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INTERVIEW | Ginger Root


新作で見つけた「自分の音楽」。日本での様々な体験を経た、Ginger Rootの現在地

2024.08.07

Ginger Rootが9月13日(金)にリリース予定のニューアルバム『SHINBANGUMI』へ向け、慌ただしく動いている。

カリフォルニア出身マルチ演奏家/プロデューサー/ソングライター/ヴィジュアルアーティスト・Cameron Lewによるプロジェクト、Ginger Root。ファンク〜ソウルを下敷きにしたウェルメイドなソングライティング、ローファイな音像の中に光るポップセンスを感じさせる音楽性(自身では「アグレッシブエレベーターソウル」と形容している)に加え、日本の古き音楽やアニメ、テレビ番組などのカルチャーからの影響を独自に噛み砕き、昇華させたビジュアル面でのアウトプットでも大きな注目を集めている。

最初に書いた通り、現在はニューアルバムへ向け先行シングルをコンスタントに配信しているほか、全8本でひとつの映画のようなストーリーを展開するという連作MVを公開中。徐々にアルバムの中身が公開されていくなか、6月には全国5都市を巡るポップアップも開催。アルバムのリリースへ向け、まだまだGinger Root旋風は続きそうだ。

Spincoasterではポップアップ終了後のGinger RootことCameron Lewにインタビューを敢行。短い時間ながら流暢な日本語で、昨年の日本での体験から新作『SHINBANGUMI』について丁寧に語ってくれた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official


「電車に乗ったとき、いきなり涙が溢れてきた」

――去年は初来日ツアー、フジロック出演、さらにラジオにて細野晴臣さんや大貫妙子さんといったレジェンドたちとも対面するなど、日本のカルチャーに影響を受けてきたCameronさんにとっては、激動の一年になったのではないでしょうか。

Cameron:ミュージシャンとしてというより、ひとりの人間としていろいろなことを勉強できた気がしますね。夢が叶ったというか、きっと一生忘れられない一年になったと思います。私はコロナ禍で日本語の勉強を始めたんですけど、その頃は世の中的にも暗い雰囲気が漂っていて、自分の気持ちも落ちていました。そんな中で出会った日本の音楽や映画、ドラマ、アニメに、自分を救ってもらったという感覚があるんです。なので、実際に日本に行ってライブをすることができてすごく嬉しかったです。

……実は昨年の来日時、ライブが終わってご飯を食べに行くために電車に乗ったとき、いきなり涙が溢れてきたんです。電車のアナウンスとかそこにいる人々の会話が理解できることに驚いたし、いろいろな感情が込み上げてきて泣いてしまいました。

――実際に日本を訪れたり、長期間滞在したり、日本のいろいろな側面を深く知ったことで、ご自身が抱いていた憧れや印象の面で変化した部分はありますか?

Cameron:意外とないです。というのも、私が最初に憧れたのは昭和の日本だから。その当時のファッションやネオンサイン、ビルの並びとかは、もうなかなか見つからないですよね。元から現代の日本にそういった過去を重ねるつもりはなかったので、私の期待は概ね外れていなかったと思います。

……むしろ、期待以上と言えるかもしれませんね。今回の滞在時もそうですが、日本に来るたびに毎回新たな魅力的なポイントを見つけます。散歩中だったり、ご飯を食べに行ったとき、友人と遊びに行ったときなど。

――細野晴臣さん、大貫妙子さんとの対面はいかがでしたか?

Cameron:いまだに信じられないくらい素晴らしい体験でした。だって、普通ありえないですよね? ずっと憧れていた人と目の前でお話できるなんて……。細野さんとのラジオはハマ・オカモトさんと一緒に出演したので、私は聞き役になってしまう時間も多かったです。緊張もしていましたし。

大貫さんとは一対一でお話したんですけど、上手く日本語で喋れていたか、いい質問ができていたかなど、後悔も少しあります。またの機会があればぜひリベンジしたいですね。実は当日はトラブルが起きて、レコーディングが失敗したんです。でも、たまたま私が自分用にカメラを回していたので、その音声を使用してオンエアすることができました。

――Cameronさんのカメラがなかったらと考えると、ゾッとするトラブルですね……。

Cameron:そうですね。でも、大貫さんやスタッフさんもとても優しくて、振り返ってみるとこれもいい思い出になっていますね。

※細野晴臣とは7月28日(日)放送のinterfm『Daisy Holiday!』にて、再び対談が実現した。

――昨年は日本のバンド、CHAIのMVを手がけたことでも話題となりました。

Cameron:たしか、ジャパンツアーの終わり頃にそのプロジェクトに取り掛かりました。CHAIとコラボするのに、「音楽じゃなくていいの?」って最初は思いました(笑)。でも、こういう形でのコラボってなかなかないと思うし、結果的にはすごくいい体験になりました。

私は大学生のときに映像制作を学んでいたんですけど、日本とアメリカでは撮影環境などで異なる部分もあって、それはすごく興味深いなと思ったし、勉強になりました。

――CHAIからはどのようにオファーがきたのでしょうか?

Cameron:設定、ストーリー、撮影機材などなど、ほとんど私に任せてくれました。日本のスタッフにも協力してもらったんですけど、私はカメラマンのDavid Gutelとタッグで制作したので、そのDIYなやり方にスタッフの方々は驚いているようでした。


新作『SHINBANGUMI』で見つけた「自分の音楽」

今回の滞在で新たに見つけた、お気に入りスポットなどはありますか?

Cameron:中央線沿線──吉祥寺、高円寺、中野、荻窪、西荻窪などによく遊びに行っています。レトロな喫茶店も多いし、美味しいごはん屋さんもたくさんある。ミュージシャンやアーティストもたくさん暮らしているし、とても気に入りました。

――それこそ中央線沿線には規模は小規模の音楽ヴェニューが多くあります。ライブなどは観ましたか?

Cameron:日本で他のアーティストのライブを観たことはほとんどないんです。というのも、滞在時はやっぱりこういったインタビューやラジオ出演、自分の作業などもあって時間があまり取れなくて。いわゆる普通の観光などをする時間もほとんどないんです。

――先日、全国5都市でポップアップも行いましたが、印象に残った街などはありますか?

Cameron:今回もバタバタだったので、あまり時間は取れなかったのですが、広島では現地のプロモーターさんと一緒に広島風お好み焼きを食べに行きました。それがすごく美味しかった。ポップアップも上手くいったし、すごくいい思い出になりました。

――新しいアルバムについてもお聞きしたいのですが、プレスリリースには「Ginger Rootはどうあるべきか、ということがわかったんだ」というコメントもありました。この点について、詳しく教えてもらえますか?

Cameron:これは全てのミュージシャンが共感してくれると思うのですが、初期の頃──たとえば『Mahjong Room』(2019年)とか『Rikki』(2020年)の頃は、「どういう音楽を作ろう/作るべきか」という悩みがあったんです。また、その後の『City Slicker』(2021年)では「シティポップを作ろう」とか、『Nisemono』では昭和歌謡やアイドル的な楽曲を明確なリファレンスにして作ったのですが、今回はようやく自分の中から出てきたものを信じることができたというか。

もちろん今の自分はいろいろなアーティストの影響──The Beatlesやシティポップ、ファンク、ソウルなど──で構成されているとは思うんですけど、それでも「これがGinger Rootの音楽です」って、やっと胸を張って言えるような気がしたんです。

――そう感じたのはいつ頃ですか?

Cameron:今回のアルバムがほぼほぼ完成した頃に、改めて出来上がった曲たちを聴いて、そう感じました。

――じゃあ、作っているときはそういったことをテーマに掲げていたわけではないんですね。

Cameron:でも、薄っすらと感じていた部分はあったと思います。意識せず曲を作っていたんですけど、ある程度デモが溜まってきた段階で「こういうアルバムになるかも」っていうイメージも浮かび始めてきて。だから、最初から明確なゴールを設けていたわけではないですね。全てが自然に湧き上がってきました。それこそMVのストーリーも、アルバムを作っている途中で思いつきました。

――“No Problems”から続くMVの新章は、今も制作中なんですよね?(※取材は2024年7月前半に実施

Cameron:はい。今回の滞在時にも撮影しています。全部で8本作る予定で、一本の映画にように繋がる作品にしたいと思っています。

――“No Problems”の前に、そのティーザーとしても機能するアニメーション作品『宇宙で会おうよ』の予告編のようなものが公開されました。今後、こちらを完成させる予定はありますか?

今のところはないです(笑)。でも、いつかは長編のアニメーション作品も作ってみたいですね。『宇宙で会おうよ』には、日本のラジオ局で働いている友人のおかげで、柿沼紫乃さん、麻生智久さんというレジェンド声優さんたちにも参加してもらえて。おふたりは今回のアルバムでもインタールードの“CM”で声を入れてくれました。

――プレスリリースには日本とカリフォルニアでそれぞれ作業したとありました。それぞれの地でどのような作業工程を経たのでしょうか。

Cameron:日本ではいつもホテルなどで作業するのですが、機材が限られているからこそ、クリエイティブシンキングできることがあるんです。あと、新しい風景や景色がいっぱいあるから、気分転換に外を歩くだけでインスピレーションがチャージできるというか。逆にアメリカでは慣れた環境なので、じっくりと集中して作業します。仕事みたいな感じで、細かいところを詰めたり。

――レコーディングはアメリカで?

Cameron:いえ、日本でも録音しています。基本はホテルの部屋でヘッドホンを付けて宅録しているのですが、たまにスタジオノア(SOUND STUDIO NOAH)を借りてミックスの確認をしたり。あと“Kaze”という曲のドラムは、浅草のスナックでレコーディングしました。すごく古いバーのようなところだったんですけど、ドラムセットが置いてあったので、店長さんに確認して使用させてもらいました。

――“Kaze”は全編日本語で作詞されています。この曲はどういったイメージで制作したのでしょうか。

Cameron:“Loretta”の日本語ver.を作ったときは、まだ日本語を勉強し始めて日が浅かったから、ミスも多くありました。だから、今回は再度挑戦したいなと思って、日本語で全部書いてみました。

Cameron:イメージしたのは細野さんも参加していたティン・パン・アレーのような楽曲。あと、フジロックの後に書いたのですが、去年の夏もとても暑くて、ちょっと熱中症みたいになってたんですよね。風邪のような症状も出て、視界がぼやけていて……。

――ある種のサイケデリック体験というか。

Cameron:まさしくそんな感じでした。ノードラッグでサイケデリック(笑)。


今も変わらぬ創作の原動力

――今回のアルバムは全体的にハイファイな音になっている気がして、レコーディング環境などに変化が起きたのかなとも思ったのですが、そうではないみたいですね。

Cameron:はい。基本的にはこれまでと変わらず、今回も全て自分でレコーディングしています。ただ、その録音技術が成長したのかもしれません。

――レコーディングに他のミュージシャンを迎えたり、プロデューサーと共同制作したり、そういったアイディアはまだ出てこないですか?

Cameron:私にとって音楽を作るという行為は、すごくパーソナルなことなんです。ひとりだったら自由に作れるし、「これはちょっとポンコツだな、恥ずかしいな」というアイディアも、ひとりなら試すことができるけど、他の人がいると少し恥ずかしく感じてしまうかも知れない。

――そうやってパーソナルなところから生まれた音楽を、多くの人が聴いたり歌ったりする。それって少し不思議なことだと思いませんか?

Cameron:作っている途中は、まだ曖昧なので恥ずかしいのですが、完成してしまえば意識が変わります。「どうぞ!」っていう感じで、多くの人に紹介したいなって思います。

――Cameronさんの作品からGingr Rootの作品になるというか。

Cameron:そういう感じかもしれません。

――ライブでどのように再現するか、制作中に考えたり意識したりはしますか?

Cameron:レコーディングするときに考えたりはするんですけど……そもそもスタジオ音源を100%再現するのであれば、ライブじゃなくてSpotifyで流せばいいじゃんって思うんです。だから、ライブでは完全に再現するのではなく、特別バージョンにしたい。フックを長くしたり、ジャムセッションしたり、ときにはコントもやるかもしれない。

演奏面でミスをすることもあるけど、それも含めて味になるような、そんなライブがしたいですね。もちろんGinger Rootのライブだと映像も大事な要素だし、そっちにも力を入れたい。

――以前、他のインタビューで音楽や映像制作といった表現活動の原動力は「楽しいから」だとおっしゃっていました。活動の規模が大きくなった今でも、それは変わりませんか?

Cameron:今でも楽しさが一番の原動力です。たしかにプロジェクトが大きくなってきたので、やらなければいけないことがいっぱいあります。MVの制作量も増えて、日本の制作会社へ依頼している作業もありますし、ツアーの準備も大変です。メンタル的にキツいときもありますし、正直ストレスも結構あります。

それでも、撮影でいいカットが撮れたときや、曲のマスタリングが終わって、チェックで聴き返しているとき、「あぁ、やっててよかったな」って感じるんです。「この照明いいな」「この演技いいな」「この音いいな」って感じる瞬間を今後も大事にしたい。そう思える創作活動を続けていきたいです。


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※当選のお知らせに対して48時間以内に返信がない場合、誠に勝手ながら辞退とさせて頂きます。
※住所の送付が可能な方のみご応募下さい。頂いた個人情報はプレゼントの発送以外には使用いたしません。
※発送は日本国内に限定いたします。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます。


【リリース情報】


Ginger Root 『SHINBANGUMI』
Release Date:2024.09.13 (Fri.)
Label:BIG NOTHING / ULTRA-VYBE, INC.
Tracklist:
1. Welcome
2. No Problems
3. Better Than Monday
4. There Was A Time
5. All Night
6. CM
7. Only You
8. Kaze
9. Giddy Up
10. Think Cool
11. Show 10
12. Take Me Back (Owakare No Jikan)

※他、日本盤ボーナス・トラックを追加収録予定(CD)

予約/配信リンク


【イベント情報】


『SHINBANGUMI JAPAN TOUR 2025』
2025年1月10日(金) at 福岡 Zepp Fukuoka
2025年1月12日(日) at 広島 BLUELIVE HIROSHIMA
2025年1月14日(火) at 大阪 Zepp Osaka Bayside
2025年1月15日(水) at 愛知・名古屋 Zepp Nagoya
2025年1月16日(木) at 東京 Zepp DiverCity ※SOLDOUT
2025年1月17日(金) at 東京 Zepp DiverCity

お問合せ:Live Nation Japan

※全公演でサポートアクトあり(後日発表)

公演詳細

Ginger Root 日本オフィシャルサイト


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