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INTERVIEW | kiki vivi lily


10周年を刻むEP『TOU.』にみる引き算の美学、Boseやtofubeatsらとの制作背景

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2026.09.17

今年でデビュー10周年を迎えるシンガーソングライター・kiki vivi lilyが、新作EP『TOU.』を9月16日(水)にリリースした。

本作のタイトル『TOU.』には、これまで支え続けてくれたファンへの想いを込めた「to you」の意味と、「10=とお」という響きが重ねられている。本作にはプロデューサー/アレンジャーにtofubeats、Sweet William、小川翔(LAGHEADS)、関口シンゴ(Ovall)、RhymeTube、A.G.O、SHINTA(DURDN)といった多彩な面々がクレジットされているほか、リード曲となる“恋がリピート”にはスチャダラパーのBoseがフィーチャーされている。

ポップかつカラフルなサウンドを展開しつつも、ときにはヒップホップにも接近するなど、国内シーンにおいて独自の立ち位置を築いてきたkiki vivi lily。10月には本作を携え東京・恵比寿LIQUIDROOMにて10周年記念ワンマン『kiki vivi lily 10th Anniversary Live “TOU.”』の開催も控えている。

今回のインタビューでは、kiki vivi lilyとして過ごした10年という期間について、そして新作EPに込めた思いを語ってもらった。(編集部)

Interview & Text by Shoichiro Kotetsu
Photo:©SUMMER SONIC All Rights Reserved.


全部歌おうとしていた昔、抜き差しを覚えた今──10年を振り返って

――改めて、この10年を振り返って、今のお気持ちは?

kiki vivi lily:あっという間でしたね。目の前のことを一つひとつこなしていく日々で、今年が10周年って、人に言われるまで気づかなかったくらいです。あまり手応えがない……あるべきなんでしょうけど(笑)。

でも、今、10周年を記念したライブを準備していて、オールタイムベスト的な選曲を考えているんですけど「こんな曲、書いてたなあ」みたいなのがいっぱいあって、そこで10年という月日を感じましたね。

――この10年間でミュージシャンとして、もしくはひとりの人間として、変わったと思うこと、逆に変わってないと感じる部分は?

kiki vivi lily:変わったところは、人を好きになったこと(笑)。昔はライブが終わったら直帰か、遠征中でもなるべく早くホテルに帰ってひとりになりたいと思ってたんですけど、最近は気付いたら朝、なんてこともあるくらいみんなのことが大好きになりました。

変わってないと感じるのは、マイペースなところです。10年前も今も、自分が納得できるものを、自分のペースで作り続けたいという気持ちは変わっていないと思います。

――kiki vivi lilyとしての最初のライブの思い出はありますか。

kiki vivi lily:kiki vivi lily:Ginza Sony Parkでの初お披露目みたいなライブは、やっぱり強烈に覚えてますね。WONKの荒田(洸)くんがバンマスで、MELRAWもいて……あと、『vivid』のときの、渋谷WWWでの初めてのワンマンライブも印象的です。そのときに組んだバンドのメンバーと、今もずっと続けていますね。

昔は、結構ライブは「必死」で歌ってたんですよ。宅録で作った曲の再現というか、コーラスや合いの手も全部歌おうとしていて。でも、最近はもっと抜き差しして、「全部しっかり歌う」ということにこだわらなくなりました。もっと、周りの演奏とのグルーヴを楽しむようになりましたね。

――10周年のライブは、どんな雰囲気になりそうですか?

kiki vivi lily:ライブでやるのは珍しい曲も含めて、なるべく今まで出した曲をまんべんなくやりたいですね。バンドで再現するのが難しい曲も、チャレンジしようかと。基本的にはしっかり自分の歌を、バンドと一緒にお届けしたいですね。


「ひとつのジャンルに収まりたくない」──初心に立ち返った『TOU.』

――新作EP『TOU.』についてもお聞かせください。6曲でいろんな曲調やテンポがあり、バランスのいい展開ですね。気軽に聴き始めて、最後まで流れるように聴いてしまうような。

kiki vivi lily:ありがとうございます。曲調にバラエティを持たせたい、というのはありましたね。あと、kiki vivi lilyとして活動を始めた10年前は、まだCDが主流の時代だったと思うんですけど、イメージ的に、CD屋さんがどの棚に置いていいか迷うような作品が作りたくて(笑)。ひとつのジャンルに収まりたくないなって思ってて、いろんなアプローチの曲を作っていたんですけど、今回のEPはその初心に立ち返った感じもあります。

――そういう「ひとつのジャンルに定まりたくない」という気持ちは、どういうところから出てくるんでしょうか?

kiki vivi lily:新しいこと、誰もやってないことができないかと思ってて。だから、そういうカテゴライズにハマっていたらダメだなと。ブレイクビーツと何かをかけ合わせて新しいジャンルを作るとか、そういう熱意に燃えていましたね。

――『TOU.』の収録曲について、1曲ずつ制作の裏側を教えてください。まずは1曲目の“Love Affair”ですね。先ほども名前の出た、LAGHEADSの小川翔さんが編曲にクレジットされています。

kiki vivi lily:もともとビートメイカーの子と打ち込みで作っていた曲なんですけど、ある程度出来上がった時点で、生の音にしたいなって思って。それで、翔さんのスタジオに通って、アレンジやプレイヤーについて相談して……って感じで、仕上げていきました。

――歌が終わってからの、セッションのようなアウトロが、かなり長めですよね。

kiki vivi lily:今、長い曲って少ないじゃないですか。短い方がいいってよく言われるけど、だったら逆に、長くいっちゃおうみたいな(笑)。

――「イントロも短くて、ギターソロもないような曲がサブスクでは伸びる」みたいな話は、よく聞きますよね。

kiki vivi lily:ありますよね。バンドで録音するときって、編集で切る前提で、ちょっと長めに演奏するじゃないですか。でも編集で何回も聴いてると、切りたくなくなっちゃうんですよ。それもあって迷ったけど、この長さにしました。

――実際、そういう「今は短い曲じゃないとウケない」という風潮は、どう感じていますか?

kiki vivi lily:うーん、最初の『LOVIN’ YOU』というEPを出した時、曲のどの部分も、ブリッジでもアウトロでも「意味がある」ものにしよう、というマインドだったんですよ。そういう意味では「ここはイントロを削ろう」みたいなこともよく考えてたので(今の風潮も)理解はできる……けど、自分は過去のEPでそれはやってるから、一周回って「あえてアウトロを長くしよう」みたいな気持ちかもしれません。自由にやらせてもらってますね(笑)。

――2曲目の“Ms.Sunshine”は、ビートメイカーのSweet Williamさんが参加されていますね。kiki viviさんにとっては長い付き合いですよね。

kiki vivi lily:長いですねえ。いい意味で変わっていなくて、自分の美学を貫いていて、そこがカッコいいですね。もちろん音はアップデートされていますが。

これまでSweet Williamと作った曲は、温かみのある曲が多かった印象なので、今回の“Ms.Sunshine”はクールな、低温なイメージを意識してみました。歌詞もニュートラルな感じですね。


Boseとの初共演、ゆかりの深いtofubeatsとの共作

――そして3曲目の“恋がリピート”は、スチャダラパーのBoseさんがラッパーとして参加されていますね。意外な大物の登場ですが……。

kiki vivi lily:はい、周囲から「Boseさんはどう?」という声があって、実現しました。私はポンキッキーズ世代なので、めちゃくちゃアガりました(笑)。

ラップや掛け合いの部分も、「この方がいいんじゃない?」とふたりでやり取りさせていただきました。Boseさんのレコーディングは、一発でキメててスゴかったですね。感動しました!

――さらに、トラックはtofubeatsさんですね。トーフさんの印象は?

kiki vivi lily:すごく作業が早くて、仕事人だな~と思いますね。昔からトーフさんは憧れの人で、サンクラとかもめっちゃ聴いてました。琴線に触れる旋律や、歌心のあるところが大好きですね。

――過去にもリミックスや、先日もJR東日本のCMソングで共作されていましたよね。トーフさんの“クラブ”という曲にもkiki viviさんがコーラスで参加されたことも。

kiki vivi lily:ずっとつかず離れずな感じで関わらせていただく機会があったので、10周年だし何かしら関係値があって、なおかつ音楽的に尊敬している方を、ということでトーフさんにお願いしました。快くお受けくださって嬉しかったです。

――ところで、kiki viviさんはラッパーとコラボするにあたって、どういう点を重視しますか?

kiki vivi lily:歌心がある人ですかね。ラッパーが歌うフックが結構好きなんですけど、トラックのコードに対する音感や、リズムの位置の取り方がわかっている人というか。音楽理論というよりはセンスで「こういうことをしたら気持ちいい」という風にできる人は好きですね。


「台風18号」を季語に、作詞面でのこだわり

――EPの話に戻りますが、4曲目の“台風18号”です。歌詞がすごく具体的で、印象に残りますね。なぜ18号なんでしょうか?

kiki vivi lily:台風も18号くらいになると、夏から秋くらいの、ちょっと切ない季節みたいなものが表せるかなと思って。

――たしかに、台風も10何号となると晩夏の時期のイメージですね。台風の号数が季語みたいに使えると。

kiki vivi lily:そもそも最初は《台風18号が上陸するらしい》っていう歌いだしがパッと思い浮かんで、季節のイメージは歌詞を作っていく中での後付けでしたけどね。

――昔、近田春夫さんが「それまでの歌で使われたことがない言葉がひとつでも入っている歌詞は、いい歌詞だ」というようなことを何かで書いてて。この曲の歌詞は、それを思い出しました。

kiki vivi lily:それは嬉しいですね。そういう言葉をどんどん使っていかないと(笑)。普段から「おもしろいな、歌詞に使えそう」と思った言葉は、スマホにポチポチ書き貯めていますね。

――平成のJ-POPだと、「ポケベル」とか「PHS」みたいな言葉が歌詞に出てくることもありますよね。あえてそういう「古くなってしまう言葉」を入れるおもしろさと、難しさってあると思うんですが、kiki viviさんはどう思われますか?

kiki vivi lily:“AM0:52”という昔の曲で《また電話をかけてしまう〜あなたは4回目のコールで取るでしょう?》という歌詞を書いたんですけど、電話のコールというのも古い感覚になっていくのかな、と考えたんですよ。でも、その言い方じゃないと伝わらないものがあるし、曲の世界観に合っていたら(古くなってしまう言葉でも)おもしろいんじゃないか、とも思いますね。

――“台風18号”のアレンジャーはOvallの関口シンゴさんですね。

kiki vivi lily:関口さんはすごく穏やかで優しい人ですね。私の意図を汲んで制作してくださる感じで、あまりこちらから何か言う必要もなかったです。

――5曲目が“West Coast”。RhymeTubeさんのトラックがトラップR&B風で、個人的にはこの曲が一番グッときました。このサックスは……。

kiki vivi lily:昔からお世話になっているMELRAWですね。

――この曲はちょっとダークな雰囲気ですよね。kiki viviさんの曲はどれもビタースウィートというか、悲しすぎず、明るすぎずのバランスが絶妙だと思います。作曲していて「これはちょっと暗すぎるな」と思って没にすることはありますか?

kiki vivi lily:どちらかというと、「明るすぎかな」と思って没にすることが多いですね。私も“West Coast”くらいのテンションが一番好きなんですよ。ただ、こういう曲はシングル向きではないから、発表するにはEPやアルバムの機会を待つしかないんですよね。そういう曲は結構あるかな。

――その「明るすぎる」というのは、曲調の話でしょうか?

kiki vivi lily:曲調もありますし、歌詞にもありますね。「ちょっとキャピキャピし過ぎてるかな?」とか。まぁ、そこまで気にしてないですけどね。

――求められるイメージ的なものは意識しますか?「kiki vivi lilyはチルなR&B」あるいは「アー写の雰囲気からして、ポップで明るい歌だ」というような、固定化されたイメージというか……。

kiki vivi lily:あまり、(そこに合わせようと)無理しないようにはしていますね。いろんな曲を作って、カテゴライズを拒んでも、とはいえJ-POPという枠組みには収まる音楽にしようとは思っていたので、ポップなイメージは否定しませんね。自分としては「チル」よりは「ポップ」なイメージを出したいんですけど、ポップな曲を作るのはすごく難しいんですよね。なんとなく気持ちいい曲を作るのは、まだ簡単ですなんですけど。


10周年で辿り着いた境地、唯一無二の存在を目指して

――最後が“WARUIYUME”です。ずっと松任谷由実さんへのリスペクトを掲げているkiki viviさんですが、まさにユーミン的な、都会に生きる女性の心の揺れを描いた歌ですね。シングルとしても配信されていますが、EPの最後で聴くことでまた印象が変わりました。

kiki vivi lily:そうですね、最初はこのEPには入れない予定だったんですよ。いざ入れるとなると、どこに置いていいかわからなくて。“WARUIYUME”が1曲目だったら、ちょっと明るすぎる印象になっちゃうし、音の質感もちょっと他と違うし、難しかったですね。

――配信の時代で、シングルやEP、アルバム、どの形態がベストなのかっていうのが、悩ましい時代だと思います。kiki viviさんとしてはどう感じていますか?

kiki vivi lily:私はフルアルバムが好きなんですよ。古(いにしえ)の価値観かもしれないけど、基本的にはフルアルバムが作りたい。でも、今の人が聴きやすいのは5~6曲くらいなのかもしれないですよね。

以前は、もっとこだわりが強くて、フルアルバムしか受け付けないぐらいだったんですよ。でも最近はより柔軟に考えてますね。まずは聴いてもらうことも、とても大事ですし。

――CD世代からすると、12~13曲くらいのボリュームに馴染みがありますよね。

kiki vivi lily:そうですね、そのくらいの収録数だと「キャッチーではないけど、自分的には気に入ってる!」という曲も入れられますし。表現できる幅は広がりますね。

――ラッパーがアルバムを出したあと、少し間を置いて、新曲やらリミックスやらを追加した「デラックスバージョン」をリリースしますよね。ああいうのはおもしろいですよね。

kiki vivi lily:あの感じはいいですよね。ちょっとやってみたいかも(笑)。

――10周年の話題に戻りますが、デビュー作『LOVIN’ YOU』は今でも聴き返すことがありますか?

kiki vivi lily:聴いてますね。私は結構、自分の作品を聴き返すタイプだと思います。歌や音作り、ミックスも「もっと、ここをこうしておけば……」と思いながら聴いてますね(笑)。

――もしタイムワープして、今回の『TOU.』を、10年前のkiki viviさんが聴いたら、どんなリアクションが返ってくると思いますか?

kiki vivi lily:昔の自分には「なんか、シンプルになったね」って言われるかな? 以前はもっと、難しいコードや転調にこだわってたんですよ。コーラスもとにかく入れまくって。そういうこだわりも最近、一回なくなって、「引き算の美学」みたいな意識になりましたね。それは昔の曲を聴き返していて「ここはもうちょっと、隙間がある方がいいな」と気づいたりして、考えが変わったことが大きいんですけど。

――自己採点的に昔の曲を聴いていて、おのずと「引き算」になっていったと。

kiki vivi lily:あとはバンドセットでライブをやった経験も大きいですね。宅録だとどんどん音が重ねられるけど、バンドだとそうじゃないですよね。そこで一回、曲が「まっさら」な感じになって、そこで隙間の気持ちよさを知った、ということもあります。

――10周年ともなると、ファンの方の「人生」を感じる場面もありそうですが、いかがですか? 昔からのファンで、お子さんを連れてライブに来る方がいたりですとか……。

kiki vivi lily:「高校生の頃から聴いてます」「就職しました」とか、メッセージでいただくことはありますね。そういう人生の機微みたいなものはすごく感じていますし、ファンの子たちも一緒に歳を重ねてくれてるんだな、と感じられてすごくありがたいですね。

――最後に、ゆくゆくはこういうミュージシャンになりたい、という理想はありますか。

kiki vivi lily:女性アーティストの「レジェンド」な方々っているじゃないですか。宇多田ヒカルさんや、Charaさんとか。みなさんすごく突き抜けてるし、年齢を感じさせないですよね。そもそも彼女たちの歌を、別にそういう風に聴かないじゃないですか。

――たしかに、何歳だから、と意識しないですよね。「CharaはChara!」でしかないというか。

kiki vivi lily:自分もそういう「キキビビはキキビビ!」といったアーティストになれたらいいな、というのはありますね。


【リリース情報】


kiki vivi lily『TOU.』
Release Date:2026.09.16 (Wed.)
Label:Colourful Records / Suppage Records
Tracklist:
1. Love Affair
Lyrics:kiki vivi lily
Music:kiki vivi lily, TOVI.
Arranged by:kiki vivi lily, 小川翔

2. Ms. Sunshine
Lyrics:kiki vivi lily
Music:kiki vivi lily, Sweet William
Arranged by:kiki vivi lily, Sweet William

3. 恋がリピート feat. Bose
Lyrics:kiki vivi lily, Bose
Music:kiki vivi lily, tofubeats
Arranged by:tofubeats

4. 台風18号
Lyrics:kiki vivi lily
Music:kiki vivi lily
Arranged by:関口シンゴ

5. West Coast
Lyrics:kiki vivi lily
Music:kiki vivi lily, RhymeTube
Arranged by:RhymeTube

6. WARUIYUME
Lyrics:kiki vivi lily
Music:kiki vivi lily
Arranged by:A.G.O / SHINTA / kiki vivi lily

配信リンク


【イベント情報】


『kiki vivi lily 10th Anniversary Live “TOU.”』
日時:2026年10月1日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・恵比寿 LIQUIDROOM

チケット詳細

■kiki vivi lily:Instagram / X


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