Best Tracks Of 2018

Takazumi Hosaka

キュレーター、Takazumi Hosakaの2018年ベスト・トラック!

年々個人的な興味の幅が広がってしまい、ますます続く「浅く広く」の進行が喰い止められないのと、情報の「取捨選択」が下手過ぎるなと悩み続けた2018年でした。


  5. VaVa / 現実 Feelin’ on my mind

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CreativeDrugStoreより、なんと2018年に3枚のEPをリリースしたことになる(最後となる『Universe』は明日12月26日リリース)VaVaは、今年一気にその名を広く知らしめた印象があります。本楽曲は、今年最初のリリースとなった全曲セルフ・プロデュース作『Virtual』からの先行曲。8ビット・サウンドとサックスを導入した感傷的なナンバーに、現実よりもゲームの世界へと没頭した幼き頃を思い返すようなリリックが胸を打つ一曲。
今回、残念ながら5曲の中には入れられなかったのですが、KMの1stアルバム『FORTUNE GRAND』収録の名曲「夜のパパ (feat. 田我流)」や遺作となってしまったMac Miller『Swimming』、日本人(アジア人)としては初となる米ビルボードのR&B/ヒップホップ/チャートで一位に輝いたjoji『BALLADS 1』など、今年はどこか感傷的、メロウなヒップホップ/R&Bに惹かれることが多かったです。それこそLil PeepやXXXTentacionの遺作アルバムも含めて。

  4. KOJOE / 24

昨年リリースした久方ぶりの新作『here』から、今度はわずか9ヶ月という短いスパンでリリースされた新作『2nd Childhood』収録のスムース&メロウな一曲。前作が多彩なゲストを招いた華やかかつドープな一枚だったとしたら、今作はゲストも少く、「少年時代」というコンセプトに基づいたかのような作品に。インタビューによると本作は前作に比べて、「より自由に作りたいものを作った」とのことですが、大々的にフィーチャーされている自身のメロディアスなラップやボーカルがとにかく素晴らしい一枚。特にこの「24」はレゲエっぽいフロウを、今日的なトラックと合わせたかのような斬新な一曲だと思います。ちなみに、MVはCreativeDrugStoreのHeiyuuディレクション。

  3. DJ RYOW / all green feat. 唾奇

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今年一年の自分のリスニング・データを振り返ることができる“Spotify Wrapped”にて、かなり上位に食い込んでいた楽曲。個人的にはiTuneやらApple Musicも結構使っているので、あくまでもSpotify上でのデータ、ということですが、確かに一時期この曲ばかり聴いてしまうことがありました。ピッチアップしたボイス・サンプルを大胆に使ったドリーミーなトラックに、KUJA「betty blue feat. 唾奇」の続編とも言える、亡き友について歌ったリリックも秀逸。過剰にドラマチックに仕立てるわけでもなく、淡々と、でも一歩ずつ前に進むかのような描写は、これまでの唾奇のリリックの中でも群を抜いたクオリティを感じさせます。

  2. SKOLOR & YUNGYU & FUTURISTIC SWAVER / 4G (prod. LAPTOPBOYBOY)

韓国のラーパーであり、「ニート東京」にも登場したSKOLORと、同じく韓国のFUTURISTIC SWAVER、そして山梨のラッパー・YUNGYUによるコラボ曲。プロデュースはFUTURISTIC SWAVERのプロデューサー・名義であるLAPTOPBOYBOYが担当。

YUNGYUは自身のソロ作ではフューチャー・ベースのようなトラックも乗りこなし、最近ではPARKGOLFとのコラボ曲をライブでも披露しています(リリースなどの詳細は不明)。この楽曲はがっつりフューチャー・ベースというわけでもないですが、トラップともかなり距離をおいた、ドリーミーな一曲。そして何より、国境や言語を関係なくできた友情(というとクサいですが)について、今日的な感性で綴られたリリックが何よりも素晴らしい。「HEY 4G 繋いでほしい」というフック、最高です。

  1. Childish Gambino / This Is America

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曲、リリック、MV含めて、これ以上のポップ・ミュージックには今年出会えませんでした。いや、むしろ数年、十数年に一度レベルの衝撃なような気がしています。やや強引ながらも受け取り手の興味を引き、そして新たな視点や思考を与えるという意味において、個人的にポップ・ミュージックに求める理想の姿がここに。この後にリリースした2曲入りEP『Summer Pack』は、一転、お気楽なサマー・ソングかと思いきや、「Feels Like Summer」の歌詞も、今日のヒップホップ/ポップ・ミュージックの様相をコミカルに描き出したMVを見た後では、なんだか深読みしてしまいそうなリリックになっています。次のアルバムでChildish Gambino名義での活動に幕を下ろすことを公言しているDonald Gloverですが、果たしてどんなアルバムになっているのか、否が応でも期待せざるを得ません。

  Comment

“毎年恒例となっていた『CROSSBEAT YEARBOOK』は残念ながら今年出ないようなので、今年はどこにも年間ベスト・アルバムを発表できていなくてモヤモヤしています(自己顕示欲ぅ〜)。今パッと名前が出る感じだと、joji『BALLADS 1』やThe 1975『A Brief Inquiry into Online Relationships』、中村佳穂『AINOU』、KID FRESINO『ai qing』、Brockhampton『Iridescence』、BES & ISSUGI『VIRIDIAN SHOOT』辺りをよく聴いていた&強く印象に残っています。

また、今年は色々な意味で「停滞」している感、カッコよく言えば「種蒔き」感というか、そんなことを感じた一年でした。個人的には来年以降の、アジア圏の動きが楽しみです。

  番外編マイ・ベスト

「ベスト・オブ・目から鱗」

What About “The Breakfast Club”? (via. The New Yorker)

モリー・リングウォルドのMeToo/『ブレックファスト・クラブ』とは何だったのか(Twitter モーメント by @papurika_dreams)

普通に社会との繋がりを持って生きていれば、今年は #MeToo に代表されるような、「性」にまつわることを考えることが増えるのは当然で、自分もそういったことを考える中で、なかなか思考がまとまらなくてゴチャゴチャとしていた時に読み、スーッと思考が解けていったような感覚になった記事(投稿)です。John Hughesによる80年代青春映画の金字塔的作品『ブレックファスト・クラブ』(原題:The Breakfast Club)に出演していたMolly Ringwaldによるコラムと、それを丁寧に翻訳&解説してくれている投稿をまとめたモーメント。

もちろん個人的にも『ブレックファスト・クラブ』は大好きな作品だし、今年サブスクに初期作品が解禁されていることをキッカケに聴き返したエレカシの過去作品(個人的に特にそう思ったのが「化ケモノ青年」)とかで描かれる「男(父)」と「女(母)」についての関係性とか、好きじゃ駄目なのかな、自分はこれを否定しなければいけないのかな、などとぼんやり考えていた時に、そういった問に対する答えがパーンと突然目の前に現れたようで心底驚きました。自分(たち)が愛した芸術、文化に対して、その気持ちは捨てずに、だけど批判して、前進していく。我々にはそういう勇気が必要なのだと。単純なんだけど、自分の石頭では中々そこに到達できなくて、まさに目から鱗がこぼれ落ちる瞬間でした。

Takazumi Hosaka

Curator & Interviewer

Takazumi Hosaka

情報時代の野蛮人です 【影響を受けたアーティスト】 ↑The High-Lows↓ / Sex Pistols / The Strokes