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INTERVIEW | pami


タイ出身のSSWが語る、多様なキャリアとデビューアルバムの手応え、初来日への意気込み

2025.11.26

タイのプーケットに生まれ、日本のアニメソングを歌いはじめ、中国のガールズグループを経てロンドンで音楽表現を磨く——。多言語と多文化のあいだを軽やかに跳び越えてきたpamiは、アジアのインディシーンで今もっとも注目される新鋭だ。ベッドルームポップやローファイ、ジャズ、R&Bからシティポップまでを、pamiらしいキュートネスと倦怠感で包み込んだデビューアルバム『puffette』は、瞬く間に世界中に広がり、多くのリスナーを魅了している。

本記事では、彼女のルーツから音楽制作について、そして初来日公演となる『BiKN shibuya』に向けての意気込みも訊いた。

Interview & Text by Tsuyachan
Interpreted by Ginn (Faustus, dessin the world)

※編注:pamiの地元であるタイ南部が現在、豪雨により深刻な洪水被害に見舞われています。pamiのInstagramによると、彼女の家族や友人の家も被災しているとのこと。被災地に速やかに救助や支援が行き届くことを願います。なお、日本から支援や寄付が可能な窓口が確認でき次第、リンクを追記いたします。(2025.11.26)


「初めて歌えるようになった曲が、アニメ『東京ミュウミュウ』のオープニング曲なんです(笑)」

――pamiさんの生まれ育った環境について教えてください。タイのプーケットで、どんな音楽や文化に囲まれていましたか?

pami:プーケットには7、8歳くらいから18歳くらいまで住んでいました。音楽は、小学校1年生くらいのときにバイオリンから始めて。でもあまり上手くいかなくて、『タイタニック』(原題:Titanic)の曲だけ弾いて辞めちゃった(笑)。そのあと小学校3年生くらいのときにピアノを始めたんですけど、それも1年くらい。もともと歌を歌うことは好きだったから、その後は基本的に歌をやってました。

――タイのT-POPは、当時と今とでは大きく変化したと思います。実際にどのような変化を肌で感じますか?

pami:T-POPとして思い浮かべるのは、タイ語のポップな曲。そういう音楽は昔よりも広がってきていて、タイ人自身もみんな応援してるような雰囲気がある。技術や品質もだいぶ上がって、K-POPやJ-POPと比べても遜色ないものになってきてると思います。

――pamiさんの音楽には、そういったT-POPからの影響はありますか? それとも英語圏や日本語圏の音楽からの影響の方が強い?

pami:自分の音楽は、ベッドルームポップやローファイミュージックだったり、欧米の影響が大きいと思います。あとはジャズや、R&Bも。

――中でも特に影響を受けた、リスペクトするアーティストは?

pami:Gracie Abrams! あと、beabadoobee、Men I Trust、THE 1975、Cigarettes After Sexとか。やっぱりその辺りの、オルタナティヴでローファイな人たちが好き。

――Gracie Abramsは今年初めて来日したんですよ。私もライブを観たんですが、素晴らしかった! とても聡明な人でした。

pami:私も今年、初めてGracie Abramsをタイで観ました。感動して泣いちゃいました(と言って、しくしく泣く仕草を見せる)。

――pamiさんは小さい頃から日本の音楽も聴いてきましたか?

pami:聴いていたどころじゃない! 私、生まれて初めて歌えるようになった曲が、アニメ『東京ミュウミュウ』のオープニング曲なんです(笑)。(小松里賀の)“my sweet heart”っていう曲。その後もずっと日本の音楽は聴いてます。宇多田ヒカルやYUI、中森明菜などなど、1970~80年代のシティポップも大好きです。


「いろんな形の影響を受けてきたけど、今の自分が一番好きかも」

――pamiとしてデビューする前の音楽活動について教えてください。かつて、中国のガールズグループ・SiSの一員として活動していたんですよね? どういった経緯でデビューしたのでしょう?

pami:中国のオーディション番組のコンテストを受けたんです。それで上位に入ってデビューすることになったんですけど、活動期間は短くて。

――その後、ロンドンに留学されたんですよね?

pami:そう。ロンドンでは、ミュージックプロダクション、ソングライティング、パフォーミングの3つを学びました。パフォーミングは、歌やステージングを3~4ヶ月くらい学ぶんですけど、とても充実していました。ソングライティングは優秀な成績だったんですけど、ミュージックプロダクションについては学ばないといけないことがまだまだたくさんあるなと痛感しました。ロンドンは音楽文化が根づいていて、ライブもすぐ観に行けて刺激的でしたね。

――ということは、ロンドンに行ったときはすでにソロアーティストとしての活動を視野に入れていた?

pami:はい。自分のスキルアップのために行きました。帰ってきたらソロとしてデビューしようと決めてたんです。

――帰国後、ジュエリー関連のビジネスもしていたそうですね。でも、やっぱり音楽がやりたくて戻ってきたと。音楽は、あなたのどういった表現欲求を満たしてくれるものだと思いますか?

pami:一時期、音楽についてはもう満足したかなって思った時期もあって。それで、ビジネスをやっていました。でも内省を深めていくと、まだまだだなって思ったし、これからも満足することはないんだろうなって。それで音楽の世界に戻ってきました。

――タイに中国、イギリスと様々な文化を体験していますよね。そういった経験は、pamiの作品にどのような影響を与えていますか?

pami:これまでのたくさんの経験が、私に影響を与えています。タイでポップスを聴いて、そのあと中国でガールグループに入って、ロンドンで音楽の勉強をして……それでまたタイに戻ってきてソロアーティストとして活動してるっていう。いろんな形の影響を受けてきたけど、今の自分が一番好きかも。

――それは素敵ですね! ちなみに、俳優として映画やドラマにも出演していますよね。そういった経験も音楽活動に活きていますか?

pami:いや、俳優の仕事は全然役立ってないと思います(笑)。俳優として役を演じるというのは他人を表現することだけど、音楽は自分を表現することだから、全く異なるアプローチだと思います。


pamiの2面性を表す楽曲

――楽曲制作は、いつもどういったところからスタートしますか? 楽器を弾きながら? メロディを口ずさみながら? DTM(デスクトップミュージック)で?

pami:曲によって作り方が結構違うんですけど、ジャズのコード進行を使うことは多いです。ロンドンでソングライティングの勉強をしたのが役に立ってるって感じ。歌詞を先に作ることもあります。まず歌詞を書いて、そこにメロディを乗せていく。

――歌詞はいつもどういうふうに書くんですか?

pami:思いついたときにメモしておく。メモし過ぎて、ドラフトはもう200曲以上あります。でも、パッと思いついて書いた歌詞ってやっぱり最終的にはあまり採用されない。じっくり考えて書いた歌詞の方が、曲になることが多いです。

――デビューアルバム『puffette』の反響はいかがでしょう? 届いた声で、一番ハッとさせられた感想は?

pami:今回のアルバムは、いろんなジャンルをいっぱい混ぜていて。コメントでも「ジェットコースターに乗ってるみたい」って声がありました。リスナーにそう思ってもらいたかったから、嬉しかったです。あと「アートワークはアイドルっぽいけど、中身はすごいインディロックだ」みたいな声もあって、それも心が踊りました。

――ジェットコースターみたいなアルバムの中でも、一番pamiらしいと思う曲はどれですか?

pami:うーん……1曲には絞れない! 自分の2面性を表したという意味では、“lie”と“kiss me blue”かな。“lie”に関しては、雨でびしょ濡れになる悲しみを表現してる。対して“kiss me blue”は、私のお茶目な部分を表してる。どっちもすごくpamiらしい曲だと思います。

―—MVやアートワークなど、pamiのビジュアルやスタイリングには強いオリジナリティがありますよね。その辺りについては、どんな哲学を持っているのでしょう?

pami:ありがとう! アートワークやビジュアルについて、まず一番初めに考えるのは節約なんです(笑)。どうやって少ない費用で効率的に作るか。

――節約?(笑)

pami:そう、節約(笑)。少人数で、友だちやスタッフと協力し合いながら作っています。好きな仲間と作ってるから、素敵なものができてるんだと思う。


当事者から見た、アジアのインディシーンの盛り上がり

――『BiKN shibuya』での来日ライブが近づいています。こういった大型イベントが開催できるくらいに、今アジアのインディシーンはとても充実してきていますよね。あなたは、そういった熱をどのように見ていますか?

pami:アジアの国々にはバラエティに富んでいて、個性的で、クリエイティブなアーティストが多く存在しています。英語で歌ってたとしても、どうしても自国のニュアンスが出るから、それがおもしろい。各国のシーンにおいて、アーティストだけではなくお客さんやライブハウス、メディアなども含めてサポートが強くなってきてるように感じます。それに呼応するように、音楽のクオリティも上がってきていて。素晴らしいことだと思います。

――ちなみに、タイのインディシーンは最近どんな感じなのでしょう?

pami:タイのインディシーンは大きくて、いいアーティストも多いし、海外に進出する人もたくさんいます。私のおすすめは、ArabelleっていうR&Bソロアーティスト。とにかく声が素敵なんです。あと、元HYBSの片割れのJames Alynも素晴らしいアーティストです。

――『BiKN shibuya』で初めてpamiのパフォーマンスを観る人も多いと思います。あなたのライブの一番の見どころを教えてください。

pami:今回、私は18:20からSpotify O-EASTで50分間ライブをします。開始0.01秒から最後まで全てが見どころです。全部観てほしい!(笑)

――(笑)。ちなみに、今回東京での滞在で一番行きたいところ、見たいものは?

pami:タワーレコード渋谷でやっている、おぱんちゅうさぎのポップアップイベントに行きたいんです。でも、私が東京に行く頃には終わっちゃうみたいで……。残念! おぱんちゅうさぎ、大好きなのに~(泣)。


【イベント情報】


『BiKN shibuya 2025』
日時:2025年11月30日(日)OPEN 11:00 / START 12:00
会場:東京・渋谷 Spotify O-EAST(Main / Sub / 3F Lobby) / Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE
主催:BiKN 2025 実行委員会

BiKN shibuya オフィシャルサイト


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