INTERVIEW

POND

「僕らは何かに誇りを持ちたいと思っていて。だから、自分自身でその何かを作らないといけない」――ポップで郷愁漂う新作に隠された想い

今年のサマソニでオススメを聞かれたとき、必ずこのバンドを挙げている。

オーストラリアのサイケ・シーンのなかでもひときわ異彩を放つバンドであるPONDが、およそ3年ぶりに最新作『The Weather』をリリースした。

個人的な話だが、初めて彼らのことを知ったのはTame Impalaの元メンバーが中心となったバンドという謳い文句に惹かれたことがキッカケだった。ファンならわかる方もいると思うが、PONDはとにかくサウンドが濃い。荒削りなロックンロールから、グラム・ロックのような展開、ガレージのような衝動など、ひと言にサイケ・ロックと呼ばれることの多い彼らのサウンドだが、一聴すればまるで幾何学模様のように様々な要素が何重にも複雑に絡みあって構成されているということがわかるだろう。

今作ではその模様が、ポップでノスタルジックな輪郭で縁どられたサウンド・スケープを描き出している。それはアートワークで切り取られた、メンバーが住んでいる街・パースの風景とも重なってくることだろう。

オーストラリア・パースという土地と彼らの音楽はどのように結びついているのだろうか。そして、「地球上で最も離れたところにある街」とも呼ばれるパースという土地が、彼らにどのような影響を与えているのか。

そんな彼らの天気模様を探るべく、今回は来日に先駆けてメール・インタビューを敢行した。雲の切れ間から垣間みえるようなNick Allbrookの回答からは、今作がこれまで以上に誇りを持つに足る自信作であることが伝わってくることだろう。

Interview by Takato Ishikawa


―アルバム完成&リリースおめでとうございます。今作の手応えをどのように感じてるか、率直な感想を教えてください。

本当にすごく満足してるよ。こういう気持ちがこんなにも長く続いてるのは珍しいくらいだね。でも、今の僕らはそこからも成長してるし、もっといいものを作れるかもと思ったり、「ここはこうすればよかった」っていう気持ちも素直に感じてたりするよ。

―過去作に引き続き、今作のプロデュースに親友かつ元バンド・メイトのKevin Parkerが参加されています。シンセポップ寄りの今作は、これまでのPONDのサウンドとはかなり異なるものですが、その辺りについてKevin Parkerとどのようなやり取りを交わしましたか?

方向性について特に話すことはなかったね。僕らはお互いのことをすごくわかりあってるから。

―アルバム制作は昨年初め頃から西オーストラリアのFremantleにあるKevin Parkerの自宅スタジオでスタートしたと聞きました。海の近くだというその環境は、作品にどのように作用したと思いますか?

それは難しい質問だね。というのも、今回の楽曲におけるエモーショナルな部分というのは、曲を書き始めた当初――それはとても神経質になっていたり、もしくはすごくやる気になっていたりしてた、そういった初期の頃からスタートしてるからね。スタジオでの時間というのは極めて実務的なもので、とかく楽しもうと努めながら、お互いイライラしないようにして、物事をこなしていったんだ。海のそばで仕事を仕上げるのは簡単だったよ。海が全てをリセットしてくれるからね。

―今作を制作するにあたって、大きく影響を受けていたアーティストにMichael Jackson、Beastie Boys、Led Zeppelinなどを挙げているそうですね。様々なサウンド、カルチャーを混ぜ合わせてまとめ上げるというアイディアは、制作当初から持っていたのでしょうか?

その通りに作ってたらかなり変な作品の集合体になったかもね(笑)。さっき挙がった3組のアーティスト、バンドは常に僕のプレイリストのトップに位置するわけじゃないけど、みんな素晴らしいアーティスト。僕がそれぞれ、7歳、15歳、17歳の時に夢中になったアーティストたちなんだ。
クリエイティヴな作品に何が影響を及ぼすのか、正確に解析するのは不可能だけど、それはとても限定的なもの、クリエイティヴィティとは真逆のことだったり、複雑で生々しいものだよね。僕らは「すごく」他のアーティストたちに影響は受けてるけど、それは音楽や映画、ラジオや両親、友情だったり、日々聞こえてくる音、電車、標識、動物、それに水や書籍など様々な思考や歴史、僕らが理解したりしてなかったりする全てのこと。生きている間や睡眠時の夢の中まで含め……そんな中で、それらのうちのいくつかが僕らに影響を及ぼすんだ。

―今作のゲストには地元パースからKoi Childのメンバーや、女性シンガーのMei Saraswati、Kirin J. Callinanなどを迎えていますが、彼らとはどのようなきっかけで共演に至ったのでしょうか。

僕がKoi Childのメンバーの隣に住んでいて、時々バンドのメンバー数名とアートをやる場所をシェアして使ったりしてるんだ。彼らはすごくいい奴らで、素晴らしいミュージシャンだよね。いつもみたいに一緒に遊んでる時に、自分の家の塀によじ登って「ねぇ、僕らのアルバムでプレイしない? この道をちょっと行ったところにあるKevinのスタジオでレコーディングしてるんだ」って言っただけ。とても簡単なことさ。
MeiとKirinはこの数年、僕がとても好きなアーティスト。とてもいい友達だしね。だからこちらも(誘うのは)簡単だったし、彼女らとの作業は楽しかったよ。

―「Paint Me Silver」という曲では、Nickの友人であるAmber Freshが書いたフレーズを歌詞に引用しているそうですね。そのアイディアは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

Amberがそこに座ってたんだ。それだけだよ。

―また、同曲のMVは家のなかで異星人がダンスしている奇妙で面白い映像へと仕上がっているだけでなく、サンプリング元にTodd Rundgren & Utopiaの「Cosmic Convoy」を使っている点からも、スペース・サイケのような雰囲気を感じました。あの映像は、どのようなアイディアをもとに作られたMVなのでしょうか。

僕らの長年の友人、Alejandro Miguel Crawfordに(彼とは彼がMGMTのために作った作品を通して知り合った)、この曲のために何かを作ってくれないかと依頼しただけなんだ。彼はある種の天才で、この神がかったフリーク・ショーをちゃんとした作品にしてくれたんだ。

―アルバム1曲目の「30000 Megatons」は核の脅威に対する絶望的な祈りを歌った曲ということで、当初はアルバム・リリースに合わせて公開予定とのことでした。そこからトランプ政権誕生と同時に公開したのは、世界的な核保有責任や能力の批判も含まれているということでしょうか?

この曲は、ふたりの老人がそれぞれ頭の上にひとりは2本、もうひとりは7本のマッチを持ってガソリンの入ったプールの中に立っている――そんなグロテスクでシュールな、時々自分でも我慢できなくて気分が悪くなるようなシチュエーションを描いているんだ。(この曲の中にある)極端に暗い侘しさに反応してくれるように願うだけだよ。無関心に向かうことのないようにね。

―『The Weather』というアルバム名は、不安定な世界情勢や、それに対する人びとの心境の起伏について拾い上げたネーミングだと思いました。このタイトルはどのようなコンセプトを表しているのでしょうか?

それはなかなか素晴らしい推察だね。この言葉は短いけれど色々な意味にとれる。「天候」というものは常に変化するものだしね。このタイトルの『The Weather』という言葉は、メタファーとしての意味合いではないんだ。パースは結構退屈なんだけど、天候に恵まれているところだから。それに僕にとっては、自分らの世代のことをもじった感じもある。そして、天候のことを語り合うことで世界的な災害のことまで話が及ぶという、そういう狙いもあるんだ。

―NickのInstagramでは、今作のアートワークが写ったポストカードが投稿されていました。ノスタルジックな雰囲気からしていつ頃のパースの風景なのでしょうか。

そう、その通りでパース市だね。多分Murrayストリートで1970年台後半か1980年代だね、写ってるひとたちの服装から察するとね。

ALLEZ 🛩🏝🏏🦈😊

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―「(アルバムの)多くの曲が全くもって西オーストラリアに住む人間を自己投影したものさ」 とのことですが、メンバーからみて現在のパースという都市はどのように映っていますか?

それは非常にややこしい話で、誰でもひとつの場所に長く住めばそうだと思うんだけど……。たくさんの学ぶべきこと、細部に渡って考えること、理解すること、修復すべきこと、そして愛すべきところがここにはある。大英帝国がヌンガー族から奪った聖なる場所であり、ゆっくりとだけど多大な努力が実って、現在では綺麗な牧草地と鉱物資源がこの世界の辺境(であるパース)にある。ディープな精神性、恥、無知、そして取るに足らないお金や俗に言う「ナチュラル・ビューティ」や真の創造性がここには存在する。怒り、孤独、自己満足、平常心、退屈、そして罪。本当にややこしくて、この話は考えれば考えるほど疑問が湧きだしてきて、結論が出ないんだ。

―2015年に書かれたCreative Darwinism(クリエイティヴ・ダーウィニズム)でのエッセイで「地理的に隔離されること、それが原因で自分の気の合う仲間たちが結果的に刺激的な音楽を共に作るようになる」という一節が印象的だったのですが、それを読んだときに地政学としてオーストラリアやパースという地がバンドに重要な影響をもたらしていると思いました。この一節は、自分たちが置かれているシーンを端的に表しているのでしょうか。

たぶんそうだね。それが僕の感じたところだけど、別に自分は預言者じゃないからね。僕は何が人々を動かすのかを知ることはできないよ。植民地時代を終えて以降のオーストラリアにおいて、僕らは何かに誇りを持ちたいと思っていて。だから、自分自身でその何かを作らないといけない。だって僕らが過去に残してきたものは大部分において、とても、とても痛々しいものだから。

―今年8月には”Summer Sonic 2017″への出演が決定し、久しぶりの来日を果たします。以前来日した際には日本の礼儀正しさにとても驚いたと聞きましたが、今回の来日で楽しみにしていることはなんですか?

安全を感じながら散歩してみたい。待ち遠しいね、本当にすごくいい気分だよ。日本は僕がそれまで知っている場所ではありえないくらいの、全くの別世界。ヨーロッパも建物や言語の違いを感じるけど、それは同じ樹木の上で、違う種類のリンゴが実っている感じ。それに比べると、日本というのは「種子」からして別物で、その別物の種子から育っているような印象を受けるんだ。

―最後に、これを読んでいる日本のファンにむけてメッセージをお願いします。

自分に真正直に、幸せになるために一生懸命働くこと! ……ハハハ、僕がみんなに言うべきセリフじゃないよね、こんなダメ男が(笑)。たくさんの愛を、可能な限りね! みんなに会うのがホント待ちきれないよ!

(L→R:Jay Watson、Jamie Terry、Nick Allbrook、Shiny Joe Ryan)


【リリース情報】

Pond 『The Weather』
Release Date:2017.05.03 (Wed.) ※国内盤
Label:Mute / Traffic
Cat.No.:TRCP-211
Tracklist:
1. 30,000 Megatons
2. Sweep Me Off My Feet
3. Paint Me Silver
4. Colder Than Ice
5. Edge Of The World Pt. 1
6. A/B
7. Zen Automaton
8. All I Want For Xmas (Is A Tascam 388)
9. Edge of the World Pt. 2
10.The Weather
11.Fire In The Water ※国内盤ボーナス・トラック

※CD日本先行発売 (海外:5月5日)
※日本盤CDボーナストラック2曲収録
※解説/歌詞対訳付

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