スチャダラパーとSTUTSによるスペシャルジョイントライブ『スチャダラパー & STUTS Presents “オーサカ That’s the Joint”』が、6月30日(日)に大阪城野外音楽堂で開催された。昨年7月に同じ大阪城野音にて2組がライブイベントで共演したことから、昨年12月に東京のLIQUIDROOM『スチャダラパー & STUTS Presents “That’s the Joint”』が開催されて、今回のライブにも繋がった。
開場中はANI選曲による70年代から80年代の歌謡曲が流れて、いよいよ開演5時30分。まずはSTUTSがひとりで舞台に現れて、“Renaissance Beat”をプレイする中、スチャのバックバンドであるザ・コストパフォーマンス(笹沼位吉[Ba.]、松田浩二[Key.]、三星章紘[Dr. / Per.]、KASHIF[Gt.])と武嶋聡(Sax., Fl.) & 佐瀬悠輔(Tr.)、そしてトークボックス奏者・LUVRAWも登場。最後にスチャのANI、Bose、SHINCO & サポートMC・ロボ宙も登場して、“ドゥビドゥWhat?”へ。東京でのライブが5曲目から2組がジョイントしたことを考えると、頭からジョイントを観れたことに大興奮したし、これだけで2組が何をしようとしてるかも伝わってきた。
「今日は、こんな感じで色んなものが混じり合って、“That’s the Joint”していきますんで!」(Bose)──そんな言葉通り、STUTSがMPCのパッドを叩いて鳴らすビートから“CHECK THE WORD”へいき、続いて観客との楽曲タイトルコール & レスポンスから“ライツカメラアクション”へ。これまた丁寧にBoseが「こんな感じで最後までジョイントします! 意図はわかってもらえましたか? スチャの中にSTUTS君が混じり合ったり、STUTS君の中にスチャが混じり合ったりします!」と改めて説明して、ANIも「シームレスで続いていきますんで!」と継ぎ目の無いことを強調する。思わずBoseが「それ(シームレス)を言いたかったのね!」と笑っていたが、いつものそんなスチャの緩やかな空感はそのままであるものの、スチャの3人と約20歳離れている1989年生まれのSTUTSが混じり合うのは本当に新鮮である。
「STUTS君が生まれてすぐくらいの曲」という紹介から“B-BOYブンガク”へ。「更に次の曲も古い曲やります」と言って、“アフター ドゥービー ヌーン”へいく前に、Boseがスチャ、STUTS共にそれぞれのライブが初めての観客を挙手で確認して、「いい混ざりだと思います!」と喜ぶ。その上で「STUTS君を初めての人は、何をやっているかわからないまま帰ることになるから!」とSTUTSが操るMPCについての説明をすることに。実際にSTUTSがMPCで実演していきながら、ドラムの音をサンプリングして各パッドに入れ込んでいるように、スチャの楽曲もバラバラにしてサンプリングして入れ込んでいることを、Boseが本当に丁寧に話していく。機材の機能を詳しく知らなくても、凄い音楽が鳴らされていることで充分に満足できるが、こうやって丁寧に説明してもらえると、より音を楽しむことができる。誰ひとり観客を置いてけぼりにしないBoseの何気ない配慮にグッときてしまう。
5曲いい感じに混じり合ったところで、スチャ一同は一旦去り、ここでSTUTSと普段の自身のバンドでも一緒にやっている武嶋と佐瀬と共に、自らがラップする“One”へ。ターンテーブルの中から舞台前方へ飛び出していくSTUTSの姿はエモーショナルであったし、またMPCのもとに戻り、MPCを叩きながらラップする姿もエモーショナルだった。トラックメイカーであり、プロデューサーであり、色んなラッパーと曲を作り、たまに自身も歌うことを説明して、インストナンバーも作ったりしますという流れから“Come To Me”へ。リズミカルなビートの上に、佐瀬のトランペットが鳴り響く。STUTSのライブが初めての観客にも思いきり魅力が伝わったのではなかろうか。
再びスチャ一同が登場して、STUTSの楽曲“Pretenders”からスチャの楽曲“LET IT FLOW AGAIN”へとマッシュアップのように繋いでいく。STUTSは共に楽曲を制作したC.O.S.A.とYo-Seaについて説明しながら、歌詞の中に《LET IT FLOW》という言葉が出てくるとも話す。Boseは「20年超えてのマッシュアップ」と返したが、20年前と20年後の楽曲による自然なマッシュアップには感動すら憶えたし、2組が自然に惹かれ合ったのもわかった気がした。
ここでヒューマンビートボックス奏者のAFRAも加わり、まずはヒューマンビートボックスがどんなものかを披露してから、“4ch FUNK”へ。AFRAのヒューマンビートとSTUTSのMPCビートが互いに鳴らし合っていく感じは、どこかバトル感もあり、ただただ魅入る。BoseとANI曰く昭和の加藤茶と西城秀樹によるドラム対決が令和に甦ったとのことだが、さっきから20歳や20年など数字の差を書いているように、まさしく昭和と令和のジョイントだと新たに感激してしまう。そして、AFRAのビートかSTUTSのビートかわからなくなるくらいに凄まじいビートのジョイントが聴けた“トリプルショット”から、Boseが自身とSTUTSとANIとAFRAを簡単に言うとインテリとワイルドのような感じで大きく分けて、前者と後者を比較していく“後者”へ。今回は全てに置けて丁寧という言葉がぴったり当てはまるが、敢えてライバル関係図式を作り、観客も二手に分けてコール & レスポンスをすることで、一段と楽曲のニュアンスが届いてくる。
ここで一旦STUTSが去り、スチャのターンへ。Boseの何気ない「今 何時?」という問いからANIが「そうね だいたいね」と返したりと、いくらでもふたりのやり取りは観れるのだが、そんな冗談めいたやり取りから、「(観客は)時間を忘れたくて来ているんですよ」(ANI)と「現実がしんどすぎてね」(Bose)のやり取りは芯を食った発言で胸を打たれた。もちろん本人たちがそんなつもりで言っていないのもわかるし、続く“ジャンクリートコングル”、“MORE FUN-KEY-WORD”でも感じたが、自然に何気なく重厚さや硬派さを醸し出しているのはシンプルに格好良かった。
STUTSが戻ってきて、それまでの流れを汲み“FUN-KEY-WORD”へ。曲終わり、STUTSは約20年前の学生時代にヒップホップ雑誌を読んでいたり、ヒップホップ好きな友だちがいなかったので“B-BOYブンガク”を教室のベランダでひとりMDから聴いていたことを明かす。Boseは「我々もみうらじゅん好きな人いなかった。お客さんもそうだから。変わった人、尖った人ばかりだから」と話す。すかさずANIが「普通だよね?! 気さくだよね?!」と返していたが、確かに自分も含め普通のつもり気さくなつもりでも、結果、変わっていたり尖っていたりして、音楽に救われた人ばかりが集まっていたのではと思えた。そんな中、STUTSによる「ファンキーというか元気な人!」という紹介でラッパーのKMCがファンキーに元気に登場! KMCの「STUTSにはいつもデカいステージに連れて来てもらえて、偉大なスチャダラパーともやれて、ラッパー冥利に尽きます!」というひとことは、ファンキーや元気という言葉だけではおさまらない誠実で真摯な感謝の姿勢を感じられた。STUTSとKMCによる楽曲“Rock The Bells”からスチャの楽曲“リンネリンネリンネ”のマッシュアップは、この日一番の爆発を魅せていたように想う。
渾身の力でやりきったKMC……。ここで再びスチャ一同が去り、そのまま“STORM”で前のめりにまくし立てていく。特に《思い知らせてやる これがHIPHOPだ》というリリックには、KMCが伝えたかったこと全てが込められている気がした。嵐の如く現れて去っていくKMCの後は、STUTSよりもまだ若い90年代後半生まれの鈴木真海子(chelmico)が可愛らしく小走りで登場。涼やかな曲をいうフリから冬の曲である“0℃の日曜”へ。鈴木がクールなラップを聴かせていると、気持ち良い風が空気を読んだかのように吹き、本当に涼やかな気分になる。そんな季節の楽曲からSTUTSが「色々な季節があるということで、季節は変わっていくという歌を歌います」と“Seasons Pass”へ繋げていく。チルアウトと言うと簡単な表現すぎるが、まさに心が落ち着いていくナンバー。
ここでスチャ一同が再び登場して、STUTSがMPCを叩きながら歌う姿を弾き語りならぬ叩きがたりと絶妙な言い表しをするBose。STUTSも全寮制の中高に通っていて、携帯持ち込みは禁止だったが、楽器持ち込みはOKで、MPCを持ち込んでいた話をする。自分でビートを作り始めたときにスチャのアルバムを聴いていたので、SHINCOの影響を受けているとも話す。スチャは人生観への影響もあったと凄く熱く一生懸命語るSTUTSに、Boseは「おもしろい子が育って良かった……」と漏らし、こちらもしみじみとしてしまう……。そこからMPCでスチャの楽曲をばらばらにしてサンプリングで組み直したという“サマージャム’95”を一緒に披露して、STUTSと鈴木による楽曲“Summer Situation”へ移行していく。その移行の流れが誠にニクくて、ANIの《こんな曲 流れたりすんだ》というリリックから入っていき、最後は“サマージャム’95”の《夏のせい》というリリックで〆られた。このジョイントのテーマでもあるが約20年の時を経て時空を超えて、2組がジョイントしていく光景は本当に堪らない……。
いよいよ終盤だが、KASHIFのギターリフから心のベストテン第一位なこんな曲“今夜はブギー・バック”へ。どっしとクールに低音に歌う鈴木のパートも、STUTSのビートにSHINCOが合わせていくのも、全てが印象的で素敵なジョイントという言葉しか思い浮かばない……。1994年の“今夜はブギー・バック”から30年を迎えて、今年2024年に新しく作られた“ぶぎ・ばく・べいびー”へ。曲終わり、Boseが「満足度高い! コスパも良い!」と言っていたが、この日の観客全員は心からそう想えたはずだ。「去年ここで一緒にやって、曲を一緒に作ろうかとなって。その曲をやって終わりでいいですか?!』というBoseの言葉から、今年5月にリ
リースされたばかりの“Pointless 5(feat. PUNPEE)”へ。その前にBoseが「スチャダラパー & STUTS & あなた」と言っていたのが、心に深く残っている。楽曲を作るのは、ライブをするのは、当たり前の如く演者なわけだが、それを聴いている我々が存在することで、音楽が出来上がると言ってもらえたようにも勝手ながら感じた。そんないいことばかりだった素晴らしい本編が終わる。
「STUTS君の曲にウチらが加わってやるというね。みんな大好きな曲なんで、そこに邪魔しないように入ります!」──Boseがこう言って、アンコールへ。松たか子主演ドラマのエンディングナンバーであり、様々なラッパーが参加して、松自身が歌ったことでも話題になったナンバー“Presence”。曲終わりにSTUTSも「新しいバージョンみたいで!」と嬉しそうに感想を話し、「後乗せで自分がラップした後に、松さんが歌うのいいよね~!」(Bose)、「感無量だよね!」(ANI)とスチャ御両人も充足感に満ち足りていた。真のラストナンバーは出演者全員が集まって、30年前にリリースされたパーティーチューン“GET UP AND DANCE”! 当時、ロボ宙といった同世代の仲間たちとマイクリレーしたナンバーを、そのロボ宙だけでなく、当時はまだ幼かったり、まだ生まれていなかったりという若者たちとマイクリレーしていく光景は感慨深さしかなかった……。《宴もたけなわ おあとがよろしく》というリリックもあったが、まさしく、そうとしか言えないラストナンバー。最後は全員で「That’s the Joint!」と掛け声をかけて記念撮影! なかなかにぎやかなジョイントであったが、まだまだこれからも観たくなるジョイントでもあった。
Text by 鈴木淳史
Photo by ピー山 @@pyama_17
【イベント情報】
『スチャダラパー & STUTS Presents “オーサカ That’s the Joint”』
日時:2024年6月30日(日) OPEN 16:30 / START 17:30
会場:大阪城音楽堂
出演:
スチャダラパー & STUTS
主催:GREENS
後援:FM802
企画・制作:Melody fair Inc. / GREENS
協力:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
INFO:GREENS 06-6882-1224(平日12:00-18:00)