INTERVIEW

TAEYO

「100万人に届けたい」――TAEYOが語るメジャー・デビューの背景。新作『ORANGE』の先に見据えるもの

ラッパーのTaeyoung Boy改めTAEYOが7月15日(水)に新作EP『ORANGE』をリリースした。

アニメ『ケンガンアシュラ』のエンディング曲として書き下ろした「ASHURA」でポニーキャニオンからメジャー・デビューを飾ったTAEYO。これまでにも同世代のラッパーやビートメイカーたちと親交を深めつつも、どこか特定のシーンに属することもなく、独特な立ち位置を築いてきたTAEYO。新作『ORANGE』にはこれまでの軌跡をしっかりと反映させつつも、新たな挑戦が伺える意欲作となっている。

今回のインタビューではそんなEPの制作背景を紐解きつつも、メジャー・デビューの経緯や狙い、そして今後の展望などを訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi


「なぜメジャーにいくのか」

――昨年は1stアルバム『HOWL OF YOUNGTIMZ』に始まり、『TOP BOY』、『THE BOY IS』と2枚のEPもリリースするなど、かなり精力的な活動を展開していましたね。

TAEYO:自分の体感としては、制作のペースがすごい早まったという感覚もないんです。たまたま世に出た作品が多くなったというだけで。ただ、その一方でライブはすごく増えましたね。振り返ってみると、去年はずっとライブをしていたように思います。日本全国回らせてもらって楽しかったし、自分のレベル・アップにも繋がったなと。

――ライブ漬けの日々から一点、今年は新型コロナウイルスの影響でライブもできない状況になりました。外出自粛が呼びかけられるようになってからは、どのように過ごしていますか。

TAEYO:東京都が緊急事態宣言を発令する直前、3月末までライブ出演は行っていたんですけど、そこから先の予定は全くなくなりました。毎週末ライブが入っている状況だったので、それが自分のルーティンだったし、モチベーションにも繋がっていたんです。それが無くなって、お酒も飲まなくなりましたし、外出自粛前から力を入れていた筋トレや食生活も見直したりして。……結果、すごい健康になったと思います(笑)。

――メジャー・デビューに際して、最初に想定していた“Taeyoung”という名義が使用できなかったそうですね。

TAEYO:いつか“Boy”を取ろうっていうのは結構前から決めていたことなんです。去年末にリリースした『THE BOY IS』のタイトルに関しては、名前を変えることを見据えて付けました。

――“Boy”と付いた2作のEPをリリースした後に、名前から“Boy”を取ることを予定していた。この一連の流れは、自身の成長や成熟を感じたからなのでしょうか。

TAEYO:若い時って、良くも悪くもプライドが高かったりしますよね。そういったプライドの高い自分を客観視できるようになった時は、大人になったなって思ったかもしれません。今作のリード曲「Let me down」を作っている時がちょうどそういう感覚を自覚した時ですね。あの曲は自分がなぜメジャーにいくのか。音楽を続けていく意味みたいなものを考え直していた時に作った曲で、リリックにもそういった感情が表れていると思います。それまでの活動は、結構勢いで突き進んでいる部分があって。じっくりと自分自身の活動を見つめ直したのは新鮮な感覚でしたね。

――「Let me down」は恋愛モチーフのようにも捉えられますが、伝えたいメッセージ、感情は異なる部分にあるように感じます。

TAEYO:そうですね。「Let me down」はメジャー・デビューとEPをリリースすることが決まって、そのリード曲となるような作品を作ろうと思ってできた曲です。恋愛を主題にして書こうとすると、どうしてもクサくなっちゃって上手く書けないんですよね。この曲はフックを聴いたら恋愛っぽく思われるかもしれないけど、ヴァースを聴けばそれだけじゃないぞっていうのが伝わるかなと思います。

――フックで歌っている通り、最初は曲名も「Don’t let me down」になる予定だったそうですね。そもそもこの“がっかりさせないで”(Don’t let me down)という言葉、主題はどのように浮かんできたのでしょうか。

TAEYO:フックの部分に気持ちよくハマる言葉を探しているうちに、ふと浮かんできた言葉ですね。どうしてもクサい表現が苦手で、しっくりくる言葉を見つけるまではかなり時間がかかりました。Chakiさんはもっと吹っ切らせたいっていう思いがあったみたいなんですけど、おれは「いや、まだそこまでは……」っていう感じで……(笑)。

――今まで以上にファルセットで歌い上げるスタイルも印象的です。

TAEYO:それもChaki(Zulu)さんに引っ張り出されたっていう感じですね。自分の出せる範囲で、一番気持ちよく聴こえるところをふたりで探っていきました。リリックもフロウもボーカルも、上手くいくまでChakiさんがずっと付き合ってくれて。もはや共作に近い感じです。

――そういったトラック、サウンド面以外の部分にもがっつり関わってくれるプロデューサーというのは貴重な存在ですよね。

TAEYO::リリックまで色々な意見をくれるっていう人は、他にはあまりいないと思います。特にヒップホップだとビート/トラック提供だけっていうパターンも多いと思うので。

――メジャー・デビュー発表の直前に、“Taeyoung Boy”最後の作品として「NAMINOUE」もリリースしています。あの曲も今作制作時に生まれた曲なのでしょうか。

TAEYO:そうですね。本当はEPのリード曲として出そうかなとも考えていたんですけど、色々あってインディでの最後の作品にすることになりました。けど、すごくTaeyoung Boyっぽい作品を最後に出せたと思うので、結果的には正解だったと思います。周りの反応も良かったですし、おれもすごい好きな曲で。トラックもBLさん(BACHLOGIC)っぽくて最高ですよね。たぶんライブでも良い感じで盛り上がるんじゃないかなって思います。


新作『ORANGE』で表現した“凸凹感”

――今作のプロデューサーの人選はどのようにして決まったのでしょうか。

TAEYO:「NAMINOUE」をTaeyoung Boy最後の作品にすることが決まったので、新たにリード曲となる作品をお願いしますっていう感じでChakiさんに連絡して。もちろんその前から、メジャー・デビュー後も一緒に曲作りましょうって話していたので、それも自然な流れでしたね。BLさんとは「NAMINOUE」と並行して他にもたくさん曲を作っていたので、そこから最終的に「Intro」、「Alright」、あとはCD版にシークレット・トラックとして収録されている「Grey」の3曲を仕上げました。

今作にはもうひとり、CELSIOR COUPEさんっていうプロデューサーが参加しているんですけど、彼は僕がずっと前からお世話になっているスタジオのエンジニアさんなんです。これまではプロデューサーとして一緒に曲を制作したことはなかったんですけど、「Let me down」が中々完成しなくて煮詰まっていた時期に、気分転換も兼ねて「全然違う感じの曲でやってみたいです」って言って、たまたま彼が持ってたブーンバップっぽいトラックに挑戦してみて。それが最終的に「All I have」になりました。

TAEYO:「All I have」は正直、最初は遊びみたいな感じで作ったんですけど、それが思いの外チーム内で高く評価されて。結局EPに入れることになったっていう感じですね。その辺りから、制作当初から思い描いていたEPの方向性が変化してきたんだと思います。凸凹感というか、EPで色々な一面を見せてみるのもいいんじゃないかなって。

――なるほど。「All I have」が最初はブーンバップっぽかったというのも意外です。

TAEYO:最初は特にメロディも付けず、普通にラップしようと思って作った曲だったんです。でも、詰めていくうちにメロディ付けても気持ちいいねってなり、方向転換していくうちにちょっとシティ・ポップっぽい曲に変わっていきました。ラップやり始めた頃、こういうテイストの曲を多く作っていたので、得意なんですよね。こういう曲もEPに入っててもいいかなと思ってそのまま詰めていきました。ベースとかは後から弾いてもらって、足していきました。

――「Calm」も、ラッパーとしては中々に攻めたトラックですよね。

TAEYO:確かに。でも、これも制作していく段階で、自然と「こういう曲欲しいな」って思い始めてできた曲なんです。ちょうどJustin Bieberの新譜(『Changes』)が出たばかりの頃で、あのアルバムのタイトル・トラックも「Calm」と同様にアコースティックな質感のトラックですよね。あと、前のアルバム(2015年発表の『Purpose』)のタイトル・トラック曲も落ち着いた印象の曲で。そういった作品をリファレンスにしていましたね。

TAEYO:あと、平井大さんやJack Johnsonのようなサーフ・ミュージックのノリも取り入れたいなと思って。リリック書く時も、今回初めて紙にワード・マップを作ったんです。「自然」「風」「波」みたいにバーっとワードを書き出して、そこから抽出していく形で作詞しました。自然のフィーリングを出したかったので、これはスマホで書いちゃダメだなと思って(笑)。

スマホだと、良くも悪くも予測変換とか、普段使ってる言葉とかが出てきやすいんですよね。でも、紙にペンで書くと自分の中から出てくるものしかないというか。ある意味、制限みたいなものも課されて、それがすごく良い方向に作用したと思います。

――BLさんが手がけた「Intro」は、文字通りのイントロとは思えないほどにしっかりとラップされてますよね。

TAEYO:これはビート聴いた瞬間に、「絶対1曲目だな」って思っていて。結構攻撃的なラップを乗せました。ゼロから「Let me down」でおれのこと知ってくれた人は、これが1曲目なので少しびっくりしちゃうかもしれないですね。でも、それはそれでいいかなって。逆にTaeyoung Boy時代から聴いてくれている人は絶対好きになってくれると思うし、今後もこういう曲はなくしたくないなって思いますね。

――タイトル曲の「ORANGE」は、オレンジ=太陽。つまりはご自身のことを表現していますよね。

TAEYO:結果的にそうなりましたね。元々、色としてオレンジが好きで。何となくタイトルに「ORANGE」って付けるの良いなって考えてるうちに、“オレンジ=太陽”、つまりおれじゃんっていう考えに至って(笑)。

――CELSIOR COUPEさんがトラックも結構変則的というか、ラップを乗せるのも大変だったんじゃないかなと思いました。

TAEYO:制作時、The Weekndの新作(2020年3月発表の『After Hours』)に入っている「Hardest To Love」っていう曲にハマっていて。その曲をリファレンスに作りました。この曲は最後に制作したのですが、EP全体でちょっと落ち着いた作品になったなっていう印象を受けたので、攻めた曲が欲しくなったんです。ただ、「Hardest To Love」は完全に歌モノなので、このノリをどうやってヒップホップに落とし込もうか、じっくりと時間をかけて完成させた曲ですね。最終的にトラック数も半端ない感じでした。元々2000年代くらいの音楽が好きなので、ミクスチャーみたいな要素も持たせられて、一番満足できたんじゃないかなと。

――本編の最後に収録されている「Alright」は、BACHLOGIさんが手がけた、エンディングにぴったりの1曲です。

TAEYO:まさしく。トラックを聴いた瞬間に、「これは最後だ」ってピンときました。「NAMINOUE」と同時期に、映画のエンドロールで流れるようなイメージで作った曲ですね。

――シークレット・トラックになった「Grey」は、少しテンポを早めたダンスホールのような、跳ねるようなビートが印象的です。リリックからは少し怒りのような感情も感じられます。

TAEYO:新型コロナウイルスでバタバタしている世の中とか、昨今の状況を見て書きました。自分は普段こういうこと言わないので、曲で表現するのは好きなんです。あと、こういう問題提起ではないかもしれないですけど、社会的な曲っていうのは、Def TechのMicroさんから影響を受けているかもしれません。Def Tecって有名な曲、ヒットした曲には優しい曲調のものが多いんですけど、アルバムとかEPにはこういう社会的でメッセージ性の強い曲も収録されていて。そういう部分が大好きなんですよね。あと、こういう考えをSNSで言ったり、日常で言うのは自分はあまり好きじゃなくて。黙ってやることやってるやつが一番カッコいいと思っているので、今回曲に昇華しました。


「100万に届けたいって言っているやつがスタッフやチームの声を聞かないっていうのはちょっと違う」

――メジャー・デビュー発表と同時にリリースされた「ASHURA」についてもお聞きしたいです。アニメのエンディング・テーマとして曲を書き下ろすというのは、おそらく初めてのことですよね。

TAEYO:初めてででしたね。めちゃくちゃ悩んでいたんですけど、これもChakiさんに助けられました(笑)。アニメの曲である以上、アニメの世界観よりもぶっ飛んだ曲にしなければいけない。アニメには画があるけど、音楽には視覚的な表現はなく、聴覚だけで判断されるって言われて。だからこそ、「神」とか「天下無双」とか大げさな言葉を使って、すごく大仰なリリックになったと思います。中々に難しかったですね。

――メジャー・デビューを果たし、アニメとのタイアップも行い、これまで以上に多くの人にご自身の音楽が届くような環境になったと思います。そんな中で、TAEYOさんは他のインタビューで「日本の音楽を背負う」とも語っています。そういった思い、自信はいつ頃から芽生えたのでしょうか。

TAEYO:ラップを始めた頃から謎の自信はあったんですよね。それはなんでだろうな……。作品を発表する度に、納得のいく評価を得られなかったからかもしれません。周りは認めてくれてたし、自分自身でも納得のいく作品を作れてたので、卑屈にならずに、前だけを見て進んで来れた。たくさん作品も作って、色々な経験を積んだ今だからこそ、ヒップホップが好きな千人、1万人に向けてじゃなくて、100万に向けてのカッコいい曲を作れるのはおれだって思えるようになりました。答えが見えているわけではないですけど、そこへ辿り着くための道筋みたいなのはなんとなく見えている気がしていて。あと、こうやって言葉にしていれば実現するんじゃないかっていう狙いもあります(笑)。

――メジャーにフィールドを移した今、何か自身の活動スタイルに変化は起きましたか。

TAEYO:リリースの反応はこれまでよりは注意して見ておかなきゃなって思うようになりました。でも、基本的にやり方は変わらないですね。やりたくないことはやらないし。ただ、これまでは自分のわがままで意見を押し通すこともできたけど、100万に届けたいって言っているやつがスタッフやチームの声を聞かないっていうのはちょっと違うなと思っているので、そこは自分が大人になるべきところだと思っています。それは敷居を下げたり妥協したりっていう意味ではなく、個人じゃなくチーム全員でのし上がっていきたいっていう想いが芽生えたからですね。

TAEYO:あと、ChakiさんやBLさん、CELSIORさんみたいに音楽的にも尊敬できて、信頼のおける人たちが周りにいることがめちゃくちゃ幸運なことだし、それが自分の強みでもあると思っていて。冷静に考えてみると、結構ありえないくらい貴重な環境なんですよね。

――メジャーに行くということは、新たな制限も出てくるかもしれませんが、予算などの都合で実現できることも広がるはずですよね。そういったことも踏まえて、今後の展望や成し遂げたい目標などを教えてもらえますか。

TAEYO:やっぱり映像に力を入れたいです。世界的にみても、映像コンテンツが力を持つ時代になっていると思うので。何も情報もない状態で曲だけを聴くっていう人はどんどん減ってきていると思うので、そこは狙っていきたいです。「COLORS」や「TinyDesk Concert」みたいなセッション映像も作っていけたらなと。もちろんVlogみたいなのもUPしていきたいですし。

――別インタビューでの、「日本の音楽を背負う」との発言と同じく「日本の音楽を変えたい」との発言も印象的でした。今後、TAEYOさんの音楽活動でどのように日本の音楽に変化をもたらしたいとも考えていますか。

TAEYO:アーティストに不満があるというより、リスナーだったりシーンに対して変化を期待している部分はあります。もっと音楽を作品自体で評価して欲しいなって。具体的な展望としては、冬くらいにアルバムを出したいですね。今のチームのペースならいけるはず。自分もアルバムを通して聴くのが好きなので、流れとかテーマとかはこだわった作品に仕上げたいです。こんな状況なので、いつになるのかわからないですけど、クラブ・ツアーもやっていきたいですね。ライブも魅せ方をどんどん進化させていければなと考えています。


【リリース情報】

TAEYO 『ORANGE』
Release Date:2020.07.15 (Wed.)
Label:PONY CANYON
Tracklist:
1. Intro (Prod. BACHLOGIC)
2. Let me down (Prod. Chaki Zulu)
3. All I have (Prod. CELSIOR COUPE)
4. Calm (Prod. CELSIOR COUPE)
5. ORANGE (Prod. CELSIOR COUPE)
6. Alright (Prod. BACHLOGIC)
7. Grey*

*CD限定シークレット・トラック

・予約購入特典
TOWER RECORDS予約購入特典:Taeyoung Boy名義曲のオリジナルMIX CD『TYB MIX TOWER Version』
HMV予約購入特典:Taeyoung Boy名義曲のオリジナルMIX CD『TYB MIX HMV Version』
Amazon先着予約購入特典:メガジャケ(24cm×24cmサイズ)
全国対象CDショップ(Amazon以外):特製ホログラム仕様ステッカー(50×100mmサイズ)

ステッカー(サンプル)

※各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗がございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭にて、特典の有無をご確認ください。

■TAEYO:Twitter / Instagram

Spincoaster

Spincoaster

Spincoaster(スピンコースター)は、独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介する音楽情報メディアです。