NEW MUSIC

Novelist / Street Politician


英・キャメロン首相のスピーチをサンプリング!若きグライムMCからの一撃!

2016.01.10

サウス・ロンドン出身の若き(18歳)グライムMC、Novelist(ノヴェリスト)が新曲「Street Politician」を公開。

Novelist自身と、プロデューサーとしてはYoung Thug「Old English」で名を広めたニュー・ヨークのハウス・ミュージック・トリオのCubic ZirconiaのメンバーでもあるNick Hookの2人の共作のトラックは、イントロとフックで2011年にロンドンで大規模な暴動が起きた際の英・デヴィッド・キャメロン首相(=保守党)の演説(*1)をサンプリングしている。

以前からTwitterでもキャメロン首相への不満を顕にしていた(*3)彼だが、昨年末のイギリスによるシリアへの空爆参加(*2)から2週ほど経ったタイミングで、この曲の前兆ともいえよう「David Cameron Riddim」なるインスト(「インスト・グライム」とも)楽曲を公開していた。
昨年の “BBC Sound of” のリストにもノミネートされていた彼の特徴といえば、Mumdanceとタッグを組んだ「Take Time」(嫁入りランドによるカバーも話題に)や「1 Sec」に象徴されるような先鋭的かつ奇抜なビート乗せて間髪入れずにワードを詰め込むスタイル。今回の「Street Politician」では、マイナー・トーンの暗いシンセに加えパトカーのサイレン音や銃弾の音が入っていることもあり、いつになくトラックに緊張感が張りつめているが、Novelist自身のラップもこれまでの彼の曲の中でも最もパワーを感じる鋭いものに。

[Intro: デヴィッド・キャメロン(サンプル)]
We will not allow a culture of fear to exist on our streets
-我々はストリートにおける「恐怖の文化」の存在を許さない

[Verse: Novelist]
Yo, always thinking fuck these feds
They don’t give a damn about the mandem

-「いつもファックあの警官ども!」って感じだよ
 やつらは俺らのことを気にかけちゃいない

*1 2011年のロンドン暴動は黒人男性が警官に射殺されたことに端を発していた。
*2 また昨年末のイギリスによるシリアへの空爆参加の際にはロンドンでも大規模なデモが起こり、SkeptaやStormzyらもTwitterなどを通して明確に反対の意を示していた

サウス・ロンドンに位置し、「イギリスで最も治安の悪い街」にも認定されてしまったルイシャムで育った彼は、現在最もストリートの現状を認識し、若者や貧困に苦しむ者たちを代弁しているアーティストの一人なのかもしれない。昨年秋に公開した「Endz」(イギリスのスラングで “Hometown”や”Neighborhood”の意味)のMVではルイシャムの若者の日常風景が切り取られている(楽曲のテーマが似ており、Novelistと師弟関係にもありそうなSkeptaの「It Ain’t Safe」のMVからの影響とも言われている)。

The music I make is like punk in that it’s rebellious: fuck the feds, fuck the government, big up the mandem. That’s where the energy comes from.
-俺の作る音楽は反抗的なパンクみたいなもんだ。ファック警察、ファック政府、ヤツら(仲間)に感謝と敬意を。俺のエネルギーはそこから来るんだ。(2015年のThe Guardianのインタビュー

シリアへの空爆参加時はあらゆるアーティストが声をあげたものの、ここ最近のUKでは比較的ロックよりもグライムやヒップホップ界隈からの方が社会の動きへのリアクションは作品自体においても活発で顕著なようだ。

*3 Novelistの過去のツイートを抜粋

-デヴィッド・キャメロンは役立たず。

-もしあなたが保守党に投票したなら、あなたはストリートで起きていることについてわかっていない。

-サウス・ロンドンは伝説的な場所。ここには語られるべきストーリーがある。

-保守党支持者にはノーを。

(Text By Daichi Yamamoto)


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