音楽業界からもファッション業界からも熱い視線を浴びる話題のカリフォルニアの音楽レーベルBurger Recordsが遂に日本に上陸!渋谷And Aでポップアップストアのオープンに併せて行われたレセプション・パーティに併せてレーベルのオーナーSean Bohrman とBurger Recordsの看板アーティストでもありイブ・サンローランのモデルも務めたことのあるREXXが来日した。Burger Recordsと言えばカセットテープ。店内にはポップでキュートなデザインのカセットテープやレコードが並べられていた。レセプションパーティでは、REXXのライブパフォーマンスが行われた。スキニージーンズに目の周りを赤くしたメイクはパンキッシュ。ギター1本で奏でる彼の甘くノスタルジックな音楽にカリフォルニアの風を感じた。
翌日、そんな彼らの音楽に対する思いを伺ってきた。Soundcloudやbandcampで音楽が簡単に手に入り、大量生産・大量消費される今の時代に逆行する彼らの考え方は、音楽ファンなら一読して欲しい。
Sean Bohrman (Burger Records) and REXX Interview
(Interviewer:Aoi Kurihara)
ー初来日ということですが、日本の印象はどうですか。
Sean:素晴らしいの一言だね。日本人はみんな歓迎してくれているし、とても親切だ。それに、僕たちに興味を持ってくれるように感じるよ。文化的にも東京は素晴らしい都市だね。
ーSeanのあるインタビューで、日本人はベイシティー・ローラーズが好きなイメージと言っていたのを読みました。
Sean:そうだね。70年代の日本で彼らが人気だったと聞いたんだ。今の若者は知らないかもしれないけど、彼らの親の世代はきっと好きだろうね。
ー私の母もベイシティー・ローラーズの大ファンだったんですよ。(笑)
Sean:そうなんだ!僕もだよ!僕はロックンロールの歴史に影響を受けてきているからね。
ーお二人はどのように出会ったのでしょう。REXXを発掘した経緯を教えてください。
Sean:彼とはBurger Recordsのショップで出会ったんだ。彼は店でのインストアライブを友達と見に来ていたのだけど、オーラがあって一目で次世代の若者たちだと直感したんだ。彼が音楽をやっていると知って音源をもらったり、インストアライブに呼んで、うちでリリースすることになったんだ。
REXX:初めてBurger Recordsに行ったときは、Burger Recordsのことなんて知らずに友達に連れられてきたんだけど、中でショーをやっていたバンドがとてもかっこよかったと思ったし、僕たちもBurger Recordsに所属してショーをやったりカセットテープをリリースできたらクールなんじゃないかと話していたら、Seanにこういった機会をもらえるようになったんだ。
ーSeanは他のバンドをどのように発掘しているのでしょうか。
Sean:いろいろなやり方があるんだ。毎日のようにデモがメールだったり、実物だったりで大量に送られてくるんだ。ボックスができるぐらい本当に大量さ。友達に教えてもらうことも多いね。あとはWeezer(ウィーザー)やJenny Lewis(ジェニー・ルイス)のように他のレーベルから依頼があってリリースすることもあるんだ。
ーBurger Records所属のバンドは一環して共通点があるように思います。彼らは飾り気がなく、とてもシンプルで、過去の青春を思い出させるようなノスタルジックさがあると私は思います。実際はどういった基準で選んでるのですか。
Sean:今は800ものバンドが所属しているのだけれど、サイケデリックからヒップホップやアバンギャルドまで多種多様だよ。でも、ガレージロックやパンクに影響を受けた友達のバンドが多いのは確かだね。そして、彼らはロックンロールの歴史から影響を受けたようなバンドだね。みんな音楽を聴くとき、1度目を聴いたときは好きじゃなくても、何度も何度も聴くうちに好きになるという心理的な性質を持っているんだ。例えばテイラー・スウィフトなんかを聴いてみて、「うーん、あんま好きじゃないや」と思ったとする。ところが2回目に聴くと少し気になってくる。3回目4回目聴くとどんどん気になっていく。友達のバンドとかは、最初は気に入らなくても何回も何回も聴いて好きになろうと努力するんだけど、デモに関しては30秒で判断しなければならないんだ。「良いか良くないか」、「人にウケるかウケないか」、「本物か本物じゃないか」、というのはその瞬間で判断できる。そのわずかな瞬間で自分が何かを感じられれば、そのバンドはラッキーで、うちからリリースできるんだ。ロックンロールに影響を受けたバンドの中で、良いか良くないかを判断するのが僕の役割だね。
ーさて話を変えてレックスのアルバムに関して質問です。今作『I Really Tried To Save Day』のタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。
REXX:僕は『スパイダーマン』や『バッドマン』といったアメコミが好きなんだけど、スーパーヒーローの台詞をイメージしたんだ。「Hey guys, I really tried to save day…sorry(みんな、世界を救おうとしたんだけど、ごめんね。)」という風にね。ちょっとしたジョークさ。
ーアートワークも自分で描いたと聴きましたが、スーパーヒーロー風なのもそれが理由ですか。
REXX:そうだよ!だいぶ昔にコミック・ブックのリカバーとして描いたんだけどね。アルバムカバーは、アルバムタイトルから影響を受けていて、そのタイトルはコミック・ブックから影響を受けているよ。あんまり考えすぎないようにしているんだ。おもしろおかしく考える方が好きなんだ。僕の書く曲は、シリアスだったりメランコリーな曲が多いけれど、自分自身は決してそんなタイプじゃないからアルバムカバーやそういった部分で本来の僕自身を表現したいと思うんだ。
ー冒頭を飾る「When I Sleep」も少しシリアスに思えますが。
REXX:確かに子供が閉じ込められていたりとかシリアスではあるけど、ちょっとジョークみたいな感じを交えているよ。メロディーはちょっと暗くなっているかもしれないけど。ユーモアも含めた歌詞になっているよ。
REXX / When I Sleep
ーそういった歌詞は何の影響を受けて書いているのでしょう。
REXX:ラブソングが1番書き易いんだよね。高校の時に女の子から「なんで好きになってくれないの?」と聞かれて、それで彼女について書いたりしてラブソングを書くようになったんだ。ラブソングを書くのは心地が良いんだ。「When I Sleep」は違うけれど、このアルバム自体は愛をテーマにした曲が多いね。
ー60年代や70sのサーフロックやパンク等の昔の音楽から影響を受けたガレージロックという印象ですが、実際はどのような音楽から影響を受けたのでしょう。
REXX:70年代後半のパンクから最も影響を受けているね。70年代後半から80年代前半初頭のパンクやニューレイヴといった音楽が好きなんだ。The Cure(ザ・キュア)とかTalking Heads(トーキング・ヘッズ)とか。それで音楽を書きたいと思ったんだ。アップテンポの楽しい曲が好きだね。あとフィオナ・アップルの大ファンですごく影響を受けているよ!
ー今 20歳ということですが、高校生の頃とか周りのコ達はヒットチャートの音楽を聞いたはずですよね。その中でどうしてそういった自分の親世代の音楽を聴くようになったのでしょうか。
REXX:僕、今週もうすぐ21歳になるんだ!!高校の時の友達はみんなミュージシャンだったから、彼らの影響だね。仲の良かった人たちから音楽を教えてもらったり、彼らと一緒にネットやビデオを見て、70年代や80年代の音楽を探して行ったんだ。ジャズだったりブルースも好きだよ。
ーイブサン・ローランのショーのモデルも務めたようですが、あなたにとってファッションも音楽と同様にあなたの自己表現の手段のひとつですか。
REXX:モデルをすることはとてもエキサイティングな経験だったよ。ファッションショーのためにパリにも行くことができた。モデルという仕事にそこまで熱意を感じているわけではないけれど、新しい都市に行けたり、面白い人たちに会えたり、ショーがどういう風に成り立っているかやそのショーを作り上げる人たちの素晴らしさに触れたり、いろいろ人生に影響を受けるような経験が体験できた。洋服で何かを表現したいというよりも、それを作った人たちだったり、どのように作られたかのような全ての経験に自分は興味深いと思うんだ。でもすごく楽しかったよ!
ーアルバム収録曲の「Break and Bend」のMVはそのパリで撮影したのでしょうか。
REXX:そうだよ。昨年の9月にパリに訪れたんだけれど、数日オフがあったからパリの街を回っていたんだ、レーベル名とのCherry Glazerr と「ミュージックビデオ作ったら?」という話になったんだ。それでiPhoneを使って録ったんだよ。
REXX / Break and Bend
Cherry Glazerr / What’s Not My Color This Evening
ー東京でもビデオ録ったりしましたか。
REXX:そうだね!明日完全にお休みだからもしかしたら・・・?
ーインターネットが普及して音楽がすぐにネットで聴ける時代にあえてなぜカセットテープやアナログのものを売り出しているのでしょうか。
Sean:みんな、今mp3以上のものを求めていると思うんだ。なにか手に持てるような形になるものだよ。mp3によってCDは廃れてしまった。日本ではどうなのかわからないけれど、アメリカではCDをもうほとんど売ってないんだ。レコードは売っているけれど。レコードやカセットテープというものは、それを形にするのに作るのには時間がかかる。自分たちの手をつかってつくるんだ。今、人が関わって作るものに価値を見いだす人がいると思うんだ。昔だったら不細工でも音楽が良ければ良いという時代だったけど、今はビジュアルも必要で、時代が変わってきている。だからこそ、カセットテープやレコードは必要だと思うんだ。
REXX:僕が子供の頃、父親がカセットテープで音楽を聞いていたこともあって、カセットテープには懐かしさを感じるんだ。自分でもラジカセを持っていて、父のカセットコレクションに行って音楽を探していた経験があって、それが自分にとってとても大切な想い出なんだ。今は音楽を簡単に聴けるけれど、パソコンやiPodが壊れたら全部を失って聞けなくなてしまう。でも、カセットやレコードは大切に管理していれば失われないんだ。僕たちはカセットテープが普通に流通していた最後の世代なんだ。僕の年の離れた妹はカセットテープというものを知らないよ。
Sean:カセットテープが戻ってくれば、それがまた普通の状態になるよ。流行ってサイクルなんだ。だから、CDもきっと戻ってくると思う。カセットテープを始めたときは、ただ自分たちが車で聴けるからという理由で特に意図せずにやってみただけだったんだけれど、今こんな現象になって驚いているよ。
ー最後に日本のファンにひとこと!
Sean:本当にありがとう!日本で仕事できることにとても感謝しているよ。東京で働くのは一つの夢で、それが叶ったんだ。自分を信じることがマジックになるんだ。みんなから本当にヨーロッパや日本に行けるの?と言われたけど、それが叶うなんてクレイジーだね。Burger Recordsを世界にシェアできるのは本当に楽しみだ!
REXX:日本の人たちは、みんな優しくて親切で、とても感謝しているよ。昨晩のイベントでのオーディエンスも反応も良かったし、日本に来れてとても嬉しいよ。さっきSeanが「自分を信じろ」と言ったけれど、バンドをやっている人たちは自分を信じてみるということから始めてみて!