FEATURE

INTERVIEW | a子


「軽快なポップス」を目指した新曲“ときめき”。価値観を広げた2024年の気づきと発見

PR
2024.12.11

a子のクリエイティブは日に日に飛躍している。2024年にメジャーデビューを果たし、7月には初のアルバム『GENE』をリリース。充実の作品を発表したのち、LIQUIDROOMを含む自身最大規模のツアーも完売させるなど、シーンの中での存在感は着実に増してきていると言えるだろう。

11月には『GENE』リリース後初の新曲“ときめき”をリリース。モータウンからの影響をJ-POPに落とし込んだ新曲で、軽やかなテンポで進んでいくカラフルな音色のポップソングである。斎藤ネコ(Vl.)、Luis Valle(ルイス・バジェ / Tr.)、本田雅人(Sax.)、Marty Holoubek(マーティ・ホロベック/ Ba.)という錚々たるメンバーが華を添える演奏も素晴らしく、これまでのa子を印象付けていたダークでアンニュイなイメージとは異なり、晴れやかな印象を抱かせる楽曲だ。「価値観が広がる瞬間がきている」というa子に、新曲の制作背景から、次作に向けたモードの変化を語ってもらった。

Interview & Text by Ryutaro Kuroda
Photo by Goku Noguchi


制作・ライブ、両面で探求する音作り

――アルバム『GENE』をリリースしてから、ファンの反響で気になるものはありましたか。

a子:ありがたいことにポジティブな反応が多かったです。その一方で、「昔のサウンドの方が好きかも」みたいなコメントもいただいて。

私たちの場合、きっとミックスの印象が変わったからなのかなと思います。インディーズ時代は自分たちでミックスをやっていたので、ハイの部分が全然出なくて、ロー寄りの音作りだったんですよね。それで聴こえてくる音色の範囲とか、耳に入ってくる気持ちよさが変わってきた。

あと、メジャーに入ってからはエンジニアさんにお願いしているんですけど、自分たちの音作りが未熟なので、まだハイに持っていくところで音が薄くなったりしてるのかなって。

――なるほど。

a子:それで特にシンセの音作りは丁寧にやっていきたいと思って、最近は自分たちの買える範囲で実機のシンセを集め始めました。これからはハイを上げてもペラくならない音で、深くて立体感が生まれるようなサウンドを研究して作っていきたいですね。

……なので、エンジニアさんがミックスしてくれたときに耐えられる音作りをするから、「もうちょっと待っててね」という感じです(笑)。

――8月にはLIQUIDROOMと梅田QUATTROでワンマンライブを行い、同月に『SUMMER SONIC 2024』に出演。11月にも『Local Green Festival’24』や『ボロフェスタ 2024』など大型フェスでのライブが続きました。パフォーマンスで変わってきたことはありますか?

a子:ライブはまだまだ難しいですね。声の出し方だったり、ウィスパーボイスをちゃんとお客さんに聴かせるにはどうしたらいいのかを考えています。

この前、“ときめき”に参加してくれた斎藤ネコさんとご飯を食べに行く機会があったんですけど、ネコさんに聞いてみたら、「やっぱり中音(モニター環境)をどんだけ静かにできるかだよ」とおっしゃっていて。今まではギターもベースもアンプを使ってたんですけど、たとえばbeabadoobeeなど海外アーティストのライブ映像を観ると、結構ラインに変わっている人がいるんです。なので私たちもラインで音作りをしてみようって話になりました。

a子:それで、エンジニアの浦本さん(※1)協力の元、「ライン音作り会」を一日使って行いました。機材をたくさん借りて音を作ってみたんですけど、めっちゃよくなったんですよ。

『ボロフェスタ 2024』では初めてラインでやってみたんですけど、やっぱり中音が静かだと自分の耳も聴こえやすいし、外で聴いてたマネージャーさんも「前より声が届くようになった」と言ってくれて。ラインで作ってよかったなと思いました。あと、PAチームもこれまでは固まっていなかったんですけど、『Local Green Festival』から新しく組んだチームで臨みました。

※1:浦本雅史。サカナクションやKID FRESINO、ねごとなどの作品を手がけている


70年代ソウルやモータウンをJ-POPに落とし込んだ新曲

――アルバム発表後初の新曲となる“ときめき”ですが、こちらは先ほどもお名前が挙がった斎藤ネコさんを筆頭に、Luis Valle、本田雅人、Marty Holoubekという錚々たるプレイヤーたちが参加していますね。

a子:豪華てんこ盛りセットみたいな感じで、めっちゃ楽しかったです(笑)。インディーズ時代から、いつかびっくりするようなメンバーとやってみたいという夢があったんですけど、今作はまさに「メジャーにはこういう力があるんだ! わーい!」みたいな楽曲ですね(笑)。本田さんもバジェさんもネコさんが繋げてくださいました。

――楽曲制作はどういうところから始まったんですか?

a子:アルバム『GENE』の曲たちをベースにしながら、その進化系を作っていけたらと思っていて、“ときめき”は“愛はいつも”の進化系というイメージで作りました。

サウンド面では70年代のソウルとかモータウン(Motown)をJ-POPに落とし込んで作ってみようという話から、制作途中でギターはGreen Dayみたいなパンクの要素が入ったらおもしろいんじゃないか、ということになって。

――何かインスピレーションがあったのでしょうか。

a子:“good morning”のギターでも参加してくれたyonawoの斉藤雄哉が今回も弾いてくれていて、ギターのコードは彼が提案してくれました。なんか明るくてちょっとアホっぽいというか、アメリカっぽいカラッとした感じのコードでやりたいなと思っていたので、「いいじゃん!」って感じでしたね。

イントロはそのときは入っていなかったんですけど、昔作ってたデモ曲のイントロがハマるのでは? って閃いて、ぶち込みました。

――「モータウン的なソウル」というキーワードは、今のa子さんのどういう気分が表れたものですか?

a子:「軽快なポップス」を作りたいな、と思っていました。その時期、WILLOWにハマっていたんですけど、そこから流れてThe Jackson 5ばかりを聴くようになって……「こういうのやりたい!」みたいな。「70年代のモータウンカッコいい!」と思って作りました。

――とてもポップな楽曲ですよね。こんなに華やかな曲は今までなかったと思いますし、a子さん自身これまで「ダーク」というような形容詞で紹介されることも多かったと思います。この明るさはどういう意識が働いた結果だと思いますか?

a子:サウンドの雰囲気とか、パッと聴きはJ-POPっぽい曲にしたかったんです。明るいサウンドにウィスパーボイスというのは新しい組み合わせなんじゃないかなって思って。そこで昔から言われてるダークっぽい感じとか、ちょっとアンニュイな部分も同時に表現したらおもしろいかもと。歌詞もちょっと重めですし、そういったところが自分たちの個性になるかもしれないと意識しました。

サウンド面ではレジェンド3人の力を借りつつ、特にドラムの音を意識しました。今ってどんどんスーパーローがなくなってきてると思うんです。たとえばBillie Eilishのアルバム(『Hit Me Hard And Soft』)とか……あとは最近ガラージやドラムンベースがきているじゃないですか。Nia Archivesもそうですし、ヨーロッパの最新のサウンドを聴いてると、2020年代初期の頃よりもどんどん聴きやすいというか、軽いサウンドになってきてる気がするんですよね。

なので、今回はエンジニアの照内さん(※2)にも「ドラムは海外で流行っているようなミドル寄りで、ちょっと開けたサウンドにしてください」という話しをしました。

※2:照内紀雄。Vaundy、キタニタツヤ、なとり、[Alexandros]などを手がけている。

――過去の恋を歌った歌詞になっていますね。

a子:サビの歌詞はめっちゃ作り直しました。いつもは中村さん(※3)に「どう?」って聞いてるんですけど、今回はディレクターさんにデモを渡したら良い反応をもらえたので、サビの歌詞もディレクターさんに相談してみたんです。そうしたら7回くらい返されて。ちょっとムカつきつつ何回も書き直す、みたいな感じでしたね(笑)。

※3:中村エイジ。a子を中心とした、クリエイティブチーム〈londog〉に所属するキーボーディスト兼編曲家。

――どういう方向で直したんですか? 

a子:直したのは主に一番のサビなんですけど、最初に書いたのはなんかa子っぽくなくて。AメロやBメロ、二番のサビは自分でも結構気に入っていたんですけど、1サビは曲の雰囲気に引っ張られて、よくあるようなことを書いちゃってました。個性がない感じというか。それで何パターンか新たに書いて、ディレクターからOKが出たものを最終的に採用しました。

――『Steal your heart』リリース時の取材では、“あたしの全部を愛せない”は実体験やそのときの心情が反映された楽曲になっていると言われていました。“ときめき”にもそういう要素はありますか?

a子:書いているうちにいつの間にか昔感じてた「ときめき」を書いていました。あと、「プリンセス プリンセスの歌詞がめっちゃいいよ」って中村さんに教えてもらって。それでプリプリのアルバムを全部聴き込んだんですけど、私もあの時代の言い回しだったり、喋り方だったり、その年代のある種のクサさみたいな部分に惹かれました。“ときめき”のちょっと歌謡曲っぽい感じにも合うかなと思って、今回はそういう雰囲気を拝借して書いたつもりです。


Max Martinの天才的なズラし方。度々訪れる「気づきのモード」

――2024年はアルバムをリリースし、過去最大キャパとなるライブツアーも行いました。忙しく過ごされたんじゃないかと思いますが、どんな1年になったと思いますか?

a子:記憶がほぼないと言いますか、マジで2024年は1週間ぐらいの体感でしたね(笑)。来年もこの感じでいきたいです。

――『SXSW 2024』や台湾のフェス『Wooyeh Festival』への出演も記憶に新しいです。

a子:海外でも聴いてくれてる人がいて嬉しかったですね。何よりあまり海外に行ったことがなかったので、本当に新鮮だったというか、特にLAに行けたのは感慨深いです。自分たちの好きな、「今っぽい」と感じるサウンドはLA出身/LA拠点のアーティスト──たとえばSteve LacyとかBillie Eilishなど──に多いんですよね。中村も実際にその土地に行ってみて気づくことが多かったと言ってましたし、やっぱり海外は楽しいです。

――今後も海外でのライブは視野に入れている?

a子:イギリスに行ってみたいです。200ボルトの電圧で録ったらどうなるんだろうっていう興味もありますし、ロンドンやヨーロッパの人たちの作る音っておしゃれで上品じゃないですか。それがどのようにして生まれるのかを探りたいです。『アメリ』などのフランス映画も大好きだし、家具や建物の感じも好きなので、MV撮影とかもいいなぁって思っています。

――最初にシンセの音を追求したり、ライブでの音作りに対する変化についてお話してくれましたが、今は制作もライブもサウンド面に意識を集中しているんでしょうか。

a子:そうですね。でも、「音を良くしたい」というのは永遠のテーマだと思います。そして半年に一回ぐらい気づきのモードに入るというか、価値観が広がる瞬間がくるんですけど、ちょうどこの前そのタームに入ったんですよね。

――それは“ときめき”制作中の話ですか?

a子:いえ、制作後ですね。「新しく聴こえる音楽を作りたい」というのが目標なんですけど、自分の曲にある特定のジャンルの要素を足すだけではダメだなと。たとえば「ザ・ソウル」みたいなドラムに、ソウルみたいな音色やフレーズを加えても、新しい音楽は作れない。

――なるほど。

a子:だからといって別のジャンルの要素を持ってくるにしても、土台とするジャンルに対して違和感のあるジャンルを組み合わせてもセンスがないものになってしまうと思うんです。そこで自分が好きなアーティストさんの楽曲を分析してみたんですけど、ドラムひとつとっても、音色・フレーズ・リズム、それぞれズラして作っているということに気づいたんですよね。

――ズラす?

a子:たとえばリズムはハウスっぽいけど、音色をロックにして聴きやすくしてるとか、フレーズをロックに寄せて作っているとか、そういうズレを細部に見つけることができて。Maroon 5やThe Weekndなどの楽曲を手がけているプロデューサー・Max Martinのワークスを片っ端から聴いてみたら、そのズラし方が上手いというか、天才的なんですよね。

a子:新しいサウンド、曲を作り出すための工夫が半端ないなと。そこでハイハットやスネア、キック、ベース、ギターなどなど、全ての音色やリズム、フレーズを隅々まで考えなきゃダメなんだと思いました。そういう細かいニュアンスが、最終的には曲全体の印象に作用するんだって思ったし、2024年はそこに気づけたことが一番の収穫でした。来年リリースする曲からはそれを活かしていきたいです。

――ライブも期待しています。新しいモードに入っているとのことですし、まずは年明けの大阪・BIGCAT、東京・EX THEATER ROPPONGIという2つの大きい会場でのワンマンも控えていますね。

a子:やばいです(笑)。(チケットを)売らないと……。

――(笑)。でも、“ときめき”もライブ映えしそうな曲ですよね。

a子:いや、怖いですよ。

――怖い?

a子:ネコさん、バジェさん、本田雅人さんの部分をどうしよう……みたいな(笑)。ストレートに同期で鳴らすか、それともせっかくパンク的要素も入れてるので、ライブではその方向性でアレンジするのもアリかもな、とか。どうするか決めないと。

ラインメインで中音をスッキリさせたのもありますし、来年のライブでは美術とかセットもできるぐらいのステージの広さになってきたので、そういった面も工夫してみたいですね。ゲストもお呼びする予定ですので、ぜひ遊びに来てほしいです。


【リリース情報】


a子 『ときめき』
Release Date:2024.11.13 (Wed.)
Label:PONY CANYON / IRORI Records
Tracklist:
1. ときめき

配信リンク

==


a子 『GENE』LP
Release Date:2025.01.22 (Wed.)
Label:PONY CANYON / IRORI Records
Cat.No.:PCJA00178
Price:¥5,500 (Tax in)
Tracklist:
A1. good morning
A2. 惑星
A3. あたしの全部を愛せない
B1. miss u
B2. ベージュと桃色
B3. 天使
B4. samurai
C1. 情緒
C2. racy
C3. つまらん
D1. LAZY
D2. 愛はいつも
D3. ボーダーライン

※仕様:2枚組、30cm LP

[ショップ別オリジナル特典]
Amazon.co.jp:メガジャケ
※特典は先着の付与となりますので、なくなり次第終了となります。予めご了承ください。
※ECサイトでご予約の際、特典付き商品をご希望の場合は必ず特典付きカートからご注文ください。

予約リンク


【イベント情報】


『a⼦ LIVE TOUR 2025 “LOVE PROPHET”』
日時:2025年1月25日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪・心斎橋BIGCAT
料金:ADV. ¥5,800(1D代別途)

※スタンディング

==

日時:2025年3月2日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京・EX THEATER ROPPONGI
料金:ADV. ¥5,800(各1D代別途)

※1Fスタンディング、2F指定席

主催:
YUMEBANCHI(大阪)
CREATIVEMAN PRODUCTIONS(東京)

お問い合わせ:
YUMEBANCHI(大阪)06-6341-3525(平日12:00〜17:00)
クリエイティブマン:03-3499-6669

チケット詳細

a子 オフィシャルサイト


Spincoaster SNS