THE GOASTT
NEW MUSIC

Devil You Know / The Ghost of a Saber Tooth Tiger


スペイシーでドラッギーで極彩色のサイケ・ワールドに陶酔すべし

2014.12.09

2014年はテンプルズ、トーイ、ザ・ウィッチーズなどのUK組を筆頭に空前のサイケ・イヤーだったわけですが、中でも僕が一番聴き込んだアルバムはThe GOASTT(ザ・ゴースト・オブ・ア・セイバー・トゥース・タイガー)の2nd『ミッドナイト・サン』でした。

The GOASTTは、言わずと知れたジョン・レノンの息子ショーン・レノンと、その彼女にしてトップ・モデル/女優のシャーロット・ケンプ・ミュールが結成した2人組。デビュー作『アコースティック・セッションズ』(10年)は文字通りアコギを中心とした親密なフォーク・サウンドでしたが、今作ではバンド・メンバーをリクルートし、ドロッドロの60年代サイケにシフトしていてこれがもう素晴らし過ぎるのです。

今回、LA在住のアニメーター/イラストレーターであるAlexander Theodoropulosが収録曲「Devil You Know」のビデオを制作し、noisey(VICEから派生した音楽特化メディア)で独占公開したこともあり、年の瀬に改めてご紹介しておこうと思った次第。フェーザーあたりのエフェクター&多重録音を駆使した2人のヴォーカル・ハーモニーが絶品で、MVのスペイシーでドラッギーで極彩色のサイケ・ワールドも曲調と完璧にマッチしていますが、ホドロフスキーへの愛(特に『ホーリー・マウンテン』)をがっつり感じさせる「Animals」のMVも酒池肉林でヤバいっす。

そして、このバンドの真の魅力はライヴにあり。先日ブルーノート東京で行われた初来日公演(もちろんシャー様の目の前で堪能、ごちそうさまでした)では、芸達者で怪しげなルックスのメンバーを引き連れて、音源の何百倍もグルーヴィーで卓越した演奏を聴かせてくれて脳汁あふれまくり。南青山のオシャンティーなハコじゃなくて、〈フジロック・フェスティバル〉のフィールド・オブ・ヘヴンあたりで3時間セットとかやってほしいもんです。

なお、『ミッドナイト・サン』にはサイケの名匠=デイヴ・フリッドマン(マーキュリー・レヴ)がミックスで参加、一部プロデュースをマーク・ロンソンが行い、日本からもコーネリアスやプラスティック・オノ・バンドのメンバーとして知られる清水ひろたか氏が客演。本作を聴かずして、2014年は終われませんよ。

(Text by Kohei Ueno)


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