jeanが1stアルバム『We, A Fool and Wise.』を本日5月21日(水)にリリースした。
jeanはもともとXY GENEとしてソロ活動をしていたJEANが、Sota Nakamuraと劇的な出会いを果たしたことにより、2023年に結成されたユニットだ。ソウル、R&B、ヒップホップの心地良さやエレクトロニックのダンサブルな要素、インディポップに通ずる浮遊感、トライバルの高揚感といったものを融合したグルーヴを漂わせており、早耳リスナーの支持を集めている。
この度完成したアルバムは、台湾のアーティスト・Mandarkや、英米を拠点とする2人組・Otomodatchi、さらにJEANの地元の友人だというラッパーのOnly Uなど、多様なゲストを迎えての充実作となった。
同作のリリースに先駆け、5月11日(日)には東京・Spincoaster Music Bar Shinjukuにて先行試聴会 &トークショーが開催。この日はアルバムを全曲聴きながら、jeanのふたりによる解説が行われた。ミュージックバーの心地よい音響で大音量の楽曲が流れるたび、自然とお客さんの身体が揺れる。Michael Jackson好きをきっかけに意気投合したふたりの出会いから、どのようにして今回のすばらしいアルバムが完成したのかという具体的なエピソードに至るまで、jeanの軽快なトークをお届けしよう。
Interview & Text Tsuyachan
Michael Jackson、The Beatls、Jimi Hendrix── ふたりのルーツと共通点
――おふたりのユニット結成のことから訊きたいんですけど、JEANさんがクラブイベントでギターを弾いていたSotaさんを見て、声をかけたんですよね?
JEAN:そうです。クラブでギター弾いてるのを見て、めっちゃカッコいいなって思って。それで話してみたら、Michael Jacksonが好きだっていうので盛り上がりました。自分はMichaelのダンスが好きだったので、Sotaの好きなポイントとはまた違ってたんですけど。
――Michael Jacksonって、もちろん偉大すぎるポップスターですが、とはいえ世代的にはやっぱり上の世代じゃないですか。当時、周りでMichaelのファンっていましたか?
JEAN:いないです。それで、自分はMichaelの企画展みたいなイベントにたくさん行って、会場でMichael好きな小学生とかに話しかけたりして(笑)。
Sota:自分の周りにもほとんどいなかったですね。だから、最初に会ってMichaelについて話したときが一番盛り上がったよね? 「こういうところが好き!」ってたくさん話した。
JEAN:それで意気投合したんですけど、そこから一緒に遊んだり曲作るようになったりしてからは、むしろThe Beatlesの話をしてました。

――ふたりを繋いでいるのは、Michael JacksonとThe Beatlesなんですね。JEANさんは以前ソロでも活動されてたじゃないですか。その時に、いつか誰かとユニットやグループを組むことは考えていましたか?
JEAN:全く考えてなかったです。もちろん、ビートメイカーとかプロデューサーとは今までも一緒に曲を作ってきて、誰かと共にやるっていうことは経験がありましたけど、ユニットを組むとかは全然。
Sota:うん、僕も考えてなかったですね。
――そのふたりがいまこうやって一緒に活動して、アルバムまででき上がったわけだからすごいですね。先ほどMichaelとThe Beatlsの話がありましたが、jeanの音楽性をどのようなものにしていこうという議論はあったんですか?
JEAN:自分がSotaと一緒にやりたいと思ったのは、音楽に関して好きな曲やポイントが似てるからなんですよね。ヴァイブスが近い。わりと同じところに反応するし、そういう意味では、どんな音楽を作っていくかは初めから一致してました。自分もビートは作るんですけど、いまjeanでSotaがビートを作ってるのはそういう理由もあります。好みが近いから、Sotaの作るビートがめっちゃ好きなんですよ。すごく合うなって思う。
――それだけヴァイブスが合うのはすごいですね。ふたりはキャラクター的にはどういう違いがあるんですか? お互いから見た性格を知りたいです。
JEAN:自分は結構深く考えてしまうんですよ。考え過ぎなときもあるくらい。
Sota:この前、右脳か左脳かみたいな診断したよね。そしたら自分がインプットもアウトプットも右脳 × 右脳で。
JEAN:自分は右脳 × 左脳だったんです。つまり、インプットは右脳なんだけど、人に説明するときはわりと論理的に左脳になる。Sotaはマジで全部感覚なので。
Sota:そうなんですよ。曲作るときも「これいいかも」っていう感じで全部作ってるから、説明してどうこうの話じゃないですね。

JEAN:だからSotaと話すときは、くどくど説明するよりも、「これはドラえもんみたいな感じで」って言ったりして「オッケーわかった」みたいな(笑)。そうそう、Sotaは大好きなものが3つあって、それがMichaelとジミヘン(Jimi Hendrix)と『ドラえもん』なんですね(笑)。
――なるほど(笑)。Michael Jackson、The Beatls、Jimi Hendrixといったレジェンドの話は出ましたが、最近のアーティストでふたりがフィールしている人たちはいますか?
JEAN:めっちゃいますね。うーん、何だろう、そこもやっぱりふたりとも結構好きなポイントが合ってるんですよ。最近のだと……SAULT(ソー)とか。

「今を楽しもうよ」というメッセージ
――アルバムについても伺っていきたいんですが、タイトルの『We,A Fool and Wise』にはどのような意味が込められているのでしょうか。
JEAN:「Fool」(愚か、バカ)と「Wise」(賢い、知恵のある)ってどっちも自分たちの中にあるなって思ってて。それに、見方によってはどっちにも見えたりする。
――最初からコンセプトを決めてアルバムとして作っていったんですか? それともシングルをリリースする中で、アルバムリリースの形が見えてきた感じ?
Sota:どちらかというと、1曲ずつ作っていく中でアルバムを徐々に考えていった感じですね。
――ここからは1曲ずつ聴きながら伺っていきましょうか。まず“Brand New”ですね。いきなり日本語、韓国語、英語のトリリンガル曲で始まります。サウンドもギターやボイスサンプル、パーカッションなどたくさんの音が鳴っていますが、すごく綺麗にまとまっています。これはどうやって作ったのでしょうか。
Sota:この曲は、東京の街のコンクリートジャングルに入っていく感じをイメージしてビートを作ったんですよ。「今から始まるぞ」っていう感じで。
――だからなのか、ワクワクする曲ですよね。その点では、アルバムの1曲目としてぴったり。2曲目の“Carousel”も、そのワクワク感を引き継ぎつつ、アルバムの序章に弾みをつけていく曲です。タイトルは「カルーセル(=メリーゴーラウンドや回転木馬)」と書いて「ケロセル」と読むそうで。
Sota:そうです。ちょっとした駄洒落のような感じですね。カルーセルとケロセルをかけてます。
――リリックでは《It’s like merry go round 君と二人ならどこまでもいけるさ》という感じでメリーゴーラウンドにも言及しつつ、おたまじゃくしと蛙の話になっていて。だから「ケロセル」だと。
JEAN:そうですそうです。
――やっぱりjeanはビートがおもしろい。この曲は、随所で鳴る浮遊するようなシンセがまさにメリーゴーラウンド的で、いい味を出しています。そのまま3曲目は“You make me happy!!!”で、アルバムとしてはこのあたりからボルテージが上がってきます。
JEAN:クラブのDJでこういうノリを聴いて、やってみたいなって思ったんですよ。この曲は韓国に行ったときにMVを自分で撮って。編集は友だちのOnly Uがやってくれました。あと《平和ボケして、あなたのために祈る》っていうリリックがあるんですけど。僕らは結構「今を楽しもうよ」というメッセージを伝えていることが多いんです。「平和ボケ」ってネガティブな意味で使うことが多いじゃないですか。でも、敢えて「今をちゃんと楽しむ」ってニュアンスを込めたいなと思って。そういった曲です。
MandarkやOnly U、Otomodatchiらとのコラボレーション
――4曲目の“DON’T BLINK”は台湾のインディシーンで注目のMandarkとの共作ですね。
JEAN:自分がソロをやってたときに知り合って、ずっと一緒に曲作ろうって話はあったんです。Sweet John(甜約翰)やI Mean Usといったバンドでも活動しているんですけど、Sotaも僕も彼女のソロプロジェクトが大好きで。
――Mandarkって色んなサウンドをやってますよね。
Sota:そうなんです。特にソロでは何でもありというか、幅が広い。
――Mandarkはこの曲で日本語詞を歌ってますが、これはご自身で?
JEAN:いや、これは僕が書いて教えてあげたのを歌ってます。
――タイトルの「DON’T BLINK」って、「まばたきしないで」という意味なんですよね。先ほどの「今を楽しもう」というメッセージがここでも繋がっています。
JEAN:そうそう、《光は消えてく》って歌ってます。

――そして5曲目は“Fucked up”。これは、ビートがとんでもないなと思いました。攻撃的ですごい、緩急もすごい、数曲分のアイデアを1曲に詰め込んだ感じで、とにかくすごい(笑)。Sota Nakamuraが天才だということを知らしめる曲だと思います。
Sota:ありがとうございます(笑)。始まり方にすごく凝りました。夜中に作って、3時間くらいでスルッとでき上がったんですよ。朝方にはもう完成していました。
――いや、始まり方もすごいですけど、終わり方もすごい。びっくりしました。この曲はタイトル、リリックからも怒りを感じます。
JEAN:上手くいかないことが重なった時期で。不満をぶちまけた曲です。
Sota:その不満を受け止めて、曲に仕上げました。
――こんなに複雑なのに、勢いのある曲に仕上がっているのがおもしろいですね。ユニークといえば、次の“Eyes on me”も、jeanにはなかなかないテンションに仕上がっています。
JEAN:これはもう、今までやってないようなテンションを入れようと思ってOnly Uと作りました。彼は小さい頃からの友だちで、かなりのマブなんですよ。お互いデビューしてからも、ちょくちょく一緒にやってて。この曲はOnly Uにとっても今までにないチャレンジの曲になったと思います。あと、ベースとしてOTSUKA Manamiさんにも参加してもらっていて。それもあって、なかなかレアな組み合わせの曲になってます。

――そうなんですよね。テンションの上げ方はいつものOnly U印ですけど、特に終盤のノリが今までにないように感じました。おふたりは普段、ジャパニーズヒップホップも聴かれるんですか?
JEAN:そんなに熱心に追っているわけではないけど、友だちが曲を出したら絶対チェックしますね。
――7曲目は“ENN”です。JyodanとAmiideのユニット・Otomodatchiが客演に入っています。これは「ENN」と書いて「縁」という読むんですよね?
JEAN:そうです。以前、CIRRRCLEってグループで活動されていたおふたりなんですけど、ひょんなことから繋がって。普段はLA(Jyodan)とロンドン(Amiide)にいるふたりがちょうど日本にいるっていうタイミングで、一緒にスタジオ入ってセッションしました。

――だから《広げたい輪を永遠》で、「ENN(縁)」なんですね。韻が踏まれている。
JEAN:韻とかって言われるとちょっと恥ずかしいですね(笑)。そういった、繋がりについて歌った曲です。

「バンドセットでもやっていけたら」―― 今後の展望
――次の“DOPE CAT”はアルバムのリード曲で。これは中盤の間奏がとても楽しくて夢がある曲だなと思いました。
JEAN:jeanの曲って、なんだかんだ陰:陽が7:3、もしくは6:4くらいだと思うんですよ。どちらかというとリリックも含めて陰の成分が多いと思う。でも、この曲は完全に陽で、だからリード曲に選びました(笑)。僕が飼ってる猫のルーシーから着想を得た曲です。
――アルバムも終盤に入ってきますが、“Talk to me”はインド風の雰囲気です。この曲もビートがめちゃくちゃカッコいい。音数は多くないんだけど組み立て方が独創的で、ベースが響きまくってます。ベーシストはロックバンド・鋭児の菅原寛人さんですね。
JEAN:リリックでは“girl”って女の子に話してるようにも書いてるんだけど、全部自分に語りかけてる曲です。ビートがカッコいいですよね。
Sota:頑張りました。
—―そして最後は“Coming soon…”。ミディアムテンポの曲で、歌い上げる1曲ですね。これは最後の曲を想定して作ったのでしょうか。
Sota:完全にアルバムの最後に入れることを想定していましたね。
――終盤にひと捻りあって。沁みる系の曲でも、普通には終わらせないぞというjeanの強い意思を感じました(笑)。最後までjeanらしい曲です。
Sota:ありがとうございます(笑)。
――デジタル音源はここで終わりですが、CDではあともう1曲収録されています。
JEAN:ボーナストラックの“Won’t let you down”は、2人でセッションしてできたデモをSotaが何にもとらわれず、最も自由な形にアレンジして、表現した楽曲だと思います。
Sota:他の楽曲は外側に向けてのエネルギーも意識していたのに対して、この曲は自分自身の内面と向き合い、深く掘り下げる感じで制作しました。
JEAN:リリックでは《期待には沿わないけど下げない》っていうフレーズが気に入ってます。僕たちの表現は誰の期待通りにもいかないと思いますが、タイトルにもあるようにがっかりはさせないよ、という気持ちで書いています。
――あっという間のアルバム試聴会でした。MVも観ながら聴いて、じっくり堪能したことで作品の魅力がさらにわかった気がします。今後、ライブではこれらの楽曲をどのようにパフォーマンスしていく予定ですか?
JEAN:一旦はラップトップにギター演奏+ボーカルパフォーマンスですが、今度、渋谷・TOKIO TOKYOでのライブではコーラスも入れます。今後は、少しずつバンドセットでもやっていけたらいいですね。
――もともとふたりのルーツにThe Beatlsがあるからか、曲にもところどころロックの要素やThe Beatles的ミクスチャーの精神が感じられるし、バンドセットはとても合いそうですね。ちなみに、JEANさんはこのプロジェクトではダンスはされないんですか?
JEAN:jeanではやらなくていいかなと思ってやってなかったんですけど、「ダンスを見たい」と言ってもらえることも多くて(笑)。なので、今後はもう少し取り入れていってもいいかなと考えています。

【リリース情報】
jean 『We, A Fool and Wise.』
Release Date:2025.05.21 (Wed.)
Label:NihyakuWIND
Tracklist:
1. Brand new
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Backing vocals:YAYA 子
Mastered by Moe Kazama (AMONE Inc.)
2. Carousel
Written by JEAN and Sota Nakamura Produced by Sota Nakamura
3. You make me happy!!!
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Backing vocals:YAYA 子
4. DON’T BLINK feat Mandark
Written by JEAN, Mandark and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Cowrite:Ryota Nishiyama
5. Fucked up
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Cowrite:Ryota Nishiyama
6. Eyes on me feat. Only U
Written by JEAN, Only U and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Bass:OTSUKA Manami
7. ENN feat Otomodatchi
Written by JEAN, Jyodan, Amiide and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
8. DOPE CAT
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Cowrite:Jyodan
9. Talk to me
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Bass:Hiroto Sugawara
Backing vocals:YAYA子, asu
10. Coming soon…
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
Cowrite:Ryota Nishiyama
11. WON’T LET YOU DOWN.*
Written by JEAN and Sota Nakamura
Produced by Sota Nakamura
*Bonus Track(CD Only)
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