映画バクマンの主題歌となるニューシングル「新宝島」が9月30日にリリースされることが本日発表され、明日8/5には初のカップリング&リミックス集「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」とアナログ3作品のリリースと話題となる活動が多くなってきた、サカナクション。
彼らの今後の活動の中でも重要なプロジェクトとなりそうなのが、先月2015年7月3日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された、サカナクションがオーガナイズするパーティー「NIGHT FISHING」だ。このパーティーはアートやカルチャーと音楽がどんどん切り離されていく、今の時代に、アートやカルチャーを交えた音楽の新しい楽しみ方、そして音楽は音楽以外のヒト・モノ・コトから強く影響や力を与えられて成立しているものであることをシーンやリスナーに伝える場所として立ち上がったイベントだ。
サカナクションのメンバーを中心に、日本のデジタルアートの最先端を行く、Rhizomatiks 真鍋大度氏、YUKIやLady Gagaの衣装も手かがけた、アパレルブランドANREALAGEの森永邦彦氏、スタイリストの三田真一氏、写真家の奥山由之氏など、様々なプロフェッショナルがサカナクションの音楽の下にそのクリエイティビティを発揮した。
このイベントは主に4つのチャプターに分かれる。
①EXHIBITION @ KATA
②TALK SHOW @ Time Out Café&Diner
③NIGHT FISHING -Part1- @ Time Out Café&Diner
④NIGHT FISHING -Part2- @ LIQUIDROOM
どれも多くのファンが駆けつけたが、特に②と③はスペースの都合上、ファンにとってプレミアムなモノとなった。しかし、スペシャアプリ等を通じてこの場にい合わせられなかったファンにも配信でイベントの様子が全国に届けられた。
1.EXHIBITION
LIQUIDROOM 2FにあるKATAにて行われた体験型ギャラリーを展開。会場の入り口ではANREALAGEの紫外光で模様が浮かび上がる衣装、及び2015年1月に放送されたNHKスペシャル「NEXT WORLD」第1回放送にてメンバーが着用していた衣装を展示が行われた。プログラミングによって色彩が変化し、様々な表情を見せる。
中では写真家・奥山由之氏とコラボレーションした、インスタレーションが複数ディスプレイされている。
またMacのトラックパッドをクリックするとサンプリングされた音と画面上の映像が同期し、サカナクションのライブでお馴染みのラップトップスタイルのライブを擬似体験できるコーナーが用意された。
後方の巨大なスピーカーはサカナクションのメンバーも愛用する“musikelectronic geithain”のハイエンドモデルだ。musikのスピーカーはSpincoaster Music Barでも使用しているが、低音と音像がとてつもなくしっかりと鳴るので、クラブミュージックやサカナクションの音楽とは非常に相性が良い。購入するには高価なスピーカーではあるが、全く新しいリスニング体験ができるので機会があればぜひ一度味わってみて欲しい。
「写真を纏う。」テーマに写真家・奥山由之氏がNIGHT FISHINGをテーマに撮影した写真を今回発足されたNFデザインチームが服へと落とし込んだ作品の展示と販売も行われた。アーティストグッズと言うよりはデザイン・素材にも拘ったモード系のアパレルブランドのアイテムに近い。今回のNIGHT FISHINGの企画意図が最も強く表現されているポイントであると感じた。
2.TALK SHOW
サカナクションの山口一郎がホストとなり、様々なジャンルで活躍する4名のクリエイター達と過去の作品の裏話や今回のNFの取り組みについてトークセッションが繰り広げられた。
1.山口一郎 (サカナクション) × 森永邦彦 (アンリアレイジ)
2.山口一郎(サカナクション)× 寺園慎一 (NHK スペシャル「NEXT WORLD」プロデューサー)
3.山口一郎 (サカナクション)× 三田真一 (NF クリエイティブディレクター/スタイリスト) and 田中裕介 (NF アートディレクター/映像監督)
作品で表現することが彼らの仕事ではあるのだが、言葉にしなければ届けられないものもたくさんある。NFというプロジェクトの企画趣旨含め、そういったものをうまく補完できるものになったのではないだろうか。また、このトークショーの様子はYouTubeで生配信が行われた。
3.NIGHT FISHING -Part1-
NIGHT FISHING -Part1-はLIQUIDROOM 2FのTime Out Cafeで行われた。抽選に当選した幸運なファンを背負い、カメラ向かってDJを行う様はまさに日本版“BOILER ROOM”と言っていいだろう。
オーガナイザーの山口一郎のDJからスタートディープ・ハウスやミニマル・テクノをベースに「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」や「ナイトフィッシングイズグッド」、「ネイティブダンサー」など自身の楽曲のトラックをミックスし、ファンを沸かせた。
2番手は若干20歳、北海道在住の女性トラックメーカー、Qrionが登場。女性ならではの感性で美しい音とビートを重ねていく。ラストには8/5に発売されるサカナクションのカップリング&リミックス集『懐かしい月は新しい月 ~Coupling&Remix works~』に収録される「さよならはエモーション」のRemixを披露。温かい拍手と歓声が送られる。
3番手は名だたるアーティストから賞賛を浴びる、滋賀県出身のシンガーソングライター世武裕子による弾き語りのライブ。美しいピアノと少しザラついた伸びの良い彼女の独特な歌声が会場の空気を一変させた。サカナクションの楽曲「ユリイカ」のカバーも披露した。山口からは「本当は世武さんとセッションをしたかったが、リハの時間を確保できなかった。次回は世武さんとのコラボも実現させたい」という話も飛び出した。
Part.1の最後はAOKI takamasaとFumitake TamuraのユニットNeutralが登場。ミニマルで民族的なトライバルなサウンドとこの日一番のド太いビートが不思議な高揚感を生み出し、オーディエンスを音に没頭させた。
「お酒のんでる!?今日は本当に自由なんだよ!」「何が起きるか分からない。どんな音楽が流れるか分からない。そんな音楽の楽しみ方も良いのでは?音楽を“浴びる”のではなく、“探す”をテーマにやっています。」と嬉しそうに語る山口の姿が印象的であった。
【出演】
山口一郎(サカナクション) -DJ-
Qrion
世武裕子
Neutral【AOKI takamasa + Fumitake Tamura(Bun)】
また、残念ながらPart.1に参加することができなかったサカナクションのファン約30名がSNS上で声を掛け合い、“Spincoaster Music Bar”にて、ストリーミング配信のライブビューイングを楽しんだ。現地を凌ぐ盛り上がりを見せた。
Photo by yama(@yama83390355yam)
まさに以前に山口一郎が過去にTHE FUTURE TIMESのインタビューで語ったような空間がファンの自発的なアクションによって生み出される形となった。
次回はチケットを手に入れることのできなかったファンや地方のファンに向けてオフィシャルでこのような取り組みができると、「大きな音で音楽を共有する楽しみ」が全国各地で生まれて行くのではないだろうか。
3.NIGHT FISHING -Part2-
第2部はLIQUIDROOMのメインフロアで深夜24時からのスタートとなった。Part.2からはキャパもぐっと広くなったが、もちろんフロアは満員。普段はクラブなどに足を運ばないであろう雰囲気の人たちがこの時間にたくさん集結する風景だけでも少し異様な光景であった。
女性7名男性4名の和太鼓バンドGocoo(ゴクウ)が祭りのオープニングを飾る。和太鼓から繰り出される、力強く、祝祭感溢れるビートは紛れも無いダンスミュージックだ。躍動感のあるパフォーマンスで視覚的にもエンターテイメント性のあるライブだ。
続いてサカナクションの山口一郎が登場。Part.2ではライゾマティクスによるVJが加わる。ステージ全面に映し出させる、幾何学的で立体的な映像が1部のパーティー感とは違い、総合芸術としての空間を創り上げた。セットはPart.1とは大きく変わらず、サカナクションの楽曲もところどころ引用し、飽きさせないステージを展開した。
間髪入れずに、Part.1に引き続き、Qrionが登場。VJを務めるのはQrionやPARKGOLFなどのアートワークを手がけるデザイナーのPATANICA。クールなライゾマティクスのVJから一転、イラストやアニメーションを多用した可愛らしく色彩鮮やかな映像でQrionの音楽の世界観を拡張していく。こちらでも「さよならはエモーション」のRemixを披露し、サカナクションのファンを沸かせた。
そしてライゾマティクスからDaito Manabe + Setsuya Kurotakiのコンビが登場。BPMを一気に上げて攻撃的なDJを展開。BeyonceやPerfumeの楽曲をミックスし、爆音の高速ブレイクビーツをポップに届ける。
レーベルop.discの運営、”CHAOS”や”DOMINO”といったパーティを主催するTaroによるDJ,AOKI takamasa とグラフィックデザイナーMAAによるハイブリッドデザインプロジェクト『A.M.』のステージを経て、最後に登場したのは、Keiichi Ejima + Motoharu Iwadera + Emi Okazakiのサカナクションの3人による限定ユニット、sakanaction NFSC 。
「目が明く藍色」や「INORI」、「DocumentaLy」、「Ame(B)-SAKANATRIBE MIX-」、「ナイトフィッシングイズグッド」「グッドバイ-NEXT WORLD Remix-」などサカナクションのリミックスやインスト楽曲を次々と繋いでいく。サカナクションの楽曲をそのまま流すのではなく、あくまでもクラブ仕様。山口が掲げる「探す音楽」をここでも体現していたように思う。仕込まれたサカナクションの楽曲に気づいた時にオーディエンスは爆発的な盛り上がりを見せる。そして、この時間帯はいわゆるクラブミュージックにおける「ご褒美」の時間だ。各アクトの熱のあるパフォーマンスがこの瞬間に繋がったことは間違いない。
サカナクションにとって初の試みとなる“NIGHT FISING”どの時間・どの場所もここから何かが起きそうな気がする、ワクワクする空間であった。今回は自身のオピニオンを明確に打ち出すために採算度外で行ったことが伺えるが、今後も継続して開催していくのであれば、色々と試行錯誤が必要となってくるだろう。また、今回はサカナクションのファンが殆どを占めたが、ファンションや映像といった音楽以外の層から参加するオーディエンスが増えるとより面白い空間になっていくのではないだろうか。次回は9月の開催を予定しているとのことだが、今後の展開に期待したい。
Text by Kohei Nojima
Photo by Yoshiharu Ota
【リリース情報】
■シングル
2015年9月30日リリース
11th Single
新宝島
豪華初回限定盤(映画「バクマン。」BOX) [2CD+DVD] VIZL-885 ¥3,000(税抜)
初回限定盤[CD+DVD] VIZL-886 ¥1,800(税抜)
通常盤[CD] VICL-37102 ¥1,200(税抜)
■アルバム
2015年8月5日リリース
Coupling&Remix Collection Album「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」
初回限定盤[2CD+Blu-ray] VIZL-813 ¥4,100(税抜)
初回限定盤[2CD+DVD] VIZL-814 ¥3,900(税抜)
通常盤[2CD] VICL-64337~64338 ¥3,200(税抜)
■アナログ
2015年8月5日リリース
kikUUiki(LP2枚組)重量盤
VIJL-60151-2/¥4,000+税
DocumentaLy(LP2枚組)重量盤
VIJL-60153-4/¥4,000+税
sakanaction(LP2枚組)重量盤
VIJL-60155-6/¥4,000+税
【ツアー情報】
「SAKANAQUARIUM2015-2016」
ツアースケジュールはこちら。
(チケット一般発売日)
10月3日~10月27日開催公演:2015年9月13日
11月13日~1月31日開催公演:2015年10月4日
TOTAL INFO. http://sakanaction.jp
チケット代金 前売り¥6,500-