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INTERVIEW | SIRUP × hard life × Taka Perry


友情と感情が導いた「ただのフィーチャーじゃない」コラボ “RENDEZVOUS”を生んだ3人の軌跡

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2025.05.13

海を越え、言語も文化も異なる3人が、ひとつのスタジオで交わらせた感情のセッション。SIRUPとUKのバンド・hard lifeのフロントマン・Murray Matravers、そして日本とオーストラリアにルーツをもつプロデューサー・Taka Perryによる楽曲“RENDEZVOUS”は、ただのコラボ曲ではない。

2年前のデモから始まり、別々の時間軸で書かれたヴァース、現場の空気をそのまま収めた奇跡のボーカル。そして東京で重ねられた乾杯や会話が、3人の距離を縮め、音楽以上の信頼関係を築いていった。友情と失恋、言葉の壁、そして「痛み」を共有することで生まれたこの楽曲には、3人それぞれのリアルが刻まれている。その制作過程と舞台裏、そして3人の間に生まれた共鳴の記録を紐解く。

Interview & Text by Daniel Takeda
Photo:アーティスト提供
Stylist:TEPPEI
Hair & Makeup:Daisuke Mukai (SIRUP) / Haruka Kameda (hard life)


「強い感情がないと、いい曲は生まれない」

――今回のインタビューでは3人がどのように出会い、どのようにしてコラボ曲“RENDEZVOUS”が生まれたのかを話してほしいんだけど、まず、Murrayが最初に日本に来たのはいつ?

Murray:コロナ禍のせいで時系列があやふやだけど、最初はバンドでツアーをやった3年前くらいかな。それで日本に完全にハマっちゃって。でも、音楽に関しては自分の好みに合うものがなかなか見つからなかった。日本の音楽はクールなんだけど、車の中で気軽に聴ける感じじゃないというか。ラップもすごくいいアーティストがいるけど、日本語だから歌詞の魔法みたいな部分が半分くらいわからない。

それで、もっと自分にフィットする音楽を探していくなかでSIRUPに出会った。彼の音楽はすごく響いた。コード感やプロダクションが自分にも馴染みがある感じで、それでいて日本的な要素もちゃんとある。ビジュアルのスタイルも好きだった。当時、Easy Lifeではパステルカラーをよく使ってたんだけど、SIRUPの世界観もそれに通じるところがあった。完全にファンになって、Instagramでメッセージを送ったんだ。「大ファンです、ぜひコラボしたい」って。そしたら、なんと返信がきたんだよ! あれは本当に嬉しかった。

Taka:それで俺がプロデューサーとしてそのプロジェクトに加わることになったんだよね。もともとSIRUPとダニエルと俺の3人のグループチャットがあって、ダニエルが「hard lifeとSIRUPのコラボ曲について、トラックのアイデアある?」って聞いてきたから、Murrayもそのチャットに招待した。それからいくつかデモをやり取りして、完成に近づいていたんだけど、その頃ちょうどEasyJetの訴訟の件が起きたんだよね。それで制作も一旦止まっちゃって。

■参考記事:イージー・ライフ、イージーグループとの法的闘争を経てバンド名を変更せざるを得ないことを報告(NME Japan)

hard life(Murray Matravers)

Taka:その後、俺がロンドンに滞在していたときに初めてMurrayとスタジオに入った。そこではhard lifeの制作を進めて、去年の10月、12月にMurrayが日本に来たときに2人で4週間くらいかけてhard lifeの3rdアルバム『onion』を作った。そのタイミングでSIRUPとも一緒にスタジオに入って、“RENDEZVOUS”を再構築したんだよね。

Taka:最初のSIRUPのヴァースとプリコーラス以外はほとんど書き直したと思う。3人で一緒に部屋に籠もって、フックも書いて、Murrayのヴァースも作った。「SIRUPの曲 + Murrayのパート」みたいな単なるフィーチャー曲にならないように、全体の一体感を意識して組み上げていった。

あと、英語と日本語の歌詞のリンク感もすごく大事にしていて。たとえばSIRUPのコーラスの最後の音からMurrayの歌い出しに繋がるようにしていたり。そういう細かいところまで作り込めたのは、やっぱり3人で同じ空間で制作したからだと思う。

Murray:うん、3人でスタジオに入ったのが本当によかった。TakaがSIRUPの言ってることを全部通訳してくれたんだよね。意味だけじゃなくて、言葉の響きや感情も含めて。最初はみんなが何を言ってるかわからなかったから、仮のフックを全然違うテンションで書いてたんだけど、スタジオで再構築したあのコーラスは3人の共同作業の結晶だよ。こんなにコラボ感のあるフィーチャーって、なかなかないと思う。

――曲のテーマもそのときに決めたの?

Taka:テーマは正直あんまり明確に決めてなくて。でも、たしか一昨年くらいにSIRUPとセッションしたときに入れたヴァースがそのまま使われてるから、あのときの空気感がベースになってると思う。それを軸に、他のパートやフックを埋めていった感じ。

SIRUP:この曲はヴァースが重要で、いつものように「このテーマでいこう」って決めたわけじゃなくて、音から引っ張られて作った。DMをもらったのが2023年の7月で、トラックも割とすぐにもらってた気がする。ちょうどその頃、パートナーと別れたばかりでメンタルが荒れてて、週5くらいで飲んでたんだけど、たぶんセッションもそのままのテンションでやってた(笑)。

もらった音源のテンションもあったし、気怠い感じの曲をやりたい気分だったんだよね。ちょうどそのタイミングでEasy Lifeの『MAYBE IN ANOTHER LIFE…』ってアルバムをめちゃくちゃ聴いてて、そしたらMurrayからDMがきたから、めっちゃテンション上がったんだよね。

SIRUP

Murray:あのときはそんな状況だったんだね。Takaが何度も訳してくれたから、歌詞の意味は理解してるけど、そういう背景を聞いてさらに曲の意味が深まった。まさに「MAYBE IN ANOTHER LIFE」っていうコンセプトが“RENDEZVOUS”にも込められてると思う。「もし別の人生だったら、また出会えてたかもしれない」、でも今はそれが上手くいかないっていう感覚。曲のエッセンスはSIRUPの痛みからきてると思う。本当にありがとう。やっぱり強い感情がないと、いい曲は生まれないんだよね。SIRUPのリアルなストーリーを知れて本当に嬉しいよ。

Taka:あとMurrayのヴァースも、あのとき実際にいろんなことが起きてた中で書かれたものだから、感情的にリンクしてたと思う。おもしろいのは、SIRUPのヴァースは2年前で、Murrayのヴァースは4ヶ月前くらいに作ったということ。それぞれ別の時間軸で書かれたけど、どちらもリアルな感情から出てきて、偶然にも同じ世界観を共有していた。まるで18ヶ月離れた同じ瞬間を、別々のタイミングで切り取ったみたいな感覚だったね。

Murray:やっぱり、リアルだからこそいいっていうのはある。この曲のおもしろいところって、本当に3人でコラボしたっていう点だと思う。こういうフィーチャー曲って、ここまでちゃんとした共同作業になることってあんまりないんじゃないかな。俺らは実際に同じ空間にいて、一緒に曲を作って、友だちにもなってる。あのセッションは本当に楽しかった。すごく特別な時間だったよ。

あと、SIRUPが生で歌ってるのを初めて聴いたとき、マジで現実じゃないみたいだった。しかも、そのときのボーカルテイクがそのまま最終版になってる。

Taka:そうそう、“RENDEZVOUS”はデモのボーカルを最終テイクとして採用してる。普通は後でエンジニアと一緒に録り直すんだけど、セッションの日はSIRUPの声がちょっと枯れてて、逆にそれがすごくハマってた。

Taka Perry

3人の共通点、一体感が生まれた背景

――ボーカルはその日のうちに全部録ったの?

Taka:うん。最初のセッションで使ってたのが2023年版のデモで、そこから何も手をつけてなかった。で、そこから2年経って、スタジオで「さて、この古代のデモ、どうする?」ってなって(笑)。

Murray:ソングライティングって視点が大事だよね。でも長く同じ曲に取り組んでると、冷静な判断ができなくなる。この曲は2年前のデモだったから、「これは違う」「これはいらない」ってすごく簡単に判断できた。最初にやったのは、いろんなパーツを削除すること(笑)。「さあやろうぜ!」って感じでスタートしてからはめっちゃ早かったし、楽しかった。SIRUPとずっと一緒に過ごしてたな。こんなに長く一緒に時間を過ごしたのは初めてだった。

SIRUP:こういうコラボって、オファーをもらってすぐにトラックを送ってくれることって意外と少ないんだけど、今回はすぐに届いて、それに自分のヴァイブスを乗せていった感じだった。明確に「こういう曲にしたい」っていうよりも、hard lifeの音を聴いてたからこそ、彼らのサウンドをベースに一緒に何か作れたらいいなって思ってた。だから、トラックをもらってから自然に導かれるように作っていった感覚だね。

――Takaの貢献も大きいよね。

SIRUP:ほんとにそれ。今回のコラボって、ただやり取りするだけじゃなくて、Takaがロンドンに行ったり、タイミングが全部上手く噛み合ってた。なんか運命を感じたんだよね。「これ、絶対いい曲になるやん」って。

Taka:逆に言うと、もし2023年にリモートで完成させてたら、それなりの曲にはなってたかもしれないけど、ここまでの一体感は生まれなかったと思う。そもそも俺がMurrayと繋がったのもSIRUPがきっかけだったし、そこからロンドンに行ったことで、またMurrayと別のクリエイティブな関係が築けた。Murrayが言ってる通り、全員が関わったことで全員が友だちになれてる。それってすごいことだと思う。

――みんなをつないでる共通点って、何だと思う?

Taka:……たぶん「痛み(Pain)」かな(笑)。やっぱり説得力のある歌詞を書くには、リアルな感情から出てこないとダメだと思う。自分自身が本当に感じたことや経験から出てくるものでないと、それはただの作り話になってしまう。意味のないフィクションを書くのと同じ。だから、自分はできる限りリアルな経験を言葉に落とし込んでいくっていうスタイルなんだよね。

Murray:あと、俺たちは音楽的に重なってる部分も大きいよね。共通して好きな音楽があって、それが言語の壁を簡単に越えてくれる。同じものが好きだってことが、そのまま共通言語になるんだ。ビジュアルの感性もそう。SIRUPが「MV撮ろう」って言ったときも、全然心配してなかった。彼の映像作品は全部好きだから、絶対いいものになるってわかってた。何が好きかを言葉でちゃんと伝えられるわけじゃないけど、アートディレクションを完全に信頼してたし、実際に撮影中も「これ絶対ヤバいやつになるな」って確信してた。

……ちょっと話が脱線したけど、要はみんなのセンスを信じてるんだ。俺、友だちには「とびきりいいセンス」を持っていてほしいと思ってるから、センス悪い人は論外(笑)。

――SIRUPにとって、Takaとの制作はどういった点が特別だと思う?

SIRUP:Takaは俺が今まで曲を作ってきた中でも、たぶん一番相性がいいって思ってる人。たぶん本人にも何回も言ってると思うけど(笑)、アイディアがめちゃくちゃあるし、歌詞にしてもイメージにしても、本当に色んな引き出しを持ってる。たとえば「映像を見てから曲を作ろう」とか、普通思いつかないようなことをサラッと提案してくれる。一緒にセッションしてても、絶対にちゃんと向き合ってくれるっていう安心感もあるんだよね。「今日は上手くいくだろうな」って自然に思える。そういう感覚があるのは、本当にすごいこと。

お互い性格的にも似てる。俺もすぐアイディア出して「これやってみよう」「あれもアリちゃう?」って感じなんだけど、Takaも同じタイプ。テンポが早いっていうか、情報をバンバン出しながら進めていく。そこが合わないとたぶんズレてくると思うんだけど、俺たちはすごく噛み合ってる。

Taka:つまり、2人とも落ち着きがないってこと(笑)。

SIRUP:セッション中、Takaが一回も座らないとか普通にあるから(笑)。あと、海外では割とあるかもしれないけど、デモ段階でちゃんと曲の要所をミックスして送ってくれるっていうのは、Takaのすごいところだと思う。そのおかげで、セッションで「この曲いいな」って思った気持ちを忘れずにいられるし、ちゃんと曲を完成させられる。そこが本当に好き。

――Takaはテーマの解像度をすごく高めてくれるよね。アーティスト側のイメージをリスナー視点から見て、「これがあったらおもしろいかも」って提案するのが上手い。

SIRUP:そうそう。それもすごい才能だと思う。

――Murrayとの制作はどうだった? もちろんSIRUPにとっても憧れの存在だったよね。

SIRUP:Murrayと一緒にやってみて一番「うわ、すごっ!」って思ったのは、セッション中に全部その場で考えて録って、「これで完璧」って決まっちゃうところ。日本ではあまりそういうアーティストはいないけど、海外だとあるのかも。あと、何よりも声がすごくいい。歌い出した瞬間に「これはもうMurrayの曲やな」ってなる。それってアーティストとして重要な才能のひとつだと思うし、正直めっちゃ羨ましい。

あとはとにかくずっとグッドヴァイブス。俺が疲れてるときはめっちゃ気遣ってくれるし、英語が話せない俺にもめちゃくちゃ話しかけてくれる。たくさん質問してくれて、ちゃんと俺のことを知ろうとしてくれる。その積極性が本当に嬉しいんだよね。会えば会うほど好きになるし、今はほんまに大好きな友だち。


「みんなで盛り上がって、その中の誰かひとりが泣いたりしてもいい」

――あと、Murrayは人の話をすごく丁寧に聞くよね。それもおもしろいと思った。

Murray:Takaから日本の音楽業界のやり方っていうか、どうやって曲が作られてるかっていう話をいろいろ聞いた。日本で活動してる他の友だちからも話を聞いたりしてね。自分がずっと意識してるのは、リアルな瞬間をちゃんと音楽に落とし込むこと。その場で感じたことをそのまま残すってこと。

自分は「歌手」ってわけじゃなくて、ただ叫んでマイクにぶつけて、それを感じ取ってもらうっていうスタイル。今の音楽ソフトって本当に優れてるから、メロディ外しても全然直せるんだよね(笑)。でも、そのときの勢いとかエネルギーって、やっぱり一発録りじゃないと出ない。だからあの日録れたのは本当によかった。SIRUPが歌ってるときも全く同じことを感じた。

あと、Takaが俺に「SIRUPがブースから出てきたときに言える日本語フレーズ」っていうのをいくつか教えてくれたんだよ。「やっばい!」とか(笑)。初めて彼の歌を聴いた瞬間、「マジでやばい」って思った。ファンとしては、本当に夢みたいな瞬間だった。

SIRUP:……今その話を聞きながら思い出したんだけど、たしかレコーディングとかセッションの前日も、Spincoaster (Music Bar)でめちゃくちゃテキーラ飲んでたよね(笑)。

Taka:あれはレコーディングの準備だったの?(笑) 俺はSIRUPともMurrayとも個別に深く制作をしてきたから、このコラボは自分にとってまさに「アベンジャーズ集合」みたいな感じだった。MCU的な世界が衝突する瞬間というか(笑)。

それぞれと共作してきた経験があるからこそ、2人の音楽的個性を活かしながらひとつの曲にまとめるっていうのはすごくおもしろかった。たとえばSIRUPと作る曲では、アドリブやメロディックなフレーズ、ハーモニーが重視されることが多い。でもMurrayとの制作では、歌の「ノリ」とか「雰囲気」の方を重視する場面もある。ボーカルの編集でも、技術的に完璧なテイクを選ぶというより、言葉がちょっと早く切れてても「それがいい感じならOK」ってなったり。

“RENDEZVOUS”でも、SIRUPとMurrayのヴァースでそういう違いが聴き取れると思う。それぞれの音楽的な脳の使い方が反映されていて、それが混ざり合ってる。Murrayのセクションではちょっと変なボーカルエフェクトとか、ボーカルにフランジャーをかけたり、SIRUPの楽曲ではやらないようなこともしていて。

SIRUP:今回は自分がやってみたかったけど、今まであまり表現できてなかった世界観を出せたのが大きかった。気怠い感じとか、ちょっとやさぐれた感じ。日本語で言うとネガティブに聞こえるけど、その中にポップさがあるっていうのが、自分がhard lifeの音楽に惹かれる理由のひとつだから。

映像とかもキャッチーで、その感覚が自分と共通してるのかなって思ってた。俺自身、そういう気怠いキャラの部分はあるけど、音楽ではあまり出してなかった。そういうものを表現したいと思ってたときに、ちょうどこのコラボの話がきて。タイミングがぴったりだったんだよね。

Murray:俺はこの曲で特に新しいことを試したってわけじゃないけど、自分のヴァイブスを出せたと思う。Takaが俺のヴァースはhard lifeっぽく、SIRUPのヴァースは「SIRUPの音」になるように整えてくれて、それが本当に好きなポイントなんだよね。SIRUPのヴァースを聴くと「ああ、これはSIRUPの曲だな」って思えるんだけど、途中で「hard lifeっぽく」変わっていく。その流れがすごくクール。

だからこそ、この曲には本当に誇りを持ってる。単に30秒だけフィーチャリングアーティストのヴァースがあるのではなく、ちゃんとお互いの「宇宙」が融合してる。それがよかったと思う。

――日本のリスナーに向けて、曲の意味をもう少し丁寧に説明してくれると理解が深まると思うんだけど、この曲で感じてほしいこと、浮かべて欲しいイメージってある?

Taka:曲の内容をすべて理解してる立場から言うと、これは「別れの歌」だよね。でも、よくある「泣いてる失恋ソング」じゃなくて、もうちょっと違う感情の捉え方をしてる。

人と人って、関係が深まったり離れたりしていくもので、それが上手くいかなかったとしても、そこから何か学べることがあるし、お互いをリスペクトしたまま終わる関係だってある。だから、「今回は上手くいかなかったけど、いつかまた違うタイミングで会えたらいいな」っていう前向きな別れの歌。そういう意味では、「勇気づける別れの歌」って言えるかもしれないし、きっと誰しもが経験したことのある感情だと思う。

SIRUP:俺の中では、「またみんなでランデブーできたらいいね」っていうテーマがあるんだけど、実はその中に「もう会いたくない」って気持ちもある。歌詞には《世界が終わり 誰もいない星 そこでまた Rendezvous》っていうラインがあって、それって絶対にあり得ないことだから、つまりは会いたくないってこと。

この曲では両方の感情を表現できたのが本当によかった。理想としては、この曲を聴いてみんなで盛り上がって、その中の誰かひとりが泣いたりしてもいいし、そういう夜にアンセムとして鳴ってほしい。実際に俺たちもそういう夜を過ごせたから、それがこの曲のストーリーとして最高だったなと思う。

Murray:うん、まさにそう。明らかにこれは失恋ソングなんだけど、「何も気にしてないふり」をするような雰囲気もある。ビートや歌い方がそういう感じだよね。「また会えたらいいな」って言ってるけど、「もう終わったし、2度と顔を見たくない」っていう気持ちも同時にある。そのアンビバレントな感情がこの曲にはあるんだよね。


「俺たち本当に友だちだからこそ、あの画が撮れたんだ」

――SIRUPってR&Bシンガーとして知られてるけど、UKロックとかオルタナも好きだし、海外コラボもイギリスのJoe HertzやROMderfulから始まったよね

SIRUP:そう。ロンドンの音楽って、自分のルーツであるネオソウル── 特に日本のネオソウルとも繋がるんだよね。たとえばSoulflexのメンバーとかと話してても、「ロンドンのソウルと日本のソウルって、都会的で洗練されてて、ちょっと似てるよね」って話になるし。俺自身、R&Bをルーツにしつつ、ロックっぽい要素や歌謡っぽさもミックスしてるから、王道のUS系R&Bとはまた違う。いろんな要素を取り込んで自分のフィルターを通して出してるのが「オルタナティブ」って感じかな。

Taka:ジャンルってある意味でアーティストの可能性を制限しちゃうよね。でも、聴く音楽の幅が広いほど、作る音楽にも深みが出ると思うし、ジャンルを超えた方がおもしろい音楽ができる。SIRUPが歌えば、それはもう「SIRUPの曲」になる。だから自然体で作っていけば、それだけで世界観ができ上がるんだよね。

Murray:日本の音楽をディグっていたとき、SIRUPみたいな音を出してる人が他に見つからなかった。俺は別に日本の音楽シーンに詳しいわけじゃないから、他にもいるとは思う。でもSIRUPって、「自分のやりたいことを恐れずにやってるアーティスト」っていう感じがしたんだよね。

UKとかUSの影響はあるかもしれないけど、それを単にコピーしてるんじゃなくて、自分だけの感覚で落とし込んでる。それがめちゃくちゃカッコいい。みんなジャンルに当てはめようとしがちだけど、SIRUPの音楽ってR&Bとも言えるけど、それだけじゃないし、俺にはそう簡単に説明できない。

Taka:ジャンルは2つしかない。「ドープ」か「クソ」か。ドープな方に入ればそれでOK(笑)。

――ただレーベルがお金を払ってコラボレーションを頼んで終わりっていうパターンも多いけど、今回のプロジェクトは違うよね。Murrayは日本で時間を過ごして、ちゃんとコミュニティに根を張っていた。

Murray:俺が東京を好きな理由って、よくある「食・文化・人が優しい」とかもあるけど、一番は「友だちに会いにきてる」ってことなんだよね。SIRUPとは、ちゃんとした会話をするには通訳が必要だけど、それでも「目指してるところ」とか「アートに対する姿勢」が似てるのが伝わってくる。

TakaやSIRUP、あとAyumu(Imazu)とか、たくさんの日本の友だちができて、今では自分もそのコミュニティの一部にいさせてもらってる。俺もTakaに日本の友だちを紹介したことがあるくらいで、それってめっちゃ不思議な感覚(笑)。でも、すごくリアルな繋がりだなって思う。

日本では「まず一緒に会って話してみてから判断する」っていう文化があって、それが本当に素敵だと思う。イギリスだと、まずインスタを見て、気に入らなければDMもスルー、みたいな世界だからさ。でも、東京── いや、俺たちの東京は、それを超えてると思う。こないだもSpincoasterでSIRUPと一緒にハブ酒飲みまくって潰れる、みたいな(笑)。それが俺にとっての幸せなんだ。

Taka:音楽を作る上で一番大事なのって、やっぱり「人として合うかどうか」だと思うんだよね。自分はプロデューサーという立場上、アーティストよりもいろんな人と制作することが多いんだけど、日本で活動してる中で、「あの人のこと知ってるけど話したことない」とか「SNSではフォローしてるけど会ったことない」っていう声をよく聞いてて。

だから、それがきっかけでSIRUPの誕生日に、みんなが一堂に会して飲める場をつくろうと思ったんだ。知り合いかも? くらいの人も含めて、全部呼んで、バーの酒がなくなるまで飲もうって(笑)。

SIRUP:こないだTakaがSpincoasterで開いてくれたパーティは、楽しすぎて潰れちゃった(笑)。日本の友だちもたくさんいるけど、みんなで集まって自分の誕生日を祝ってもらうことってあんまりなかったから、すごく感動した。

Taka:そういえば、SIRUPと初めて会ったのもSpincoasterだったね。

――Spincoasterって、どうしてそんなに「溜まり場」として特別なの?

Murray:音楽のセレクトが最高で、働いてる人たちも全員「仲間」って感じなんだ。Takaが店に入った瞬間、SIRUPの“GAME OVER”(Taka Perryプロデュース作)がかかるんだよね、毎回(笑)。

Taka:Spincoasterって偶然立ち寄るようなバーじゃなくて、そこを目掛けて来る人が多いと思う。だからこそ、集まってる人がみんなちょっとおもしろい。そういう場所。

――SIRUPは「もし自分たちが日本で高校や大学の同級生だったら」っていう想像をしてたらしくて、映画『PERFECT DAYS』の話もしてたよね。あと、彼自身「自分の曲にはいつもさりげない哀しさがある」って言ってて、それをここまでちゃんと引き出してくれたプロジェクトは初めてだったって。

Murray:あぁ、MV撮影のときね。監督の演出もあったけど、SIRUPからもかなり直接的に演出を受けたんだよね。2人で一緒に自転車に乗ってて、「夜遊びのあと」っていう雰囲気で、ちょっと落ち込んでる。何かが上手くいってないっていう設定。

撮影自体は時系列バラバラだったけど、ストーリーとしてはだんだんと気持ちが整理されていって、最後には宇宙へ飛び立つっていう……あれはSIRUPらしいエンディング(笑)。でもそれがいい雰囲気だったし、撮影も楽しかった。

「俺たち本当に友だちだからこそ、あの画が撮れたんだ」って思う。知らない人同士で「2人の友情」みたいなMVを撮るのって、めちゃくちゃ難しいから。


【リリース情報】


SIRUP 『RENDEZVOUS feat. hard life』
Release Date:2025.05.07 (Wed.)
Tracklist:
1. RENDEZVOUS feat. hard life

配信リンク


【イベント情報】


『NEXT LIFE TOUR 2025』

日時:2025年6月1日(日) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知・Zepp Nagoya

日時:2025年6月5日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:神奈川・KT Zepp Yokohama

日時:2025年6月13日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:北海道・Zepp Sapporo

日時:2025年6月21日(土) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:宮城・Sendai Rensa

日時:2025年6月27日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:広島・Hiroshima CLUB QUATTRO

日時:2025年6月28日(土) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡・Zepp Fukuoka

日時:2025年7月10日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪・Zepp Namba

日時:2025年7月18日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・Zepp DiverCity Tokyo

[BAND MEMBER]
Key. – 井上惇志

Gt. – HISA

Dr. & Mani. – RaB

Ba. – Funky

Sax & Fl. & Syn. – KenT



・チケット

一般発売:4月19日(土)〜:ぴあ / ローソン / e+

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■Taka Perry:Instagram / X


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