毎年恒例、Spincoasterが大いに期待を寄せるニューカマー10組『NEXTCOMING 2022』を発表します。
今年は発表が大幅に遅れてしまいましたが、2020年以降、シーンやトレンドの在り方は様変わりしましたが、今回ご紹介させて頂く10組はいずれもこの激動の時代に独自の存在感を放っています。なお、『NEXTCOMING 2022』の発表と同時に、よりマス・レベルでのブレイクを予想する企画『BREAKOUT 2022』も発表しています。この『NEXTCOMING』で選出させて頂いたアーティストが、1〜2年後には『BREAKOUT』として登場するかもしれません。
また、今回の『NEXTCOMING 2022』、『BREAKOUT 2022』を中心とした、2022年要注目のアーティストをまとめたプレイリスト『SPOTLIGHT 2022』も公開中なので、こちらも合わせてチェックを。
Text by Takazumi Hosaka
NEXTCOMING 2022 選出アーティスト ※A→Z順
DENYEN都市
プロデューサーのH.O.P.E.と、それぞれソロ活動も行うyo、JIANG SHIDAO(fka. teitaraku)、浅井杜人、who28の5人からなるヒップホップ・コレクティブ。2020年リリースの2ndアルバム『Q』収録の人気曲「Darling ダリィよ」に象徴されるように、直球のポップネスや、様々なジャンル/スタイルを横断するハイブリットな音楽性を展開。昨年は個性豊かなメンバーそれぞれのソロ活動が印象的であったが、そろそろコレクティブ名義での新たな作品にも期待したい。なお、結成の経緯などは昨年末に行った浅井杜人のインタビューでも語られている。
ego apartment
サイパン島出身でリーダーのDyna(Ba. / Laptop)、SSWとしての活動でも知られる大阪市堺市出身のPeggy Doll(Gt. Vo.)、そしてシドニー出身のZen(Gt. Vo.)からなる3人組。声質・キャラクターの異なる2人のボーカルを擁するほか、メンバーそれぞれがソングライティングを手がける彼らの音楽性はまさに変幻自在。ソウルやR&B、ブルース、レゲエ、ダブなどの要素も感じさせる横断的かつオリジナリティ高いサウンドを展開。その背景には、バンドでありながらもDTMが当たり前となった今日的な編集感覚が大きく寄与しているようにも感じる。今年はフェスでの活躍やフルンレングス作品のリリースに期待したい。
Gokou Kuyt
持ち前のポップ・センスとメロディックなフロウ、身近なトピックを独自の視点で切り取るリリックなどで支持を得ているラッパー、Gokou Kuyt。2018年頃からジワジワと注目を集め始めたいわゆるSoundCloud発のラッパーたちや、その周囲のシーンからは様々な才能が現れ、それぞれ独自の歩みを進めている。大きく飛躍した(sic)boy(fka. Sid the Lynch)がその最たる例だろう。シーン混迷期から注目を集めていたGokou Kuytはこれまでマイペースな活動を展開していながらも、イラストに鈴木旬、デザインに榛葉大介という気鋭のクリエイターを迎えた最新EP『U DESERVE IT!』ではより洗練されたクリエイティビティを発揮。2月にはDENYEN都市のメンバーでもあるwho28との共作シングルもリリース。今後の動きにも注目したい。
Kabanagu
2018年から現名義での活動を開始したプロデューサー、Kabanagu(*1)。これまでに楽曲提供、編曲、リミックスではtofubeats、長谷川白紙、PELICAN FANCLUB、虹のコンキスタドール、mekakusheなど多彩なアーティスト/グループの作品に携わってきたほか、諭吉佳作/menとのコラボ曲「すなばピクニック」でも注目を集めた。過剰な情報量や劇的/カオティックな展開など、いわゆるインターネット出自の肌触りを強く感じさせつつも、昨年〈Maltine Records〉よりリリースした最新EP『泳ぐ真似』ではよりシリアスかつタイトな音像を獲得。絶妙なバランス感覚を有した稀有な作品として高く評価された。hirihiri、quoree、phritz、ウ山あまね、yuigotらと組んだPAS TASTAも要注目。
*https://blogs.soundmain.net/10745/
Lil Soft Tennis
RY0N4、aryyと共に奈良発のコレクティブ、HEAVENでの活動でも知られるLil Soft Tennis。活動初期から展開していたロックもヒップホップも飲み込む折衷性の高い音楽性は昨年リリースした1stアルバム『Bedroom Rockstar Confused』で高い次元に結実。個人的にはRed Bullのマイクリレー企画『RASEN』での熱演も印象的だった。以降もTomgggやAMBR、kZmとのコラボ曲のリリースなど、活躍のフィールドをさらに拡張するかのような動きが目立つ。いわずもがな、HEAVENとしての活動にも期待したい。
Liza
2002年ロシア生まれ、日本語とロシア語を操るバイリンガル・アーティスト、Liza。昨年リリースされた1st EP『WHO AM I?』や世代アーティストにフォーカスを当てたプロジェクト『O.B.S』にて発表されたNeon Nonthanaとのコラボ曲「bat life」などでジワジワと注目を集めている。高い歌唱力、ラップのスキルはもちろんのこと、ダークでヘヴィなトラックからメロウ、ドリーミーなトラックまで多彩なトラックを乗りこなすセンス。そしてときにロマンチックに、そしてときにいは刺々しい言葉も用いて表現されるリリックなど、ユース世代のアイコン的存在となりそうだ。
luvis
京都在住、作詞、作曲、トラックメイキングを全て自身で行う今日的なスタイルで活動するSSW/プロデューサー、luvis。ジャズやソウルといったオーガニックなサウンドから、今日的なビートミュージックやR&Bの片鱗も感じさせつつ、全体としてはポップにまとめあげるその手腕は、すでに“洗練”や“成熟”という言葉も似合うほど。最新EP『走馬灯で逢いましょう』では福岡のSSW・I’mとのコラボも収録しつつ、エヴァー・グリーンなポップネスを展開。コンスタントに良質な作品を届けてくれそうな逸材だ。過去のインタビューでは「25歳までに一回は東に攻め入りたい」との発言もあるが、果たして2022年はどう動くのか。
鯱
鋭児のボーカル・御厨響一とプロデューサー・Dr. Payによるユニット、鯱。まだリリース作品は1曲のみだが、鋭児とは大きく印象の異なる御厨のメロウな歌唱と、ミニマルながらも洗練されたトラックが合わさった1stシングル「New World Believer」は今後の期待を煽るのに十分な名曲だ。なお、Dr. PayはHIMIとの2組ユニット・D.N.A.での活動でも知られるほか、ダンサーやDJとしても活動している。さらに、HIMIとPERIMETRONのプロデューサー・西岡将太郎が立ち上げたレーベル〈ASILIS〉にも所属しており、彼ら周りのシーン全体の動きにも注目したい。
skaai
アメリカ合衆国・ヴァージニア州生まれ大分県育ち、現在は福岡を拠点とするラッパー/アーティスト、skaai。幼少期から日本のみならず韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカ合衆国での滞在経験を有している。2020年にSoundCloud上での楽曲リリースを皮切りにラッパーとしての活動を開始し、AbemaTV『ラップスタア誕生 2021』でも大きな注目を集めた。これまでにリリースした2作のシングルは盟友・uinと共に制作。どちらも1曲の中での展開の巧みさや、流暢な英詞も交えたリリックなど、そのポテンシャルは十分に伝わってきている。
さらさ
湘南出身、弱冠23歳のSSW。自身のリリース作品は未だ多くないが、スモーキーでどこか憂いのある歌声ですでに多方面からの注目を集めており、gatoやSPENSR、碧海祐人、Pause Cattiといった同世代の新鋭アーティスト作品にも参加。また、最新シングル「祈り」ではオルタナ〜アンビエントR&Bなサウンド・プロダクション、音の差し引きで魅せる展開など、非凡なソングライティング・センスを発揮。今、最もフルレングスの作品リリースが待たれる新鋭のひとりだろう。