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Best Tracks Of 2016 / Takazumi Hosaka


キュレーター、Takazumi Hosakaによる2016年の年間ベスト・トラック!

2016.12.20

毎年「今年は豊作だった」、「選ぶの難しかった」と言い続けるのが音楽好きの宿命だと勝手に思っているのですが、いや、今年は本当に本当に選ぶの難しかったです。ホサカです。

今年もありがたいことにシンコー・ミュージックさんの『CROSSBEAT YEARBOOK 2016-2017』にて年間ベスト・アルバムなどを掲載させて頂いておりますので、そちらも併せてチェックして頂けると幸いです……!


5. Porter Robinson & Madeon / Shelter


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曲というより、どちらかというとMVが素晴らしすぎて。順序が前後しちゃうのですが、今年Bjorkがインタビューで「これまでも人類は常に新しいテクノロジーを使って感情表現の幅を広げてきた。それは例えばバイオリンでもVRでも同じことだ」といったようなことを言っていてめちゃくちゃ感動し、今年はずっとその言葉が頭の中にあるような状態だったのですが、このMVの内容もまさに。未来的なテクノロジーを駆使しながらも、描き出しているのは人間同士の絆や繋がりといった普遍的な感情。


4. Francis and the Lights / See Her Out


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Francis and the LightsことFrancis Starliteが開発したとされている、ボーカルにかける新たなエフェクター=Prismizer。このエフェクターが今年のポップ・ミュージックのシーンにおいてとても重要な役割を果たしたであろうことはもはや周知の事実かと思います。
このエフェクトを取り入れたらしいFrank OceanやBon Iverの新作ももちろん素晴らしかったのですが、しかし、個人的にはこのシンプルで荒削りな彼の発表した楽曲の方が、よりグッときてしまったのです。そしてこれも最先端のテクノロジーを駆使した感情表現の拡張。


3. Yunomi feat. TORIENA / 大江戸コントローラー


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Future Bassといったネット上のトレンドを、より広い層へと届けるべく……かどうかはわかりませんが、わかりやすい歌モノ・ポップスへと落とし込む動きは昨年から引き続き今年も起こっていたように思えます。しかし、そのような動きの中でも相変わらずYunomiは頭一つ抜きん出た楽曲クオリティを誇っていました。チップチューン・アーティスト、TORIENAを招いたこの楽曲はそのサウンド、ストーリー性の高いリリック、どれをとっても一級品。


2. STUTS / 夜を使いはたして feat. PUNPEE

1989年世代のトラックメイカー/MPCプレイヤーであるSTUTS待望の1stアルバム収録の名曲。「お前、結局PUNPEEが好きなだけじゃねえか」と言われればぐうの音も出ないのですが、しかし、この楽曲に「ヒップホップ不遇の時代が今ようやく夜明けを迎えようとしてる。けど、本当にこのままで良いのかな? ちょっと寂しいよね」という想いが込められていることを知ってからは、より一層特別な曲のように感じるようになりました。
STUTSによるズルいくらいの泣きのビートに、稀代のリリシスト・PUNPEEが詩的かつエモーショナルなリリックを乗っけた最高の一曲。

(※UPDATE 2016.12.27:MVが公開されたので差し替え)


1. Chance the Rapper ft. 2 Chainz & Lil Wayne / No Problem

今年、彼の新たなミックステープ『Coloring Book』が出た瞬間に「あ、これは年間ベスト決まったわ」っと感じ、そしてそれが覆ることなくそのまま年末を迎えてしまいました。どれだけメディアやリスナーからの注目が集まろうが、常に「仲間たちと音楽をエンジョイすること」を至上命令としているかのようなスタンスに、どれだけワクワクさせられたか。
その上で、ゴスペルのようなコーラスをカットアップして使うそのセンスや、2 Chainz 、Lil Wayneといった超ビッグ・ネームを招きながらも、「何も問題なんてない/いつものようにメールをチェックして/ストリートを走っていくだけ」と飄々としながらもポジティヴなバイブスに溢れたリリックを乗っけられたらもうお手上げです。そしてこの楽曲も収録された『Coloring Book』が、ストリーミングだけでBillboardの全米アルバム・チャートのTop10にランクインした史上初の作品となったことも、2016年のポップ・ミュージックを語る上で外せない事柄でしょう。


Comment

ここ数年ずっと考えていた/感じていたことですが、今年はポップ・ミュージックの多様化、分断化がものすごく進んだような印象を受けました。「音楽好き」=「常日頃新しい音楽を自主的にディグっているような人々」と話をしても、「聴いてて当然」のような共通項が一昔前に比べてガクッと減り、みんなそれぞれ本当にバラバラな音楽を聴いてるなと、ここ数年で一番感じたような気がします。おそらくこれは日本だけでなく、世界中でそうなっていると思うし、色々な仕組み上、当たり前過ぎる現象なので、別にこのこと自体の是非をどうこう言う気は全くありません。でも、少し寂しいなとは思いました。寂しい一年でした。来年も僕は軽薄に好き勝手楽しみます。よろしくお願い致します。


番外編 マイ・ベスト

【ベスト・インタビュー】

■来日中のビョークが語る本音「今の時代の変化を歓迎しているの」(via. Cinra)
http://www.cinra.net/interview/201606-bjork

■【ビョーク×VR】テクノロジーに込めた地球・人間・音楽への愛–「Björk Digital」が実現した理由(via. SENSORS)
http://www.sensors.jp/post/bjork-digital-vr.html

とにかく今年はBjorkの言葉がずっと頭に残っていた一年でした。テクノロジーと主に音楽を通しての感情表現に対する関係性の、明確な答えをサラっと提示され、目からウロコが落ちまくりました。「ヴァイオリン」と「VR」、そして「英語」を同じ人間の感情表現の幅を広げるテクノロジーとして捉えることができるその視座の広さは、もはやバケモノかと。それでいて圧倒的な説得力を擁している彼女の言葉を聞いて(読んで)、これからの未来がめちゃくちゃ楽しみになりました。


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