E.sceneが本日9月27日(金)にリリースした最新シングル“vector”のMVが公開された。
2024年4作目のリリースとなる“vector”は本日より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開となる映画『SOUND of LOVE』の主題歌・挿入歌に起用された1曲。バンドは「今までの楽曲にはない、浮遊感のある音の中を突き抜けるストレートで力強いバンドサウンドと、全体を包むボーカルを感じることができる楽曲に仕上がったと思います」とコメントしている。MVはTeppei Shibataがディレクションを担当。バンドの演奏シーンも含む作品となっている。
また、バンドは10月23日(水)にニューアルバム『All Around You』をリリースすることも決定。以下、音楽ライター・つやちゃんによるテキストも到着している。
E.sceneの音楽のシグネチャーとなっているのは、真琴(Vo.)の比類なき歌声だ。本アルバムでも、その表現力にますます磨きがかかっている。スモーキーながら艶を備えた声によって、何気ないメロディすらも時にドラマティックに、時にラグジュアリーにドレスアップされる。つまり、『All Around You』は、R&Bが「歌」の音楽であることを図らずも証明している。真琴が歌うだけで、どんな音階もR&Bへと昇華されていくからだ。
たとえば“Gift”や“spotlight”の、J-POPに影響をうけたような旋律。“vactor”で、《さよなら青く染まる未来/明日は待つほど優しくはないのね》と哀愁漂いつつ歌われる昭和歌謡ムード。どれも、真琴の歌声にかかればどこかシネマティックな劇画性を帯びてくる。歌詞や歌やサウンドが絡み合うことで、そこに人物と、風景と、香りと、肌触りが立ち上がってくるのだ――All Around You=あなたのまわりのすべてが、ありありと形を伴って。
さらに、歌声を彩り支えるような演奏の魅力も大きく深化している。E.sceneの楽曲において、リズム隊は歌を際立たせるために抑制された軽やかな音作りを基本としてきた。そのサウンドメイキングの方向性は、今作でも変わっていない。だが、加えて、より物語を紡いでいく力が備わった。中でも、“わたしと私”は現時点でのバンドの到達点だろう。「わたし」と「私」という2つの一人称を表現するかのように、メロディとは異なる軸でベース&ドラムがアナザーストーリーを描いていく。独自のリズム生成の巧みさによって、2つの物語が同時並行するような面白さがあるのだ。他方で、“Petrichor”に顕著なように、ボーカルと呼応する形でリズム隊が激情を描くアプローチも相変わらず冴えている。歌とは別軸で物語を紡ぐような演奏、あるいは歌そのものを補強していく演奏、両方を追求する姿勢が見事だ。
ボーカル、ベース、ドラムという最小限の構成によるE.sceneは、ミニマルなアプローチで最大限のドラマを描出する。2020年代のR&B/SOULシーンにおける、最後のピースがはまった。この音楽によって、Allあなたの Aroundまわりの Youすべてが、息を吹き込まれ動きはじめていく。
Text by つやちゃん
【リリース情報】
E.scene 『vector』
Release Date:2024.09.27 (Fri.)
Label:bament
Tracklist:
1. vector
==
E.scene 『All Around You』
Release Date:2024.10.23 (Wed.)
Label:bament
【映画情報】
『SOUND of LOVE』
2024年9月27日(金)より東京・池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
監督・脚本:吉川鮎太
出演:染谷有香 樫尾篤紀
主題歌:“vector”E.scene
企画・プロデュース:ホリプロ / MinyMixCreati部
製作:ホリプロ / MinyMixCreati部
配給・宣伝:MinyMixCreati部
配給協力:LUDIQUE