米メンフィス出身で、ダンキンドーナツをこよなく愛する21歳のシンガー・ソングライター、Julien Bakerが名門〈Matador〉へ移籍したというニュースが飛び込んできました。これを機に、2015年のデビュー・アルバム『Sprained Ankle』(超名盤!)が3月17日に再発、さらに未発表の新曲「Funeral Pyre」の7インチ盤も同日リリースされるようです。もう各種ストリーミングサービスでは聴けますね。
すでにライヴでは幾度となく披露されてきたナンバーですが、スタジオ録音となるとまた格別。1本のギターと声だけで場の空気を一変させてしまう、彼女の途方もない才能とメロディ・センスにはただただ感動を覚えます。よりエモーショナルで親密なライヴ・バージョンも素晴らしいのでぜひ。唐突に訪れる幕切れにもハッとさせられます。
Julienがもともと在籍していた〈6131 Records〉は、アンダーグラウンドのハードコアやパンク、メタルなどを数多く世に送り出してきたカリフォルニアのインディペンデント・レーベル。愛用しているパッチ貼りまくりのデニム・ジャケットや、両腕に彫られたタトゥーからも窺えましたが、間違いなく彼女のルーツはハードコア/パンクですよね。”Best Tracks Of 2016″でもピックアップした、Touché Amoréとのコラボ曲もそれを裏付けるものでした。
ブラック・ミュージックの聖地で生まれ、ハードコア/パンクのレーベルに在籍し、Elliott Smithみたいに(実際、トリビュート盤にも参加しています)生々しい痛みを歌うアンバランス感も魅力だったんですが、〈Matador〉とサインしたことで、ますます世界中にファンを増やすことでしょう。何しろ、Cat PowerやKurt Vile、あるいはCar Seat Headrestらとレーベルメイトになるのだからヤバすぎです。
(Text by Kohei Ueno)