Ryan Hemsworth
FEATURE

Interview / Ryan Hemsworth


インターネット上を中心に、シーンも国境も縦横無尽に駆け巡る活躍ぶりをみせる新世代プロデューサー、Ryan Hemsworthを初来日時にキャッチしてきました!

2014.10.31

Main AttrakionzThe UnderachieversShady Blazeといったネット上をメインにバズを拡大させていった新興ヒップホップ勢、音楽的な特徴から“クラウド・ラップ”とも称されることの多い彼らのようなアーティストへのトラック提供やプロデュース、そしてFrank OceanKanye WestRhyeなどのリミックスを経て、徐々に頭角を現してきたカナダはハリファックス出身のプロデューサー、Ryan Hemsworth(ライアン・ヘムズワース)。
しかし自身のオリジナル・トラックを多数発表するようになるにつれ、次第にその“ヒップホップ〜R&B畑のプロデューサー”というイメージは薄まっていくことに。

とりわけ昨年リリースのEP『Still Awake』(現在でもname your priceでDL可能)とその数ヶ月後にリリースされた1stアルバム『Guilt Trips』では、ヒップホップ〜トラップ的要素も強く感じさせながら、より幻想的な逃避感覚を増した、チルウェイヴ以降の感覚で解釈されたR&B、ベース・ミュージックを展開。

さらに『Still Awake』では日本のプロデューサー、Taquwamiをリミキサーとして起用し、今年に入ってからは札幌のQrionや千葉のTomgggなどともコラボし、ますます日本人プロデューサー/トラックメイカーとの交流が盛んになってきた絶好のタイミングで、まさかの初来日公演が実現。

招聘したのは個性的なアーティストを多数抱えるアニメ制作・マネジメント会社、ODDJOB Inc.
RyanをtofubeatsPunpeeSeihoら気鋭の国内勢が迎え撃つ形で催されたODDJOB設立10周年のアニヴァーサリー・イベント、“RADIOSHOCK!!!”の直前に対面インタビューを行うことができたので、様々なことを訊いてみました。

Ryan Hemsworth Interview

Interview:Takazumi Hosaka
Translation:Aoi Kurihara


―初めての、そしておそらく待望だったであろう日本に、遂に来られた感想はどうですか?

日本に初めて来られてとても嬉しいよ! 早速原宿や渋谷、あと秋葉原とか色々行ってみたよ。明治神宮とかも行ってみたんだけど、僕はどちらかというと寺とか神社みたいな伝統的なものよりも、東京の近代的な街並みに惹かれるね。

Japan Timesのインタビューで、日本に行ったら色々なゲームを買ったりお寿司を食べたいと言っていましたが、既に実現しましたか?

もちろん食べたよ。あとはラーメンとかも食べた。カナダでもそういった日本食は人気なんだよね。ゲームはリージョン・コードの関係でカナダに持ち帰ってもプレイできないから買うのやめたんだ。(笑)

―なるほど。(笑)
では音楽の話に入らせて頂きたいのですが、あなたは13歳の頃にギターを始めたそうですが、そこからPCでの音楽制作へと移ることになったキッカケなどがあれば教えてください。

最初は確かにギターを始めて、自分でレコーディングとかをしていたんだけど、ドラムとか他の楽器も全部自分でやりたかったんだ。PCを使えば全部一人でできるから手っ取り早いよね。それからミックスとかサンプリングをすることの方にもっと興味が湧いたんだ。DJもやるようになったしね。ロック・ミュージックからダンス・ミュージックへシフトしたのはちょっとしたアクシデントみたいなもので、これといったキッカケはないかな。

―リスナーとしてロックからヒップホップやダンスミュージックへと移行したのも同じような時期、経緯なのでしょうか。

このジャンルが好き、とかジャンルに縛られる人もいるのだろうけど、僕はそもそもジャンルに捕われずに音楽を聴くようにしているんだ。ロックもポップもラップも好きだよ。ジャンルよりもどこの国の曲かというところは意識して聴いてるけど。音楽をディグる時はジャンルを気にしないで探してるんだ。

―あなたが日本への興味を抱き始めたのは北野武や三池崇史などの映画からだそうですが、そこからどのようにして日本のカルチャーなどを掘り下げていったのでしょうか?

僕の育った町はアジアのカルチャーが浸透していたから、そもそも日本のカルチャーは物心ついた頃から僕にとっては身近なモノだったんだ。本当に至る所に日本のカルチャーはあったよ。あとはネットを使ってブログを見たり、記事を読んで日本のカルチャーを掘り下げていった。例えば14〜15歳ぐらいのときにネットでCorneliusの存在を知ったりしたしね。自分でも何でかはわからないんだけれど、昔から日本の文化にとても魅力を感じているんだ。

―その魅力というものは、最初はいわゆるエキゾチシズムのようなものからきているのでしょうか?

昔も今もそこまで僕の感じる日本の魅力は変わらないよ。確かに多くのカナダ人は日本を他のアフリカやアジアの国々と同様に、オリエンタルでミステリアスな存在として認知しているかもしれない。でも、僕は日本の文化を詳しく知っているつもりだから、そういったエキゾチシズムのような魅力は感じていないかな。また、日本の人と実際に話をしたり、今回初めて日本に来たことによって、日本という国がもっとリアリティのある存在になったよ。

―昨年リリースされた『Still Awake EP』にTaquwamiがリミキサーとして参加し、その後もQrionやTomgggといった日本のトラックメイカーとも多数コラボしていますが、彼らのどういった点に惹かれますか?

これまでいろいろなプロデューサーと一緒に仕事をしてきたけど、日本のトラックメイカーとの方が自分の思い描いている曲のイメージを共有しやすいし、なにより気が合うんだよね。最近はTwitterとかSNSをつかってやりとりをしているから、遠くにいてもコミュニケーションがとりやすくなったし。なんでかわからないけど、アメリカやカナダのアーティストたちよりも日本の人たちと仕事する方が心地良いんだ。違うカルチャーを持つ人たちとの方が、価値観が違うことが最初からわかっているから、曲を作るときに逆に衝突しづらい気もするしね。

―あまり話題になっていないように思いますが、NoiseyのFofofadiクルーのインタビュー記事内で、UKのプロデューサー、Sophieとあなたがきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボを進行させていると書いてありました。もし可能であればその詳細について教えてもらえますか?

Sophieはコラボするみたいだけど、僕は違うよ。ただリミックスしただけ。でも僕も彼女の大ファンだから、やっぱりいつかはコラボしてみたいよ。

(※上記のNoiseyの記事も現在では当該部分が修正されております)

―そうなんですね。では、そのSophieとの出会いのキッカケを教えてください。

Sophieが2年前に「BIPP」という曲を作ったんだけれど、それを聴いて自分と近しいサウンドだと思って気に入ったんだ。メールなのかSNSなのかどこからコンタクトを取ったかは定かではないけれど、とりあえずその時連絡してみたら返事が来て、自分たちの音楽をシェアしたりして友人関係が始まったんだ。彼は素晴らしいプロデューサーだよ。

―ちょうど昨日、あなたの2ndアルバム『Alone For The First Time』が11/4にリリースされることがアナウンスされましたね。私たちに新作がどのような作品になっているか、少しヒントをくれませんか?

僕が音楽を聴き始めたころ、つまりロックを聴いてた頃に戻ってみたくなったんだ。ギター音とかシンガーを入れたりして。このアルバムで原点回帰をしたかったんだ。エモを聴いていた中学生の頃とか、そういった過去があってこそ今の僕がいるわけだからね。そういったエモやロックの影響も今回のアルバムには表れているんじゃないかな。あとはEDMとかの要素も取り入れてみた。今、EDMのフェスとかが多いし、どれも盛り上がっているからね。

―アルバムに参加しているゲストのメンツが意外だったのですが、どういった意図でチョイスしたのですか。

今作では歌に重視をしたかったから、自分のサウンドに合う声の人を選んだだけだよ。ビッグ・アーティストとコラボしたいという気持ちはないね。“僕自信がエモーショナルなモノを感じ取れる歌声を持っている人”っていう基準で選んだんだ。だからビッグ・ネームがどうかは気にせずに決めたよ。

―そのゲストたちとはスタジオで共に作業したのでしょうか?

いや、レコーディングは別々で録ってる。僕がまず最初に一人でサウンドを作って、それをアーティストたちに送って歌声を吹き込んでもらったんだ。彼らは世界各国に散らばっているからね。みんなベッドルームなりスタジオなり自由なところで録音してたよ。そしてその録音したものを僕のところに戻してもらって、僕が仕上げたんだ。

―あなたの別プロジェクト、Secret Songsの展望はどうでしょう。

説明するのが難しいんだけれど、このプロジェクトはただ単に良い音楽をシェアするために作ったものなんだ。ただ単純に音楽を楽しめれば良いかなと思って。
だから全く知られていないけどとても良い音楽を見つけて、それをコントリビュートしたり自分の曲にフィチャーすることで広められれば良いかな。

―最近、インターネットから出てきたアーティストがインターネット以外の場で活躍してきていると思います。ますますネット界隈のアーティストが活躍していくと思いますか?

そうだと思うよ。今はプロデューサやDJが売れている時代だよね。コーチェラとかのフェスでもトップにいるのがEDM系のDJだし。ここ10〜20年でPCが急に発展してきて今がとてもプロデューサーやDJにとって有利な時代なんじゃないかな。今はPCで誰でも音楽が作れるし、オンラインでフリーで音楽も聴ける。今後も増々ネット界隈が盛り上がると思うよ。

―あなたにとってインターネットは常に近くにあるものなのでしょうか?

そうだね。いつもPC持ち歩いているよ。何かトラブルがあったときも使うし、一人で時間を過ごすときもインターネットを使っているね。もちろん音楽をディグる時もね。

―今夜のライブへの意気込みは?

とても興奮しているよ。BABYMETALのリミックスを今夜のために作ってきたんだ!
遂に日本に来れたから、今回は日本のアーティストの曲をたくさんプレイしたいね。Seihoや他の日本のアーティストのライブを見るのも楽しみだよ。

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