Special Interview

tofubeats (talk about Ryan Hemsworth)

「ライアンもひとりなんだなーっていうのは常々感じていましたね。音楽で成り上がっていっても中身は変われないっていうか。」ーtofubeats インタヴュー

1990年生まれ。首都から遠く離れた港湾都市の出身。周囲にバシッとはまらなかった故にひとりで音楽を作り始めるも、インターネットの世界には音楽を通じて知り合ったたくさんの同士がいる。インスト・トラックもさることながらラッパーとシンガーもプロデュースすることができる実力を持ち、多作。そして現在はシーンの最前線で躍動しながらも、自己とトレンドとの駆け引きのコントロールをしっかりと行うトラックメイカー……が、日本にも、カナダにもいる。tofubeatsRyan Hemsworth。こんな偶然ある? それとも、音楽とインターネットのカルチャーがテクノロジーもろとも接近し続けてきた時代が生んだ必然なのだろうか?
とりあえず、2人がこうして同時代に存在することは偶然かもしれないけど、互いに活動を経ていくうちに擬似的に国境を越えて出会うことは必然だった。だってインターネット時代だから、……と言ってはあまりにも簡単だけど、彼らは起伏の激しいこの混沌とした空間の中でも、その中に存在する“ひとり”として、リアルだの何だのと入り乱れる心情を惜しげもなく、でもスマートかつシンプルに、自らのプロダクションに託してプレゼンテーションしてきた者同士だから。何となくな部分も、1番大事な部分も、お互いに共感し合えるから。

この「tofubeatsがRyan Hemsworthを語る!」という少し変わり種のインタヴューは、そんな2人がRyan Hemsworthの最新作『Alone For The First Time』の日本盤で遂に共演を果たしたことと、tofubeatsの“アローン”な最新作『STAKEHOLDER』のリリースを記念して行われたもの。実際に聞き進めていくと、共通点が多いと思いきや、根本的に異なる部分もそれなりにあって、これがまたそれぞれがハッキリと存在し続けられる理由なのかな、なんて思えてくる。
今回はtofubeatsと、Ryan好きのインタヴュアー2人の計3人で多いに語り合っているので、Ryan Hemsworthのことをイマイチ知らないという方でもどうかご心配なくお読み進めください。

tofubeats Interview (talk about Ryan Hemsworth)

(Interviewer: Takazumi Hosaka=▲, Hiromi Matsubara=■)
(Text & Header Photo: Hiromi Matsubara)

▲まず初めに、Ryan Hemsworth(以下、ライアン)の存在を知ったのはいつ頃でしたか?

たぶん……初めはクラウド・ラップですね。マネージャーからある日突然「クラウド・ラップっていうのがある」と言われて。「面白いと思うから、一度聴いてみて」ってmediafireのダウンロードリンクが30個くらい送られてきて(笑)。で、そこにMetro ZuとかMain Attrakionzとかも入ってて……ライアンって誰のやってたんでしたっけ?

▲Main AttrakionzやShady Blazeとかですね。

そうそう、そこでMain Attrakionz周辺がやってるHappen Clothingっていうアパレルブランドとか知って。日本人で唯一の客が僕らしいんですよ(笑)。いまだに他の日本人が買ってないっていう(笑)。Happen Clothingを買うようになったり、チェックするようになって……っていう流れでライアンの名前も認識したって感じですね。だから最初はナードっぽい印象とか全然なくて、単純にMain Attrakionz辺りの界隈のビートメイカーとして知って、Metro Zuとかも同い年だったので、そういうアーティストがいるんだって感じでしたね。

■普段からアーティストだけでなく、そのトラックのプロデューサーもチェックする方ですか?

いや、なんかmediafireカルチャーって言うのか、mediafireにフリーでミックステープあげているヒップホップの人たちって、曲名の後ろにプロデューサーの名前が入ってることが多いじゃないですか。

■“Prod.◯◯◯”ってやつですね。

そうそう、それで「ライアンってやつが色々やってんだな」って思って。そのちょっと後にFrank Oceanの“Thinkin Bout You”のブート・リミックスが出て、それがクラシックみたいになっていったじゃないですか。アレで結構ひとりのプロデューサーとしての認識が強まったっていう感じですね。で、そのちょい後くらいだと思うんですけど、ライアンとなんかデータを少しやりとりした記憶があって。Louis La RocheっていうUKのトラックメイカーがいるんですけど、そいつのリミックス・コンテストに出したやつをSoundCloudで聴いたらしく、「これ、凄い良いけど歌いらないからインストちょうだい」って急にメールきたんですよ。もともとお互いにフォローバックとかはしてたんで。「送るから代わりにそっちもなんかくれよ」って返しながら2Gバイトぐらいデモを送りつけたら、ライアンからも20曲くらいのブートやらデモやらを送られてきて、それからイベントとかでもちょくちょくかけたりしてましたね。

▲なるほど。そういうオンラインでのやり取りや音楽面のみから想像していた人物像と、昨年初対面した際の印象にギャップはありましたか?

いや、想像していた通りのオタクでしたね(笑)。しかも東京公演の時はまだ楽しそうだったんですけど、大阪公演の時は全体的に疲れてて(笑)。イベントの前のご飯食べに行く予定とかもキャンセルになったんですよ。彼が「ちょっとホテルで寝かせてくれ」って言うから、「いや、もうゆっくりしいや」って(笑)。でも、その後『The Fader』に寄稿してた来日記みたいなものに「ステージ上で大勢の出演者が盛り上がってくれて、しかもシャンパンまで持ってきてくれたりしてビックリした」みたいなことが書かれていて、ホッコリしましたね。「あ、喜んでたんや」みたいな(笑)。

▲実は昨年の東京公演の前にライアンにインタビューしているんですけど、やっぱりそこでも凄いシャイな印象を受けたんですね。でも、その後TwitterやInstagramに続々とUPされる写真とかを見ていると、かなりノッてるというか楽しんでる様子が見て取れたので、僕には心を開いてくれなかったのかなぁって思ってたのですが……。来日時の彼との会話で何か印象に残っていることはありますか?

ぼちぼち楽屋でSubmerseとかと一緒に喋っててましたけどね。いや、だからアレですよ、僕らとかとノリ合うんですけど、いわゆる“ネット弁慶”というかなんというか(笑)。まぁとにかく“オタクっぽい”っていう感じなんですよね。直接喋ってると何かノリ悪いなーって感じなんだけど、帰ってからブログ見ると凄い喜んでたみたいで、「なんやねん!笑」みたいな。日本の僕らと同じような人間がカナダにも生まれてしまったんやなーって思いましたね(笑)。だからこそマルチネとか僕らみたいなのと気が合うんだろうなとも思いますしね。

■最初にデータを交換した時から「いつか一緒にやりたいね」という話は出てたんですか?

いや、あんまりなくて。何かQrionみたいな可愛い女の子とか好きみたいだし、Tomgggみたいな海外ウケしそうな、いわゆるKawaii系のサウンドが好きなんだと勝手に思っていたので。一緒にやってて面白いけど、僕とSeihoみたいな感じですよね。“Seihoはカッコイイ系だからな”っていうのと同じ感じで、“ライアンはKawaii系だからな”って思ってたので、その話が来た時は結構ビックリしましたね。

▲では、その、ライアンのアルバム『Alone For The First Time』の日本盤に限定収録された共作曲“Inside The Heart”についてお聞きしたいのですが、まず話がスタートしたのはいつ頃だったんですか?

来日公演の後くらいだったと思うんですけど、ライアンから「アルバムの日本盤が〈Beatink〉出るから一緒にやろう」って連絡がきたんで、「じゃあやろうか」って返して、一応裏を取るために〈Beatink〉の方に連絡したら実はまだその段階では日本盤リリースは確定していなくて(笑)。もう出るもんだと勘違いしてライアンの先走りだったっていう(笑)。まぁでも面白いからとりあえず曲は一緒に作ろうってなって。

▲制作の分担はどんな感じでしたか?

まずライアンから「ヴォーカルを入れて欲しい」って言われて。最初は「え? 自分がヴォーカルでいいの?」みたいな。それでライアンからビートが送られてきて……、最初本当にわけわからないトライバルな感じのビートだけがきて、どうしよう……って(笑)。だからピアノとかシンセで強引にコード乗せて、ポップにねじ伏せた、みたいな感じですね。メロディもほぼ僕が書いたし。でもデータのやり取りは全部で2往復くらいですかね。4日間ごとに向こうから来て、こっちが出して、来て、出して、で終わり(笑)。お互いに「いいね」「いいね」ってやりあっただけ(笑)。全然向こうからのディレクションもなく、僕が最後に「この音消さないでよ」とか言ったくらいで、逆に「こんなんで良いの?」って聞いちゃったくらいアッサリと完成しました(笑)。

■えー、それで終わりなんですか(笑)! ライアンは「えー、全然大丈夫だよー」って感じなんですか?

「最高!!」みたいな(笑)。僕も「最高!!」って返して終わり、みたいな(笑)。

■へぇー。でも聴いてる側としては、お二人から出てきた曲が濃い印象を受けたんですよ。

僕は結構サラッとしてる気がしましたね。シンプルだし。

▲煮詰めて作業した結果、あえて削いであのシンプルな曲ができたのかなと思ったんですけど。

あー。ライアンはもともとそういうの好きじゃないはずですよ。あの人はずっとシンプルなものが好きなんだと思います。イメージですけどね、はい。

▲なるほど。曲のメロディはtofubeatsさんが書かれたということですが、でも、あのメロウな雰囲気はライアンの2ndアルバム全体にも通ずるものですよね。

そうですね、部屋でひとりでやってる感じというか。そこが元々好きなんですよね。Tinasheを招いた“One For Me”とかも凄いイイし。あれ、ビデオがグッとくるんですよ。“成り上がったナード”みたいな。「ライアンがスポーツカーとか乗ったらウケるからやろうよ!」みたいな、わかっててやってる感も凄い伝わってくるし、なんか一種僕のやりたい方向性のひとつでもある。あとちょっとだけ“No.1”っぽいし。ビデオを見た時にすぐ思って。数字の1(ワン)も入ってますしね。(自分たちと)地続きな感じもします。実際SoundCloudとかでチェックしてるモノもそんなに変わらないと思うんですよ。共感するところは凄い多いですね。

▲ライアンはクラウド・ラップなどのヒップホップ・シーンや〈PC Music〉などのネット・レーベル界隈との親交がありながらも、それはあくまで親交止まりで、LAのプロデューサーたちを中心としたWediditにも名を連ねていますが、そこでも物理的距離のせいかどこか深くコミットしていないように思えます。そういった点でも彼とtofubeatsさんは共通しているような気がしますね。

うん。だから、ライアンもひとりなんだなーっていうのは常々感じていましたね。ホテルに泊まって結局サラダ食べてるっていうか。さっきの“One For Me”のMVでも、スポーツカーから下りてファンに囲まれて一緒にセルフィーして、何事もなかったようにひとりでホテルに帰っていくじゃないですか。あのシーン観た時、僕ちょっと泣きそうになりましたもん(笑)。

■表で盛り上がってても別に自分は……っていう。

そうそう。音楽で成り上がっていっても中身は変われないっていうか。そういうところを表現しているのは良いなと思いますし。あとはたぶん純粋にひとりが好きなんでしょうね。

▲ライアンもtofubeatsさんも自身の楽曲にゲストを招くことが多く、実はあまり自分が前に出ることを好んでいない感じが伝わってきますよね。

本当は得意では無いんだけど、ひとりでやっているから仕方なく前に出るしかないっていう(笑)。

■以前tofubeatsさんが『Cinra.net』でやられていたSugar’s Campaignとの対談で、アルバムやトラックを作るのは「火曜夜10時くらいからのテレビドラマの脚本を書いて、キャストを集めてる感じ」というようなことを仰ったのが印象的だったのですが、ライアンの場合は……。

もっとパーソナルですよね。

■海外ドラマのちょっと濃い目のハイスクール・ドラマのような感じというか。でも思いのほか濃さという点ではtofubeatsさんの世界観とリンクしてくるというか。

まぁ、ひとりでやっていく以上そうなっちゃうのはある程度仕方ないのかなって気もしますけどね。ライアンからは孤独を感じますよね(笑)。アルバムのタイトルにもなってますけど。それが持ち味というか。

■はじめは彼は主役ではないんだけど、段々と進むにつれてストーリーを動かす存在になっていくみたいな脚本のアルバムを作りますよね。

やっぱり彼は不思議な立ち位置ですよね。僕にはまだJ-Popっていうある程度“アゲ”る必要性があったりしますけど、彼は“アゲ”る必要性はないわけだから……。そういう意味で(自分よりも)もっと孤独な部分が浮き彫りになってるのかなって思いますね。僕も何も考えずにほっとかれた状態で音楽作って良いよってなったら、クラブのこととか考えずにああいう感じでやりたいっていう気持ちもありますから。あと、ちゃんと枚数(売り上げ)出てるのいいなーって思いますね(笑)。

▲そういえば、ライアンの地元はカナダのハリファックスで、ちょっと神戸と似ているように思うんですね。都会と田舎の中間ぐらいの都市で、住みやすい街と言われてるみたいですし。

はいはいはい、地方都市(笑)。

▲ライアンも地元では音楽を一緒にやるような友達がいなかったらしく、ライヴをするのにもトロントなどに出向いていたそうです。こういう環境っていうのも彼が持つ寂しさの正体のひとつなのかもしれませんね。

そうですね。っていうかそういう時代なんですよね。そういう地元にコミットできなかったようなやつらが集まったのが、日本で言えばマルチネだったりとかするわけで。たぶんライアンの〈secret songs〉(ライアンがマイペースに運営しているレーベル)も同じような感じなんじゃないですかね。誰と喋っても友達いなさそうですもん(笑)! たぶん「dj newtown(tofubeatsの別名義)を聴いてカットアップを始めた」と公言していたMeishi Smileとかも同じですよね。Tシャツ送ってあげたらめっちゃ喜んでましたもん(笑)。お互いに、孤独を紛らわすために音楽をやっていたような連中が、ネットを通じて世界中に繋がれるようになったっていうだけであって。あとはそういう人たちが音楽をやっても良くなった時代っていうのもありますよね(笑)。

▲ライアン曰く『Alone For The First Time』では、エモやロックを聴いていた高校生くらいの頃に戻る、一種の原点回帰のようなことをしたかったと語っていたのですが、tofubeatsさんはそういった原点に一度立ち返ろうって思うことはありますか?

僕はずっと出してるっちゃ出してますからね。僕はヒップホップ上がりで、打ち込みから入ってるんで。逆に言うと、バンドやってから打ち込みに変化したっていうならそういう気持ちになるかもしれないですけどね。でも、今回はライアンが日本に来てた時にあらかじめ「次のアルバムにAlex G呼んでるんだよね」っていうことを言われて。それ聞いた時は舞台袖で「ウワーー!」ってなったのを覚えてますね(笑)。「ウワーー!」って言ったの覚えてます(笑)。

▲まさにAlex Gとの曲のイメージがtofubeatsさんとのコラボに繋がってるような感じがしてました。

僕、昨年のベスト・アルバムのひとつにAlex Gの『DSU』を選んでいて。「でも、Alex Gって2人いるんだけど、君が好きなのは本当にそっちの方?」とか言われて、「あの『DSU』出してる方だよ」って言ったら「あー、それそれ」みたいになって。「エェーー、最高じゃないですかー!」ってなって(笑)。でもAlex Gを呼んだところとかはロックっぽいですよね。Alex G自体がSSWなんで。でも「そこ繋がるかー」って思ってめっちゃブチ上がりましたね。Bandcampセレブたちの交流が、って。だから時流にかなって思いますね。打ち込みっていうよりかは、概念としてはSSWと同じ。SSWみたいになってるじゃないですか、ひとりでパソコンで作ってるから。それの極地みたいな雰囲気はライアンのアルバムから感じますね。

■ライアンもtofubeatsさんも、3分から4分の曲を作ってるけど、どれも基は短いサンプルとかパターンとかパーツの繫がりを繰り返して作ってるっていうのは共通点ですよね。

そうそう、だからずっとライアンはヒップホップ上がりだと思ってたんですけど、ギターとかやってたって聞いてビックリしましたね。でもそういうトラックの作り方はヒップホップから始まってるのかなと思います。でも僕は絶対にヒップホップの影響なんで。“曲作りはループを作ること”みたいな風に学習してしまったので。

■ライアンと同じプロデューサー/トラックメイカー的な目線から見た、ライアンのトラック・メイキングの魅力的なポイントはどういった点でしょう?

やっぱりひとりっぽいところですよね。これがなんとも言いがたくて、ひとりっぽいやつっているんですよ。自分もそうなんですけど、「あ、こいつひとりでやってんな~」っていうのが伝わってくるのが好きなんですよね。今回のアルバムもタイトルを見た瞬間に7インチ予約しちゃいました。あとから参加することになるとは知らなくって。“Snow In Newark”が去年公開された時にMV観て、アートワーク見て、すぐに注文しましたもん。結局自分が参加した日本盤が出来上がった後に7インチ届いて、「どんだけ遅いねんLast Gang!」って思いましたけどね(笑)。あと、ライアンは……良い意味で凄いインスタントな感じというか、作業も早いしハードも使わないし。『サウンド & レコーディングマガジン』のインタビューで見たんですけど、部屋にある機材がスピーカーとギターくらいしか写ってなくて、オーディオインターフェイスも凄い安いやつだったんですよ。本当にノートPCで完結してるんだなーっていう。ライヴもイヤホン出しからやってますからね、彼。(イヤホン出しからライヴをやっている人は) Himuro Yoshiteruさん以来でしたね(笑)。

▲イヤホンジャックから出力してるっていうのは凄いですね(笑)。

でも、なんかわからなくもないんですよね。「別にそれで良いじゃん」っていう感じで。あと、ライアンのライヴはだいたい全部お手製のブートとかマッシュアップのみを使ってるんですけど、そういうところは僕凄い好きですね。既成曲を使わないというか。あとはtomad社長とかと一緒で、“PCでDJを始めた人のDJ”っていう感じですよね。よく言ってるんですけど、彼らのプレイにはCDとかレコードみたいな円盤を回してるイメージがないんですよね。その代わり波形の棒をフロアにブン投げてるっていう感じ(笑)。これはなんとも他に例えにくいんですけどね(笑)。

■いや、その例えわかりやすいですね(笑)。

でもDAWの画面を見ているようなDJなんですよね、どちらかと言うと。全部が同期してて、あとは上げ下げみたいなDJなんで、組み立て方が違うんですよね。かけるトラックが人が繋ぐようじゃないんですよ、同期で入れるから(笑)。CDJとかを使っている僕たちとは根本的に違った組み立て方を、無意識に行っている。そういう部分は凄いトラック・メイキングにも表れている気がしますね。

▲少し話題は変わりますが、この度リリースされたtofubeatsさんの新作『STAKEHOLDER』も、ライアンに通ずる“ひとり感”が出た、パーソナルな内容になっていますよね。事前情報ではクラブ・ミュージックに寄せて作ったと聞いていた割に、蓋を開けてみると結構メロウな感じで少々意外でした。

より少人数ですね、今回は。フロアを意識していないけど、フロアっぽいやつっていうか。“STAKEHOLDER”も現場でかけるとあんまり派手じゃないですよね。

▲クラブに行ったことのない人が作ったクラブ・ミュージックみたいな感じというか。

そうですね。昔dj newtownでやってような気分に戻りたかったというか。クラブに行ってないけど家でやってたみたいな。なので『Lost Decade』になぞらえて同じように経済用語を使ったのも、もうタイトルから昔のような気分でやろうっていうのがあったからなんですよ。それで『STAKEHOLDER』っていうタイトルにして、それありきで曲を作っていったんです。
でも昔のようにサンプリングを合法にできなくなってしまったので、“STAKEHOLDER”のパラデータをサンプリングした“STAKEHOLDER -for DJ-”を作ったり、並行して作ってましたね。

『ele-king』の砂原さんとの対談でも合法にサンプリングできないっていう話されてましたよね。

そうなんですよ。サンプリングはしたいけどできないから自分の曲をサンプリングするっていう。Vogue(というジャンルでの定番のサンプル・ネタ)の「ハッ!」っていう音も自作したり。今回はそういう作業が多かったですね。

▲「STAKEHOLDER」という単語をチョイスしたのはなぜですか?

単純に経済学部だったので頭の中には入ってたんですよ。あとは“使いたい単語シリーズ”みたいなのがあって、そこに書き留めていた中から選んだっていう感じですね。

▲今作の唯一のゲストであるokadadaさんを招いた“T.D.M. feat. okadada”はディスコ調の歌モノですよね。

そうですね。唯一ポップスみたいな曲です。保険じゃないですけど。Mayer HawthorneKISSを交互に聴きながら作った曲ですね。

▲okadadaさんは最近やたらTuxedoにドハマりしてるみたいですね。

2年前にフリーで3曲出た時から2人の間ではかけ続けてたんですけどね。MVが出て、レコードが出て、俺たちもう大騒ぎみたいな感じです。アルバムにはその3曲がマスタリングされて出音が凄い良くなって収録されてるんですよ。

▲今作はこの流れで次へと行くというよりは、また新しいモノを作るために一度昔の頃のような気持ちに切り替えるため、というような感じなのでしょうか?

リセットじゃないけど、前回のコラボみたいなああいうことをやることはあるから、間に1回ちょっと挟んで、今度はこういうの、みたいな。ここ最近は色々な人とコラボしてポップなモノばかり作っていたので、“本来の自分ひとりでやってたのってどんな感じだったっけ?”っていうのがあって。だから今回はokadadaさんだけ招いて、マスタリングも関西でやって、マネージャーがいて、っていう実質ほぼ4人で作ったと言っても良いくらいで。あの気持ち悪いMVとアートワークはスケブリとかが関わっていますけどね。ぶっちゃけ一番お金がかかったのがあのアートワークのグラビア撮影なんですよ(笑)。

■そうなんですね(笑)。いまコラボの話が出たのでまたライアンに話を戻すんですけど、ライアンが手掛けてきたコラボって、tofubeatsさんとokadadaさんとはまた違ったタイプの、「友達のココが凄いから見てくれ」みたいな感じがするんですよ。でも、相手の長所をちゃんと活かしてるんだけどちょっと曲がってるというか、いまっぽい愛情表現の中で為されていると思うんですよね。

いや、でもライアンにとってはたぶん友達っていうよりは“フォロワー”っていう感じだと思いますよ。いまの時代は流れていくスピードが早いから、チャチャッとやって「はい、解散」みたいな。ライアンは誰に対してもそういう印象が強いですね。全部好きだし、サラッとやろうかなみたいな。

▲なるほど。彼はそういうフットワークの軽さも彼の魅力ですよね。彼は最初ヒップホップから出てきて、チルウェイヴとかウィッチハウスっぽいこともやりつつ、いまはまた新たな方向に向かってて、その時々の時流に合わせて自分のスタイルを飄々と変えていっていますよね。

そうそう、どんどんメランコリックになっていってますよね。

■そういう彼の変化はどのように映りますか?

でも、僕自身がやっていることと同じで、全部好きなんだけどそれをそれぞれに適したタイミングを見ながら順番にやっていっている感じがしますね。だから、ヒップホップをやってた最初の頃から大筋は変わってないんじゃないですかね。ライアンって俗っぽい感じはないじゃないですか。だからヒップホップやってた時から周りに合わせてるっていうつもりもなかったんじゃないですかね。スタイルが変わっても、聴けばライアンっぽさっていうのはわかると思うし。でもひとりでやってても変わっていけないから、変化をもたらすために新しい人とコラボやってるんじゃないですかね。

▲tofubeatsさんがこれまでに様々なアーティストとのコラボを行ってきたのにも同じような狙いがあったんですか?

もちろん。変化を求めてやっているっていうのが一番大きいです。だから同じ人ばかりじゃなくて、次のアルバムでもたぶん全然違う人とやるだろうし。『STAKEHOLDER』もひとりでやってみたのはコラボを色んな人とやって、動き回ったから、1回ひとりで久しぶりにやってみようみたいなとこがあったんですよ。だからコラボは新鮮に続けるためのやり方の1つって感じがしますけどね。

■ライアンの場合、日本人のプロデューサーとのコラボを通してJ-Popとか日本っぽいメロディー感を盗もうとしてるようにも見えるんですけど。

そうですね、でも“盗もう”っていうよりかは、“自分の中にないモノを足して2で割りたい”みたいなことだと思います。なんか誰かと一緒にやることで学ぼうっていう感じでもないんですよね。僕らもそうで“ライアンと一緒にやって何かを学ぼう”っていうよりかは、単純に“一緒にやったら面白そう”っていうインスタントな気分だと思うんですよ。みんなめっちゃ考えてやってるわけじゃないと思うんですよね。

■そこに野心があるわけではないというか。

そうそう。なんか「タイムラインでよく見かけるから一緒にやらへん?」みたいな。もしくは「掲示板でよく見かけるアイツとコラボしてみようかな」くらいの感覚なんじゃないですかね。「Grime Forum」みたいな(笑)。フォーラムみたいな感じだと思うんですけどね。

■あぁ、なるほど(笑)。ライアンはカナダの出身だから、彼のベースにはヒップホップとかR&Bとかアメリカの音楽があって、例えばヴォーカルをセクシーに魅せる時のアレンジも自然とアメリカっぽくなると思うんですよ。でも、彼もそれに気付いているからこそ、Kawaiiからくるセクシーさも表現したいなって彼なりに憧れを抱いてる部分もあるのかなと思うんですよ。

まぁ、だからどっちもどっちですよね。だいたい海外の人が日本を持ち出す時に、Kawaii的なモチーフが出てくるのって、そういうことなのかなって思いますね。でもライアンはもともとJ-Popネタのブートをいっぱい作ってましたし、日本に来た時も『トトロ』のブートとかかけてましたし。だから、僕らがMain Attrakionzとか聴いて「いいな、でもこれは日本ではできないな」って思うのと同じ感じだと思いますけどね。あと、そもそもMain Attrakionzとライアンが一緒にやってたって言ってもたぶんあれ、ネット経由ですよね。だから実は英語が通じるか通じないかの違いだけで、実は僕らと一緒にやってるのとほとんど同じ感覚だったんじゃないかって思います。

▲tofubeatsさんは、今回遂に共演を果たすことになる(3月27日にAIRで行われた『Mad Decent Night』で共演した)〈Mad Decent〉のLizとのコラボも話題となりましたが、制作はどういった経緯で始まったのでしょうか?

元々僕が所属している事務所の方に、Paul Devroっていう〈Mad Decent〉のA&Rと友達の人がいて、僕と彼を引き合わせたいからっていうことで日本で行われたイベントで共演させてくらたんですよ。でもその日、僕がクソみたいなDJをしてしまって。「もう今日のDJは最悪だったのでお金要りません、帰ります」って言って帰ったんですよ。何も観ずに(笑)。そしたら後日「あの日のDJはライフチェンジングだった」って連絡がきて、「うそー?」みたいな(笑)。「そんなことはない」って言ったんですけど、「ギャラの代わりや」みたいな感じでBBCのオファーをくれて。そこから色々繋がっていったっていう感じですね。でもLizと会うのは今回が初めてなんですよ。制作の時も会わなかったので。

■Lizを魅せる時にライアンのプロダクションで参考になったことはありましたか?

いや、正直最初はもっとバカクサいトラックを送ったんですけど、「いや、そういうのじゃないんだよね」って却下されたので、前々からやりたいってずっと思ってたパラパラを上手く今の雰囲気に当て込んだモノを提出したら通ったっていう。パラパラとトラップが混ざったような、キメラみたいな感じですよね。実はパラパラからトラップに繋ぐっていうのをDJでは3年くらい前からやってたんですよ。HINOIチームからBaauerの“Higher”にスゲーぴったり繋がるんですけど、DJでずっとやっていたその繋ぎを曲にしたかったので、やっとそれを良いタイミングで表現できたというか(笑)。

▲そうしてあの衝撃のパラパラ・コラボが発生したんですね(笑)。海外のアーティストとメールのみでやり取りをしながらコラボしていくことについて、何か心がけていることはありますか?

何にもないですね(笑)。シカトもするし、やりたいやつとしかやらないし(笑)。そういえば昨日も「Rinse FMでかけたいから“STAKEHOLDER”ちょうだい」っていうメールが届いてて、送ってあげました。その代わり、絶対「何かちょうだい」って僕からも言うんですよ。たまにやりとりしてる人っていうのも何人かいて。Red Bull Music Academyに参加したオランダのやつとか。あとはtomad社長とかがロンドン行ったり、周りの皆がうまいこと海外に行ってくれて、DJで曲をかけてくれるから、パイプができて俺が楽みたいな(笑)。そもそもMeishi Smileはdj newtown好きって言ってくれてましたし。Meishi Smileなんて、僕のサイトから物販買ってくれたのがきっかけで知り合ったんですよ。最初にアメリカに僕のTシャツを送ったのがMeishi Smileの注文だったんですよ。そういうのでやり取りが始まるんですよ。

■さっきのHappen Clothingの話と被りますね。

そうそう、クラウド・ラップ好きだしHappen Clothingで服買おうって初めて注文したら、凄い手紙がついてて。なんか「君が日本で最初の客だ! ありがとう!」みたいな(笑)。いまでも年1回は買ってるんですけど、毎回一筆くれるんですよ。海外に送ることなんてあまりないでしょうからね。

■tofubeatsさんは海外に行こうとは思わないんですか?

僕が体調の問題で6時間以上飛行機に乗れなくて、欧米に行けないんですよ(笑)。アジアには行きたいなっていうのはあるんですけどね。ロンドンもみんな楽しそうで羨ましいなって思うんですけどね。飛行機乗りてぇなみたいな感じですね(笑)。

▲でもどうなんでしょう、ライアンみたいに行ったら行ったで海外ではひとりになっちゃったりするんですかね。

だから1週間ぐらいで帰って来れたらいいなって思ってますね。旅行です。ライヴして帰ってくるみたいな。あとどんどん皆の趣味が一緒になっていくから、そんなに変わらないと思うんですよね。日本が最近注目されてるのはネットが広がっても、日本語は読めないからだと思うんですよ。中東が注目されてるのもそれがある。だから被英語圏を探していかなきゃいけないなと思うんですよね。

▲では、tofubeatsさんが勝手に予想したとして、今後ライアンはどんな変化を遂げていくと思いますか?

たぶん〈secret songs〉とか始めたので、ちょっと“アゲ”の方向に行くのかなって気はします。

▲“アゲ”っていうのは、〈PC Music〉界隈などのようなダンス・ミュージックっぽい感じでしょうか……?

〈PC Music〉っぽい感じとか、“Snow In Newark”みたいなのが続くよりかは、もうちょっとだけフロア寄りになるのではないかなーっていう気はしています。

▲インタヴューした時は、「〈secret songs〉は片手間でやってるから」みたいなことを言ってたんですけどね。

確かに片手間っぽいですよね。ただでもああいうのを見ていると志向がわかるというか。正直、今作で前のアルバムよりさらにテンションが落ちたモノをもってくるとは思ってなかったので……『Alone For The First Time』って名前でやっちゃったら次はふたり以上にするしかないんじゃないかなっていう風にも思いますね。次はもうちょっと踊りやすい感じになるのかなって。それか、ギターも自分で弾いてるみたいなんで、さらに突き詰めて弾き語りとかやったら面白いですよね(笑)。


tofubeats『STAKEHOLDER』

Now on Sale!! (2014/04/01 Release)
WPCL-12073
Price:¥1,620 ( 税抜:¥1,500)

初回出荷仕様:
スリーブボックス仕様
tofubeats本人による収録曲全曲2,500字解説を封入。

トラックリスト
1.SITCOM(intro)
2.STAKEHOLDER
3.window
4.dance to the beat to the
5.STAKEHOLDER -for DJ-
6.She Talks At Night
7.T.D.M. feat.okadada
8.(I WANNA)HOLD
9.衛星都市

【『STAKEHOLDER』CD購入特典】
■Amazon.co.jp限定 先着購入特典
<SPECIAL TRACK(S) DOWNLOAD CARD>
Amazon.co.jpにて、「【Amazon.co.jp限定】STAKEHOLDER (SPECIAL TRACK(S) DOWNLOAD CARD付き)」を予約/購入いただいた方に先着で、
ここでしか手に入らない特別な楽曲がダウンロードできるシリアルコード入りの
“SPECIAL TRACK(S) DOWNLOAD CARD”をプレゼント!

・ダウンロード期間 / 2015年4月1日(水)12:00 ~ 2015年4月30日(木)23:59
・特典カードは商品購入時、商品と同梱でのお渡しとなります。
・CD1枚購入 / 予約につき1枚のカードを差し上げます。
・特典カードは無くなり次第終了とさせて頂きます。
・ダウンロードはパソコンからのみ可能です。スマートフォン及びフィーチャーフォンからはDLできませんのでご了承下さい。
・その他詳細は、カード裏に記載のダウンロードサイトでご確認ください。

【ダウンロード楽曲】
・winstrumental
・T.D.M. feat okadada (instrumental)
・衛星都市(instrumental)

■TOWER RECORDS限定 先着購入特典
<ステッカー>
*対象店舗
タワーレコード全店
・特典は限定数量のため、なくなり次第終了となります。予めご了承ください。


Ryan Hems Worth『Alone For The First Time +5』

label: LAST GANG RECORDS / BEAT RECORDS
release date: 2015/02/28 (Wed) ON SALE

国内盤CD BRC-456 定価 ¥1,800(+税)
国内盤特典:ボーナストラック追加収録

beatkart: http://shop.beatink.com/shopdetail/000000001891/
amazon: http://amzn.to/1wUa1Af
Tower Records: http://bit.ly/1zTr0ng
HMV: http://bit.ly/1v8JyJW

Track List:
1. Hurt Me
2. Walk Me Home (with Lontalius)
3. Snow In Newark (with Dawn Golden)
4. Blemish
5. Too Long Here (with Alex G)
6. Surrounded (with Kotomi & DOSS)
7. By Myself (with The GTW & little cloud)
8. Every Square Inch (with Qrion)
9. Inside The Heart (with tofubeats)
10. Cream Soda (with Tomggg)
11. Snow In Newark (with Dawn Golden) [XXYYXX Remix]
12. Walk Me Home (with Lontalius) [Live Version]


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