前編の機材紹介編に引き続き、Tokyo Recordings スタジオ潜入取材の後編となる今回は、彼らの活動全般だったりここを拠点とするに至った経緯などを紐解くインタビューをお届けします!
既存のレーベルという形式からは大きく逸脱した、彼らの自由な発想の一端が垣間見れるはずです……!
(前編はコチラから)
Tokyo Recordings (OBKR & Youki Kojima) Interview
Interviewer: Takazumi Hosaka
Photo: Nahoko Suzuki
—まずOBKR(小袋成彬)くんについては以前もインタビューしているだけあって、ある程度見知っているつもりなのですが、Kojimaさんとは初対面ですので、初めましての意味も込めておふたりの出会いや関係について。そして何よりもこのスタジオについて教えて下さい。
O:1年くらい前に、酒本の紹介で小島にあったんですよ。で、初めてここに遊びに来た時に、ちょうどレーベル始めたばっかだし、何かこいつも巻き込んで色々やっちゃおうって思って。
まぁ、ぶっちゃけちゃうとここは彼の自宅兼プライベート・スタジオなんですよ。だからTokyo Recordingsのスタジオではなく、彼のプライベート・スタジオを僕が勝手に間借りしてるっていう感じ。で、ぼくがそこに1年くらい入り浸ってるだけです。笑
K:ぼくは……普段は作家的なことをしています。もちろんTokyo Recordings以外の仕事もしてますし、ここに出入りしていた酒本くんの繋がりでめぐちゃん(綿めぐみ)のアルバムをレコーディングすることになり、それから色々な人がブワーっと出入りするようになり……って感じです。笑
あとは、このスタジオを他のバンドに貸したりっていうこともしてます。Suchmosとかもここで録りましたし。
O:出た! 今イケイケなSuchmos! あいつら最近忙しくて遊んでくれなくなっちゃったんすよ。笑
コイツ(Kojima)は高校時代、学校にサンプラーとアクティヴスピーカーを持ち込んで、授業中に先生の声をエイリアン・ボイスに変換したり。iMacを教室に持ち込んだりしてたっていう筋金入りの変態です。笑
—OBKRくんと酒本くんが水曜日のカンパネラに提供した「ナポレオン」もこちらで作業したのでしょうか?
O:いや、あれは完全によそのスタジオでやりました。でも、ナポレオンについて色々ネットで調べて、ワイワイ話しながら歌詞の構想を練るっていうのはここでやりましたね。基本的にここで音楽談義とかし始めると、楽しすぎて圧倒いう間に時間が過ぎちゃいますね。
—KojimaさんはTokyo Recordingsのチーム内においては、エンジニア的なポジションなのでしょうか?
K:う〜ん、エンジニア的な役割をやる時もあるんですけど…
O:がっつり“エンジニア”っていう感じではないよね。
K:そうなんですよね。Suchmosとかめぐちゃんの場合はヨコハタくん(Tokuya Yokohata)っていう人がやってくれてるし。
これ(このスタジオ)は……自分で作った曲とか録ったりしてたっていう行為、言っちゃえば宅録の延長線上ですね。元々バンドとかやってて、自分たちの楽曲を自分で録って聴くのが好きっていう、ナルティシズムに溢れた感じで。笑
最初はレンタル・スタジオで簡易的に録ったりしてたんですけど、時が経ち、気がづいたらこうなってました。笑
最初は本当に卓も何も無くて、ピアノとiMacとしょぼいインターフェースだけあるただの練習室みたいな感じだったんですよ。そこから29,800円くらいの安いドラムとか買ってきて……「みんなでセッションしてみようよ!」みたいなところから始まり……。
O:一年前はこの卓も、スピーカーも、あのでかいスクリーンも、ほとんど何もなかったんですよ。めぐちゃんのレコーディングのときもまだ卓使ってなかったし
K:そうそう。iMacとProToolsだけでした。
—ここの機材はみんなで買い集めているんですか?
O:いや、もう基本的にはコジさんが。笑
K:でも、知り合いとかで「今使わないから置いといて」って言われたやつとかも結構ありますね。
O:酒本のギターとかもありますしね。
—先ほど名前が挙がったTakuya Yokohata さんは、Tokyo Recordingsのメンバーの中核を成す4人のうちのひとりですよね。彼は一体どういう人物で、どういった役割として動いているのでしょうか?
O:彼も元々バンドマンだったんですけど、録音とかミックスとかの方に強い興味を持っていて。機材も鬼ほど詳しいし、洋楽の作品でもクレジットとか読んでプロダクション方面の知識がすごいんです。そういう感じだったので、ぼくが声をかけたんですよ。最近はちょっと疎遠気味なんですけど。笑
※「こんな光景未だかつて見たことない (O)」「漂うサ○レコ感 (K)」と言いながらも撮影用に”何か作業してるテイ”のポーズを取ってくれるおふたり。
—では、Tokyo Recordingsの中核をなす4人のメンバーが固まった経緯を教えてもらえますか?
O:音に関わるメンバーは4人だけど、元々サロン的な構想があって、ひとつひとつの企画毎に関わる人が入れ替わったり、本当に全くの異業種の人たちだったりとかも参加してるんです。それこそCapesonを紹介してくれたのは雑誌の編集者だし、その編集者の人がめぐちゃんの特集を別の媒体で書いてくれたりしたし、これまでのMVは今のところ全部前田ユキっていうChim↑Pomでも頑張ってるカメラマンが撮影してくれてたりとか……。
でもまぁ、しっかり法人化してっていうことになったとしたら、その4人かなっていう。
K:最初の頃は単純に(作品を)作れる最少人数が集まった結果、みたいな感じだったんですけどね。
O:理想の形は、やっぱり「ここからあの伝説的な作品が生まれた」って言われるサロンみたいな感じ。僕ら以外にも色々な人が集まったり、たむろしてるんで。そこで色々な交流が生まれて、おもしろいことに繋がっていけば良いかなって。
—Tokyo Recordingsとしての今後というか、目標にしているヴィジョンを教えてもらえますか?
O:後々になって、「あの時代の、2014〜2015年くらいからおもしろい動きがあったんだよね」って語られるような、そういう感じが良いですね。笑
K:1950年代にジャズ・ジャイアンツって呼ばれるような、当時活躍していたジャズ・ミュージシャンが一堂に会した写真があるんですけど、後にそれぞれが巨匠と呼ばれるようなプレイヤーになっていったことで、その写真自体も伝説的なモノになるんですよ。だからなんか、そういう感じにしたいですね。……うん。伝説にしたい。
O:字面がヤバイね。「伝説にしたい」って。笑
一同:笑
※上の写真は後にドキュメンタリー映画『A Great Day in Harlem(ハーレムの素晴らしき一日)』の題材にもなったことで有名。
—アンディ・ウォーホルの“Factory”みたいな。
O:そうそう! そんな感じです。笑
「あの当時のあそこら界隈がヤバかったんだよ」って言われたいです。笑
—では最後に、Kojimaさんが指揮をとってプロデュースしているCapesonについて教えてもらえますか?
O:一応(Kojimaにとっては)処女作みたいな感じなんだよね?
K:まぁ、ちゃんとした歌モノを作ったのは初めてに近い……かな。音大時代は劇伴系とかジャズ系のビッグバンドとかの仕事が多かったので。
O:だから処女作でこれか!? ってぶったまげたんですよね。彼の声にもマッチしてるし。だから、もう「(CapesonのことはKojimaに)任せよう!」って。笑
K:スケールのでかいサウンドが似合う声なんですよね、彼は。
O:フィジカル作ることはちゃんと決めてて、今回は流通もしっかりとやります。なんかこれはもう手売り感とか出すのは違うなって思ってるんで。曲もほとんど録り終わって、あとアレンジとミックス……って感じで。
K:4曲入りEPを、とりあえずヴァイナルかCDか、もしくは両方でリリースしたい、って考えてます。
O:既に半年以上かけてるんで、ようやく……!って感じですね。
K:彼自身が書いた曲も入ってるんで、楽しみにしていてください。酒本さんがだいぶ原型変えたんですけど。笑
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