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SPECIAL INTERVIEW / タイラダイスケ(FREE THROW) × 星原喜一郎(New Action!)


奇しくも歴史あるロック・パーティの休止が相次ぐシーン。その第一線で活動してきたDJ/オーガナイザーのふたりが語るリアルな現状とは

2017.04.14

BAYCAMP“や”Shimokitazawa SOUND CRUISING“などの大型フェスへも出演し、東京・新宿を軸に全国各地での開催も果たしてきた人気ロックDJパーティ、”FREE THROW“。先述の”Shimokitazawa SOUND CRUISING”のオーガナイザー、DJ Kawanishi率いる”JUKEBOX“。下北沢CLUB QUEにて22年に渡って開催されてきた老舗ロックDJパーティ、”FREAK AFFAIR“。そして東京を拠点とするインディ・バンドと密接に結びつき、浅草花やしきでの開催やコンピCDのリリースなど、様々な取り組みを行ってきたDJ星原喜一郎と遠藤孝行による”New Action!”。……奇しくも昨年の後半頃から時を合わせたかのように、今名前を挙げた都内を拠点とするロックDJパーティの休止、終了が相次いでいる。
ここに筆者も長年関わってきた”Hard To Explain“や、老舗ロック・DJバー・新宿ローリング・ストーン(※新宿Rock’in ROLLING STONE:老舗ロック・バー)の閉店なども加えると、単なる偶然とは思えない、一種の時代の流れのようなものを感じ取ることができるだろう。

随分前から欧米のヒット・チャートからロックは陰を潜めるようになり、つい最近ではDirty ProjectorsのDave Longstrethによる「インディ・ロックは死んだのか?」論争が巻き起こったことも記憶に新しい昨今。そのような状況において、広義の意味でのロック――特に海外のリアル・タイムなロックを中心としたパーティが何故相次いで同じような道を辿るようになってしまったのか。果たしてこの10年ほどの期間、現場では一体何が変わり、何が変わらなかったのか。そんなリアルな話を訊き出すべく、今回は先述の”FREE THROW”からタイラダイスケと、”New Action!”主宰の星原喜一郎にインタビューを敢行。共にDJ、オーガーナイザーであることに加え、東京のインディ・シーンにおける重要拠点、新宿MARZの店長でもあったふたりに、昔を振り返りながらもパーティやDJ文化に対する素直な意見を語ってもらった。

Interview by Takazumi Hosaka
Photo by Kohei Nojima

(L→R:タイラダイスケ星原喜一郎


―今日はタイラさん、星原さんの両名が主催してきたイベント”FREE THROW”、”New Action!”のこれまでを振り返りつつ、それぞれのイベントがスタートした10年ほど前と現在の空気感、状況を比べることで、今後のシーンがどのようになっていくかを占えればと思います。共に長い歴史のあるパーティですが、この度一時休止期間を設けることを発表しました。

タイラ:はい。”FREE THROW”自体は11年くらいなんですけど、最初の一年は毎月やっていなかったので。その後おれが入って、この前で10年経ったっていう感じですね。そして1月の開催をもって、レギュラー開催を一時休止することにしました。

星原:”New Action!”は4月で8周年を迎えるのと同時に、同じく1年ほどの期間休止します。

―共におよそ10年ほどの期間、継続して開催してきた自身のイベントを通して、変わったことと変わらなかったことを教えてもらえますか?

タイラ:単純におれが知らなかっただけかもしれないんですけど、”FREE THROW”を始めた当初は、バンドのライブとDJが一緒になるようなイベントがあんまりなかったと思うんです。たまにあったとしても、バンドの時は盛り上がって、DJの時はみんなそっぽ向いてる、みたいな。
“FREE THROW”も元々はバンドを入れずにDJだけのイベントだったんですけど、おれが新宿MARZで働き始めたっていうのもあって、「MARZでやりたい」って思うようになって。ただ、単純にそれまでの会場と比べるとキャパシティも倍くらいになるので、なんかいい案ないかなぁって神さんと誠人さん(※神啓文&弦先誠人:FREE THROW創設者であり、タイラダイスケと共にレジンデントを務めてきたDJ)と話していく中で、ちょうどその時出てきたばかりだったthe telephonesとかLITE、avengers in sci-fiとかを紹介して、「こういうおもしろいバンドがいるんで、一緒にやってみませんか?」っていう風に提案しました。正直最初は上手くいくかどうかわからなかったんですけど、その後試行錯誤しながらもこの10年くらいずっと続けてこれて。ただ、今となってはそれこそ”New Action!”もあるし、バンドとDJが一緒にやるイベントも珍しくなくなっていますよね。まずはそれが10年前との違いですかね。

—なるほど。星原さんはどうでしょうか?

星原:僕は”New Action!”を始める前まではあまり邦楽のバンドに詳しくなかったんですけど、その前にMARZでタイラさんと一緒に保坂さん(保坂壮彦)がやっていた”soultoday”っていうパーティにレギュラーで出させてもらうようになって。そのパーティがわりと邦楽寄りだったっていうのもあって、そこから徐々に邦楽の知識を得ていきました。たぶん、当時は邦楽のパーティより、洋楽メインのパーティの方が多かったし、人気もあったような気がしますね。それこそ”Hard To Explain”もそうでしょうし。

タイラ:うん、そうだね。「DJで邦楽を流す」っていうことに対し、少しダサいというか、恥ずかしいような雰囲気もあったような気がします。

—今も続いているパーティとして、例えば当時の”Getting Better”や”Club Snoozer“はどのような感じだったのでしょうか?

タイラ:クラスヌ(※”Club Snoozer”:田中宗一郎主催のオールジャンル・クラブ・イベント)はたぶん10年くらい前は代官山UNITとか、恵比寿リキッドルームの上、リキッドロフトとかでやっていて、タナソーさんと田中亮太さんのふたり体制だったと思います。特別な時はバンドも呼んでたけど、基本DJだけでっていう感じで。

星原:”Getting Better”もその時は洋楽邦楽半々くらいだったような記憶がありますね。ただ、当時はエレクトロとかニューレイヴみたいなムーヴメントとか、あとはArctic Monkeysなどのロックスターとかも出てきたばかりだったし、海外インディ・ロックの勢いがすごかったんですよね。そういうのも洋楽メインのパーティが強かった要因なのかなって。

タイラ:あの頃は「みんな知ってるアンセム」みたいなものが、しっかり洋楽のロックであった時代だったからね。

―では、星原さんは10年ほど前のシーンと比べて、どのような変化を感じていますか?

星原:そうですね。自分たちと近いところだけの話しかもしれないですけど、洋楽ロックがメインのパーティがどんどんなくなっていってるのかなって。「ロック・パーティ」っていう定義そのもの自体もすごい難しくなってきていますし。

―現場の空気感みたいなところではどうでしょうか?

タイラ:単純にパーティの雰囲気とか、遊びに来る人がどうこうっていうのは、僕はあんまり時代性みたいなものはないんじゃないかなって思ってて。自分のパーティ周りのことしかわからないんですけど、たくさんお酒飲むヤンチャなやつが多い時期があったりとか、男女の比率とか、そういうのは常に変化し続けていたので、あんまり一概にひっくるめた変化みたいなものは感じていないんです。ただ、音楽の聴き方みたいなものが大きく変化したのは間違いないので、もしかしたらそれに対するDJの変化、オーディエンスの変化っていうのはあるかもしれないですね。

星原:そうですね。

タイラ:さっきキイちゃん(星原)が言ってたように、たぶん10年前のロック・パーティでDJしていた人とか、そこに遊びに行っていた人がいきなりタイムマシーンで現代に来て、今ロック・パーティとされているイベントに行ったら「こんなのロックじゃねえ」っていうものもいっぱいかかってると思うんですよ。そうやってサウンドが変わればノリ方、踊り方も変わっていくし、結果オーディエンスの空気も変わっていく、みたいな。

―最近よく耳にすることだったり、自分自身の体感でもあるのですが、一昔前に比べて、クラブやライブ・ハウスに遊びに来る若い子たちがあまりお酒を飲まなくなっているような気がします。そういった変化についてはいかがでしょう?

タイラ:う〜ん。でもそれも、正直10年前からの変化というよりかは、もっと遡って、バブルくらいからずっと下降し続けているのかもしれないなって思います。昔、それこそ90年代とか2000年代初頭くらいに、DJだけで800人とか入るようなイベントをやっていた先輩にそういう話をしたことがあるんですけど、「昔は単純に景気が良かったっていうのがあるんじゃない?」っていう答えが返ってきて。お金があって、情報源も遊び場も限られていたから、数少ないイベントに人が殺到するし、お酒もバカスカ出る。そういう構図ができていただけなのかもしれないって。

星原:SNSの変化っていうのはちょっと影響があったかもしれないですね。昔はmixiが流行っていて、mixiではアーティスト毎のコミュニティがあったので、告知や集客にそこを利用することができたし、お客さん同士も繋がりやすかったんじゃないかなって思います。今ではそれがTwitterとかInstagram、Facebookなどに移行したけど、mixiに比べると、そういう横の繋がりとかコミュニティを形成するっていう部分にはあまり向いてないのかなって思いますね。

タイラ:でもどうなんですかね。10年前、25歳の僕から見た視線と35歳の今の視線だと、どうしても違いがあり過ぎて、比べるのが難しいような気もしますけどね。

―ロックを軸としたDJイベントの休止などが相次ぐ昨今ですが、そんな中でも自分たちの後を継ぐような、自分たちの不在を埋めてくれるような存在のDJ、パーティってあると思いますか?

星原:それはあると思います。

タイラ:これもすごい遡って視座の大きい話をしてしまうんですけど、僕やキイちゃんなんかはさっき話に出てきた保坂さんにDJに関することを色々と教えてもらったっていう自覚があるんです。おれらの先輩にはその保坂さんがいて、片平(※片平実:”Getting Better”主催/DJ)さんがいて、もっと言うと新宿ローリング・ストーンがあって、さらにロンナイ(※”LONDON NiTE”:音楽評論家/DJの大貫憲章が主催している老舗ロック・イベント)があって……っていう風に、それぞれのDJ/パーティに個性はあるけれど、そこには一貫とした大きい流れのようなものがあるんです。その系譜のどこかに自分たちもいるっていう自覚もある。ただ、ある時を境に、この文脈とは全く異なるところから出てきたロックDJたちが台頭してきたんですね。具体的な名前を挙げると、”TOKYO BOOTLEG”(※2006年発足の邦楽を主軸としたDJ集団)みたいなクルー/パーティとか。僕らからすると彼らは突然変異のように見えたんです。さっき言ったローリング・ストーンとかのDJたちがいる、大きな川とは全く違う所から新しい川が湧き出てきた、みたいな。
彼らのスタイルを見ていると、もしかしたら僕らがやっているようなスタイルって、今の若い子――特に音楽を聴き始めたばかりの子とかにとっては、ちょっとクラシカル過ぎるなかなとも思うんです。もちろん僕らの流れを汲んだ若いDJの子もいるんですけど、母数的には向こうの流れと比べて圧倒的に少ないんじゃないかな。ただ、数が少ない、今の若い子たちにフィットしにくいってなったとしても、今のところ僕らはこのやり方が好きで、楽しくてやっているので、このスタイルを崩すことはないと思いますけど。
……なので、ちょっと話が逸れてしまいましたけど、後続っていう意味では、そういう僕らとは違った文脈を持った子たちの方が多いと思います。

―なるほど。

タイラ:あと、結構前なんですけど、ちょっと驚いたことがあって。そういう子たちがやってるパーティの、「遊びに来る方への注意事項」みたいなところに「ナンパ禁止」って書いてあったんです。「え? マジかよ!?」って(笑)。
別に「ナンパしろ!」って言う気はないですけど、それはホスピタリティを高め過ぎて逆に遊びの幅を狭めてしまっているんじゃないかなって思いますね。……ただ、「タイラはナンパしたことはありません」って書いておいて下さい(笑)。

—ハハハ(笑)。そういうホスピタリティを高め過ぎるっていう部分に通じるところかもしれませんが、近年の音楽も含めたエンターテインメント全般における話しとして、「クールなもの」より、「身近なもの」、「親近感が湧くもの」の方が支持を集める傾向があるように思っていて。そういうことは、DJやパーティを開催していくにあたって感じたことはありますか?

タイラ:例えば、おれらは昔から”FREAK AFFAIR”とかはめちゃくちゃクールなパーティだっていう認識で。っていうのは、やっぱりお客さんに親切過ぎないんですね。めちゃくちゃ最新のものもかかるし、めちゃくちゃ古いものもかかる。そこで「これなんて曲なんだろう?」とか、「これは何ていうアーティストなんだろう?」ってなりながらも、終始カッコイイものばかりがかかり続ける。
そういう、背伸びをして届くか届かないかくらいのところにあるものが一番クール。そこから自分と同じ視線のところまでは下がっても楽しめると思うんですけど、そこからもっと下がり続けると退屈になってしまう。それが僕らは普通だと思っていたんですけど、もしかしたらその価値観が異なってきてるのかもしれない。逆に知ってる曲ばかりかかる方が居心地がよかったり、親近感が湧いて、「楽しいな」って思うのかもしれない。

星原:昔はレコード屋なりパーティなりに行くことで新しい音楽の情報を得ている人が多かったと思うんです。例えば”FREAK AFFAIR”みたいなパーティに行って、DJがかけてる曲のジャケ写をチェックしたり、直接DJに聞いたりとかして情報を得ていた。「Shazam」(※音楽認識アプリ。その場でかかっている曲のデータを取得することができる)もまだなかったですし。でも、今は別にそういうパーティとかに行かなくても、音楽をドンドン掘ろうっていう意識のある人はネットで無限に掘っていけますし。そういうのも関係しているのかもしれないですね。実際どうかはわからないですけど。
ただ、”New Action!”に関してはどちらかというとそういうクールなDJパーティーに、ライブ・イベントにしか来ないようなお客さんを引っ張りたいっていう気持ちがあってスタートさせた部分もあるので、その最初の”入り口”みたいなところも意識しつつ、わかりやすさみたいなものも大事にしていました。

タイラ:まぁその場にいるお客さんがどういう人たちなのか、そのイベントがどういうイベントなのかっていうところで、それぞれの線引きみたいなものが変わってくるからね。”FREE THROW”のお客さんと”Hard To Explain”のお客さんは当然違うし、それぞれの基準に対して、どこを自分が目指すかというか。

―もしもの話になってしまうのですが、自分がクラブやDJイベントに行き初めた時、例えば自分が知ってる曲、自分が求めている曲ばかりがかかっていたら、どんな気持ちになっていたと思いますか?

タイラ:それはもちろん楽しいって思うはずです。ただ、その状態がずっと続いていたら、当然ですけどその先にあるもっと深い楽しみ方には辿り着けなかったんじゃないかなって思いますけどね。自分の好きな曲とか求める曲って、たまにかかるからめちゃくちゃ嬉しいんですよね。あとは知ってる曲がちょっとずつ増えてきたり、でも知らない曲もまたどんどん出てきてっていう、そういうバランス感覚。それがおれにとっては一番大事な部分だったんですよね。おれが遊び初めた頃なんかは、先輩DJはみんなスーパーマンに見えてましたよ(笑)。

—もちろん僕らの近い界隈だけでの話かもしれないのですが、ここ最近休止などが相次いだパーティというのは、往々にしてそのような「ちょっと背伸びする」価値観というか、ホスピタリティに重きを置きすぎないパーティが多いように思います。その因果関係について、何か思うところはありますか?

タイラ:DJイベントだから音楽がど真ん中にあるっていうのは当たり前なんだけど、それと同じくらいその場に集まった人とか、箱というか空間、お酒がウマいとか(笑)、そういう色々な要素が絡み合ってくるものなので、これも一概には言えないんですよね。

―もし新宿MARZが深夜営業を休止しなかったら、”FREE THROW”は続けていたと思いますか?

タイラ:おれは……続けていたと思います。もちろん、MARZで深夜に開催できなくなること以外の悩みがなかったと言えば、それはウソになりますけど。あの、ただ単純に続けていくだけなら簡単なんですよ。それはただの流れ作業というか、ある程度確立されたローテーションをこなしていくだけなので。そうじゃなくて、お客さんにとってはどうかわからないけれど、自分たちにとってクールなもの、自分たちにとって意味のあるものとしてパーティを続けていくっていう形で考えた時に、前に比べると先まで見通せなくなってきたなっていうのは正直あって。だから、MARZで深夜開催できなくなったっていうのは、ある意味背中を押してくれたような感じなんです。「じゃあいい機会だし、MARZのせいにして(笑)、一旦休むか」みたいな感じで。MARZには申し訳ないけど(笑)。

—一方、星原さんが新宿MARZの店長職を退職すること、そしてそれに伴い”New Action!”が休止することも、今回の深夜営業休止の判断とタイミングが被っただけなのでしょうか?

星原:そうですね。元々辞めるタイミングは一年前くらいから考えていました。30歳の節目だし、次何しようかなって考えたときに、ワーホリで海外行ってみようって。ワーホリのビザ申請が30歳までなんです。あと、MARZで働き始めて5年半経ちますが、個人的に一番大きかったのは2〜3年前、SuchmosとかYogee New Waves、LUCKY TAPESなどの若い世代によるシーンが盛り上がっていって、その後彼らはどんどんMARZを巣立ったというか、もっと大きいステージへと駆け上がっていった。そのタイミングで、ある程度MARZの店長っていう職に対して「もういいかな。そろそろ節目かな」っていう思いが芽生えていたんです。でも、誰かに「シーンの興隆みたいなものは、あともう一回くらいは見た方がいいよ」って言われて、その時は何となく「そうなのかなぁ」って思いながら続けていました。ただ、その後に次回の”New Action!”を一緒に共催するTENDOUJIやTempalay、Group2とか、また新しい世代が盛り上がってきている瞬間をちょうど今、見届けることができていて、「時は来たな」って感じました。

―カナダへの留学、そして英語を勉強したいというのはどういう考えから?

星原:例えばオーストラリアのLast Dinosaursが”New Action!”に出演してくれた時に、英語で上手く会話できないのがすごい悔しかったんです。今の時代だったら、インディで活動しているバンドとかアーティストだったら個人で招聘することも可能だと思うので、そのためにもまず英語を勉強したいと思って、今回の決断に至りました。もちろん戻ってきたらまた再開しようと思っています。活動休止前が89回目なので、やっぱり100回はやりたいなっていう漠然とした目標もありますし。

―タイラさんが言っていたような、続けていくことに対する難しさのようなものは感じていましたか?

星原:それはもちろんあります。ただ、”FREE THROW”と大きく違うのは、僕らの”New Action!”は基本的に毎回3バンド呼んでやっていたので、ある程度チャレンジしやすいんですよ。そういう方法論の違いは大きいと思いますね。

—なるほど。では、これも常々感じていることでもあり、実際に様々なところで語られていることだと思うのですが、ネットの発達により、音楽の聴き方が多様化し、それに伴いジャンルやシーン、界隈のようなものがどんどん細分化、村社会化していっていますよね。最初の方にも少し話が出ましたが、噛み砕いて言ってしまうと「誰もが知っているようなアンセム」が生まれ難くなっている現状があると思います。そういった状況に対して、DJ/オーガナイザーとして感じていることはありますか?

タイラ:そういった状況に対して、単純にやり方は変えないとダメですよね。パーティに来てくれる100人中100人が知っているようなアンセムっていうのはまず存在しないと思ったほうがいい。ただ、それは時代の流れでもあるし、インフラが整ったっていうことだからめちゃくちゃいいことだと思っていて。要は昔もものすごく多様な音楽はあったけど、そこにリスナーがなかなかリーチできなかった。でも、今はそれができる。まずはそのことを喜んだほうがいい。そして、その細分化っていう流れは、きっとこれからもどんどん進んでいく。そうやって考えた上で、自分たちがどうやっていくべきかを考えてみると、パーティがメディアみたいなものになればいいんじゃないかって思うんです。もしくはSpotifyのプレイリストのような存在ですかね。”FREE THROW”はどういう価値観で音楽を捉えているか、どういう文脈を提示しているのかっていうのを、もっとダイレクトに伝えるべきだなって。そこに何か感じるものとか引っかかるものがあれば、「毎月一緒に遊びましょう」っていう話で。ただ、そのためにやっていくことっていうのは、基本的には「好きなものをDJでプレイする」っていうことだけなので、昔から変わらないんですけどね。でも、難しくなったっていうのは間違いないですね……。リスナーとしてはめちゃくちゃいい時代になったなって常々思ってるんですけど。

—星原さんはどうでしょうか?

星原:……すごい同意見です(笑)。たぶんそういう時代の流れで、細分化が進んだりしていることによって自分自身の聴く音楽も変わってきたっていう実感もあるんです。でも、だからこそ”New Action!”では、細分化が進んでいる中で、普段だったらなかなか交わらなそうなアーティストやバンドを、敢えて交わらせるっていうことを意識的にやってきたつもりで。特別な回の時に呼ぶゲストDJに関しても、さっきタイラさんが言っていたような直属の流れのDJを軸にしながらも、同時に少し離れたDJにも出演してもらって。

タイラ:わかる。色々なシーンとか界隈をクロスオーバーさせるってことだよね。

星原:そうです。自分自身が色々な界隈のパーティ、バンド、DJから影響を受けてきたっていう自覚があるので、お客さんにもそういう今までで知らなかったモノと出会えるような体験をしてもらえたらなって。

―常日頃から音楽を広く聴いてるDJとかオーガナイーザーの視点から、そういう発想が出てくるのはとても自然で、素晴らしいことだと思います。ただ、今の時代だったら特定の界隈、特定のシーンをまとめたというか、そこに特化したラインナップでイベントを打つ方が、集客も固い。ある意味最適というか、賢い方法なのかなとも思ってしまいます。

タイラ:なるほど。それは確かにライブ・イベントとかにも言える話ですよね。

星原:それは確かにその通りだと思うんですけど、単純に自分たちがやりたいようなパーティを打つってなると、意図せずともそういう様々なジャンル、シーンがクロスオーバーする形になると思うので、そこで集客が苦しいってなっても、それはオーガナイザーである僕らが努力するしかないですよね。確かにある程度固まっているジャンル、界隈をギュッと集めてやった方が集客は上がるかもしれないけど、別にそれは僕らがやる必要はないんじゃないかなって。

タイラ:集客するためにどういうラインナップにしようっていうよりかは、このラインナップを実現/成立させるために、どうやって集客していこうっていう考え方だよね。結局、自分たちが楽しいって思えるようなパーティ以外はやりたくないしね。

—確かにそこでニーズに応えていくっていうのは、全くおもしろみがないというか生産性のない話しですよね。では、本人たちが意図してかしないでかは問わずに、自分たちの後に続くような若いDJ、イベントが増えていくには、延いてはそういったインディペンデントな音楽シーンが活性化していくためには何が必要だと思いますか?

タイラ:どうでしょう……。最前線でやってるDJがめちゃくちゃクールな姿勢をみせていかなきゃダメなんじゃないですかね。まぁ「最前線」っていう言葉の定義が曖昧ですけど(笑)。
やっぱり先輩というか上の世代のDJが、色々な意味でクールだと思うような姿を提示していかなければ、若い子たちは憧れてくれないですよね。そうなってくるとカルチャーも受け継がれないし。

―それこそおふたりがそういう存在になる、そういう役割を担うべきなのかなとも思ってしまうのですが……。

星原:……。

タイラ:……プチ整形をしようかな(笑)。”FREE THROW”再開する頃には誰だかわからないくらいにシュッとした姿に(笑)。

星原:そうですね。僕も英語しか喋らないキャラでいくかもしれないです(笑)。

―なるほど(笑)。では最後に、おふたりの中長期的な今後の展望をお話できる限りで教えて頂けますでしょうか?

タイラ:”FREE THROW”としてはこれまでにコンピレーションCDを3枚出してきたんですけど、もうこのご時世、コンピレーションCDなんていらないんじゃないかって思ったんです。Apple MusicとかSpotifyがあって、無料もしくは安価に莫大な音楽へとアクセスできますし。ただ、そういう状況になったが故に、今度は逆に「この時代でも欲しいと思われる形」で敢えてコンピレーションを出したいっていう思いが湧いてきて。普通に作るだけじゃ誰も欲しがらないと思うので、そこは工夫していかなきゃいけないなって思うんですけど。一番良い形がコンピレーションCDの新作という形なのかもしれないし、違う形なのかもしれないし。さっきの話のように、パーティがメディアのようにならなければいけないという意味で、何かいいアイディアがあるかな? というのは考えています。

星原:4月15日の”New Action!”には共催のTENDOUJIを筆頭に、NOT WONK、ジャバ(JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB)、The Wisely Brothersに出演してもらいます。休止前最後になるので、これまでを振り返るようなラインナップにしようかなと最初は思ったんですけど、やっぱり”New Action!”っていう名前の通り、新しい、今の空気感を出すべきだと思ってこのメンツにしました。1年後、再開する頃はお客さんの入れ替わりもあると思うので、また一からとまでは言わないですけど、新たに作り上げていって、100回目を盛大に開催できたらいいなって思います。あとはワーホリの経験を活かして、海外アーティストも今後呼んでいきたいと思います。


【イベント情報】

“New Action! 8th Anniversary with TENDOUJI”
2017年4月15日(土) 東京都 新宿MARZ
open/start 16:30
adv. ¥2,500(+1D)
door. ¥3,000(+1D)

[LIVE]
TENDOUJI
NOT WONK
JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB
The Wisely Brothers

[DJ]
星原喜一郎
遠藤孝行

[VJ]
ASAKA
OYAMADA

[FOOD]
くいしんぼうシスターズ
しゃくれ食堂

※チケット購入方法
①e+ / ローソンチケット(Lコード:71849)にて発売中
②各アーティスト予約
③New Action!メール予約
ホームページ上のメールフォームまたは、
件名:4/15予約
本文:お名前・枚数をご記入の上、『newaction.info@gmail.com』までメールを送信してください。

TENDOUJI『ニューアクション限定スペシャルシングル』
・4/15(土)当日会場内のみ限定販売。(先着順)
・新曲を2曲収録予定、価格はワンコイン ¥500
・数枚”アタリ盤”が含まれており、アタリ盤にはさらに1曲が追加された全3曲収録。

■New Action! オフィシャル・サイト:http://new-action.daa.jp/


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