INTERVIEW

Myd

水カンともコラボを行う仏エレクトロ・シーンの重要プロデューサー、Myd。〈Ed Banger〉移籍の経緯から来年発表予定の新作について訊いた

フランスはパリ拠点のDJ/プロデューサーにして、BrodinskiとそのマネージャーのManu Barronが立ち上げた〈Bromance〉クルーの一員でもあり、さらにはSam Tiba、Canblaster、Panteros666と共にClub chevalでの活動でも知られるMydが、10月に東京・渋谷SOUND MUSEUM VISIONの人気パーティ『EDGE HOUSE』へ出演した。

2016年には水曜日のカンパネラの作品をプロデュースしているほか、日本には何度も来日経験もあるMyd。近年ではJusticeやSebastiAn(先日ニュー・アルバムを出したばかり)などの活躍でも知られる〈Ed Banger〉から作品をコンスタントにリリースし、なんと来年にはアルバムもリリース予定だという。

今回はそんなMydに先述の『EDGE HOUSE』出演の際にインタビューを敢行。近年のコラボ・ワークからレーベル移籍の経緯、自身の作品についてなど、短い時間ながらも様々なことを語ってもらった。なお、Spincoasterでは2016年に〈Bromance Records Crew〉へもインタビューを行っている。こちらも合わせてチェックしてもらえると幸いだ。

Interview & Photo by Takazumi Hosaka


――昨日のDJ、とてもよかったです。テック・ハウスなどに混ぜてトライバル・ハウスやアフロ・ハウス、さらにラテンの要素が入った曲までプレイしていたのが印象的でした。これは最近のあなたのムードですか?

そうだね。今年の夏はビーチなどでもたくさんプレイする機会があったから、そのヴァイブスをまだ引きずっているのかもしれない。USBにそういう曲をたくさん入れているっていうのもあるしね。もちろんアフロやラテン・ミュージックっていうのは昔から自分の中にあるもなんだ。

――ビーチなどの開放的なロケーションと、アンダーグラウンドなクラブではプレイ内容も大きく変わってきますよね。

アフタヌーンにビーチとかでDJする方が楽ではあるんだ。あまりオーディエンスも真剣に観ていないから(笑)。一方、夜中のクラブは自分にとってもチャレンジングな感じだよね。クラブでは自分の楽曲も使いつつ、みんなにストーリーを紡いでいかなければいけない。難しいけど、そこが好きなポイントでもある。

――アフロやラテン・ミュージックは昔から親しんできたとのことですが、具体的にはどのようなアーティストに影響を受けたのでしょうか。

そもそも僕がDJを始めたのは、Basement JaxxやThe Chemical BrothersみたいなUKのエレクトロニック・ミュージックに影響を受けたからなんだ。Fatboy Slimなんかもそうで、彼の場合はラテンとか様々な音楽を自身のセットに組み込んでいるよね。そういうところからも大きな影響を受けた。

一方、フランスにはLaurent Garnierっていうレジェンドがいるんだけど、彼は時に6時間とか7時間もの長尺のセットで、自分のストーリーを紡いでいくんだ。その両方のスタイルに影響を受けて、今の自分のDJプレイが確立されてきたんだと思う。

――なるほど。

そういえばこの前DJ Falconに会ったんだけど、彼には僕のルーツなんて話したことないのに、一回僕のセットを観ただけで「Basement Jaxxとか好きだろ?」って言われて(笑)。すぐにバレちゃったんだ。

――そういえば、フランスではラップ・ミュージックにアフロ的要素を取り入れたサウンドが注目を集めていると聞いたことがあります。実際にはどうでしょう?

MHDっていう人気ラッパーがいるんだけど、彼はフランス国内のエレクトロニック・ミュージックとラップ・ミュージックの顔を塗り替えたと言ってもいい。トラップとアフロを融合して、アフロ・トラップなんて言われているんだけど、とてもダンサブルなサウンドで人気があるね。彼はDiplo率いるMajor Lazerともコラボしていて、ダンス・ミュージックにアフリカやジャマイカの音楽の要素をどんどん取り入っているんだ。

――あなたはこれまでにもアトランタのラッパー、Twice & Lil Pattやカリフォルニアのソウル/ファンク系アーティスト、Cola Boyyともコラボしていますよね。今後も多様なジャンルのサウンドを取り入れていくつもりなのでしょうか。

今制作中のアルバムはエレクトロニック・ミュージックに絞っているんだけど、自分自身は音楽のジャンルみたいなものには全く縛られていないし、自分と異なるジャンル、シーンのアーティストとのコラボはすごく刺激になるんだ。ラッパーは常に新しいサウンドを探しているし、とてもクリエイティヴ。オープンな姿勢の人が多いし、そして何より彼らは仕事が早い。常日頃からフランスだけじゃなくて、世界中のラッパーたちとコンタクトを取ったり、ビートを送ったりしているんだ。日本だとKOHHとかにもね。

――2016年にリリースされた水曜日のカンパネラのEP『UMA』に収録の「フェニックス」をプロデュースしていますよね。このコラボの経緯を教えて下さい。

少し変わった話なんだ。(水曜日のカンパネラの)コムアイが、どこかで僕の音楽を聴いて、その場でShazam(音楽認識アプリ)して僕の曲だってことがわかったらしくて、コンタクトを取ってきてくれたんだ。それでピアノ・ハウス風のトラックをプロデュースすることになった。でも、一緒にスタジオに入るわけじゃないから、最初はコミュニケーションを取るのが中々難しくてね。コムアイは英語が喋れないし、僕も日本語は喋れないから(笑)。でも、2ヶ月前にコムアイに会ったんだけど、彼女はこの3年間で英語を勉強していたみたいで。一緒に話したり、ジョークを言い合ったりすることができたんだ。また一緒にコラボしたいね。今度はもっとイージーに進行することができると思う(笑)。

――今年リリースされた中国のシンガー、李宇春(Chris Lee)のアルバムから、「哇」(Wa)や「游泳」もSam Tibaと共にプロデュースを手がけていますよね。

実は……僕ら自身もどうしてなのかわかってないんだけど、彼女がClub chevalのファンだったみたいで、コラボのオファーがきたんだよね(笑)。Club chevalはここ2年くらい休止状態なのにも関わらず。中国国内ではとてもビッグなアーティストみたいなんだけど、ヨーロッパやその他の国ではあまり知られていないようで、情報も少ない。でも、みんなで集まって話し合ったら、「やってみよう」っていうことになって。水曜日のカンパネラと同じように、ネットを通じての作業だったんだけど、僕らが10曲くらいデモを作って、そこから彼女が2曲選んでくれたんだ。

――残りの曲は?

どこにも発表してないし、今のところ発表する予定もない。PCの中にしか存在してないね(笑)。「哇」は中国の国内チャートでNo.1も取るくらい、李宇春はポップ・スターなんだ。でも、彼女は中国っていう少し特殊な環境の国において、少数派の人たちからの支持を得ていたり、メッセージ性の強い曲を発表したりもしている。僕らとしても、コラボするからには「曲を書いてお金をもらってそれでおしまい」ではなく、お互いに有益な関係を築きたいと思っているから、このコラボも自慢のワークになったよ。僕らも中国に飛んで、ライブ映像の撮影も行った。

――これまで〈Marble〉、〈Bromance〉などからリリースしてきましたが、2017年以降は〈Ed Banger〉からのリリースとなりました。同じパリ拠点のレーベルですし、前々から親しい仲だったとは思いますが、改めて〈Ed Banger〉とサインするに至った経緯を教えてもらえますか?

〈Bromance〉が活動終了を迎えて、Club chevalとしてのツアーも一段落した頃、ようやく自分のソロ作品に力を注げるって思ったんだ。それからどこのレーベルから出すのかいいが、色々考えた。パリのシーンはすごく狭いから、元々みんな知り合いだったから、〈Ed Banger〉にも相談を持ちかけてみたんだ。でも、当初は〈Ed Banger〉みたいなビッグなレーベルから出せるとは思ってなかった。ところが、〈Ed Banger〉のオフィスに行ってみたら、すごく小さいオフィスにPedro(同レーベルのオーナー・Busy PことPedro Winter)がひとりだけ、みたいな感じで(笑)。僕をすごく温かく迎えてくれた。大きな組織でシステマチックに動くより、小さいクルーでファミリーのような感じで動く方が僕自身には合っているんだ。その方が自分らしさも発揮できるしね。

最初にEPを聴いてもらって、すぐには返事をくれなかったけど、1週間くらい経ったら「一緒にやろう」って言ってくれて。僕のファンも〈Ed Banger〉からリリースすることを祝福してくれたし、〈Ed Banger〉のファンも僕の作品を認めてくれた。自分の力を存分に活かせるレーベルだなって感じたよ。

――来年リリース予定だというアルバムがどんな作品になっているのか、少しだけヒントをくれませんか?

これまでにリリースしてきたEPとは違って、アルバムではストーリーを大事にしている。(2019年4月にリリースした)『Superdiscoteca』なんかは、その時の自分のムードやヴァイブっていう感じだったけど、アルバムはもっとじっくりと練り上げて、長く聴かれるような作品にしたいと思ってる。そのために、時間をかけて色々なサウンドを探ったりもしている。

――フロア・オリエンテッドなダンサブルな要素に特化、というよりはもっとリスニングに適した作品になると。

ダンスできることは重要なんだけど、それだけじゃない。どちらかというとライブ・セット向けの作品になると思う。これまでの作品で言えば「The Sun」が近いかな。

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