Text by Jun Fukunaga
Charli xcxの最新アルバム『Brat and it’s completely different but also still brat』のリリースパーティが、N²主催のミックスジャンルな次世代型パーティ『きゅんです』とのコラボで11月20日(水)に東京・渋谷CIRCUS Tokyoにて開催された。
『Brat and it’s completely different but also still brat』は、6月にリリースされたCharli xcxの6thアルバム『Brat』の楽曲を革新的に再構築したリミックスアルバムだ。
Billie EillishやAriana Grandeといった超大物ポップスター、Troye Sivan、Addison Raeら若手ポップスター、Caroline Polachek、Lorde、Tinasheといった人気アーティストに加え、The 1975、Julian Casablancas、Bon Iverといったロックスターまで豪華かつ幅広い面々が参加。さらに、オリジナル『Brat』のプロデューサーのひとりでもあるA. G. Cookも名を連ねている。
アルバムタイトルにある「Brat」とは、Charli xcxにとって「ありのままの自分」「飾らない自分」「やりたいことをやる」「好きを諦めない」というポジティブな価値観の象徴であり、固定概念や周囲の意見に左右されず、自分を愛し、自分らしく生きることを表現する言葉。そのコンセプトに基づき制作されたオリジナルアルバム『Brat』は、リリース後その熱気が瞬く間に広がり、音楽シーンの枠を超えてファッションシーンまでをも席巻。やがてポップカルチャー全体を巻き込んだ「Brat Summer」と呼ばれる社会現象へと発展し、記録的ヒット作となった。
さらに、「kamala IS brat(カマラはbratだ)」という、Charli xcx自身のSNS投稿をきっかけにその影響力は政治の世界にまで届き、次期米・大統領候補だったカマラ・ハリス副大統領の選挙キャンペーンにもフィーチャーされたことも記憶に新しい。そんな中、満を持してリリースされたのが『Brat and it’s completely different but also still brat』である。
kamala IS brat
— Charli (@charli_xcx) July 22, 2024
イベント当日は『Brat』の精神に共感するCharli xcxファンが多数来場。「固定概念にとらわれず、ありのままの自分でいること」を体現するアーティストやDJたちによるパフォーマンスにより、会場は終始熱気に包まれた。
また、会場内には『Brat』を象徴する黄緑色のアルバムカラーをフィーチャーした垂れ幕がそこかしこに設置され、フォトスポットとして活用するファンも。さらに、Charli xcxにインスパイアされた「Bratファッション」に身を包んだファンの姿も目立つなど、会場内はBratなムードで満たされていた。
18:00の会場とともにスタートしたDJタイムでは、トップバッターの2人組DJユニット666が『Brat』ライクなエレクトロから、近年ハイパーポップの文脈とも結びついているトレンドのトランスなどを織り交ぜたアップテンポな選曲でフロアを温めた。2番手のnasthugは、グローバルな人気DJ配信プラットフォーム『Boiler Room』や『Ultra Japan 2025』のメインステージにも出演する実力派DJぶりを遺憾なく発揮。ラガでバウンシーかつベーシーなハウス、バイレファンキを軸にしながらも、Charli xcx楽曲“Talk Talk (feat. Troye Sivan)”を絶妙のタイミングで織り交ぜる選曲で会場を盛り上げた。
ライブタイムではカタカナの「brat」ロゴ入り眼帯を左目に付けたAisho Nakajimaが最初に登場。どこか不気味で危険なムードを醸し出すジャージークラブ曲“Gangbang”や、派手なシンセが印象的なエレクトロ“LUNA”を披露した。
続くsheidAは、Tade Dustとの(この日は不在)ドラムベース調の新曲“Rid3 or Di3”やスムースなボーカルが光る“RESTART”で会場を大いに沸かせた。
MANONは「今日、遊びに来てるみんなはギャルちゃんですよね? ということはまだまだ踊れるよね?」と会場を煽る挑戦的なMCを披露し、ユーロビート系ハイパーポップ曲“GALCHAN MODE”や、この日のためにリミックスしたという「Brat」な“成長痛”で観客の耳目を釘付けにした。
ライブタイムの最後には、Aisho NakajimaとMANON、そして『きゅんです』オーガナイザーのN²の3名でCharli xcx“365”の東京リミックスバージョンを披露。会場は大盛況のライブタイムを締めくくるに相応しい特別な一曲に聴きいった。
ライブを終えたN²はそのままDJブースに残り、「もっと踊れる人、“きゅん”って言って!」と観客に呼びかけてDJをスタート。“Club classic”や“360”といったCharli xcx楽曲をプレイする中、“Von Dutch”のMVでの彼女の姿を彷彿とさせるMia Scandalsと、「Brat」の文字を顔にペインティングしたSUNNYBUNNYがダンサーとして登場。アグレッシヴに踊るパフォーマンスで観客の目を奪った。
「Charli xcxっぽい人」として登場したGyozaは、時に淫らに、コミカルに、あるいは艶やかに表情や仕草を変えながらCharli xcx楽曲“I Think About It All the Time”と“Everything is romantic”をコンセプトにしたドラァグショーを披露し、会場の心を鷲掴みにした。
DJタイム後半では、CYBERHACKSYSTEMがディーヴァハウス・クラシックなCrystal Waters“Gypsy Woman (She’s Homeless)”ネタのベースミュージックやkZm“DOSHABURI feat. JUMADIBA”など、ベーシーなブレイクビーツ中心の選曲でフロアを沸かせた。
最後のDJとして登場したOKAMOTO REIJIは、サプライズでアメリカを拠点にAriana GrandeやLE SSERAFIM、XGなどのソングライター/プロデューサーとして活躍するSHINTARO YASUDAとのB2Bを披露。
“Von Dutch”や話題のROSÉ & Bruno Mars“APT.”をはじめ、ダブステップからスピードガラージ、K-POPヒットまでを縦横無尽に織り交ぜた多彩なDJプレイで観客を魅了した。また、セットの終盤では“365”の東京リミックスバージョンが再度披露されるなど、最後まで会場の熱気は冷めることがなかった。
『Brat』収録曲には公式リミックス以外にも、多数のBratたちによるブートリミックスが存在する。本イベントではそうしたBratなマインドを反映したリミックスが多数プレイされ、リミックスアルバムのリリースを祝うコンテキストに沿ったBratなアクションとして花を添えた。
なお、『Brat』の記録的な成功は、音楽シーン最高峰の賞であるグラミー賞にも大きな影響を与えている。来年2月に開催される第67回グラミー賞において、Charli xcxはBeyoncéの11部門に次ぐ9部門にノミネート。特に音楽ファンの注目を集める主要部門「年間最優秀レコード」「年間最優秀アルバム」へのノミネートは、彼女のキャリアにおいても、またBratムーブメント全体にとっても大きな意味を持つ。今回のイベントに足を運んだBratのひとりとしては、その最高峰の栄誉にまでこのムーブメントが到達することに大きな期待を感じずにはいられない。
【リリース情報】
Charli xcx 『Brat and it’s completely different but also still brat』
Release Date:2024.10.11 (Fri.)
Label:Atlantic Records
【イベント情報】
『Charli xcx – Brat and it’s completely kyundesu but also still brat – Release Party』
日時:2024年11月20日(水)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京・渋谷CIRCUS TOKYO
出演:
[LIVE]
MANON
sheidA
Aisho Nakajima
[DJ]
N²
OKAMOTO REIJI (OKAMOTO’S)
CYBERHACKSYSTEM
nasthug
666
[Performers]
Gyoza
Mia Scandals
Sunny Bunny
[VJ]
JACKSON kaki
協賛:TENGA
■公演詳細
■きゅんです:Instagram