Text by Takazumi Hosaka
Photo by Kanon Inoue
クリエイティブコレクティブ/レーベル〈w.a.u〉所属のR&Bシンガー・reinaによる初のワンマン公演が5月29日(木)に東京・表参道WALL & WALLにて開催された。
昨年リリースの1stアルバム『You Were Wrong』が後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)主宰の音楽賞『APPLE VINEGAR -Music Award-』にノミネートされたほか、今年2月には初のEP『A Million More』を発表。「R&Bオードブル」的なバラエティ富んだ作風から、よりラグジュアリーに洗練された作風を展開する同作は、現行の国内シーンにおいて異彩を放っている。
そんな最新作を携えての本公演。オープニングDJを務めたのはEPにも参加しており、reinaと同郷・福岡発のSSW・Lil Summer。オルタナティブR&B〜アフロビーツまで横断する選曲で、絶妙な温度感でフロアを温めた。
そして定刻を少し過ぎた頃、アーティストビジュアルやEPアートワークを想起させる白い幕で覆われたステージに、同じく白で統一したバンドメンバーと、黒いドレスに身を包んだreinaが登場する。バンドメンバーにはもちろんお馴染み〈w.a.u〉の面々──EP全曲をプロデュースしたKota Matsukawa(Ba.)を筆頭に、Ryuju Tanoue(Dr.)、Kazuho Otsuka(Gt.)、Koki Furukawa(Key.)、Gai Seki(Per.)、Reo Anzai(Manipulator)が参加。一曲目は高揚感をジワジワと煽るイントロで幕を開ける“Dogs”。音源での平熱感漂うサウンドとは打って変わり、静かなる熱を湛えたバンドの演奏と、妖艶なラップ調のフロウが交差する。
「1st EP『A Million More』のリリースパーティに皆さまようこそお越し下さいました」「今回、20曲ほどのR&Bを用意しましたので、皆さまゆっくりお楽しみください」というMCの通り、タメの効いたリズムで《Don’t look for too much in me(私にあまり期待しないで)》と歌う“dlftm”、パーカッシブなビートがリゾート感を演出する“Luxury”とBPM抑えめのナンバーを続けて披露。
「are you guys ready?」との一声にオーディエンスも歓声で応えた“Do The Thing”では、Kazuho Otsukaの熱量溢れるギターソロでも会場を沸かせ、バンドメンバー紹介を挟んでの“DEC18”では跳ねるリズムと軽快なカッティングギターでフロアを踊らせた。同曲はKota Matsukawaによるエレクトロニック/ダンスミュージックプロジェクト、voquoteによる楽曲だが、そのダンサブルなサウンドはreinaの新作のムードともリンクしている。
オープニングDJも担当したLil Summerとマイクを交わす“Games”、音源よりもBPMを落とした“Silk Sheets”で夢見心地のスロージャムを展開、トラップソウル的なビートが印象的な“HEAL”もバンド編成でより有機的なソウル〜R&Bナンバーとして新たな表情をみせた。
「次からはカバーなども織り交ぜてやっていこうと思います」とのMCから、後半戦へ突入。ロンドン出身のSSW・Smphaの2ndアルバム『Lahai』収録曲“Only”のカバーを披露する。FKA twigsやRosalía作品を多く手がけるEl Guinchoが共同プロデュースで参加した打ち込み原曲のビートをシンプルなバンドアレンジで再現。流麗なファルセットと微かなビブラートを効かせたreinaの歌声の魅力が全面に出されていた。
続いてvoquote名義での楽曲であり、VivaOlaと共に参加している“U THINK”、そしてVivaOla名義の“BOLD”を立て続けに2人で歌唱。これまでもお互いのライブで披露されてきただけに、バンドの演奏も合わせて息もぴったり。4つ打ちの“U THINK”、UKドリル調の“BOLD”とソリッドなパフォーマンスで会場を沸かせた。
2曲目のカバーとして歌われたのはインドにルーツを持つNY拠点のSSW・Raveenaの初期曲“Sweet Time”。シンプルな楽曲をストレートにカバーすることで、こちらもよりreinaの歌声、楽曲のメロディの良さを再認識させてくれた。
1stアルバム『You Were Wrong』からの人気曲“my apologiesss”、“How Cute”を披露した後、「賢い皆さまならわかっていると思いますが、アンコールはないので、最後全力で楽しんでください」とのMCからラストパートへ。EPよりダンサブルなビートと華やかなストリングが牽引する“Good to me”、ピアノのみで歌い上げた静謐なバラード“Can I”で緩急を付けた展開を経て、残るは2曲のみであることが告げられる。
1stアルバムのリリパにて最後を飾った“Drafts”はより一層のエモーショナルを湛え、ラストはEPのタイトル曲“A Million More”。《Now I’m running through life without you(今、あなたなしで人生を駆け抜けている)》と、喪失と再スタートを想起させる内容でありながら、それでもこの先100万回歌い続ける、曲を書き続ける、と綴られた、優雅な中にも力強さも感じさせる一曲で自身初のワンマンライブに幕を下ろした。
曲間に言葉少ないながらにも何度も感謝を告げ、目の前にいるオーディエンスとコミュニケーションを取ろうとする姿が印象的であったこの日のステージ。その誠実な姿勢は、信頼できる仲間たちと着実に歩みを進める活動スタイルにも表れている。昨年のライブと比べより一層の洗練と進化が感じられたreinaと〈w.a.u〉の面々は、果たしてこの先どこまで飛躍していくのだろうか。今後もその活動を追いかけたい。
2. Dogs
3. dlftm
4. Luxury
5. Do The Thing
6. DEC18 (voquote)
7. Games ft. Lil Summer
8. Silk Sheets
9. HEAL
10. Only (Sampha cover)
11. U THINK with VivaOla (voquote)
12. BOLD (VivaOla)
13. Sweet Time (Raveena cover)
14. my apologiesss
15. How Cute
16. Good to me
17. Can I
18. Drafts
19. A Million More
【イベント情報】
『reina 1st One-man Live A Million More』
日時:2024年5月29日(木) OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京・表参道 WALL&WALL
出演:
reina
[GUEST]
VivaOla
Lil Summer
■reina:X(Twitter) / Instagram