FEATURE

Interview / Holychild


ーブラットポップは"皮肉なポップミュージック"という意味で、音楽は私たちから社会へ批判の現れなの。

2015.08.22

Holychild というバンドはとても皮肉で社会的なバンドだ。Apple WatchのCMソングとして使われている彼女たちの曲はポップでキャッチーで万人受けしそうであるし、煌びやかな格好をして踊り狂うLizの姿はハッピーに見える。でも、本当は違う。彼女たちは自分たちが人間の欲望を体現するようなパフォーマンスをすることで、そういった社会に対して、受け入れながらも批判をしているのだ。欲にまみれたこの世界への彼女たちなりの愛情表現なのだろう。

Holychild Interview

Interview: Aoi Kurihara
Photo by Miho Kawazu

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ーあなたたちはジョージ・ワシントン大学在学中に、出会ったそうですね。実際に出会いのきっかけは何だったのでしょうか。

Louis:最初はモダンダンスのクラスで会ったんだよ。Lizはダンサーだったんだ。僕は構成をしてたんだ。たしか僕たちはすぐに一緒にチームを組んだよね? 僕は自分の作業ルームを持ってて、そこの壁は真っ白だったから2人で壁にペインティングとかしたよ。そして作曲とか作詞とかはじめて、レコーディングを始めたんだ。たしかあれは4年くらい前かな?そんな感じで毎日を繰り返して今に至るよ。

ーバンド名のHolychildのバンド名の由来を教えてください。持っていたスウェットのロゴだったと聞きましたが。

Liz:そうよ!ユニークでかわいいくてこのロゴが好きだったの。このスウェットでよくジョークを言ったりしたわ。私はNYに住んでてLouisはワシントンD.C.からバンドをやるために戻ってくることになったの。それで、バンド名が必要になって、「Holychildはどうかしら」と私がLouisに聞いたの。そしたら「OK、かっこいいじゃん」て。そういうノリで決まったの。

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ーあなたたちは自分たちのジャンルを”ブラットポップ”と言っていますね。アルバムのタイトルにもこの”ブラットポップ”というワードが入ってますが、どのようにこの言葉を定義しているのでしょうか。

Liz:ブラットポップは”皮肉なポップ・ミュージック”という感じかな。私たちから社会へ批判の現れなの。今の社会というのは名声や美しさ、お金や若かさとか、そういう類いのものに取り付かれていて、しかもそれでカルチャーが成り立ってる。実際わたしだってその社会の一部だしね。でもそれはとてもストレスに感じるし心地いいことではないわ。でもわたしたちはそれを受け入れて生きてる。だから私たちは自分たちの音楽や見た目とかで、新しい手法を使いつつだけどみんなが受け入れやすく皮肉を理解できるものを作る努力をしてるわ。アルバムのアートワークからもわかると思うけどここではみるからにソレよね!女性の下半身にそしてお金。誰が見ても皮肉だってわかるでしょ(笑)。そう、これこそがブラットポップよ!

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ーデジタルのアルバムはアートワークが違いますよね。

Liz:そうね。ダウンロードの方は私の唇で、その中にお金がはいってるわ。CDのほうが明らかに皮肉ってる感じだけど、ダウンロードの方もメッセージは同じよ? 口の中にお金が入ってるでしょ。両方ともまさにブラットポップだと思うわ。

ーこのデジタル版のジャケットを見たときとてもセクシャルな意味を感じ取りました。真っ赤でセクシーな唇の中に札束が入っているなんてまさに人間の欲望を表しているように見えますね。

Liz:その通りよ。そういった意味が伝えたかったことなの。デジタル版もCDのジャケットも両方同じことを意味してると思うわ。女性のセクシャルな部分にお金を重ねることでもともと女性がどう見られてるか、セックスがどのように捉えられてるか、女性の価値ってなんなのか、そういうメッセージを込めてるわ。

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ーなるほど。とってもかっこいいですね。一方であなたたちの作る曲ははハッピーでポップな曲調で、コンセプトが異なる気もしますが。

Liz:いいえ、実際コンセプトはアートワークも曲も同じよ。「Money Aroud The World」や「Nasty Girl」なんて”日焼けして、髪の毛をブロンドにして、男性にアピールする(※「Nasty Girl」の歌詞)”なんて、結局はセクシャルなことにお金を払ってるのよっていうメッセージなの。世の中でこういうことって普通だし、あたりまえに存在してるけど、「自分の魅力を得るためにセクシャルなものを求めてお金を払うなんてすごく馬鹿みたいでくだらなくないわ」ということ。けれど実際私たち自身もこの世界の一部なの。だから別に、「あなたたちってみっともない、ありえない!」ってことが言いたい訳じゃなくってわたしが同じ世界に生きてるからこそ感じてることを歌ってるの。

ー批判がしたいわけではないってことですか。

Liz:そうね! そうよ。決してリスナーを批判してるわけじゃないの。っていうよりはむしろ自分たちも含めたすべての人に投げかけてる感じ。わたしはこの世界を生きててこういう風に感じるけど、みんなもそういうことに気づいてるんじゃない? ってね。

ー「Money and Around the World」のPVのコンセプトも同じことですか?

Liz:そうね。私が監督したのよ。完全にこのミュージックビデオは同じコンセプトよ。アルバムを出すってなったとき「なんで自分たちはこれを売りたいのか」って考えたの。わたしたちは明確になにをイメージしてるのか吐き出したかったの。結果的にこのビデオは完全に私たちの主張が溢れ出たものになったと思うわ。みて!わたしは自分の体を使ってこんなことをしてるのよ!そして投げてるお金は全部ニセモノよって。このビデオのあと、アートワークを作ったけど、このビデオだったからこそこのアートワークになったの。リスナーが私たちがこれから何をしようとしてるのか判断できるでしょ。

ー「Running Behind 」や、「Tell Mehow It Is」ではエキゾティクなパーカッションが印象的だと思います。

Liz:エキゾティクなパーカッション? その通りね。アルバムすべてを通してそうよ。私たちは一緒に曲をつくってるけどこれはLouisの影響ね。彼はクレイジーなドラマーなのよ。ドラムを学ぶためにキューバに行ってた時期があったの。だから私たちの音楽ではそのルーツが聞こえてくるのよ。

Louis:音楽を作るときにみんなが気にするのはコードや、グルーヴィーなリズムとかそういうことだし、それが親しまれてるよね。ソレはソレでかっこいいと思うんだけど、ちょっと退屈になっちゃって。そんなときにキューバの音楽のドラムリズムに出会ってただ単純に本当に楽しいと思ったんだ。

ーHolychildの曲はEDMの要素も取り入れていると思いますが、実際に意識していますか。

Louis:たしかにそうだね。僕たちは現代に生きてるし、今の流れとコネクトしたいとも思っているから、いくつかのヒントを最近流行のEDMからもらうこともあるよ。EDMってコンピュータでプログラミングするけどプレイするのは人でしょ? EDMがこれからどうなるかわかんないけど、EDMにこだわってる訳じゃなくそのとき世の中で一番そのときのはやっているもの、中心となってるものを取り込むようにしているよ。それがそのときの世界に繋がることだと思うしね。

ー最近ではオンラインで音楽を楽しむことが主流になっていますが、あなたたちはそういった状況に対してどう感じていますか。

Liz:とっても面白い質問ね。音楽業界はすごい勢いで変化していて日本やアメリカやイギリスではそれぞれ違ったマーケットが存在してるよね。でも人々が音楽からインスパイアを受けてるってことは変化してないと思うの。だからリスナーがダウンロードをしようが、レコードショップで買おうが正直あんまり気にしてないわ。ただ自分たちの音楽を聞いてほしいってだけ。実際レコードが売れたってお金にはならないしね。それに私にとってはオーディエンスと繋がることが一番大事なの。だからライブが一番楽しいし、ライブができればいいわ。

Louis:そうだね。でもたしかに音楽にお金を払う人が少なくなったらやっぱりライブにお金を払う人が減ってくことにもなると思うよ。例えば僕の友達は、音源をダウンロードするけど、ライブでTシャツを買ったりしないんだ。だけど僕たちは今これで食べてるし、、。うーん、だからまだレコードやCDを買う人の可能性を信じてるよ。でもアメリカでは正直もうダウンロードすらしないけどね。みんなストリーミングを使ってるから。

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ー音楽で食べていけなくなっても音楽を続けますか?

Liz:もちろんよ!私にとって職業としてミュージシャンでいるってことはそんなに大事じゃないの。もしわたしがアーティストじゃなくなってミュージックビデオをつくったりする機会がなかったとしても、やっぱり私はアートに関わり続けるし、自分で絵を描いたり創作をつづけるわ。それがただひとつ、私である方法なの。もしそれをしなかったら頭がおかしくなっちゃうわ。自分を表現するってことに貪欲なの。

Louis:そうだね。ずいぶん長いこと音楽をやってるしこれはずっと夢見てきたことだよ。Holychildとして活動してて今の現状があって東京にも来ちゃってるし、ファンがライを観に来てくれて、自分たちが好きなライブもやれるし、最初はオープニングアクトでライブにでてたのに、自分たちがメインのライブをやれるようになって。お客さんはほんとに僕に刺激を与えてくれる存在だよ。僕たちがやりたいことに共感してくれるし、それに繋がろうとしてくれて。僕がHolychildをやってることで音楽で社会とか人とより強く繋がることが可能になってるって思う。ほんと夢みたいだよ。てゆうか東京にいるなんてほんと信じられないしね。世界中旅行できていろんな人にあえて最高だよ!


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