The Suzan
FEATURE

Interview / The Suzan


世界へ飛び立ったThe Suzanが日本へ帰還! 自主レーベル立ち上げから新作EPのリリース。そして今、彼女たちの目に映る国内シーンについて……!

2015.08.19

世界で通用するサウンド、スタイルへと目を向けるバンドは数多けれど、口だけでなく実際にそれをチャレンジし、見事実践することができているバンド/アーティストは、残念なことながらこの2015年においてもまだまだ稀有な存在と言えてしまうのが悲しいところ。
で、その数少ない世界を舞台に活動してきたバンドが地味に……という言い方は失礼ですが、日本に帰ってきて、新作をリリースしていることをご存知でしょうか?

彼女たちの名前はThe Suzan。長い間アメリカを拠点に活動していたので、若いリスナーの中には知らない人も多いかもしれませんが、Peter Bjorn and JohnBjornがアルバムのプロデュースを手掛けたり、A-Trak主宰レーベルであるFool’s Goldと契約し、リリースを果たすなどのお決まりの文句を並べると、彼女らのすごさが少しは伝わりますでしょうか……!

そんな素晴らしい存在でありながら、なんと彼女らの新作リリースに関する情報がほとんどのメディアで取り上げられていなかったのです!
アメリカへ飛び立つ前から個人的にファンで、ライブを何度も観に行っていた筆者ですらも、その報を知ったのはリリースの直前頃でした……。
もちろん自主レーベルでDIYな形でやっているからある程度露出が減るのは仕方ないにしても……これは……!と、自分勝手にひとりで憤っていたのですが、ここSpincoasterではご存知の通り(?)、1曲単位の簡潔なレコメンドが基本的なスタイルとなっているので、まだ新作からの曲が1曲もフル尺でネット上に公開されていない彼女らの動向について紹介することもできずにヤキモキしていたのです(勝手に)。

そこで、通常記事で無理ならインタビューをしよう!という結論が導き出され、この度の取材を敢行することに相成りました!
NYに活動拠点を移し、およそ5年もの間向こうのフィールドで活動してきたThe Suzanのこれまでの足取りや現状、そして今後の展望ついてはもちろん、長らく離れていた彼女たちの目に映る現在の国内シーンについてなどなど……様々なことについて答えてもらったロング・インタビューをお届けします……!

The Suzan Interview

Interviewer: Takazumi Hosaka
Header Photo: MAMIKO MIYAKOSHI

―まずありきたりなフレーズでアレなのですが、新作EP『Draw Your Dream』のリリース、おめでとうございます。

Rie & Saori:ありがとうございます。

—作品の話に入る前に、アメリカに活動拠点を移してから今までを早送りで振り返って頂きたいなと思っております。一番最初に長期で渡米したのは2010年頃でしたよね。

Saori:向こうに移住したのがちょうど3.11の頃だったんですよ。だから2011年ですよね。でも2010年の秋にも3ヶ月くらい滞在とかもしてたし、さらにその前からちょくちょくライブとかやりに行ってたりはしてたんですけどね。

Rie:もう正直あんまり覚えてないですよ。ざっくり5年です。5年くらいアメリカにいました。笑

—アメリカに拠点を移してからの5年の間で、リリースっていうのはデジタルのシングルのみでしたよね。ということは、その5年という期間の活動っていうのはツアーが大半を占めていたのでしょうか?

Rie:そうですね。あとは他のアーティストの作品に参加したりとかも。Fool’s GoldとかINGRIDのコンピにも参加したし、何かアニメーションのコンピにも参加してたりしました。

Saori:まぁ基本はライブ中心でした。途中で一旦スウェーデンでレコーディングしたりもしたんですけどね。まだリリースできてないんです。笑

—え? それはアルバムですか?

Saori:アルバムです。

—順序では今回リリースしたEP『Draw Your Dream』よりも前ってことですよね?

Rie:全然前ですね。

—それは、契約的な問題でリリースできないということですか?

Saori:そうですね、アメリカで契約していた頃の仕事なので。いつか出せればいいかな〜って感じです。笑

―なるほど。The Suzanとしては元々ずっとアメリカにいるつもりはなく、1年くらいで日本に戻ってくる予定だったそうですが、アメリカでの活動が長引いた理由を教えてください。

Rie:……単純にやることが多かったって感じですね。順番に仕事をこなしていったらこんな感じになってた、みたいな。笑

Saori:やっぱりいざアメリカに行ってみると、アメリカという国のおもしろさにどんどん気付き始めて。行ってみて思ったんですけど、やっぱり1年とかじゃわからないよね。アメリカっていうものを。

Rie:1年くらいじゃガッツリ仕事することもできないしね。

Saori:人間関係とか構築するのにも時間かかるし。

—向こうでの活動で、特に印象深かった仕事を挙げるとしたら何になりますか?

Saori:Chromeoにくっついて行ったUS〜カナダ・ツアーはすごい楽しかったよね。

Rie:楽しかったね〜、MNDRとかとも知り合えて。

Saori:他には美術館でのライブや、あとガール・スカウトみたいなイベントに呼ばれたりとかもして、そこでのライブは最高でしたね。

Rie:本当、ああいうところがアメリカのすごい良いところだよね。サマー・スクールみたいなところでクラシックを勉強するんじゃなく、ロックを勉強するっていう。本当に素晴らしいキャンプでした。

Fool’s Goldと契約し、全米大手通信会社VerizonのCMに楽曲が使われたり、DELLの企画でMVを作るなどして、アメリカを拠点に活動していくに至ってある程度充分な地盤が出来上がっているように思えたのですが、そんな状況の中、どうして日本に拠点を移したのでしょうか?

Rie:うーん、タイミングだよね。なんとなく。

Saori:元々最初は1、2年のチェレンジのつもりでアメリカに行ったっていうのもあって、ある程度力というか経験を身につけたら日本に帰ってこようっていうのも、選択の一つとして渡米当初から考えていたんです。で、今回タイミング的に色々ちょうど良かったっていうのもあって、この選択肢を選びました。

Rie:戻ろうとすればいつでも戻れるしね。それにアメリカに行く前はちょいちょい行ってたヨーロッパとかに行けなくなってしまったっていうのもあったし。やっぱりアメリカのレーベルと契約したから活動範囲がガッツリとアメリカになってしまって。アジアとか何か面白いことになってるみたいだけど、行けないし。っていう感じになってきて、何か違うよなって思い始めたんです。やっぱり好きな所に行きたい。なので、一回シフト・チェンジしてみようと。

Saori:当たり前ですけどアメリカってすごい広いので、主要な都市を周るっていうだけでも、最低でも1ヶ月はかかってしまうんですよ。そうなると中々他に時間が割けなかったりして。

Rie:ある程度の地盤を築いたっていうのもあるから、一回くらいちょっと離れても大丈夫かなって。

―自主レーベルを立ち上げるといった考えも、日本で活動していくにあたっての自然な選択肢だったのでしょうか?

Rie:アメリカのレーベルと契約してアルバムを出すってなった場合、「作品をこうしよう」とか「ああいう方向でいきましょう」とか、そういう話が一切ないんですよ。自分たちのやりたいように、自由にやらせてもらえる。その点、まぁ日本だと……どうも違う風潮がありますよね。よくわかりませんけど、なんとなく。アートとしてのリスペクトと、ビジネスを切り離して考えてないっていうか。
幸い今はネットの環境も整ってきたから個人レベルでもいくらでもやる方法があるしっていうのもあって、自然とレーベルを立ち上げようと。

—『Draw Your Dream』は今の所日本だけでのリリースですが、今後海外でのリリースももちろん視野に?

Rie:もちろん。デジタルは微妙だけど。

—フィジカルにこだわりがあるのでしょうか?

Rie:う〜ん……、結局アーティストが何でマネタイズしていくかって話になるんですけど、今、物の価値っていうのがおかしなことになっていると思うんです。Taylor Swiftとか、良いこと言ってるよね

—そのTaylorが取り下げたことでも話題になったSpotifyですが、換金率は決して悪くはなく、それだけで食える人もいるという話も聞きますが……。

Rie:人によるんじゃないですかね。

Saori:結局Spotify に登録するだけでも料金がかかるし、登録したとしても収益がその登録料にすらなかなか達しないバンドも、インディにはいっぱいいると思います。むしろそっちの方が多いくらい。

—バンドという形態は作品制作に対するコストも大きいですしね。

Saori:スタジオ借りたり何だりで結構お金かかりますからね。

Rie:そうそう。だからそこら辺の線引きをそれぞれでしっかりやった方が良いよねっていうのはあります。

Saori:まぁまた時代が変わったらスタイルも変わると思うんですけどね。

Rie:時代と共に色々な価値は変わり続けると思うので、臨機応変に対応していきたいですね。現状は結構混沌としてるので、まだ様子を見ている感じです。

—なるほど。では、新作EP『Draw Your Dream』についてお聞きしたいのですが、今作のレコーディング作業は日本で、年末年始くらいから行われていたようですね。前作はPeter Bjorn and JohnのBjornがプロデュースを務めたことでも大きな話題となりましたが、今作はセルフ・プロデュースで行われたのでしょうか?

Rie:そうですね。これも思いつきで始めちゃったんです。日本にいる間に何かおもしろいことをやっておこうってことでスタートさせたようなものなんで。笑

Saori:年末頃に日本に帰ってきて、そういえば日本でスタジオに入ってしっかり録音するっていうことを10年くらいやっていなかったので、今改めて自分たちだけでやってみたら面白いかもねって話になり。

Rie:どういうものが生まれるのかっていう実験みたいな感じでもありつつ。

—その実験の結果はどうでしたか?

Rie:改めて自分たちでプロデュースしてみて、Bjornの良さがよりわかりましたね。彼は……発想が素晴らしいんだよね。曲をぐちゃぐちゃ弄ったりってこととかはせず、例えば録ったドラムの音をちょっと加工したりとか、「そのドラムをバケツにしたらどうなの?」ってアイディアを出してきたりとか。笑
あとは人脈とかもすごい。「やばいストリングスが必要だ」ってなったら電話ひとつでストリングスが来る、みたいな。

Saori:彼はひとつひとつの音に対するこだわりがハンバなくて、それぞれの音がどうやったら惹き立つかっていうことを一番に考える人で。

Rie:そうそう、すごく引き算的。何かモノゴトの考え方もスッキリしてて、あれだよね、IKEAみたいだよね。

Saori:え?笑

Rie:シンプルなのに、使い勝手が良くて超すごい、みたいな。笑

Saori:う、うん。。。笑
彼と作品を作って学んだそういう点は、今回の作品にも活かされているような気がしますね。

―前々から国籍を感じさせないサウンドを得意としてきましたが、今回はそこにさらに拍車がかかっているような気がします。まるで作品を通して世界中を旅しているような気持になる作品ですが、何かコンセプトなどはあったのでしょうか?

Saori:あれじゃないの、2曲目じゃないの?笑

Rie:あれだよね。笑
いや、でもコンセプトとかは全然ないんですよ。Saoriが作った曲はアメリカにいた時の曲で……

Saori:表題曲の「Draw Your Dream」は結構時間をかけて練って作り込んだ曲で、2曲目の
22nd Century」はRieが作ったんですけど、きっと思いつきかなんかで……笑

Rie:まぁ適当ですよ。(日本に)帰ってきて何か作りたいな……って思って1日くらいで作りました。笑

Saori:で、「I Wanna Be A Girl」もアメリカにいた時に私が作った曲ですね。

Rie:「Very Fun Time」も日本に帰ってきてから思いつきで作った曲です。自分の曲は基本思いつきで、Saoriと一緒にやってる曲に関してはしっかり時間かけてやってます。笑

Saori:「I Wanna Be A Girl」は実は野上眞宏さん(Mike Nogami)が撮ってくれたThe Suzanのドキュメンタリーの……パート1だったかな? の一番最後に練習風景が収められているんです。

Rie:実は前作のレコーディングの時に入れたかったんですけど、ちょっと練習不足で却下されて。笑

Saori:そう、漏れちゃった曲なんですけど、自分の中では結構気に入っていた曲だったので、どうにか外に出したいなと思っていて。それで今回練り直してレコーディングしてみました。

—5月にドラムのNicoさんが脱退しましたが、これはEP制作後の出来事ですよね?

Rie:そうそうそう。レコーディング終わって、一回アメリカに戻ったんですよ。で、これから日本で活動を続けていくか、それともこのままアメリカで活動するか、どっちにしようかまだ悩んでた時期だったんです。彼女はアメリカでもうちょっとやりたいって感じだったんですけど、うちらはもうアメリカは少し飽きたなって感じだったので。最初は「日本に戻ってきたくなるまで待ってるね」って話だったんですけど、結局物理的に離れ過ぎているし、待ってる間にサポート・メンバー入れて活動することになるので、とりあえず一回抜けるっていう方がスッキリしてて良いんじゃないかってことになりました。「一体いつ日本来るの?」って感じだとお互い面倒くさいし。いつか本当に日本にまた彼女が来たくなったら、その時にまたどうするか考えれば良いじゃんっていう。そういうゆるい感じ。笑

—現状ライブ時にはドラムはサポートで入れてるんですよね。

Rie:そうです。わたしたちを含めて3人。私がシンセ2台使って、1台をベース・アンプに繋げてベース・パートを弾いてます。最近のシンセはすごいんですよ。KORGさんがとても良い仕事してます。笑

—同期とかは一切使わずですか?

Rie:ライブでそれをやっても自分的にはあまり面白くなかったんですよ。あれ最悪だったよね。MGMTの「Kids」のライブ映像観た時にすごいつまらなくて。笑
結局人間がやってることが一番おもしろいじゃんってことです。話は変わっちゃうけどDJでもそうだと思うんですよ。うちのAlainパイセン(A-Trak)のどこがすごいかって、普通のDJプレイでもじゅうぶんテクニックで魅せることができるけど、一番わたしがおもしろいなって思ったのは、Blink 182Travis Barkerとコラボしてた時で……

Saori:DJとドラムでライブをやってたんですよ。向かい合って、バトルみたいな感じで!

Rie:SXSWで観て、初めて「DJっておもしろいじゃん!」って思ったんですよ。お互いのプレイに即興で合わせながら主導権も刻々と変わっていくっていう。そういうパフォーマンスじゃないとわざわざお金払って観に行きたいって思えないかなって。

—ちょっと話ズレちゃうんですが、DJといえば、新作のリリースに際して全国のDJに新曲を配って各所でかけてもらうっていうおもしろいプロモーションを行っていましたよね。あれはどういった経緯でのアイディアなのでしょうか?

Rie:単純に友達にDJが多かったっていうのと、自分たちの音楽を理解している人にまず聴いてもらって、反応を観たかったっていうのがあって。DJのひとたちって結構フットワーク軽いし、やってくれるかなーって思ってたら本当にやってくれて、「あざーす」って感じで。笑

―The Suzanとして長い間アメリカで活動していたにもかかわらず、Teen RunningsDYGLという比較的キャリアの浅いバンドをリリース・パーティに呼んでいますが、彼らについてはいつ頃から知っていたのでしょう?

Saori:DYGLはわたしが良いんじゃないかって思ってピックアップさせてもらいました。昨年の冬に帰ってきた時に、わたしたちのファンでもあり友人でもある人にYkiki Beatを教えてもらったんですよ。で、彼らも海外志向な音楽をやってるし、わたしたちの音楽も好きだったらしくて。それからライブ観に行ったりとかして仲良くなって……って感じですね。
Teen Runningsは……ネット・サーフィンしてた時に江ノ島で開催してるおもしろそうなイベントを発見して、それが彼らが主催していた“Sauna Cool Off”だったんですよ。で、そのイベント情報が載ってるページにMVも埋め込まれてて、なんとなしにポチッと押したらそれがすごいおもしろい音楽で。ポップだけどちょっと捻くれてて……MVもパロディチックに日本の風景をあたかも西海岸かのように撮ってて、世界感も徹底してるしこれはおもしろいぞ!って。で、調べてみたら昔Second Royalから出してたってこともわかり、後から周りに共通の友人がいっぱいいたことも発覚したんです。

—DYGL、Ykiki Beat、Teen Runningsは海外志向な活動スタイルをとっているという点からも、The Suzanと共通してるモノがありますよね。

Saori:そうですね。彼らも向こうでチャレンジしてみたいらしくて、色々聞かれたりもしました。ちょっと10年前の自分たちを見ているような気持ちにもなったり……。もちろんそういう若い子たちは応援したいので、「よし、ドンドンいけ!」って感じです。笑

Rie:自分たちがアメリカに飛び立つ前の日本は、海外のモノをまんまパクってるようなバンドが多くて。それはそれでおもしろいのもあったんだけど、今名前挙がってる東京の若いバンドたちはそれとは違って、ちゃんと世界の音を自分たちなりに噛み砕いてからアウトプットしようっていう姿勢が伝わってきて、それがすごい良いと思う。このままの状態であと10年くらい行ったらすごい良いシーンが出来上がってくると思う。

Saori:なんか成長段階でどうなるんだろうっていうおもしろさがあるよね。今の若い子たちのシーンって。

—実は準備していた質問の答えをまるまる先に言われてしまったような状況です。笑
国内インディ・シーンを自分なりに追っていて、本当に5年前とは状況が変わってきたぞっていうのを肌で感じています。特にここ最近。

Rie:一昔前と違って、そういう若いバンドをちゃんと拾ってくれそうな環境もあるし、客層も彼らの音楽性とか文脈を理解したうえで付いているっていう気もするし、絶対におもしろい流れがあると思う。

Saori:だから、みんなどんどんチャレンジすれば良いって思いますね。私たちが力になれそうなことがあれば全然手伝うし。

—でも、もちろんThe Suzanとしてそこにコミットする気はないですよね。

Rie:ないね。笑

Saori:元々日本で活動してた時とかも色々対バンとかイベントとか出てたんですけど、一回もシーンに属していた意識ってなかったので。

Rie:なんか外部から見るとひとまとまりになって、同じに見えちゃったりするんだよね。それが嫌で。あとは彼らに悪気はなくても、そういったシーンみたいなものを利用しようとする大人が現れて、変なイメージ付けをされたりとかしてかわいそうだな……って。笑

—逆にNYを拠点としていた時も、向こうのシーンみたいなものを意識したことはなかったのでしょうか?

Rie:う〜ん、それもなかったよね。

Saori:わたしたちがシングルとして「Home」を出した時に、Vampire WeekendとかさっきのMGMTとか、Passion Pitとかもいたかな?……そういったブルックリンのバンドたちと比べられることが多くて。でも彼らもそうだと思うんですけど、もちろん「Home」を作った時なんて彼らの存在を全く知らなかったのに、リリースのタイミングが近かったせいかそこに組み込まれて語られることが多くて、それが意外でおもしろかったです。

Rie:知らないうちになんとなくコミットしてるっぽいっていうのはあったかもね。所属してるつもりはないけど、あの当時は“ブルックリン”っていう変なカテゴリに入れられてたよね。

Saori:私たちの前作『Golden Week for the Poco Poco Beat』をマスタリングしてくれたエンジニアがVampire Weekendの作品も手がけていたりっていう地味な繋がりがあったりもしたんですけど、自分たちにはもちろんコミットしたいとかそういうつもりは全然なかったですね。でも、外部からの話を聞くと、どうやらそういうシーンに入っていた……っぽいんですよね。笑

—でも元々自然発生するようなシーンの実態っていうのはその程度のものなのかもしれないですよね。他のアーティストやバンドたちも繋がっている意識は特にない感じでしたか?

Saori:まぁ狭いので、お互い知り合いだったり、ホーム・パーティとかに行けば顔を合わせることっていうのは多かったですね。

Rie:パーティでVampire Weekendのボーカルに会ったよね。おにぎり渡した。

Saori:それ、Danny Brownね。笑

Rie:あ、Danny Brownか。おにぎりあげたんですよ、彼に。笑

−ん? どういうことですか?笑

Saori:何かA-Trakの家でパーティがあって、それに呼ばれたんですよ。Fool’s Gold界隈の人とかブルックリンのバンドとか、あとはChromeoとかもいたんですけど、そこにまだデビューしてない頃のDanny Brownも来てて、すごい浮いてたんですよ。笑

Rie:うちらも浮いてたから、勝手にシンパシーを感じちゃって。笑

Saori:ホーム・パーティだったのでわたしたちはおにぎりを作ってきてて、それを彼にあげたんです。そしたら「すごい美味しそうだけど、ぼくお腹いっぱいだから今はいいです」って静かに遠慮されて。笑

—それが今ではあんな風になっちゃって。笑

Rie:まぁ「お前頑張ったなあ」って感じですね。笑

Saori:彼は本当はめちゃくちゃ暗い人間ですよ、絶対。笑
でも、Vampire Weekendのボーカルの人はもっと暗い感じだったよね。あのパーティで誰とも話さず雑誌をパラパラと読んでて……。

Rie:ちょっとあいつには「おにぎりどうぞ」とは言えなかったね。

Saori:既に有名人だったし、周りも誰も話しかけられずにいるっていう感じで。

Rie:あいつにもおにぎりあげれば良かった。笑

—ハハハ。笑
では、最後にThe Suzanとしての今後の展望を教えてもらえますか?

Saori:とりあえず今後しばらくはライブがいくつか決まっているのと、また冬か春くらいにはレコーディングに入りたいなと。

Rie:そうそう。一緒に仕事してみたいって思える人も日本でチラホラ見つかってきたので、ドンドン自分たちのやりたいことをやってみようって感じですかね。

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The Suzan 『Draw Your Dream』
Release Date:2015.7.29
Label:Poco Poco Beat

1. DRAW YOUR DREAM
2. 22 CENTURY
3. I WANNA BE A GIRL
4. VERY FUNTIME
5. DRAW YOUR DREAM (INST)
6. 22 CENTURY (INST)
7. I WANNA BE A GIRL (INST)
8. VERY FUNTIME (INST)


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