Childish Gambino

This Is America

Childish Gambino / This Is America
「これがアメリカ」――最終章を控えるChildish Gambinoが放った、あまりにも衝撃的な一曲

俳優としての活躍でも知られるDonald Gloverの別名義、Childish Gambinoが先日公開した新曲「This Is America」が大きな話題、そして議論を招いています。

ソウルフルなコーラスと、アコギを爪弾く爽やかなイントロから一転、ドープなトラップ的ビートとパーカッシブなアフロ・ビートを取り入れたそのサウンドももちろん素晴らしいのですが、本楽曲が注目を集める大きな要因は何と言ってもその大胆不敵なタイトルと歌詞、そしてMVの内容。

東京生まれ、LA育ちの映像作家、Hiro Muraiが手がけたという本MVでは、先述のイントロから一転する場面で顔を覆われた黒人男性をDonald Gloverが銃殺するショッキングな展開で幕を開けます。

その後、狂気ともコミカルとも取れる表情で何事もないように踊り続けるDonald。後ろではきっちりとした制服を着てダンスする黒人の少年少女たちが。「おれたちはパーティがしたいんだ/おれたちは金がほしいんだ」というリリックの通り、陽気に騒いだりしています。そして楽曲の展開とともに、再び聖歌隊のようなコーラスが入ってくるやいなや、わずか8小節でこちらも銃殺。

そして再度少年少女が現れ、Donaldとともに踊りますが、後方では先ほどとは打って変わりパトカーなども入り乱れてまるで暴動が起きているようですが、Donaldと少年少女たちは意にも介さない様子。それはまるで視界に入っていないか、もしくは全くの他人事だと思わせるかのよう。そして、3度目の楽曲のキメ部分。またまた銃で誰かを撃つのかと思いきや、手で銃を撃つ素振りのみを見せ、どこか虚しい表情と共にジョイントに火をつけるDonald。

冒頭で射殺されたはずの男性とSZAが表れ、なぜか古い車ばかりが放置されたガレージで踊るDonaldから徐々にズームアウトしていくカメラ。アウトロでは何者かから鬼の形相で逃げるDonaldの迫真の演技で幕を閉じます。

This is America

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これがDonald Gloverが伝えるアメリカということですが、様々なメディアが本MVに仕込まれた無数のモチーフ、メタファーを解析しています。例えば、冒頭の男性が「Black Lives Matter」運動の引き金にもなったという事件の被害者、Trayvon Martinの父親にそっくりだということ(本人ではない)や、彼を射殺する際のDonaldの奇妙なポージングが、顔を黒塗りにした白人エンターテイナーが演じたキャラクター「ジャンプ・ジム・クロウ」を彷彿とさせるとの指摘もあったり。

また、その後Donaldが踊るダンスは、SNSで流行するいわゆる「踊ってみた」系のダンスを想起させるものであり、Rihannaなども披露したのことのある、アフリカ発祥の「Gwara Gwara」との類似点も指摘されています。つまりは、黒人文化が商業的、マーケティング的に広く使用されていることを表しているのではないかと。なのにも関わらず、一方では未だに「Black Lives Matter」の元凶ともなるような事件が起こるアメリカ。その捻れまくった現状を浮かび上がらせることに成功しています。

さらに、暴動のような何かが起こっているように見えて、問題の核のような部分は見えない辺りも、きっとこのMVの狙いなのでしょう。現実世界で何かが起こっているようだけど、自分にはわからない。自分には関係ない。ただ享楽的な世界のみ見て生きていたいと考える人々への痛烈なる皮肉なのではないかと。

SZAが登場するシーンの古い車たちは、アメリカの格差社会を表現しつつ、最後のアウトロでは「お前はただの黒人/お前はただのバーコード」「お前はただの大型犬/裏庭で飼っていた」というリリックと共に、全力で何者かから逃げ出すDonald。ここではまるで自分自身が消費され続ける立場であることを嘲っているようでもあり、そしてそこから逃げ出したいという切実な願望が表れているようにも思えます。

Donald GloverはChildish Gambinoとしての活動は次のアルバムで終わりにすることを宣言しており、どうやらこの「This Is America」はそのアルバムには収録されないようですが、これだけ物議を醸した後にくる新作には、否が応でもこれまで以上の注目が集まるはず。グラミー賞にもノミネートされた2016年リリースの『Awaken, My Love!』は、スピリチュアルかつファンキーな方向性をみせた名盤でしたが、果たしてChildish Gambinoのラスト・アルバムは一体どのような景色を我々に見せてくれるのか……。

Takazumi Hosaka

Curator & Interviewer

Takazumi Hosaka

情報時代の野蛮人です 【影響を受けたアーティスト】 ↑The High-Lows↓ / Sex Pistols / The Strokes

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