5人組グループ、FAKYのメンバーであるAKINAが2ndソロ・シングル「Gravity」を12月18日(金)にリリースした。
カリフォルニアに生まれ沖縄とアメリカで育った彼女は、小袋成彬と共にTOKA(ex. TOKYO RECORDINGS)を運営するYaffleプロデュースの元、11月にソロ・デビュー。1stシングルとして発表されたのは英SSW・Shuraの人気曲「Touch」のカバー。もちろん全編英詞で、Yaffleによる先鋭的なプロダクションと共にFAKYでみせる一面とは大きく異なる世界観を表現。そのクオリティの高さには、FAKYファンだけでなく多くの音楽リスナーの耳目を集めた。
今回はそんなAKINAに単独インタビューを敢行。ソロ活動を開始した経緯から音楽的バックグラウンドまで、ひとりのアーティストとしてのパーソナリティを紐解く。
Text & Interview by Takazumi Hosaka
Photo by Hide Watanabe
「チルで落ち着いたサウンドの方が、自分らしさを出せる」
――ソロ活動をスタートさせた経緯というのは?
AKINA:私は15歳頃からピアノで作詞、作曲を始めたのですが、以前からそれを多くの人にシェアしたいという気持ちがありました。やはりFAKYでの活動ではあまり見せられない一面もあるので、ソロでの活動について考えることは自然な流れでした。
――15歳の時に作詞を始めたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
AKINA:そもそも、音楽にのめり込むきっかけになったのも歌詞が大きくて。例えばEd SheeranやJhené Aikoなど、リアルで自身の感情を綴ったような歌詞に強く惹かれたので、自分も多くの人に刺さるような歌詞を書きたい、歌いたいと思うようになりました。
影響を受けた楽曲はたくさんあるのですが、特に大事にしている曲は、Jhené Aikoの「Eternal Sunshine」。彼女も色々なインタビューで語っている通り、お兄さんを亡くしていたりと悲しい経験も経ているのですが、ネガティブな内容のみにフォーカスするのではなく、グッド・ライフを生きていこうといった曲になっていて。歌詞の中に取り入れている言葉遊びも素敵で、個人的にすごく響いた曲です。
AKINA:当時から作ったメロディや歌詞はボイスメモなどで残してあって。今回、ソロ・プロジェクトを始動させるにあたり、スタッフのみんなと聴き返して、リリースする作品を決めていきました。
――AKINAさんの音楽的なバックグラウンドについて、もう少しお聞きしたいです。Ed SheeranやJhené Aiko以外で、ご自身に特に影響を与えたアーティストは?
AKINA:小さい頃からダンスもやっていたので、Christina AguileraやBeyoncé、Princeといった歌って踊れる、カッコいいアーティストに強く憧れていました。ただ、最近ではもう少しチルなR&Bもよく聴いています。例えばSabrina Claudio、H.E.R.など。特にサウンドの面ではそういったアーティストから強く影響を受けていると思います。何ていうんでしょう……チルで落ち着いたサウンドの方が、自分らしさを出せる気がしていて。
――AKINAさんはカリフォルニアで生まれ、以降は日本とアメリカを行き来しながら育ったようですね。そういった環境の変化は、ご自身の聴く音楽にも影響しましたか?
AKINA:住む土地というよりかは、家族の影響の方が大きいですね。私の家族はとても仲良しなのですが、アメリカ人の父はカントリーやインディ・フォーク系、兄はゴリゴリのヒップホップ、姉はエモなど、みんなそれぞれ異なるジャンルの音楽を聴いていて。自然と私も小さい頃から色々なジャンルの音楽を耳にするようになりました。お母さんもよく家で歌っていましたし。特に4つ上の姉の影響は大きくて。ダンスを始めたのも彼女がきっかけです。
――先程、ピアノで作曲をしているとおっしゃっていましたが、ピアノも習われていたのでしょうか。
AKINA:小さい頃はしっかりとしたレッスンを受けていました。ただ、引っ越しのタイミングで中断されてしまって。作曲の時はベーシックなコードを弾きながら、メロディや歌詞を考えています。
私小説のような「Touch」、“重さ”を表現した「Gravity」
――11月には第1弾ソロ・シングルとして、Shuraの「Touch」のカバー・シングルをリリースされました。この曲も、元々録り溜めていたデモの中にあったのでしょうか。
AKINA:はい。昔カバーした音源を聴いたスタッフさんから、「これ、いいんじゃない?」って言ってもらえたので、リリースすることになりました。
――AKINAさんはこの曲のどういった部分に魅力を感じますか?
AKINA:サウンドはすごくチルな雰囲気なのですが、歌詞がすごくディープ。まるで彼女の私的な日記を見ているような気分になるんです。「これ、本当に読んでもいいのかな?」っていう感じ。そのサウンドから受けるイメージとのギャップがおもしろくて、好きになりました。あと、メロディがシンプルで、抑揚もフラットなので、自分らしい遊びを出せるかなと思ってカバーさせてもらいました。
――TOKYO RECORDINGSのYaffleさんとタッグを組んで制作されたカバーVer.では、原曲のチルなトラックから一転、テンポも早くなり、アグレッシブなR&Bという印象を受けました。同作の制作のプロセスについて教えて下さい。
AKINA:Yaffleさんとの最初の打ち合わせの時に、今話したようなサウンドと歌詞のギャップをより際立たせたいとお伝えしました。そこからYaffleさんと意見交換をしていく中で、ビートを強調したり、少し派手なシンセやドロップを取り入れることになり、最終的にグルーヴィーな作品に仕上がりました。
――Yaffleさんと制作するようになったきっかけというのは?
AKINA:以前からスタッフさんに投げていたデモ音源の中に、アンビエント的な作品も多くて。そういった部分を汲み取ってくれたスタッフさんに提案してもらいました。
――アンビエントがお好きなんですか?
AKINA:アンビエントというか、スペイシーというか。「この音はどこからきてるの?」って感じるような、少し変わったサウンドが好きなんです。例えばBANKSや初期のThe Weekndなど、ダークでアトモスフェリックな作品にも惹かれることが多くて。もちろんポジティブなヴァイブスの作品も聴くんですけど、ひとりの時はチルでアンビエントなテイストの方が落ち着くんです。
――そういったサウンドを、ご自身でも制作していると。
AKINA:はい。頑張ってトライしています。「GarageBand」で自分がいいと思う音色を入れていったり。FAKYの作品とはギャップを感じてもらえるかなと思います。
――Yaffleさんとの制作はいかがでしたか?
AKINA:一番最初の打ち合わせの段階から、サウンドの方向性についてすごく細かく聞いてくれて。私のアイディアをとても理解しようとする姿勢が伝わってきたので、すぐに信用できる人だと思いました。ソロ・シングル第1弾ですし、他のアーティストさんと共作するのは緊張していたのですが、とてもスムーズに制作を進めることができました。
――リファレンスとしてYaffleさんにお伝えしたアーティストや作品はありますか?
AKINA:先程も名前を挙げたSabrina ClaudioやJhené Aiko、あとはAlina Barazなどですね。個性的な歌詞とサウンドが絶妙なバランスで成り立っているような作品にしたいとお伝えしました。
――声をエディットしたようなリフも印象的です。あれはAKINAさんの声が元になっているのでしょうか。
AKINA:あの音、めっちゃおもしろいですよね。あの部分はYaffleさんが制作したので私の声なのかどうかはちょっとわからないのですが(笑)。
――第2弾シングルとなる「Gravity」は、AKINAさん作詞作曲によるオリジナル楽曲ですよね。この楽曲はいつ頃、どのようにして生まれてきた作品なのでしょうか。
AKINA:実は結構前に作った曲なんです。私の姉は今アメリカに住んでいるのですが、今でも頻繁にテレビ電話するくらい仲が良くて。ある時、彼女から恋人と上手くいっていないことを相談されました。この曲はその時に聞いた彼女の感情を綴った作品です。あまりポジティブ内容ではなく、終わりが見えないといったようなイメージの、ダークな作品になっています。
――お姉さんの体験、思いを曲にしたと。AKINAさんはこの曲をどういった感情で歌っているのでしょうか。
AKINA:何度も姉の話を聞いてきたので、この曲に関しては彼女になりきって歌っているような感じです。ある意味、彼女の曲と言ってもいいくらい。
――ちなみに、お姉さんには聴かせましたか?
AKINA:いえ、まだなんです。恥ずかし過ぎて……(笑)。いつか耳に入って、「あれ? この曲、私のこと歌ってない?」って気付くような、それくらいの距離感がちょうどいいかなって思っています。
――サウンド的には先程からお話しているような、チルな雰囲気やアンビエント的とも言える荘厳なトラックに仕上がっています。
AKINA:タイトルやテーマの通り、“重さ”を感じさせるサウンドにしたかったんです。曲のイメージをYaffleさんにお伝えして、音をたくさん重ねていく形で作っていってもらいました。そしたら最初から「言うことなし……!」ってくらい最高のものが返ってきて。私が作ったデモの段階では、ピアノとベーシックなビートのみだったので、そこから膨らませて、こんなにも色々な音色を持ってこれるんだっていうことに感動しました。私が想像していたものを遥かに超えた作品になったと思います。
――なるほど。
AKINA:元々私が作っていたデモではボーカルをたくさん重ねていたのですが、「これをそのまま再現しよう」って言ってくれて。全部のテイクを録り直して、同じように重ねていった結果、膨大なトラック数になってしまいました。それをすごく細かく調整してくれて。本当にYaffleさんってすごい方なんだなって思いました。
目指すのはフィルターを通さず、自分に素直に表現していくアーティスト
――ソロ活動において、AKINAさんは今後どのようなアーティストになりたいですか?
AKINA:どういうアーティストになりたいかなどは、自分でもまだわからないんです。ただ、自分の言いたいこと、伝えたいメッセージ、自分の好きなサウンドを素直に表現していきたいなと考えています。色々な人とコラボして、勉強させてもらいつつ、自分がいいと思える作品を発表していけたらなと。
――ソロ活動をスタートさせたこと、もしくはソロで作品を発表したことについて、周囲からはどのような反響がありましたか?
AKINA:FAKYと違って私の声しか入ってない、私しか歌ってないので、最初は不安だったんです。でも、発表したらすごくいいリアクションをもらえて。FAKYのメンバーもすごく応援してくれています。特にLil’ Fangは何年も一緒に活動してきているので、「AKINAがずっと好きだった音楽を、多くの人と共有してくれて嬉しい」って言ってくれました。
――作詞作曲について、勉強していることや習得したいと考えていることはありますか?
AKINA:色々なアーティストさんの曲を聴いて、コード理論やトラックメイク、ビートなどについて勉強しています。「GarageBand」ももっと使いこなせるようになれたらなと。歌い方に関しても、FAKYの作品とは違った部分を出せていると思うので、今後はさらに自分らしさを表現できるようにしたいです。
――現在発表されている作品は、Shuraのカバー「Touch」と、お姉さんの実体験を元に綴った「Gravity」の2曲のみですが、AKINAさん自身の感情や経験を題材にした作品も控えていると考えていいのでしょうか。
AKINA:そうですね。ソロ作品ではノンフィルターで、私の周囲のことや私目線から見た世界についてなど、とてもパーソナルな作品も作り溜めています。
――ちなみに、AKINAさんは作詞に関するインスピレーションは普段どういったことから得ることが多いのでしょうか。
AKINA:人との会話からインスピレーションを受けることが多いと思います。私自身の気持ちを綴ることも多いのですが、「Gravity」のように、親しい人の気持ちや立場を想像して書く曲も少なくないです。
――そういった点も踏まえると、今年3月以降の外出自粛期間はなかなかに厳しかったのではないでしょうか。
AKINA:辛かったですね。自粛期間にもたくさん曲は作っていたのですが、私の場合は自分のその時の感情や環境にすごく作用されてしまうので、ちょっとダークな曲ばかりできてしまいました。
――今後の展望を教えて下さい。
AKINA:色々な人に刺さるような曲を作りたいです。私の家族のように色々なジャンルの音楽を聴いている人にもアプローチできるような、幅広い音楽性を獲得したい。あと、いつかソロでライブもやってみたいです。
――楽しみにしています。本日はありがとうございました。
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— Spincoaster/スピンコースター (@Spincoaster_2nd) December 28, 2020
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【リリース情報】
AKINA 『Gravity』
Release Date:2020.12.18 (Fri.)
Label:avex entertainment inc.
Tracklist:
1. Gravity
【イベント情報】
『FAKY LIVE #WeAreAllHereTogether』
日時:2021年1月24日(日) OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京・duo MUSIC EXCHANGE
料金:一般 ¥4,800 / Premium ¥8,000 (各1D代別途)
※全席指定
問い合わせ:event@user-support.jp 03-6734-0037(平日10:00~17:00)