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REPORT / COUNTDOWN JAPAN15/16


COUNTDOWN JAPAN初登場となったThe fin、Shiggy Jr.、Suchmos、水曜日のカンパネラの4組のライブ・レポートをお届けします……!

2016.01.19

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日本最大のカウントダウンフェス“COUNT DOWN JAPAN 15/16” 。ベテランから若手まで幅広いラインナップと徹底したホスピタリティで、毎年チケット争奪戦が繰り広げられている年の瀬の人気イベントだ。またその1年間の音楽シーンを総括するような側面もあり、奇しくも今年の31日大晦日のASTRO ARENAには、Spincoasterがこれまでに紹介してきたアーティストが立て続けに出演する日となった。

今回、The fin.、Shiggy Jr.、Suchmos、水曜日のカンパネラのCOUNT DOWN JAPAN初出演の4組による、キャパシティ8,000人というどのアクトにとってもこれまでで最も規模の大きいと思われるステージで躍動した彼らのライブ・レポートをお届けする。もちろんいうまでもなく彼ら4組は、2016年も目が離せないアーティストばかり。今年も彼らの活躍ぶりにぜひご注目を。

(Text by Kohei Nojima / 写真提供:rockin’on japan)


16:55-The fin.

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Washed OutやToro Y Moiといったチルウェイブを出自とするアクトや、Beach Houseのようなドリーム・ポップを奏でる海外バンドとも共鳴したサウンドで、国内のインディ・バンドの中でも特出したセンスを放つ神戸出身の4人組、The fin.。洋楽リスナーや海外からも注目を集める彼らの音楽が邦ロック・リスナー中心のフェスの舞台で、どういった反応を受けるのかにも注目していた。

しかし、いざ始まってみると、周りを見渡せば彼らがどんなリスナーから支持を集めているのかが一目で分かることに。まず何よりもフェスのオフィシャルTシャツやハーフ・パンツを着用しているオーディエンスが明らかに少なく、普段着でオシャレな人たちが目立った。

まず初っ端に披露した「Illumination」、「Veil」といった彼らの1stアルバム『Days With Uncertainty』収録楽曲で、改めて彼らの音楽の繊細さに気付かされた。ライブ・ハウスで聴いている彼らのサウンドと、大きなアリーナで響く彼らのサウンドは全くの別物といっても良いかもしれない。音の反響による天然リヴァーヴは彼らのドリーミーなサウンド・スケープには大きくプラスに作用しているが、一方でビートが遠いと感じることも。キックとシンセの力強さには少し物足りなさを感じてしまったのもまた事実。著者は最近彼らのアルバムを音の太いアナログ・レコードで聴いていたため、なおさらそう感じてしまったのかもしれない。どちらが良いかは好みによるところが大きいが、この日初めて彼らのライブを観た人はぜひ色々な会場で彼らのライブを聴いてみて欲しい。きっとその都度新しい発見があることだろう。

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一方、ステージ上の彼らはどうだっただろう。アメリカ、アジア、イギリスと様々な土地を回った彼らは日本の、特に東京のお客さんの大人しさに一抹の物足りなさを感じていることが過去のインタビューからも伺えた。しかし、COUNT DOWN JAPANは年に一度の年の瀬の祭典である。バンドの熱心なファンであろうが、そうでなかろうが「この瞬間を楽しもう」「盛り上がろう」とする熱量が桁違いである。MCで「いい感じ? いいね! お酒飲んでる? いつもの東京と違うねぇ!」とオーディエンスに語りかけたYuto Uchino(Vo・Syn)の顔には、満足気な表情が浮かんでいた。

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中盤ではクリスマス・イヴに発表した新曲「Anchorless Ship」も早速披露。また、彼らの代表曲ともいえる「Night Time」では、オーディエンスもゆらゆらと左右に体を揺らす。ラストは1st EPの表題曲となった「Glowing Red On The Shore」。雄大で甘美なサウンド・スケープで魅せ、静かに熱くCOUNT DOWN JAPANの初ステージを喝采の中終えた。2016年はジャパン・ツアーを予定しているとのことだが、彼らは世界に出るべきバンドといえるだろう。それはThe fin.のYouTube動画のコメント欄が物語っている。今後は海外での活躍ぶりにも期待せずにはいられない。

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SET LIST
1.Illumination
2.Veil
3.Anchorless Ship
4.Misty Forest
5.Night Time
6.Glowing Red On The Shore

17:50-Shiggy Jr.

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2013年のROCK IN JAPANに続き、早くもCOUNT DOWN JAPANのステージに到達したShiggy Jr.。メジャー・デビューにワンマン・ライブと快進撃を見せたこの2015年の締め括りが、このバンド史上最大規模のキャパシティでのライブとなったわけだが、スタート時にすでにアリーナの7〜8割程が埋まる程の盛況ぶりをみせた。ライブは「LISTEN TO THE MUSIC」から幕を開ける。間奏でのベース・森による「ゆく年!ゆく年!くる年!くる年!」のコールアンドレスポンスで盛り上がりを作り、COUNT DOWN JAPANのオーディエンスを掴む。続く「oh yeah!!」ではタオルを回して、オーディエンスをさらなるフェス・モードへと導く。

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「すごい人数! 多分、人生で一番多いのではないか! 座っている人もありがとう! 休んでいる人もいるのに、うるさいのがやってきました! ちょっとだけ我慢して下さい!」と、MCではいつも通りの謙虚さをみせる。

「今日はここにいる人は全員ライブ納め一ですよね!? 1年をいい思い出で締めくくって、一緒に良い新年を迎えられるように、一緒にハッピーな空間を作っていきましょう!」と最新シングル「GHOST PARTY」を披露。後方のロックキッズもフェス特有のダンスで飛び跳ねているのが印象的であった。「COUNT DOWN JAPAN、お前らまだまだ元気あるかー!」とドラム諸石の男臭い煽りでメタル・チューン「oyasumi」へと突入し、Oi! Oi! コールとジャンプを煽る。ロック・フェスらしい景色が広がる。

池田の「今日、初めてShiggy Jr.のライブ見たって人〜?」という問に対して過半数をゆうに超える手が挙がった。これにはメンバーも驚きを見せた。それもそのはず。この盛り上がりで、ほぼ初見だと言うのだから。COUNT DOWN JAPANのオーディエンスとShiggy Jr.の相性の良さをみせつけられた。

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池田の2015年のラストのMCは会場に来られなかった全Shiggy Jr.ファンのために全文紹介したい。

「今年、Shiggy Jr.にとってはメジャー・デビューだったり、こういう憧れの舞台に立てたりと、本当に夢がたくさん叶った一年でした。今日はじめて来てくれた人もそうですし、何回も通ってくれた人もそうですし、『名前は知っていたけどライブは見たことなかったよ』って人も、“好き”の量に関わらず『シギーの音楽を聴いてみよう』『ライブに行ってみよう』っていう、みなさんがいたからこそ色んな目標を叶えることができました! 本当にありがとうございました! 来年はもっともっと良い年になるように! みんなのことをハッピーにできるようにShiggy Jr.は頑張っていきますので、来年も応援よろしくお願いします!」

と、締めくくった。そしてデビュー・シングル「サマータイムラブ」で極上にハッピーなグルーヴで会場を包み、ラストはもちろん「Saturday night to Sunday morning」をプレイ。

池田「次で最後の曲になってしまいましたー!」

オーディエンス「えー!!」

池田「ありがとうございまーす! みんな、お上手です!」

「お上手です!」には笑ったが、それにしてもこの曲のコール・アンド・レスポンスの練習時、池田のMCがどんどん巧みになっていて本当に感心する。ラジオMCの経験と年間40本を超えるライブ、そして彼女の努力の積み重ねが伊達ではないことを強く感じた。

そして今年 1番の「サンデーモーニング!」の大合唱でShiggy Jr.は2015年最後のライブを終えた。Shiggy Jr.は大きな舞台が似合う。きっと今後どんな大きな会場になろうと、会場の端から端までハッピーにしてくれるだろう。2016年はどこまで行く? みんなの夢は大きく膨らむばかりだ。

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SET LIST
1.LISTEN TO THE MUSIC
2.oh yeah!!
3.GHOST PARTY
4.oyasumi
5.サマータイムラブ
6.Saturday night to Sunday morning

18:45-Suchmos

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ブラックなグルーヴとカリスマ性を放つボーカル、YONCEの存在感から、業界関係者内でもNo.1といって良いほどの注目を集める6人組ロック・バンド、Suchmos。彼らのライブを一目見ようと多くのオーディエンスがASTRO ARENAに駆けつけた。

「今日は幕張! ゆらゆらしようぜ! 極上の波を持ってきましたんで! おれの地元、茅ヶ崎国道134号線を吹き抜ける風の歌を聴いて下さい!」という最高に洒落た挨拶から「Pacific」がメロウにスタート。YONCEの艶のあるファルセットがアリーナに響き渡り、大きな歓声が上がる。2曲目はミドル・テンポの「YMM」。ステージを動き回るYONCEの動きに魅了された人も少なくないはずだ。“ボーカリストは、どんな時でもカッコよくあるべき”というのが彼のポリシーなのだろう。長身でスタイルも良いうえに、子供の頃にはモダンバレエを習っていたとも聞く彼は、立ち姿だけでも絵になる存在だ。

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そして、さらにアップテンポな「Miree」と人気曲を立て続けに投下。音源には収録されていないDJ KCEEのスクラッチ音が冴え渡る。
続いて披露したのは1月27日に発売する2nd EP『LOVE&VICE』からの新曲「STAY TUNE」。「Miree」の延長線上にあるような、ファンキーなナンバーだ。

「最高。年の瀬に数あるレジャーの中から、このフェスの……いや、このフェスまでは良いよ、楽しいから。でも、よりにもよってこのフェスの中でここ(おれたちのステージ)来るか〜? 好きだねぇ! おたくら!」と、自虐混じりにシーンへのカウンター・パンチとしてのスタンスを示す。

ラストは「今日ここにいる、ブラザー&シスターに捧げます。これから先の人生、悠々自適に生きていこう「Life Easy」という曲でお別れです! ありがとうございました!」とまるでラジオDJのような気持ちの良い挨拶で2015年の最後を締めくくった。こんなにもカッコよく、男らしく、気持ちの良いバンドは2016年、他に現れるだろうか。

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SET LIST
1.Pacific
2.YMM
3.Miree
4.STAY TUNE
5.Alright
6.Life Easy

21:30-水曜日のカンパネラ

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「はじめまして幕張! 嘘つきました! サマソニできましたー!」と元気いっぱいに登場した、水曜日のカンパネラの歌い手コムアイ。2015年最も大きくブレイクしたアーティストと言っても良いだろう。しかし、どんなにステージが大きくなろうが、そんなことは彼女には関係ない。

スタンドを歩くお客さんに「あっち空いているから、回った方がいいかもしれない〜。私もぐるーって回ってライブしたいんですけど、今日はステージ上で、頑張って我慢しますんで」とまるで自分の家のように自然体な振る舞いをみせる。

「じゃあ温泉の歌からはじめます〜」と「いい湯だね!」という掛け声からライブはスタート。前フリ無しながら、既に「いい湯だね!」と盛大なレスポンスが発生することからも、彼女らの人気ぶりが伺えた。ステージを縦横無尽に踊り、動き回りながら披露した「ディアブロ」からそのまま流れるように突入した「桃太郎」では、途中「祖父母の怒りを買い〜」のセリフ部分を全て飛ばし「YouTube見てね!」と彼女らしい一言が飛び出す。
ろうか。

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「今年本当にいろんな仕事しましたよ〜! 来年も頑張るからね! よろしく!」とヤフオク!のCMソング「ツイッギー」がスタート。Future Base的な上音に3連符を多用した、Juke/footwork的なリズム。世界の先鋭的なクラブ・ミュージックのトレンドを取り入れつつ活動するアーティストは今の日本のオーバーグラウンドには他に類を見ない。これも水曜日のカンパネラというユニットの面白いところだ。続く、「ウランちゃん」もJukeの要素を取りいれた高速ビート・トラック。幸いな事に(?)機材トラブルで想定よりもバッキバキに仕上がってしまったようだ。

そしてサイケデリックな雰囲気から一転し、突如「曲が終わるまでに、この場所からどこまでの人に匂いが届くのか実験をしたいと思います!」と、「ラー」のMVでコラボレーションを果たした日清の「カレーメシ」開封の儀を行う。「いやー、COUNT DOWN JAPANじゃなかったらこれ投げるんだけどねー」と、この日一番の爆笑が生まれる。もちろん歌う曲は「ラー」だ。

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結局、匂いが届いたのはアリーナの前方1/3程度までで、「ウソでしょ…」とショックを受けながらも、ラストのドラキュラたちによる忘年会の歌「ドラキュラ」をプレイ。「来年こそ紅白」という文字を掲げた巨大まねきねこも登場し、和やかなフィナーレを迎えた。いや、この勢いだと来年の紅白、本当にあるんじゃないですかね。

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「来年は今年の2倍か3倍くらい頑張る! 色んなイベントもやるんで良かったら遊びに来て下さいね。なんてったって年女ですから!」と宣言したコムアイ。今年の3倍頑張るって、一体どれだけ働くつもりなんだろうか……と、彼女の体調を心配する人はコムザルLINEスタンプを買って2016年も応援してあげましょう。

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SET LIST
1.ディアブロ
2.桃太郎
3.ツイッギー
5.ウランちゃん
4.ラー
5.ドラキュラ


以上、4組の若手アーティストの大舞台をお届けしてきたが、今年の年末にはどんなアーティストがこのステージに立つのだろうか。
後日、Spincoasterが彼らも含め2016年に飛躍を予想するアーティストを発表する予定だ。ぜひこちらも楽しみにいただければと思う。

【LINK】
COUNT DOWN JAPAN 15/16公式サイト


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