「I cannot forgive you」という叫びが胸を射抜く。愛と裏切り、「許したいけど許せない」という感情を真正面から描いた、HANAの新曲“BAD LOVE”は、キャッチーなフックと疾走感あふれるサウンドを軸に、プロデューサー・ちゃんみなとともに作詞に参加したMOMOKAとJISOOが、忘れたくても忘れられない記憶と痛みを鋭い言葉に変換した作品だ。
7月にリリースした2ndシングル“Blue Jeans”は国内外の主要音楽チャートを席巻。7月23日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート「JAPAN HOT 100」では、今年度最多の総合ポイント・ストリーミングポイントを記録し総合1位を獲得。また、7月28日付のオリコン週間ストリーミングランキングでは週間再生数1978.4万回を記録し、女性アーティストとしての歴代最高週間再生数で1位に輝いた。
『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』といった夏フェスでも圧倒的な実力で観客を魅了した7人は、ロックのダイナミズムとヒップホップ的なエッジをあわせもつ今作“BAD LOVE”で、グループの新たな到達点を示している。Spincoasterでは今回も7人全員にインタビューを実施。制作の裏側からパフォーマンスへの意識、そしてツアーへの展望まで、「“BAD LOVE”のすべて」を紐解くことに。
Interview & Text by Miho Matsuda
Photo by Maho Korogi
「挑戦しがいのある曲」「ライブで頭を振りながら歌いたい」
――“BAD LOVE”を初めて受け取ったときのファーストインプレッションは?
YURI:最初はグループというよりソロシンガーの曲のようだなという印象がありました。だからこそ挑戦しがいのある曲だし、すごく楽しみでした。
NAOKO:“アメリカンロック”のような曲をガールズグループでパフォーマンスすること自体、すごく新鮮だし、私たちにとってまた新しい挑戦になるなと思いました。
MOMOKA:疾走感がある曲だから、ずっと走ってきた私たちの人生とも重なるなと。
JISOO:ちゃんみなさんから「この曲どう?」と聞かれたとき、「絶対にやりたいです」と答えるくらい好きなタイプの曲でした。

KOHARU:聴いた瞬間、サビがキャッチーで耳に残る! と思って。すぐに「ライブで頭を振りながら歌いたい」とワクワクしました。
MAHINA:私もフェスで歌ったら盛り上がるだろうなって。
CHIKA:私が最初にデモを聴いたのは、台北のホテルだったんですけど、興奮しながら聴いていました。
――今回の楽曲は英詞が多いのも印象的でした。作詞にはちゃんみなさんに加え、MOMOKAさん、JISOOさんも参加したそうですね。
MOMOKA:JISOOは英語が得意なんですよ。
JISOO:私は歌詞の書き方を学んだのが英語だったので、英語で表現する方が自然でやりやすいんです。
MOMOKA:私もできる範囲で英詞に挑戦したんですけど、まだまだ勉強しなきゃって感じで。今回、改めてちゃんみなさんやJISOOの英語力に刺激を受けました。

「その瞬間の感情をぶつけつつ、共感を大切にする」
――この曲をパフォーマンスする上で意識したことは?
YURI:私はあまり考え込みすぎず、その時の感情に任せようと思っています。考え過ぎるとパフォーマンスが小さくまとまってしまうので、考え込まないほうがこの曲のエネルギーを表現できるような気がしています。
NAOKO:『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』で初めてライブパフォーマンスをしたとき、お客さんの顔を見ながら「この曲の苦しさをもっと届けたい」と思って、マイクスタンドからマイクを外して歌ったんです。そうしたら、自分でも忘れていた苦しい記憶がフラッシュバックして。それで、この曲はその瞬間の感情に任せたほうがいいんだと思いました。
KOHARU:私もその瞬間の感情をぶつけつつ、共感を大切にするというか。作詞したMOMOKAとJISOOの想いを責任持って音楽で昇華することを強く意識しています。
MAHINA:冒頭は気だるい雰囲気で、サビは叫ぶような「泣き歌い」に挑戦しました。JISOOとMOMOKAが経験した、歌詞の背景を理解して歌うことをとにかく大事にしました。
CHIKA:私自身はこういう経験がないんですけど、2人をそんな気持ちにさせたのは許せない、という感情をそのままぶつけています。全体的に歌うというより叫ぶイメージだけど、最後のフェイクは特にこだわりました。私の声が最後に残るので、そこはちゃんと締めようと。語尾や音の切り方をしっかり考えました。
――作詞をしたMOMOKAさんやJISOOさんから、話を聞くような機会はあったんですか。
MOMOKA:ちょうど制作時期に、メンバー2人ずつでごはんに行く「リレーデート」をしていた頃だったんです。深いところまでお互いの経験を共有した後だったので、私たちの経験も共感してくれたんじゃないかなと思います。
――この曲を象徴するフレーズをひとつ挙げるなら?
全員:「I cannot forgive you!」
NAOKO:「愛してた」のところも。許せないのは、結局、愛していたからこそだから。
YURI:「眠らせてよもう今日ぐらい」。ずっと考えてしまうから眠れないし、未練が表現されています。
MOMOKA:「What about you」だけは、あなたは私のことどう思っていたの? と問いかけていて、そこに葛藤が表れていて好きですね。
MAHINA:「cause I’m just a kid」は曲の中で強調されるフレーズで、最初にちゃんみなさんから「この意味を考えてみて」と言われたので、ここも大事にしています。
JISOO:辛い経験や葛藤を抱えているときって、いくら時間が経っても子どもみたいになっちゃうんですよね。

――もし“BAD LOVE”を1曲目にしたプレイリストを組むとしたら、どんな楽曲を加えますか?
KOHARU:夜の高速道路で聴きたいから疾走感のあるギターロックを並べて、青葉市子さんのようなヒーリング系でクールダウン。
MAHINA:私はランニング用のプレイリストに入れたいです。“BAD LOVE”で走り出して、そのまま爆発力のあるロック。走りながら嫌なことを忘れるイメージです。最後は帰宅モードで『となりのトトロ』の“さんぽ”(笑)。
MOMOKA:「ラブ縛り」で、ドロドロした愛の歌を中心にギターロックやヒップホップのミクスチャーにしたいですね。“BAD LOVE”もジャンルを一言で説明できない曲なので、そういうプレイリストを作れたら。
JISOO:オルタナティブロックな曲を入れて、最後は“ROSE”。
CHIKA:とにかくギターが鳴っているロックを並べたい。ロックが大好きなんです。
YURI:魂を叫んでいるような、例えばRADWIMPSの“狭心症”みたいな、胸の奥をえぐるロックを入れたいです。
NAOKO:プレイリストのテーマを「相談」にして、“BAD LOVE”で「こんなことがあったんだね」と相談に乗って、そのあとに「大丈夫だよ」と落ち着けるチル系。3Houseさんの“YOU”がぴったりです。

MV撮影でも魅せた実ボ
――今回のMV撮影時のエピソードを教えてください。
MAHINA:撮影でハイヒールを初めて履いたんです。最初は子鹿のようにフラフラだったんですけど、ちゃんみなさんに指導してもらったので、美しく歩けたんじゃないかな。車のトランクを蹴り上げるシーンは、トランクが狭すぎて最初上手く脚が曲がらなかったんです。どうすればきれいに蹴り上げられるのか、みんなで何度も試行錯誤しました。
CHIKA:口のガムテープを剥がすシーンは、MAHINAと何回も撮り直しました。ワセリンを塗っていたので痛くはなかったのですが、難しかったです。
YURI:私がMAHINAとMOMOKAを助けるシーンでは、ディレクターさんたちがいる場所と少し離れていたんです。いいシーンが撮れると、ちゃんみなさんがメガホンのアラームをピヨピヨピヨを鳴らしてくれて(笑)。
NAOKO:私は腕の鎖が重機と繋がっていて、CHIKAが外してくれるんですけど、撮影前に2人でちょっと引っ張ってみたらすぐに外れちゃって。それが楽しかったです(笑)。
KOHARU:私が電話ボックスに閉じ込められているシーンでは、NAOKOがライトを1秒に30カ所くらい照らしていて(笑)。これも「実ボ(実力の暴力)」って感じで、個人的におもしろかったです。それから、CHIKAが演技中にクスクス笑うんですよ。
CHIKA:タイツが引っかかって、動けなくって(笑)。
KOHARU:すごくシリアスなシーンなんですけど、何度も転んだりハプニング満載でした(笑)。

「許したいけど、許せない」──それぞれの整理の仕方
――今作のテーマになっている「許したいけど、許せない」という状況に直面したら、みなさんはどのように気持ちを整理しますか?
MOMOKA:私は心の奥深くに閉じ込めて、自分でも思い出せない場所にしまい込むタイプです。今回は初めて記憶を掘り出して歌詞にしましたが、正直かなり辛くて。自分の中だけに押し込めた方が楽だとすら思いました。
YURI:私はずっと「開き直る」ことでやり過ごしてきました。「そういう人なんだね」と割り切って、「いつかバチが当たるから大丈夫」と。忘れるわけじゃないけれど、そうするしかないかな。
NAOKO:私はまず受け入れるタイプ。受け止めすぎてボロボロになるんですけど(笑)、そのうち忘れてしまうんです。傷が残ってもいいと思うし、別のことで幸せになれば自然に薄れていく。そんな考え方です。
KOHARU:私は「許せない」と感じた経験がなくて、もしそういう状況になったら、どうにかして、その人にも生きる価値があるはずだって思える要素を探すかも。「この人もいろんな人に愛されてきたんだよな」とか、存在を肯定する理由を探すというか。

NAOKO:わかる。「この人にも家族がいるんだよな」とかね。
JISOO:私もそんなに「許せない!」という経験は多くないけれど、整理できない感情は、きっと時間が解決するしかないんだろうなと思います。
MAHINA:私は泣きたいときは泣く。お風呂で泣いたり、お母さんに泣きながら話したり。どうせ神様は見ていると思うので、悪いことをした人にはバチが当たります!
CHIKA:私はノートに書きます。傷ついた気持ちから目を逸らさないように、「あなたは傷つきました」と書き残すんです。忘れないために。
――最後に、来年3月から全17都市を回る初の全国ホールツアーが発表されました。意気込みをお願いします。
MAHINA:じゃあ、私が代表して! 多くの都市を訪れて、たくさんの方に「最強のHANA」をお届けしたいと思っております。目標は「人を救う」! 頑張ります!

【リリース情報】

HANA 『BAD LOVE』
Release Date:2025.09.08 (Mon.)
Tracklist:
1. BAD LOVE
【イベント情報】
HANA 全国ホールツアー
愛知 – 2026年3月7日(土)/ 3月8日(日)
茨城 – 2026年3月21日(土)
東京 – 2026年3月29日(日)
福岡 – 2026年4月3日(金)/ 4月4日(土)
広島 – 2026年4月10日(金)
岡山 – 2026年4月12日(日)
大阪 – 2026年4月18日(土)/ 4月19日(日)
香川 – 2026年4月26日(日)
北海道 – 2026年5月2日(土)
宮城 – 2026年5月5日(火・祝)/ 5月6日(水・祝)
千葉 – 2026年5月9日(土)
兵庫 – 2026年5月22日(金)/ 5月23日(土)
静岡 – 2026年6月7日(日)
神奈川 – 2026年6月19日(金)/ 6月20日(土)
京都 – 2026年6月26日(金)
東京 – 2026年7月11日(土)/ 7月12日(日)
石川 – 2026年7月18日(土)
新潟 – 2026年7月20日(月・祝)
※公演情報に関しては追ってアナウンス予定











