情報収集や未知のアーティスト探しの方法に変化のあった一年でした。音楽メディアを直接見にいくことはほぼなくなり、Twitter経由で気になったものだけをチェック。YouTubeですでに好きな曲を再生して、そこからレコメンドをサーフィンしてディグ&気に入ったアーティストがいたらSpotifyで聴いて音源購入という流れ。来年はもっとストリーミングを活用したいなと思ってます。
5. Björk / Arisen My Senses
ユーロビートや小室系を好んで聴いていた私が現在、音楽系のブログをやったりSpincoasterで書いたりしているのは、97年にBjörkの『Homogenic』と出会ってしまったからなのだ。そんなわけで最も思い入れの深いアーティストなわけだけど、『Volta』以降のアルバムはいかんせん「良い」「好き」の枠を飛び越えてはいなかった(もちろん全部「好き」だけど)。今回Arcaとガッツリ組んでの『Utopia』は、そんな私が久々に味わった「めちゃくちゃ良い」「めちゃくちゃ好き」な“ザ・ビョーク”な作品。そして本作の魅力を説明するとしたら、それはもうオープニング・トラックであるこの曲を聴いてもらう他ない。
4. Sabrina Claudio / Everlasting Love
かつて「セクシーでいることに飽きた(Got Tired of Being Sexy)」と語ったのはかのBeyoncéだが、Sabrina Claudioならばセクシーでいることに疲れはしないだろう。なぜならごく自然体そのままでも十分にセクシーだから。といってもこれは見た目や佇まいのことではなく、歌声の話(というか、女性シンガーに対してルックスの美しさだけをやたら褒めるのはもう終わりにすべきだ)。彼女の美しく艶めかしい歌声と、Rhodesピアノの幽玄な音色と、三連符を組み込んだビート。これ以上クレイジーでセクシーでクールな組み合わせはなかなかない。
3. Fergie / Hungry ft. Rick Ross
The Black Eyed Peasから一時離脱中のFergieが11年ぶりのソロ作をリリース。去年リリースされたシングル「M.I.L.F. $」も激ヤバだったが、クワイアをループさせたダークでヘヴィなこの曲も超強力。Rick Rossに負けず劣らずマスキュリンなFergieのラップが最高にかっこいい。
2. Yaeji / Raingurl
■関連記事:Yaeji / Drink I’m Sippin On
韓国出身のDJ/トラックメイカーのYaejiは、クラブ・ミュージックの基本である「反復」の定石を熟知している。この「反復」は使用方法を誤ると、ただひたすら退屈になるかポップ性が失われるかのいずれかだが、クラブ・ミュージックとしての機能性とポップ性が黄金律で成立しているのがこの曲。それはデビューEP収録の「Noonside」や『EP2』収録の「Drink I’m Sippin on」もまた然り。ジャンルの呼称としてではなく、これぞ真の「トランス」だ。
1. London Grammar / Rooting For You
かつて「7オクターブの歌姫」と言われたMariah Careyも今ではすっかりゴシップ・ネタで話題になることの方が多くなってしまったが、そもそも現行のポップ・ミュージックにおいて「声域が広い」ことはあまり求められていないし、「=歌唱力が高い」ことにはならない(もちろんマライアに関しては歌唱力がめちゃくちゃ高いけど)。
さて、このLondon Grammarの2ndアルバムのリード曲のボーカルは4オクターブのレンジがあるが、マライアのホイッスル・ボイスのようにアクセントや「キメ」としてではなく、あくまでメロディ展開の一部として高音が使われていて、極めて高い歌唱力と表現力が必要とされる曲だ。歌い出しの部分は非常に低く、サビへと進むにつれて徐々にメロディが高揚していく様は超絶エモーショナル。この感情表現力の高さこそが真の「歌唱力の高さ」なのだとあらためて実感。
Comment
ソウル、ファンク、ジャズ、ブルーズ、R&B、ヒップホップ、ゴスペルといった、いわゆる広義の「ブラック・ミュージック」からの影響を感じさせる音楽に強く惹かれた一年でした。BeyoncéやKanye West、Chance The Rapperの例を挙げるまでもなく、世間的にはすでにここ数年「ブラック・ミュージック」の影響下にある音楽が活況を呈していましたが、自分はそこまで入れ込んでいなくて。でも去年のAlicia KeysやSolangeの作品をきっかけに、自分の中で道が拓けていった感じです。
実は今年は音楽メディアを熱心に追わなかっただけでなく、メディアの年間ベストも(意図的に)見ていません。メディアが価値基準を作っていきリスナーが追従する時代はすでに終わっていて、個人がそれぞれの価値基準を突き詰めていく時代だと思うから。今年は自分以外にも、似た考えの人がとても多いような印象を受けました。
番外編 マイ・ベスト
【ベスト・ライブ】
Jane Birkin “Birkin – Gainsbourg The Symphonic”
8月19日 at Bunkamura オーチャードホール
PhoenixやKehlaniやTRFなど魅力的なメンツだったサマソニ東京1日目。が、それらを差し置いてでも行きたかったのは同日開催のJane Birkinと東京フィルハーモニー交響楽団による公演“Birkin – Gainsbourg The Symphonic”でした。本格的なオーケストラのコンサートを観に行ったのは初めてでしたが、とても感動的で貴重な体験でした。
■deidaku 過去記事:https://spincoaster.com/author/deidaku
【Spotify プレイリスト】