸:「ここはこう入れるでしょ」みたいな感じで。
馬渕:音を入れる時にちゃんと立ち止まってなかったというかね。
—それ以外の曲に関してはいかがでしょうか?
出戸:他の曲はほとんどライブでやってなかったので、「寝つけない」のような失敗はなかったですね。一回一回考えて音色とかを決めて、じっくり進めることが出来ました。
—セルフ・プロデュースを経験したことによって、自分たちのことを客観的に見れたりとか、サウンドなどの面での気づきや発見っていうのはありましたか?
出戸:そうですね。発見は多かったですね、自分たちでやってみて。あとひとつひとつの責任が全部自分たちにあって、それの集積で完成したアルバムということで、いつも以上に他人の評判が気になります(笑)。
馬渕:ものすごく自分たちっぽさが出ちゃうからね。
—今のところ、評判はどうですか?
出戸:今のところ面と向かって悪い感じには言われてないんですけど…。
—今後もセルフ・プロデュースでアルバムを制作したいと思いますか?
出戸:今のところはもう一回ぐらいやってみたいですね。
—今作において、機材的な面で新たに取り入れたものとかはありますか?
馬渕:シンセベースとかですかね。
出戸:なんか……ムチムチしてたよね。
馬渕:ブリブリしてるんですけど、いい音なんですよ。「頭の体操」と「移住計画」って曲で使っています。
—それ以外の機材に関しては?
馬渕:木琴……マリンバは初めて使いましたね。ちょっとこう、最近エキゾチックなものとかを聴いてたりしたんで、マリンバもいいかなって思って。たまたま僕が持ってたんですよね。
—アルバムからの最初のMVとなった「なくした」はstillichimiyaのメンバーによる映像制作集団、スタジオ石が全面的に手掛けたそうですが、彼らとは昔から親交がありますよね。彼らの魅力は?
出戸:……改めて言うとすると……。
馬渕:……近い。
—距離的に(笑)。
出戸:距離的に近い(笑)。
馬渕:まぁ、元々田我流をライブで呼ばせてもらって、「家が近いよね」って話になって「じゃあ今度遊びに来なよ」みたいな感じで知り合いになったんです。もちろん音楽的にもおもしろいと思いますよ。で……今回はなんでああなったんだっけ?
出戸:今回は、あれだよ。Mr.麿(MARO)さんがたまたま遊びに来た時に、PVの監督がギリギリまで決まってなくて、「やってくれます?」って言ったら「あ、時間なんとか作ります」みたいな感じで承諾してもらえて。
馬渕:偶然的な。
—なんかすごい久しぶりですよね、MVにメンバーさんが出るのって。
出戸:そうなんですよ、前回はアニメーションだったし。
—すごい新鮮な印象を受けました。
馬渕:演奏シーンは本当に久しぶりかもしれないですね。
出戸:真面目に演奏してるやつね。
馬渕:そうそう。
出戸:まぁ、たまにはやってもいいんじゃないかって思って(笑)。
—アイディアは向こう側からだったんですか?
出戸:そうですね、麿さんからアイディアを出してもらって、原村で撮影しました。僕の実家の一部にバンドの練習スタジオがあるんですけど、あの森はその本当に真裏ですね(笑)。
スタジオに窓があるんですけど、練習のときにその窓から見えてる景色の範囲内です。
馬渕:その森の中にアンプとかドラムとかの機材を運びました。レーベルのスタッフさんとかにもにも手伝って頂いて。
出戸:あれはなかなかタフだったよね。歩いたらスタジオから10mぐらいしかないんですけど。
—近いですね(笑)。
出戸:10mぐらいなんですけど、森が険しくて。
馬渕:木の根っことか枝もすごいし、地面にゴツゴツした岩とかが出てたり。
出戸:足場がめちゃくちゃ悪くて。機材持って入るのは非常に危険でした(笑)。
—なるほど。田我流さんとかもそうだと思うんですけど、いわゆる地方在住で、でも音楽やっていく上では東京とか来たりするじゃないですか。そういう地方在住ミュージシャンとしての共通項とかについては話したりしますか?
出戸:う〜ん、たぶん彼らは地元代表みたいな感じじゃないですか。レペゼンしてるというか。僕らはそういう感じではなくて、地元だと存在すら知られてないみたいな。なので、そこは違うよね。
馬渕:だいぶ違いますね。
—確かに長野をレペゼンしてはいないですよね(笑)。
出戸:僕らは全然レペゼンしてないんで(笑)。そこは地方でやってるとはいえ、大きな違いですね。
—単純に自分たちのスタジオが持てる環境が最適なだけだと。
馬渕:そこですね。
出戸:やりやすい環境っていうだけであって、なんかその地元にアイデンティティを持って曲を作ってるとかそういうのはなくて。
—都会で暮らすのに比べると、外部からのノイズをシャットアウトできるみたいことも特に意識はしていませんか?
出戸:まあシャットアウトはできてますけど……。
—それはあくまでも意図的ではなく?
出戸:そうですね。たぶん、東京で今暮らしている人は、あの、こっちに引っ越したら発狂するんじゃないかって言われました。本当に何もなさすぎて、周りに。人見るより鹿見ることの方が多いですからね(笑)。
馬渕:本当にそうなんですよ。特に出戸の家がすごくて。歩いてる人を見るより、歩いてる鹿を見る方が多いんですよ。
—すごいですね(笑)。
馬渕:人見ない日のほうが多いでしょ、家にいたら。
出戸:人……見ないね。鹿は見るけど。
馬渕:鹿がPink Floydを聴きにくる(笑)。
出戸:家で爆音でPink Floydかけてると鹿が集まってくるっていう(笑)。本当に鹿が寝てますからね、うちの庭で。
—東京にいると速度感が早くて流されそうになるみたいな話があったりすると思うのですが、東京に来た際はそういうものを感じたりしますか?
馬渕:こないだ「大勢の人に見られてなんとか〜」って言ってたよね。
出戸:いつだっけ?
馬渕:あれだ。ライブの打ち上げかなんかで、他のバンドの人にこう囲まれた時に、ちょっと異様なものを感じたと(笑)。
出戸:東京とか関西だとライブ後に長野まで車で走って戻ることが多くて、なかなか打ち上げ的なものに出席できないんですよ。なので、久しぶりに顔を出してみたりすると、すごい珍しがられて「なんでオウガが打ち上げにいるの!?」みたいな感じで、ワ〜って4、5人に一気に話しかけられたりして。……ちょっと冷や汗が出るっていう(笑)。
—そういう面もオウガの音楽性に出てる気がしなくもないですけどね(笑)。では最後に、バンドとして10周年を迎えて、今後のオウガとしてのあり方、目指す方向みたいなのは見えていますか?
出戸:今回セルフ・プロデュースを初めてやって学んだことも多かったので、「ここから」という感じがしています。これからどうなっていくのか、自分でもわかりませんけど。とりあえずアルバムのリリース・ツアーを頑張りたいですね。
【リリース情報】
OGRE YOU ASSHOLE 『ハンドルを放す前に』
Release Date:2016.11.09(Wed)
Label:P-Vine
Cat.No.:PCD-26067
Price:¥2600 + Tax
Tracklist:
1.ハンドルを放す前に
2.かんたんな自由
3.なくした
4.あの気分でもう一度
5.頭の体操
6.寝つけない
7.はじまりの感じ
8.ムードに
9.移住計画
10.もしあったなら
■商品詳細:http://p-vine.jp/music/pcd-26067
【ツアー情報】
アルバム発売記念・全国ツアー・14公演
“OGRE YOU ASSHOLE ニューアルバム リリースツアー 2016-2017”
01/21(土) 名古屋 CLUB QUATTRO
01/22(日) 梅田 AKASO
01/28(土) 松本 ALECX
02/04(土) 恵比寿 LIQUIDROOM ※ツアーファイナル