INTERVIEW

WONK

「1曲毎に何か引っかかる部分をもたせることができた」――1stアルバム『Sphere』がLPでリリースされたWONK。そのバックグラウンドとは

個人的な話だが、「最近、なんかいい音楽あった?」と友人に聞かれると、真っ先に「WONK」と答えている。

自らを”エクスペリメンタル・ソウル・バンド”と称する4人組の彼らは、9月にデビュー・アルバム『Sphere』をリリースしたばかり。ジャズやネオ・ソウル、J Dilla以降のビートを独自の解釈で落とし込んだ音楽性はRobert GlasperやHIATUS KAIYOTEといった『Jazz The New Chapter』やFlying Lotus率いる〈Brainfeeder〉といった最先端のブラック・ミュージックと見事に共振し、石若駿やKANDYTOWNのDianをはじめとした多くのゲストを迎えることで作品をより多彩なものにしている。
また、個人的にWONKの真骨頂はやはりライブにあると思う。セッションを基調とした圧倒的な演奏技術とグルーヴ、毎回変わるバンド編成で大胆と緻密の間を自在に行き来する様子を見れば、各メディアが”世界水準のサウンド”と絶賛するのも頷ける。

待望の1stアルバム『Sphere』も各方面のメディアから高く評価され、メディアやイベントへの露出も増えてきた彼ら。さらにこの度その1stアルバムがLP化するなど、まだまだWONKの勢いは衰えることを知らないようだ。

今回のインタビューでは、彼らのミュージシャンとしての豊富なバックグラウンド、作品や活動スタンスへの職人のように徹底したこだわりを語ってくれた。リスナー、業界関係者、バンドマンなど、音楽に携わるたくさんの人に読んでもらいたい。

Interview by Hiroki Toyama
Photo by Takazumi Hosaka

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L→R:Hikaru ARATA(Dr)Kento NAGATSUKA(Vo)Kan INOUE(Ba)Ayatake EZAKI(Key)


―まず、バンドが結成した経緯から教えてもらえますか?

ARATA:元々別々のコミュニティで活動していたメンバーに、僕が声をかけてスタートしたっていう感じですね。Kan(INOUE)さんは大学で同じサークルの先輩だったので声かけさせてもらって。キーボードのAyatakeは別の大学のジャズ研で一緒にやってて。NAGATSUKAさんはまた全然違うところのバンドで知り合って。それぞれに声をかけて集まってもらったって感じで。

EZAKI:KanさんとNAGATSUKAさんは先輩で、僕とARATAは同い年って感じで。基本的にはサークルとかの繋がりで全員このバンドを結成する前に知り合ってます。

―ちなみにバンドを組むにあたって、ジャズやヒップホップを土台にした音楽をやるってことは予め決まっていたのでしょうか?

ARATA:僕がそういうのをやりたいと思って誘ったんで、一応最初からそういう感じでしたね。

―WONKの楽曲は複雑なリズムやキメが多く、とても高度な技術を求められる曲が多いと思います。ミュージシャンとしてのそれぞれのバックグラウンドはどこにあるのでしょうか?

ARATA:それぞれメンバーのバックグラウンドっていう部分は結構違うと思います。僕は一応ジャズも聴いてたけど、同時にヒップホップも小さい頃からずっと聴いていて。

―ヒップホップやジャズにどうやって辿り着くまでのエピソードというのは?

ARATA:『マペット放送局』っていうTV番組があって、アメリカのセサミストリートみたいなやつなんですけど。小さい頃からその番組がめっちゃ好きで観てたんです。僕が小学生ぐらいの頃かな、確か日本語版が放送されてたんですよ。で、その番組を観てたらPrinceとかTony Bennett(トニー・ベネット)とかがゲストで出てきて。小学生ながらに「ヤベーなコイツら」って思って(笑)。
その中でも一番感動したのがCoolio(クーリオ)っていうラッパーが出てきた回で、その人のCDを小学3年生ぐらいの時に買ってからヒップホップはちょいちょい聴くようになりました。一番最初の音楽的な体験はその番組が大きかったかもしれないですね。

―その番組を日本の小学生が観てるっていうのは結構レアだったんじゃないでしょうか。

ARATA:観てる人いなかったですねー。そもそも『マペット放送局』を知ってる同世代の人に出会ったことがないです(笑)。

EZAKI:本当、親御さんの影響は大きいと思う。

ARATA:そうっすね。たぶん親の影響がでかかったすね。

—そこからドラムを始めることになった経緯というのは?

ARATA:ドラムはまたそれとは全然違うキッカケなんです。何かで新宿とか行った時に、Steve Gaddの映像をたまたま観て「あ、ドラムやろう」って思って始めたのが最初で。Steve Gadd(スティーヴ・ガッド)や彼が在籍していたStuff、あとChick Corea(チック・コリア)とか、そういうフュージョン系の人たちを聴きながらジャズを学んでったっていう感じですね、ドラムに関しては。それが11〜12歳くらいの頃ですかね。

—早熟ですね(笑)。

EZAKI:普通、小学生がSteve Gaddハマんないですよね(笑)。

—J Dillaみたいなよれたビートとかを生ドラムに置き換えるようになったのはいつ頃からなのでしょうか?

ARATA:高校生ぐらいの時にJ Dillaにハマりはじめて、やりたいなって思ったんですけど、当然高校生の環境じゃできないから、ずっとこうやればいいんじゃないかみたいなのは頭の中で考えていて。それがやっと形になったのが大学入ってからっ手感じです。

—やっぱりQuestloveとかにも影響を受けて?

ARATA:めちゃくちゃ影響受けてますね。ドラムの音色だったりとか、Questlove(クエストラヴ)のことはかなり勉強しましたね。

—そういうの音楽の興味を共有できる友達とかは身近にいました?

ARATA:高校生の時はいないですね、小中なんてお話にならない(笑)。大学入ってからはやっぱりKanさん(INOUE)とか大学の先輩とか、そういう人がいたから今に繋がったというか。

ーなるほど。では、他のみなさんは?

INOUE:実は僕の両親はジャズ・バンドをやっていたので、ライブにはめちゃくちゃ小さい頃から連れてかれていて。さらに両親はジャズやりつつもプログレ・マニアでもあったので、寝るときはプログレのレコード、昼はジャズのライブに連れて行かれるみたいな洗脳教育を受けていたっていうのが一番大きくて(笑)。
それで小学校6年生の時にギターを初めて、ちょうど反抗期だったっていうのもあって、ジャズは絶対にやりたくねえなと思ったんです。そもそも音楽好きな親に反抗するなら楽器をやめろって話なんですけど(笑)。
それでギターを始めて、まぁ最初はなんだかんだJohn Scofield(ジョン・スコフィールド)とか好きだったので、そういうフュージョンっぽいのをやってたんですけど、「いや、僕は違う道に行くっていって」Rage Against the Machineのコピーをやったりとか、ギターをTom Morello風に改造しよう! とか。そういうのをずっと2本線でやっていたんですけど、高校に入ると音楽仲間みたいなのができて。みんなSum41とかHi-STANDARDが好きっていうような、そういう人ばっかなんですけど、僕にとっては音楽やってる若い人がいるっていうだけで興奮しちゃったんですよね。それでバンドやりたいってなったんですけど、あの、ギター多い問題にぶち当たるんですよね(笑)。みんなギターやりたい、みたいな(笑)。
で、バンド組むにあたって、まぁベースでもいいんじゃないかっていう感じでベースをやることになったっていう典型的なパターンなんですけど、でもその時、そのPrimus(プライマス)っていうバンドのLes Claypool(レス・クレイプール)っていうベーシストを見て「あ、ベースでもこんなに目立てるんだ」ってなって。ただ、実際は全然目立てなかったんですけどね(笑)。でもそこからだんだんグルーヴとは? とか、ベーシストの深みにハマって今に至る感じですね。
大学入ってからは周囲の人が聴いてる音楽もすごい多様なジャンルになっていくんで、そこで念願のジャズやフュージョン、さらにヒップホップだったりファンクをやるようになって。そこでARATAが後輩で入ってきて、一緒にやろうかってなりました。

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EZAKI:僕も親を軸に話すと結構おもしろくて。4歳からクラシックピアノをはじめたんですけど、両親共に音楽好きで。母は元音楽業界の人で、父もプロのロック・バンドのギタリストだったんです。僕が生まれる前に父はサラリーマンになったんですけど、音楽活動自体は今でも続けていて。そんなこともあって色々なロック・バンドのライブに連れて行ってもらったりしたんですけど、音量的にうるさい音楽は苦手だな、って毎回思っちゃって。割と早い段階でいわゆるバンド・サウンドは忌避するようになっちゃって、小学生の時に好んで聴いていたバンドは挙げるとすればThe Beatlesくらいでしたね。
父はロックだけを聴いてるわけではなくて、今でも僕よりいろんなジャンルの音楽をディグってて、帰省するとたまにオペラ作品なんかを聴いてる場面に遭遇するし、母も流行りのポピュラー音楽を中心に、洋邦問わず色々聴いてますね。両親は僕が小さいときから、クラシックやジャズからロックまで、いろんなコンサートに連れてってくれました。そんな中で、小学校高学年の頃にはだんだんジャズに傾倒していったんです。
中学に入ってからはジュニア・オーケストラにピアニストとして入団して、そこでちょうど同い年のドラマーの友達ができて。たまたまそのジュニア・オーケストラにジャズが出来るコントラバスの先輩もいたんで、ピアノとドラムとウッド・ベースでトリオ組めるねってなって。中学1年生当時ハマっていたBill Evans Trio(ビル・エヴァンス・トリオ)の完コピをひたすらやり続けて、ジャズを勉強していきました。

本当にそれからずっとジャズジャズジャズで……トリオ、クインテット、セクステットとか色々な編成でやりました。クラシックのピアノ・レッスンももちろん続けてましたけどね。
大学進学で福岡から上京して、クラシックの音楽大学に進学したんですけど、そこで今作にも参加してくれている石若駿と出会って。次第に他の大学の音楽サークルにも頻繁に出入りするようになって「うわ、東京にはこんなに尖った音楽をやる人がいるんだ」っていうような衝撃を色々なところで受けて。いろいろと東京で衝撃を受けている最中に、ARATAとかKanさんに出会ってヒップホップとかソウルの存在を教えてもらい……っていう感じですね。

INOUE:存在をね。本当に存在を教えたよね(笑)。

EZAKI:ちょうどRobert Glasperとかが出てきてた頃で、なんだろうなあ……こう、セブンスでの連続でシャランシャランまわすカッコいいのが出てきてるなぁとは思ってたんですけど、それが文脈としてヒップホップのところから出てきたんだっていうのを、ARATAを通じて知る、みたいな。
そこから「J Dillaっていうカッコいい人がいるんだな」って感じで、それで初めてMiles DavisとかJohn ColtraneとかBill Evansとかその辺からちょっと離れて、J Dillaみたいな「単純なループだけど、ビートがかっけぇ」っていう音楽に出会って、今に至るって感じですね。なので、未だにソウルとかR&Bとかヒップホップの音楽に関してはメンバーに教えてもらってばっかりです。その反対に、このバンドでクラシックだったり、現代音楽まわりだったり、ECM Records(西ドイツを拠点とした、ジャズをメインに扱うレーベル)まわりだったりを掘ってるのは僕ぐらいじゃないかなと思いつつ、そこをバンドに還元できればいいなって。

—そういうトラディショナルなジャズからいきなり先鋭的なものを提示された時に、抵抗とかはなかったですか?

EZAKI:僕、Bill Evansからジャズ畑に入っていって、その後Keith Jarrett(キース・ジャレット)にハマって、その後はずっと〈ECM Records〉の……静寂を基調にした緻密なアンサンブルをどうやれるか、みたいなところにすごく興味があったんです。正直、はじめてChick Corea Elektric Bandを聴いた時も「なんか電子楽器が入るとサウンドが安くならない?」みたいな印象があって。電子楽器全般的にちょっと無理だっていうのが長らくあったんですけど、それも徐々に無くなっていって。最初はエレベが大丈夫になってきて、その次にエレキもだんだんとカッコいいやつならOKみたいになってきて……っていう感じですね。その後シンセも徐々に理解できるようになってきた。

ーなるほど。では、NAGATSUKAさんはどうですか?

NAGATSUKA:僕は家にピアノがあって、今はもう全然弾かないんですけど、母親が上手に弾いてるのを見て、隣で演奏したくてバイオリンを始めたんです。親に自分でバイオリンをやりたいって言って、そこから本当にずっとバイオリン弾いてて。

—もちろんクラシックで。

NAGATSUKA:そうっすね、でも僕はオーケストラとか幼少期には全然聴いてなくて。最初は本当にバイオリンしか聴いてなかったんですけどね。
で、中学に上がった時に、その頃からオーケストラを若干聴くようになってたので、スクールバスの中で小澤征爾さんのアルバム聴いてたんです。そしたら「お前、何聴いてるの?」て言われて「小澤征爾聴いてる」っていったらちょっと笑われて。

EZAKI:巨匠だぞ(笑)。

NAGATSUKA:もちろん「ナメんなよ」っていう気持ちもあったんですけど、年頃だったっていうのもあって、当時はそれが恥ずかしくて。そっから流行りに流されるようになりました。それくらいの時に校内放送でオレンジレンジの「上海ハニー」が流れた時にみんなが「わー」と盛り上がって。当初僕はめちゃくちゃモテたかったんで、「そうか! 流行りの音楽を聴こう」って。そっから流行りの音楽をずっと聴いてギャル男になり(笑)。

ーえ?(笑)

EZAKI:元ギャル男(笑)。

NAGATSUKA:そうなんです。僕、ギャル男だったんですよ(笑)。それからモテたい一心でバンドを始めて、「ボーカルやんない?」って言われたからボーカルやってみたら「あ、結構歌えるじゃん」となり。そこからちゃんとバンド・サウンドの音楽を聴くようになりました。それでKanちゃんに出会ったりして、ドラムも初めて。そっからわりと深く音楽にのめり込みましたね。メタル・バンドとかも組んでたので、その頃にはもうバイオリンはやってなかったんですけど。
大学に入ってからは結構色々なところで歌うようになって。例えばギター弾き語りのデュオでイベントに出てカバー曲だけのライブをやったり。そうやって色々な音楽活動を続けていく中で、Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)とかに出会い、もっと真剣に歌をやりたいって思うようになって、そこから一生懸命勉強し始めましたね。それで色々な出会いが重なったこともあり、ジャズ・バンドにもボーカリストとして誘われたりして、そこからブラック・ミュージック全般もグワっと聴くようになって。で、今のメンバーのみんなと出会って、ヒップホップもちゃんと聴くようになり……。

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—Donny Hathawayなどのソウルに出会ってから、自身の歌唱法っていうのはやはり変わりましたか?

NAGATSUKA:全く違うものになったっていうわけじゃないんですけど、ちゃんと学ぶようになりましたね。パッと発声した瞬間に場の空気が変わるみたいな、あの感じが音源でわかるじゃないですか。Donny Hathawayとかのレベルになると。
それを聴いて、単純に僕も「あ、この領域までいきたい」ってなったんですよね。そっから発声方法ってどうやるんだろうとか、例えば久保田利伸さんの発声方法とか、黒人のボーカルの声の出し方とかを色々考えながら今も歌ってます。未だに試行錯誤です。

—基本は独学ですか?

NAGATSUKA:今のところはそうですね。でも、ボイス・トレーナーみたいな人にちゃんと習いたいっていうのはあるので、近々落ち着いたタイミングで習ったりとかしたいなとも思っているんですけどね。

—お手本にするのはソウルの人が中心だったのでしょうか?

NAGATSUKA:いや、そういうわけでもないですよ。それこそTony Bennettとかも大好きですごい聴いたり。あの人は本当にソウルフルな歌い方ですよね、ジャズ・シンガーなのに。あとはポップスも聴いてましたし、そういう意味では本当にジャンルに縛られず、色々勉強してました。

—英語の発音とかもすごい流暢ですよね。顔立ちが端正なので、最初はてっきりハーフなのかと思いました。

NAGATSUKA:結構それは言われるんですけど、僕は完全に寺の息子なんで、純日本人ですよ。たぶん、この中で一番日本人の血筋が入ってると思う。

INOUE:いや一番って何。一応みんな日本人なんですけど(笑)。

NAGATSUKA:英語の発音は、幼少期に何て言うんだろうな……よくあるじゃないですか、ホーム・ティーチャーみたいな、そういうところに遊びに行ってて。そこの先生が外国人だったんですけど、友達のお母さんだったので、それで行って遊んでるうちに色々勉強になったらしく。それで高校でも学校のプログラムでニュージーランド行ったりして、「あ、自分の英語結構通じるじゃん」ってなり、そこで自信がついて。それから自分でお金貯めて高校2年くらいの時にはイギリスに行ったりもして。あとは大学の学部も国際的な学部だったので、授業が半分英語みたいだったっていうのもあり、英語は常に近く接してきましたね。

—ではデビューアルバムの『Sphere』についてお訊きします。結成から正式な音源をリリースするまで3年と比較的時間がかかっていると思いますが、その理由については?

ARATA:まず最初の1年目は、バンド名を決めることで終わり……。

ー一同:(笑)

INOUE:1年間バンド名決めてたね(笑)。

EZAKI:バンド名決めたり、ウェブサイト作ったり、見た目的なコンセプトの話ばっかりしてて。

—楽曲制作や、セッションとかはしていなかったのでしょうか?

ARATA:セッションはしてましたけど、スタジオも4ヶ月に1回くらいしか入ってないよね。

EZAKI:制作をするより、ずっと下地を作っていた感じですね。

INOUE:バンドのイメージとか見た目とか、どういう風にやるということを決めてましたね。

EZAKI:EZAKI:「全部英語で揃えていこうよ」みたいなことであったり、「あんまり各自のプライベートを晒さないスタイルでいこう」みたいなことであったり、最初から海外向けの見せ方をしていこうってことだったり。そういうところをずっと話してた感じですね。

—では、歌詞が全部英語なのも、海外に向けてという意味合いが込められているのでしょうか?

NAGATSUKA:もちろん世界中の人に聴いてもらいたいという思いもありますけど、僕らのやっている音楽に対して一番ハマる言語が英語だからっていうのもありますね。

—ちなみにバンド名のWONKの由来は?

ARATA:Thelonious Monk(セロニアス・モンク)のMを逆にして、WONKです。

EZAKI:でも、スラングとして「ガリ勉」っていう意味もあって、僕らには両方の意味がハマってるなと思っていて。

—確かに緻密に練られた楽曲構成などからは、ガリ勉っぽさも感じるかもしれません。

EZAKI:でも、正直「ガリ勉」っていう意味がついてきたのは予想外だったけど(笑)。

ARATA:最初はまず響きが気に入ったんですよね。

—昨年初めてWONKの存在を知った時、すでに洗練されたWEBサイトもあり、クオリティの高いライブのダイジェスト・ムービーもUPされてました。最初の一年はそういったものの制作を軸にしていたと?

ARATA:そうですね。「このバンドは一体何なんだ?」ってなって、検索してパッと見つけてくれた時に、第一印象がダサかったらお終いだっていうのはずっと思ってたんです。

INOUE:僕らは元々いい音楽を作って大手レーベルからデビューしたいっていうところからスタートしているわけじゃないので、下地を固めていたっていう最初の一年も、自分たちのやりたい音楽を、自分たちで世界に発信していくためにはどうすればいいかっていうところから話が始まっていたんです。なので、その時も色々なモノを作っていて、音源も映像も結構一年目で制作していたんです。でも、結果的に「これだと資本に負ける」みたいな話になり(笑)。
「このクオリティではちょっと見劣りするよね」みたいなのが結構あって、全部ボツにしたりして。まず一番最初に出すものを納得いくモノにしないと、そこで「やっぱりインディはインディ」みたいな印象を持たれちゃうと思うので、そういう点でジックリと、慎重に制作を進めていた一年ということになると思います。

ARATA:そうですね、技術の発展とともに個人ができることって今では大分増えていて、すごく可能性は広がっていますよね。でも、それでいてその可能性を深掘りしない人たちも多いなって思っていて。例えば、フォント1つ選ぶにしても、パソコン開けば数百種類の選択肢があるのに、なぜかみんな「MSゴシック」しか使いません、みたいな。そういうのってあるじゃないですか。
そういうのってもっとこだわっていけば自分たちでかなり色々なことが出来るんじゃないかっていう風に思っていて。音楽でもDTMが普及して、今ではYouTubeからも簡単にサンプリング・ネタを引き抜くことができるようになったりしてますよね。自分たちでハンドルできる素材はどんどん揃って来てる。もちろん他の部分も含め、そういう自分たちで詰められるところは可能な限り詰めてから、バンドとして発信していこうっていう。そのために時間を設けていたって感じですね。

EZAKI:WEBもちゃんと準備しつつ、EPも同時並行で作り、それで大体一年が経って。で、ようやくEPが完成して、初めてのワンマン・ライブを自分たちで企画したんですけど、そのEPを配信するページを作り、そこから音源をダウンロードすると、そのままワンマン・ライブのチケットが予約できるような導線を張ったり、どこの誰がダウンロードしたのかっていうのを分析したりっていうのをあらかじめ仕掛けておいたんです。ダウンロードすると自動的にTwitterとFacebookでWONKってバンドの作品をダウンロードしたよっていうのを発信させる仕掛けみたいなのも作って。なので、そのEPを出してからはしばらく様子を伺っていたんですよね。Spincoasterの方々には結構早い段階で反応もらってたのも覚えていますし。

—では、その一年でのリアクションとかは実際どうでした? もちろん日本だけじゃなく、海外も含め。

INOUE:まあそこそこ聴いてもらえたとは思うんですけど、やっぱり思った以上に反応は薄くて。そこから次どうするかっていうのをみんなで考え始めたっていう感じですね。でも、最初に全部自分たちでやったことって、今でもある意味みんなの糧になっていると思うんですよね。全部自分たちで考えて動くっていうベースを築けたという意味で。でも一方で、その施策全部が上手くいったかっていうと全然なので、結果として1st EPの時は「なるほど、こういう反応なのか」っていう印象ですね。

EZAKI:そうですね、完全にフリーダウンロードっていう形を取っていたので。まあその後はiTunesなりApple MusicなりSpotifyなりに登録するだけで、急に信用度というか見栄えみたいなのが良くなるんだな、みたいな所とか、いろいろ学んでいき。今でもSpotifyとかはほとんど海外からの再生で収益を上げている状態なんですけど、なぜかインドネシアやイギリスやシンガポールからの再生がすごく多かったりして。そういうのもあって、市場は日本以外にも結構あるのかなっていうのは認知していますね。

INOUE:そうそう。なので、最初のEPはそういう情報を得るのにあたってはすごいいい経験になったなっていう。

—直接メッセージをもらったり、海外のレーベルなりプレスからコンタクトが来たりはしましたか?

EZAKI:イタリアのラジオ局とかLAのラジオ局とかから連絡がきたりしたんですけど、まあちょっとそこはまだ慎重にっていう感じです。

—WONKって最初はバンドのオフィシャルも、メンバー個人のSNSもなかったというか、見つけられなかったと思うんですけど、そういうのはやはりパーソナリティを出したくないというような思いがあったのでしょうか?

EZAKI:そうなんですよね。最近のバンドとかアーティストを見てると、SNSでファンとめっちゃ濃密なコミュニケーションをとって、私生活も積極的に晒してっていうのが当たり前になってきてるというか、一種の戦略のようにもなっていますよね。それに対してちょっとあまのじゃくな感じで、あんまり私生活の見えないスター感みたいなものを大切にするバンドがあってもいいんじゃないかなっていう思いもあったりして。
でも、最近はTwitter上とかで反応してくれてる方もめちゃめちゃ多くなってきて、だんだんと申し訳なくなってきたんですよね。「WONKめっちゃいいー!」みたいなこと書いてくれてるのになんの反応もないっていうのが、これは罪だな、みたいな(笑)。なので、アルバム・リリースのタイミングでTwitterアカウントを開設して、日々Like押しまくってます(笑)。

—ちなみに、今年の初めにリリースした『From the Inheritance – EP』ではセッションをベースに作られた印象があるのですが、今回のアルバム収録楽曲の制作プロセスも同じようにセッションで?

ARATA:確かにEPに関しては結構セッションで作ったんですけど、それは今回やめようってなったんです。基本的にスタジオでは作らないで、各々の家でサンプリングやアレンジを考えたりして、っていう制作方法でしたね。

—その家に持ち帰った素材をまたスタジオに持ち込んで、バンドで詰めていくって感じなのでしょうか?

INOUE:制作のためのスタジオ入りは1回もしてなくて、ARATAが主にヒップホップのビートみたいなサンプリングを作ってくることが多くて、それを家で音楽的に「こうした方がおもしろいんじゃないか」みたいに話し合いながら、ちょこちょこイジっていく……ていう感じですかね。そこで歌のメロディー・ラインや歌詞まで作って、あとはレコーディングのためだけにスタジオに入るっていう感じですね。なので、スタジオで練っていったっていうのは1曲もないんです。

—セッションで作らないと決めた理由や、その狙いというものはどういったものだったのでしょうか?

EZAKI:覚えられる範囲の曲しかできなくなっちゃうっていうのはひとつあって。スリーコードないしフォーコード、もしくは8小節ループか16小節ループみたいなものばっかりになっちゃうなって。

ARATA:もっと緻密に詰めたかったんですよね。

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―なるほど、あくまでもひとつの「作品」として。

INOUE:やっぱりセッションから始まってるバンドにありがちなのが、人の手癖が出ちゃうっていうのがあるんですよね。もちろんそれがカッコいい場合もありますけど、普段の慣れを出した上で曲数を揃えると、「この曲とこの曲は一緒じゃね?」みたいなことになると思っていて。なのでそこを完全に排除することで、もっと自由で振り幅の広い作品になったかなと思っています。今回の作品はたぶん1曲毎に「ちょっと変だな」とか、「何だこれ?」ってなるような、引っかかる部分をもたせることができたと思っていて。それはまさしく今回の制作方法の賜物だなと。

EZAKI:いろいろ手癖を消すためにやってみたりしましたね。iPadのアプリを使って演奏することで、鍵盤の手癖を消してみようとかもやりましたね。

—では、製作段階ではある意味ライブでのパフォーマンスっていうのを度外視しているのでしょうか?

ARATA:そうですね。アルバムとライブではやれることが全然違うので。あんまりライブってことを意識して作ってはいないですね。

—結構作品を聴いた印象として、よく言われているとは思うのですがRobert Glasperを想起させたり、シンセの質感からFlying Lotusの
『You`re Dead』を思い起こしたりしたのですが、いわゆる最近話題の『Jazz The New Chapter』に取り上げられているようなシーンへの、日本からの回答的なアティテュードのようなものは意識していたりしますか?

INOUE:特にそこに意識して作ってるわけではないんですけど、Flying LotusとかのLAベース・ミュージック界隈とか、Hiatus Kaiyoteだとか、その辺りと最近よく比較されるんですけど、おそらく彼らとはある種世代として同じようなモノを聴いてきて育ってきたのかなって思っていて、そうなったら結果的にアウトプットするモノが似通ってくるのは当然なのかなって。バックボーンとかも似ていて、例えばRobert Glasperのサウンドって、一時期はChris Daveのドラムがすごい印象的でしたけど、そのChris DaveはJ Dillaを聴きつつ育ったらしく。そういう意味ではARATAも似てるなって。

ARATA:小さい頃から聴いてたわけではないけどね(笑)。でも確かにJ Dillaとかはずっと好きで聴いてて。

INOUE:まぁ、そういった個々のバックグラウンドがもしかしたら似てるかもしれないという話なだけで、制作の段階ですごく意識したとかはないですね。

—今作のコンセプトのようなものを挙げるとしたら、どのようなモノになると思いますか?

ARATA:やっぱりセッションでは作らないっていうのが先ず一番にあります。

INOUE:あとはヒップホップのビートとか、サンプリング主体の音楽の持つある種の荒唐無稽さというかそういう点ですかね。それは製作時には意図していなかったんですけど、最終的には自然な流れでそういう風にまとまっていったというか。

—ボーカルに関してなのですが、歌モノのブラック・ミュージックというより、歌も楽器の一つとして捉えているように感じました。ボーカルに対してはどのような意識の上で乗っけていますか?

NAGATSUKA:そもそも歌モノ・ベースで作ってないっていうのがあるんですよね。ARATAが持ってきたアイディアだったりサンプルの断片だったりを、この二人(INOUEとEZAKI)がそれを音楽的なものに落とし込んで、その後にじゃあボーカルはどう乗っけようかってなって、そこで初めてメロディー・ラインが決まるんですよ。このトラックだったらこう歌うよね、みたいな。

INOUE:歌メロに関しては苦戦したことがあって。

NAGATSUKA:むしろ苦戦しかしなかったよね(笑)。まぁでも、毎回ライブごとに歌い方だったり、曲に対するアプローチもみたいなのは感覚的にみんな違うから、そこに関しては毎回勉強になってるというか。ボーカルに関しては今でも常に挑戦してるイメージがありますね。

—今作には多くのゲストが参加していますが、その人選の狙いや意図を教えてもらえますか?

INOUE:大体みんな世代的に近い人ばかり呼んだっていうのがまずあって。というのも、僕らの世代って結構おもしろいミュージシャンが多いっていうか、世界に通じるようなサウンドを出す人が多くなってきてるなっていう印象があって。そういうイケてるミュージシャンと触れ合っていく中で、この人とやったらおもしそうな化学反応がありそうだなっていう風に考えていたら、今回のラインナップになりました。

—みなさんそれぞれの音楽活動を通じて知り合ったという感じでしょうか。

INOUE:全員そうですね。例えばラッパーはARATAの繋がりで〜とか。

EZAKI:ドラマーの石若駿は僕の大学の同級生で、かつ色々と音楽も一緒にやっていたので。あと安藤康平さんはARATAも僕も知ってるジャズの人って感じで。

—ラップのディレクションなどはどのように行われたのでしょうか?

ARATA:そんなに明確なテーマは与えてないですけど、なんとなくこんな感じでっていうのは一応伝えました。雰囲気というか。

EZAKI:あとそれぞれ実はみんな国籍バラバラなんです。でも、みんな普段は日本語堪能で、日本語でラップをやってたりするんですけど、今回そこは敢えてそれぞれの出身地の言語でやってもらったっていうところはありますね。

—アルバムが緻密に作られているのに対して、ライブではソロ・パートがあったり、セッションのような即興性とか、その場のフィーリングとかを重視してるように感じました。ライブで意識してることなどはありますか?

EZAKI:音源の再現はしないってことだと思います。それぞれがジャズの道を通ってきているので、ライブでしか観れない演奏のおもしろさみたいなものはわかっていると思うので。プレイヤー同士が、耳と目でそれぞれが行きたい方向を感じつつ、伝えつつ、音でバトルしてるみたいな状態を作り上げるのが、ライブの醍醐味なんじゃないかなって今の段階では考えていて。そういうところがたぶん音源との差別化に繋がってる部分であり、ライブで意識しているポイントになるんじゃないかなって。
なので、結構アルバムで入ってる音素材とかをそのまま同期して再生したりっていうのは、あまりやっていなくて。ざっくり言うと引き算的な感じなのかな? アルバムに収録されている楽曲から、いくつかの要素だけ取り出せば、いわゆるセッション曲としても成り立つものになるんじゃないかなっていうような。

—ある意味元の楽曲を削っていく作業というか。

EZAKI:そうですね。削っていくっていうイメージに近いかもしれません。

INOUE:あと僕らのライブって結構編成を変えてやっていたりして、管楽器やコーラスがいる時もあればいない時もあるので、その時々によって「ここは音が薄くなりがちだから、こういう音を足していこう」とか、そういう話はライブのためのリハーサルではよくやってますね。

—サポート・メンバーがライブごとに変動するのは、スケジュールの関係ももちろんありつつ、それに加えて様々な形態、スタイルでのライブを模索しているからなのでしょうか?

INOUE:ライブごとに色々な種類のライブをやっていきたいっていうのはもちろんあります。あとは場所に合わせたりもしますね。結構ジャズっぽい環境であれば、ちょっとアコースティックな編成に寄ってみようとか、クラブみたいな場所でやるときはビート重視でいこうとか。

EZAKI:あとは対バン相手に合わせたりとかですね。

―下北沢 JAZZY SPORTでのリリースライブはシンプルな4人編成でしたよね。あれは原点回帰的な意味合いも込められて?

INOUE:そうですね。リリース後の一番最初のイベントだったので、一旦4人に戻ってみようっていう意識もありましたね。もちろん、場所の大きさもありましたけど(笑)。

EZAKI:そもそも入らねえみたいな(笑)。

―先日のライブでは打ち込みのビートと生のドラムの割合が半々くらいだったように思えるのですが、どのような意識の元で使い分けているのでしょうか?

EZAKI:基本的にライブではいつも、低音に関していえば打ち込みを足してるよね。

ARATA:そうですね。音の厚みが欲しいなって思った時とか、あとはドラム叩くの飽きた時(笑)。

—ちなみに、アルバムでのビートは生ドラムと打ち込みの比率ってどれくらいになるのでしょうか?

ARATA:生ドラム7割、打ち込み3割みたいな感じですね

—基本的にPCで打ち込みで作ったものを、曲のテイストに合わせて生ドラムでやるものを決めていくって感じなのでしょうか?

INOUE:最初っから生でやるって固めてる曲の方が多かったかな。これは生でやろう、これは打ち込みでやろうっていうのが最初にあって、基本的にはそのまま進めていったよね。……あれ、そうでもない?

ARATA:そうっすね、たぶん。

EZAKI:たぶん(笑)。

ARATA:あんま覚えてないんだもん(笑)。

INOUE:でも生ドラムは叩いた後に、それをチョップしてもう一回打ち込み直すみたいな作業も結構していて。そこら辺は結構多様な方法でやってましたね。

ARATA:例えば「RdNet」っていうドラムンベースみたいな、テンポが170くらいの曲があるんですけど……僕らは「170」って呼んでるんですけど(笑)。

INOUE:それは置いといて(笑)。

EZAKI:あの、僕ら自分たちでも正式な曲名を覚えてない現象があるんですよね(笑)。いつまでも作曲途中に読んでた呼び方で覚えちゃってて。

ARATA:あの曲は途中でテンポが半分になるんですけど、そこは打ち込みのバスドラも使ってるし、あとは今Kanさんが言ったようにドラムを生で叩いたやつをチョップして、ビートっぽくしてるっていうのがあって。それ以外は全部普通に生で全部ドラム叩いて早いところは。そういう感じの作り方でしたね。この曲だけ唯一生ドラムと、打ち込みが混じってるやつ。

—なるほど。では、時間も時間なので、最後に今後の活動プランの中での目指している目標やビジョンなどを教えてもらえますか?

ARATA:ARATA:とりあえず海外に行きたいなと思ってますね。海外のリスナーにもっと届けば、と思います。


【リリース情報】

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Wonk 『Sphere』 ※12inch Vinyl
Release Date:2016.11.23
Cat.No.HR12S003
Price:¥2,500 + Tax
Tracklist:
A面
01.Intro#2-Sphere
02.savior
03.h.v.c
04.1914

B面
01.Real Love feat.Real Love feat. JUA & Shun Ishiwaka
02.Emly feat. Onetwenty
03.Glory feat. Tweli G
04.DOF feat. Dian

※HMV record shopをはじめ全国レコード店で販売

Sphere_Jacket

WONK 『Sphere』 ※CD
Release Date:2016.09.14
Label:Epistorph Tokyo
Cat.No.:EPST-002
Price:¥2,000 + Tax
Tracklist:
01:Introduction#2 – Sphere
02:savior
03:Real Love feat. JUA & Shun Ishiwaka
04:RdNet feat. Patriq Moody
05:Emly feat.Onetwenty
06:h.v.c
07:Glory feat. Tweli G
08:1914
09:Minton feat. Kohei Ando
10:Over
11:DOF feat. Dian

TOWER RECORDS購入特典:大和田俊之氏書き下ろしライナーノーツ
ヴィレッジヴァンガード購入特典:「Sphere」オリジナルステッカー

Spincoaster

Spincoaster

Spincoaster(スピンコースター)は、独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介する音楽情報メディアです。