【REPORT】

Fazerdaze - Japan Tour 2 Days -

恋に落ちたその子は太陽だった――NZから吹き渡るポップ・マジック、Fazerdazeの初来日をレポート!

すっかり秋も深まり、街の色も落ち着きを見せるこの頃ですが、今年の夏はいかがお過ごしでしたか。アルバム『Morningside』とともにあった日々は、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだかのようで、とても素敵でしたね。ニュージーランド出身のSSW、Amelia Murray(アメリア・マレー)によるプロジェクト・Fazerdaze(フェイザーデイズ)は、陽射しを駆け上がってしまえるほどの高揚を味わわせてくれただけでなく、夏独特の感傷にひたる私たちに寄り添ってもくれました。

いつかの夏に突然現れる/たようなひとりの女の子がベッドルームで始めた音楽は、髪を揺らし耳をくすぐる風となり、今や世界を吹きめぐっています。オーストラリアやヨーロッパでのツアーを経て、ついに果たされた待望の来日公演。それに至るまでには、日本盤のリリースを担った〈Tugboat Records〉の招致への熱意や尽力があり、幾人ものファンの呼応がありました。それから、実現までにたくさんの想いが込められたライブだけあって、当日の会場を満たしていたのは幸福と期待のほかにありません。

本レポートは、10月11日@Tsutaya O-nest w/MONO NO AWARE、12日@Circus Tokyo w/TAWINGS、両公演のその生き生きとした模様をお届けします。

Text by hikrrr
Photo by Shoichi Okatake (Tugboat Records)
※写真はすべて2日目のものです。


MONO NO AWARE

青い光に包まれる中、演奏を始めたバンドは、まず静かな表情を見せてゆきます。そこには夜更けの森があるようで。その入り口に立つ私たちは、この先、あたたかで大きな光と出会うことになんとなく気づいていたのでしょう。フィナーレまで続くその道には、ガーベラ*が咲いていました。

「自分たちの音楽と合うか心配なところはあったんですが、話してみたら気さくなFazerdazeでした」その言葉通り、展開に未知数な部分はありましたが、今振り返ってみればおもしろい化学反応があったように思います。自然体なNZのバンドにとって、彼らのトリッキーな動きは絶好のスパイスでした。ベースがファンキーに唸ったかと思いきや、次の曲では霧に包まれるかのようにフェードアウトし、そこから畳み掛けるリズム。サイケな照明と持ち前のポップさが、よく似合っていました。

*花言葉「希望」


Fazerdaze (Day 1)

20:30きっかりにスタートした日本での初ライブ。いくぶんハスキーな歌声をゆったりとしたテンポに乗せ、挨拶代わりに演奏された「Half-Figured」に、オーディエンスは一瞬にして引き込まれたようです。アルバム音源ではリヴァーブがかっており、どことなくぼんやり聴こえてきますが、ライブにおけるAmeliaの声からは芯をしっかりと感じられます。また、終盤まで一貫して、とにかくコーラスが素晴らしい。個人的に、良質のメロディにはそのほかのサウンドも引き出す力があるような気がしているのですが、コーラス・ラインにはその広がりが余すところなく表現されており、とても感動しました。

1曲目を終えて彼女は、はにかみながら「こんにちは」「こんばんは」と。それを温かく迎える会場。感謝するようにギターを鳴らし、次の曲へ。それは未だリリースのない新曲「Break Up Walls」。ガレージ・ロックらしく暴れる真っ赤なムスタングと、青とミント・グリーンの光に包まれ、詞をそっと乗せてゆく彼女の佇まいとの対照が印象に残っています。ドラムの楽しげに弾むリズムと、ギターの軽快なバッキングがこの楽曲の特徴と言えるでしょう。
続けてまた聴き覚えのない、打ち込みのビートと穏やかで丸みを帯びたシンセが聴こえてきます。未発表曲「Heavenly Sweet」が日本のファンにどう映るのか、メンバーと目を合わせ空気を確認しながら、着実に私たちを魅了してくれました。肩を揺らして堂々と歌っている彼女の表情に不安の色は窺えませんが、歌い上げたときのホッとしたような笑顔。その純朴さには、誰もが惚れ惚れとしてしまったはずです。

フロアから歓声が聞こえる中、静かに唸り始めたのは「Misread」。ドラムは目を光らせながら、グランジを匂わすギターの歪みとともに鳴りを潜め、シンプルなパターンを続けます。そうして曲の盛り上がりに差し掛かると、彼女は「どう?」と誘い寄せるかのように笑いかけて。ずるいですよね。

続く「Friends」では、ベースとマラカスのさりげない音に乗せて一語一語を届けるように心を込めて歌う姿が、サビで一変します。それまでの情緒をつんざくようにハイトーン・ボイスが響き渡り、激しさを増すギターとドラムが場のテンションを見事にかっさらっていきました。曲が鳴り終えるより先に、前のめりで沸き起こった拍手こそ、その証拠です。
そしてこの直後、私たちはFazerdazeの真髄を知ることとなりました。というのも、O-nestが一気にカーム・ダウンしたのです。Ameliaの淵源が”ベッドルーム・プロジェクト”なだけあり、あれは本当に絶妙でした。また、控えめな照明はやわらかな月の光を思わせ、こうした趣に心奪われた人はきっと少なくないはず。そうして「Bedroom Talks」で夜を明かし、そのまま美しい朝の気配に身を委ねるように「Jennifer」へ、なめらかに流れてゆきます。ディレイのかかったシンセの音が象徴的なこの楽曲。それはまさに、いい夢から醒めて頬を伝う涙の粒のようで、実際に目頭が熱くなったことは言うまでもありません。

また、彼女の魅力のひとつに、ピッチの低いパートではハスキーな声質、ミドルな音域ではシルキー・ボイスと、歌声の感触を変えられるという点が挙げられると思います。とりわけ「Reel」においては、(後者の)絹のように艶のあるボーカルと穏やかなギターが鼓膜をなでるようでした。あれほどまでに優しいカッティングは耳にしたことがありません。
ここで感極まったAmeliaは溢れる想いをなんとかこらえ、こうつぶやきます――「日本に来られて夢が叶った」。この瞬間に立ち会えたこと、同じ時間を共有できていることを、喜ばぬ者がいたでしょうか。その空間は、この上なく温かかった。ただ、こうしたやり取りのあと、再び演奏を始める彼女は完全にスイッチが入っています。しかしながら、目元だけはずっと変わらず微笑んでいた「Take It Slow」でした。

「Shoulders」で印象的だったのは、一音一音そっと置くように弾かれるアルペジオ。彼女へまっすぐ向けられる瞳もあれば、スローなテンポに揺れる肩もいて。そこからボルテージを上昇させてゆく「Last To Sleep」では、終盤、髪を振り乱し掻き鳴らされるギターに、こちらの体の反応も抑え切れないほど。
そのままの勢いで「Lucky Girl」へ突入。爆発のような大歓声が上がり、ニヤッと笑うAmelia。太陽のエネルギーを放ちながら駆け抜けてゆきます。その眩しさに、誰もが目を細め、天使を視ました。また、比較的アコースティックな音が前面に出ている音源とは違い、ライブではビッグマフ*を踏んだサウンドが轟いた訳ですから、その衝撃もあって場内の興奮は最高潮に達します。とめどない幸福感が私たちを覆い尽くしていました。

そしてAmeliaをひとり残し、ステージから一時的に去るメンバー。彼女の声は、コーラスなしでも倍音のように響いてなんとも心地よいですね。ループによって重なってゆく素朴なギター・フレーズを聴いていて浮かんだのは、庭に出て、朝の光を浴びるような情景でした。ちなみに、この「Somethink」からは、宅録の様子も伺い知ることができたのではないでしょうか。

最後のMCでは、Ameliaは涙ぐんだ声で「ありがとうございます Thank you so much」と何度も感謝を伝えてくれ、戻ってきたメンバーとともに「Little Uneasy」を。その歌詞にあるような”若さゆえの不安”は、”可能性”の裏返しであり、美しいアンサンブルからも新たな日々の始まりを感じることができました。彼女が伝えようとするメッセージを素直に受け取ったとき、同時に、楽曲そのもののクオリティの高さが判り、今後の作品、ライブがよりいっそう楽しみになった初来日公演・1日目でした。

*ファズ・エフェクターの一種


TAWINGS

箱から溢れんばかりのガレージ・サウンドにはくらくらきますね。Lo-FiでDIYで、隙間のある音の感じがFazerdazeの対バン相手として最高じゃないですか。それに、彼女らの無気力なアティチュードは、一体なぜあんなにも私たちを惹き付けるのでしょう。悪巧みに誘われたら乗ってしまいそうなほど、そのムードは魅惑的。そうした気怠いテンポの楽曲に揺れていると、ついつい気取りたくなってしまいます。

「Dad Cry」など、BPMの速い曲についつい目が行きがちですが、まったく媚びのないディープな攻めのスタイルにこそ、このバンドの真価が発揮されているのではないかとも思います。また、Cony Planktonが見せつけた、かなり鋭いギター・プレイも刺激的でした。現行のサウンド感を保ちつつ、今後、研ぎ澄ませて行って欲しいというのが個人的な願望です。


Fazerdaze (Day 2)

セットリストは前日と変わらずでしたが、2日目には程よくリラックスした様子のAmeliaと顔を合わせることができました。その笑顔で、引っ切りなしだった日本からのラブ・コールへ応えてくれ、Circus Tokyoの雰囲気もすっかり和やか。しかし彼女が目を瞑り、魂を込めるように「Half-Figured」を歌い始めると、皆たちまち聴き入ります。開演までに詰まっていた幸福と期待は、瞬く間にときめきへと姿を変えたのです。そして客席の一人ひとりと目を合わせるように視線を投げ、歌い終えると、彼女は「私たちはFazerdazeです」と日本語でにこやかに挨拶していました。

1日目には初耳だった「Break Up Walls」を身体が覚えていたこともあり、この日は彼女の細かな表情の変化にも目を向けることができました。高音に震う唇の可憐さや、しっとり歌うとき伏せられる眼差し、そして時折搔き上げられる髪とその耳元――清澄さが感じ取れます。演奏を終え、喝采を浴びると彼女は嬉しそうに笑って。そうした姿は(普遍的に)純粋に可愛らしいものですが、Ameliaの場合は拍手をもらう度にいちいち照れるので、その破壊力と言ったら……。みんな恋に落ちてました、2日とも。
それから、次の曲で想起されたとあるサウンド・スケープは、さらなる魅力の発見だと思います。それは(まさに「Heavenly Sweet」というタイトル通り)、海辺から眺めたような静穏な波の風景。艶やかなギターの音と、のどかな曲調とが相まって描き出されたのでした。
そして「Misread」における、ソリッドでたくましいドラムとその緩急はやはり刺激的で、見事に場を持ち上げてくれました。

その後は、ギターの渦がオーディエンスの心身をさらい、曲の進行とともにその規模を増して行った「Friends」。その様は、2日間を通して振り返ってみても圧巻で、”渦中の人”、Amelia自身もそれを感じていたようです。なぜなら、彼女だけでなく、Fazerdazeのメンバー全員がニコニコして楽しそうで、「ここにいるみんなと友だちになれそう、みんな友だちみたい!」と言ってくれたから。

アルバム『Morningside』をひとつの作品として(各楽曲の流れを汲みながら)聴いたとき、個人的に一番グッときたのは、今思えば「Bedroom Talks」だったかもしれません。音源から感じ取ることのできる、ウェットな雰囲気とリラックスした心地良さに加え、舞台上にあったのは、頬が熱を帯びるほどに眩いワン・シーンでした。前日同様、まるで時が止まったかのようにチル・アウトしていると、リフレインするギターの音色が漂い始めます。それは現に「Jennifer」のものであるにもかかわらず、そのあまりの違和感のなさと、2曲の交わりによって甘美性は増すばかり。そして、雫もしくは真珠のきらめきを思わすシンセのメロディをきっかけに、楽曲はスイッチします。スカイブルーに際立つ白い雲をバックに朝の海岸線をゆっくりと進むひとりの若者は、そこに横たわる清廉さと雄大さにちっぽけな悩みごとを忘れて――。つまり、いわゆるひとつの”晴れ”の疑似体験です。希望的な気分が顔を覗かせる歌詞も綺麗で。
ちなみに、以前Fazerdazeを当メディアにて紹介した際、「クリーンな音を鳴らすギターは、(中略)まさに郷愁の世界だと思います」と述べましたが、実際に生で聴いてみても、彼女のギターの響きにはそうしたノスタルジーを垣間見ることが確かにできました。

心地よい歌いまわしのうねり、ところどころ編まれるように螺旋を描くリリック、そしてトーンは段々と上がってゆく。「Reel」は喩えるなら”つむじ風”です。ステージ上の彼女は目を伏せてしっとりと歌っていましたが、それを聴いている私はずっと、心がふわっと舞う感じがしていました。
続く「Take It Slow」では、歌いながら歯を見せて笑ったかと思うと、口をキュッとして遠くを見やる。そのギャップにやられてしまう。私たちは、このチャーミングな女の子に何度恋したらよいのでしょうね……。

ところで、「Shoulders」に余計なものは何ひとつないな、と感じました。シンプルで低く響くドラム・パッドとベース、パワーコードが美声と調和していて、言うなればオーガニックな魅力が滲み出ています。これはきっと、ニュージーランドの大自然が育んだテクスチュアなのでしょう。大きな雲でできたベッドにダイブしたかのようで、とても幸せな気持ちになりました。
その余韻としても「Last To Sleep」は素晴らしく、ここでもセットリストの良さに気付かされます。少し調べてみると、ここのところのツアーでも同様の流れでプレイしているようなので、これまでのライブで試行錯誤してきた成果なのだなと予想できます。曲の終盤には、最強にカッコいいベースの低音が身体の芯を震わせてくれました。

まだ熱の冷めやらぬ内にカウントが打たれ、”あの”イントロが弾けます(すぐさま沸き返る会場も、さすが)。MVを観て、音源を聴いて、楽しむ。そこに収まり切らない感動が、やはりライブにはあります。清らかでその上豪快な気流がカラダ中を駆け巡り、細胞すべてが息を吹き返すような感覚、とでも言うのでしょうか。あの空気はなかなか味わえません、それこそ山の頂にでもたどり着かないと。しかしそれが、私たちの季節を彩ってくれた「Lucky Girl」の魔法。たとえそれが儚いものだとしても、ひと夏の恋なんだと、無理にでも胸の奥へぎゅっと押し込む、そのセンチメンタルもいいかもしれませんね。季節が巡ればきっと。

Fazerdazeにとって初めてのJapan Tourも、いよいよ終わりを迎える頃。Ameliaがひとりになって歌う「Somethink」は、とても澄んだイメージを抱かせます。森の奥深くで、そよ風が湖面をなでるような。私は、それが頭上を吹き抜けてゆくのを視ました。そして清純さは時に、何ものにも代えがたい恍惚を紡ぎ出すのだと知りました。
再びメンバー全員で演奏される、ラストの曲「Little Uneasy」。彼女は囁くように目を瞑り、そこから徐々に声の厚みを増してゆきます。きっと、ありったけの想いを込めたのでしょう。ギターの残響の中で別れを惜しむように微笑する、寂しげな目元が窺えました。また、あの笑顔が見たいですね。ぜひ近いうちに。


【Fazerdazeセットリスト (Day 1 & 2)】

1. Half-Figured
2. Break Up Walls
3. Heavenly Sweet
4. Misread
5. Friends
6. Bedroom Talks
7. Jennifer
8. Reel
9. Take It Slow
10. Shoulders
11. Last To Sleep
12. Lucky Girl
13. Somethink
14. Little Uneasy


【リリース情報】

Fazerdaze 『Morningside』
Release Date:2017.06.02 (Wed.)
Label:Tugboat Records
cat.No.:TUGR-032
Tracklist:
1. Last To Sleep
2. Lucky Girl
3. Misread
4. Little Uneasy
5. Jennifer
6. Take It Slow
7. Shoulders
8. Friends
9. Half-Figured
10. Bedroom Talks

※解説:田中亮太(Mikiki)、対訳:多屋澄礼(Twee Grrrls Club / Sois Pop Magazine)

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