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INTERVIEW | DOMi & JD BECK


演奏から作曲へ── 超絶技巧デュオが2年間の孤独な制作の果てに完成させた真の1stアルバム

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2026.08.20

デビュー作『NOT TiGHT』(2022年)で世界中の音楽リスナーとミュージシャンを驚かせたDOMi & JD BECKが、4年の時を経て帰ってきた。

待望のニューアルバム『WHO ASKED?』は、前作とは対照的に、ゲストをほとんど迎え入れず、作詞・作曲・演奏・プロダクションのほぼすべてを2人だけで完結させた一作だ。曲を書き終えたのは2024年だというが、そこからおよそ1年、1日12時間、150バージョンにも及ぶミックス作業を重ねたという。オーケストラルなサウンド、そして本格的に踏み込んだボーカル表現――前作からの飛躍の裏側には、いったい何があったのか。今回、Spincoasterでは2人にメールインタビューを実施。常軌を逸したこだわりをみせる制作プロセスから、初めて本格的に踏み込んだボーカル表現、ライブでの機材、そして来日公演への思いまで、じっくりと話を訊いた。(編集部)

Interview by Naoya Koike
Photo by Official


自分たちのために、自分たちだけで作った

――まず、アルバムタイトル『WHO ASKED?』に込めた意図を教えてください。

たくさんの意味も込められているし、同時にほとんど意味がないとも言える。それがちょうどいいと思ったんだ。:)

――制作プロセス全体を振り返って、今どう感じていますか? 特に一番苦しかった瞬間、インスピレーションが突然降りてきた瞬間、そして2人の意見がぶつかった出来事があれば聞かせてください。

(前作の)『NOT TiGHT』は、今振り返ると複数のアイデアの寄せ集めのように感じる。当時の自分たちはまだサウンドを確立できていなくて、明確な目的もないままいろいろな方向に手を伸ばしていた。あの作品にはたくさんの友人がフィーチャーされているけど、今回ほど考え抜かれた、完成度の高いものではなかったと思う。

『WHO ASKED?』は、自分たちのビジョンをすべて自分たちの手で実現できた、本当の意味での1stアルバムだと感じている。DOMiの兄(Noé Degalle)が3曲で作曲に参加していて、2曲目の作詞をAndy(Anderson .Paak)が手伝ってくれた以外は、完全に自分たち2人だけで作った。とても自己中心的なやり方だけど、自分たちのために、自分たちだけで作ったんだ。

制作はオーストラリアツアーを終えた直後に始まったから、時差ボケがひどくて、自然と朝早く目が覚めてしまって。そこから、毎日朝8時から夕方5時まで作業する、かなり厳格なスケジュールになった。それが最終的には朝11時から夜8時までになって、休みは月に3日ほど。おかげでものすごい量をこなせて、アルバム全体のすべての音符とリズムを、4ヶ月かけて楽譜作成ソフト「Sibelius」に書き出した。ただその一方で、脳をリフレッシュさせるための十分な休息の大切さに気づけなくて、2年間休みなく作業を続けた結果、完全に燃え尽きてしまった。いい教訓になったよ。:)


「すべての音符に意味を持たせたかった」

――もし1曲ずつおすすめの曲を選ぶとしたら、どの曲を選びますか? その理由と、作曲やプロダクションで特に狙っていたことがあれば教えてください。

これは今までで一番難しい質問だ。だからこそ、アルバムを一気に出す前に先行シングルを出さなかったんだ。クラシックやオーケストラ音楽が好きな人には“EPiPHANiE”、“EPiLOGUE”、“CONCERTiNO”を。ビートが好きな人には“PHANTOM THREAD”、“HAD ENOUGH”、“SMALL EYES”を。ドラムンベースが好きな人には“OUT OF SYNC”、“EXiT”、“RAiN”を……そして、自分たちのように何が好きなのかわからない人には、頭から目を閉じて聴いてみてほしい!!

――“HAD ENOUGH”の制作にはAnderson .Paakが関わっていますね。彼とのコラボレーションと、彼との関係について教えてください。

彼のレーベル(APESHIT Inc.)と契約したのは、完全なクリエイティブコントロールを持ちたかったから。何が売れるか、何が流行っているかを気にせず、自然に生まれてくるものを実験しながら、本当に作りたい音楽を作るためにね。

このアルバムでは、“HAD ENOUGH”の歌詞を全員で一緒に書いて、彼がいくつかの作詞の方法を教えてくれた。それ以降の曲は、その方法を使って自分たちだけで書いたんだ。

――このアルバムは、2人の演奏者としての側面以上に、プロデューサーとしての作品だという印象を受けました。とはいえ、テクニカルな演奏力も随所に感じられます。前作と比べて、演奏面で最も進化したと感じるのはどんなところですか?

今回のアルバムで一番大切にしたのは「作曲」。『NOT TiGHT』では演奏そのものに比重を置いていたけど、今回は自分たちのミュージシャンとしてのエゴが作曲の邪魔をしないように、本当に気をつけた。

書き始める前から、『WHO ASKED?』をどんな作品にしたいかというイメージはかなり明確だった。オーケストラルであること。楽器を鳴らす前に、すべてを書き切ってしまうこと。そのうえで、曲としての意図はこれまで以上にしっかりさせながら、演奏やハーモニーの面ではこれまで通りクレイジーな作品にしたい。そう考えていたんだ。

すべての音符に意味を持たせたかった、偶然に任せるものは何もない。自分たちで書いた曲を、後から自分たちで演奏できるように学び直すのは、すごく楽しくて、同時にチャレンジングな作業だった。それがミュージシャンとしての成長にもつながったと思う。プロダクションは本当に興味深くて、曲自体を変えることなく、書かれたものの受け取り方をまったく違う形に変えてしまう力がある。

このアルバムを作って、自分たちがもっとプロダクションやサウンドの部分を深く追求したいと思っていることに気づいたよ。学ぶことが大好きだから、今回の制作を通して自分たち自身についても、次に何ができるかについても、たくさん発見があった。


「ボーカルは、インストゥルメンタルが生み出すカオスをつなぎとめる錨(いかり)」

――もうひとつの大きな驚きは、2人が歌っていることでした。このアルバム以前から歌う機会は多かったのですか? レコーディングのために特別にボイストレーニングをしましたか?

ボーカルパートはすべて、事前にSibeliusに書き出してあったから、何を歌うべきかは最初からわかっていた。このアルバム以前は、“BOWLiNG”と“MOON”で少しフレーズを歌った程度で、あとは“TAKE A CHANCE”のコーラス部分と、“U DON’T HAVE TO ROB ME”を1曲丸ごと歌ったくらいだった。

作曲を進める中で、自分たちのスコアが結局のところヴァース、プリコーラス、コーラス、ブリッジ、コーダという典型的な曲構成に落ち着いていることに気づいた。コードやベースラインを書きながらメロディも同時に書いていて、それを主に木管楽器に乗せていたんだ。だから、そのメロディを自分たちで歌うのは自然な流れだった。人間の声は最も古い楽器で、いちばんダイレクトにつながれる手段だからね。声も、他のすべての楽器と同じひとつの楽器だと考えていて、色や質感、表現の幅も含めて、アルバムに収録した他のオーケストラ楽器と同じように探求したかった。

ただ、ボーカルはメロディと歌詞を担う分どうしても注目されがちだけど、それをフォーカルポイント(パッと目を引くポイント)にしたいわけじゃない。ボーカルは、インストゥルメンタルが生み出すカオスをつなぎとめる「錨(いかり)」のような役割であってほしいと思っている。自分たちの中では、すべての楽器は対等なんだ。

準備としては、はちみつ入りのお茶をたくさん飲んで、適当な母音でヘロヘロのハーフディミニッシュスケールを歌いまくった!!

――ボーカルメロディが単なるハーモニーというより、対位法的に書かれているように感じました。それらのメロディは最初から曲全体の構成の一部として作曲されたのでしょうか、それともボーカルを加える段階で後から作ったのでしょうか?

ボーカルパートはすべて、スコアの一部としてSibeliusに書かれていた。ボーカル入りの曲のほとんどで、メインメロディはオーケストラの別の楽器でダブリングされている。例えば“GROWiNG OLDER”のイングリッシュホルン、“HAD ENOUGH”のフルート、“SOME THiNGS NEVER CHANGE”のバスーン(ファゴット)など。

――歌詞はとてもミステリアスですね。時に対立や孤独、また「若さ」や「老い」というテーマを扱っているように感じます。2人ともまだ、老いを気にするには若すぎると思うのですが……こうしたイメージやテーマはどこから来たのでしょうか?

歌詞に関しては、みんなにそれぞれ自分なりの解釈をして、自分なりの結論を出してほしいと思っている。歌詞には無数の意味が込められていて、それぞれの人に違った形で響いてくれたら嬉しい。

――ストラヴィンスキーやラヴェル、Autechreからの影響についても言及していますね。個人的には、このアルバムからFrank Zappaの『The Yellow Shark』も連想しました。以前、YouTubeでスコア動画を見ながらオーケストレーションを学んだとも話していましたが、実際にスコアを追いながら音楽を学んだことは、音楽の「聴き方」や作曲の仕方に変化を与えましたか?

YouTubeでスコアを追いながら学ぶのは、インスピレーションを得るのにも本当にいい方法だと思う。なぜその音がそういう響きになるのか、どうやったらそれができるのかを、すぐに目で見て理解できるから。

カセットテープが発明されてから、それ自体はずっと可能だったことだと思う。ただ、今の方がずっと早くできるようになった。自分がやろうと思う前に、もうすでにネット上にアップされているからね。


「会場のみんなとエネルギーと愛を分かち合うこと」――来日公演へ向けて

――アルバムのところどころに、強いビデオゲーム音楽らしさも感じました。2人ともゲームが好きだと聞いていますが、制作にあたって参考にした特定のゲームやゲーム音楽はありますか? もし今夢中になっているゲームがあれば、タイトルとこれまでの総プレイ時間も教えてください!

最後に最初から最後までクリアしたゲームは『ホグワーツ・レガシー』で、2人ともそれぞれ150時間プレイした。:)

――LogicやAbletonなども使っていると思うのですが、どのDAWをどんな用途で使い分けているのか教えてください。特に、ドラムのレコーディングにLUNAを選んだ理由が気になっています。

アルバム全体の作曲はSibeliusで行った。JDが試しにLUNAでドラムをレコーディングしている間、DOMiはAbletonで自分のパートをレコーディングしていた。その後、Zach Hillと一緒にLogicでサウンドデザインを行った。Pro Toolsは、オーケストラの演奏者を1人ずつレコーディングする作業と、ミックスに使用した。

――アルバムのリリースパーティの映像も観ました。あのショーはどんな感覚でしたか? 新曲をライブで演奏してみて、何を得られましたか?

新しいレコードを初めてライブで演奏したのは、6月末に開催された『Toronto’s International Jazz Festival』だった。最初はものすごくプレッシャーがあったけど、みんなが楽しんでくれている様子だったから、結果的にはすごくいいショーになった。LAでのリリースショーは、いろいろなやり方を試す実験の場のような感じで、あのショーを経て、これからやりたいことのビジョンがよりはっきり見えてきた。

――この音楽がライブでどう表現されるのか気になっていたのですが、ボーカルといくつかの要素は同期させている一方で、ストリングスは外していますか?

実は、ストリングスも含めたフルオーケストラと一緒に演奏していたんだ。ただ、オーケストラが入る場合はクリックに合わせて演奏せざるを得ない。

――ライブの機材についても詳しく聞きたいです。JDさんが電子ドラムを使っているのを見て、このアルバムのサウンドにぴったりの選択だと個人的に感じました。隣にあるサンプラーも含めて、どんな機材を使っているのですか? そしてDOMiさんの現在のセットアップについても教えてください。

DOMi:88鍵のNordのキーボードを2台使っていて、ヘヴィタッチ。下の鍵盤はキー用パッチとソロ用パッチ、上の鍵盤はベース用パッチと、チェレスタやハープのパッチ用。全部ラップトップのMainstage経由で鳴らしてる。:)

JD:あのLAのショーでは、Roland V-71のドラムセットをいろいろ試していた。電子ドラムのサウンドには自分自身、大きな影響を受けてきたし、それをライブで再現できるのは本当に気に入っている。ただ、それを自分が望むほどダイナミックで表現力豊かに鳴らす方法は、まだ完全には掴めていない。次のツアーでは、また生ドラムに戻る予定。

――12月には日本でのショーも控えていますね。これまでの来日、テレビ出演も含めて振り返ってみて、いかがでしたか?

前回の来日は『SUMMER SONIC 2025』で、最高だった。ただ暑すぎたけどね(笑)。日本に来るのはこれで4回目で、毎回本当に楽しい。:)

――最後に、今回の来日公演で一番楽しみにしていることは?

会場のみんなとエネルギーと愛を分かち合うこと。:) 遠慮なく大きな声を出してね!!!!

――追伸:あなた方がファンだと公言している坂本龍一は、晩年、あえて同期させない音楽を追求していました。それを聞いて、あなた方の楽曲“OUT OF SYNC”との興味深いつながりを感じました。ぜひ聴いてみてほしい作品です。

“solari”は知っていたけど、それ以外は知らなかった!! 教えてくれてありがとう! すごく気に入った <3


【リリース情報】


DOMi & JD BECK『WHO ASKED?』
Release Date:2026.07.31 (Fri.)
Tracklist:
01. EPiPHANiE
02. HAD ENOUGH
03. EXiT
04. SiLHOUETTE
05. GROWiNG OLDER
06. SOME THiNGS NEVER CHANGE
07. RAiN
08. SMALL EYES
09. LOVELY MASQUERADE
10. PUZZLE PiECES
11. PHANTOM THREAD
12. OUT OF SYNC
13. CONCERTiNO (FOR PiANO, DRUMS & ORCHESTRA)
14. CLiMBiNG HiGH
15. EPiLOGUE

配信/購入リンク

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DOMi & JD BECK『YOU ASKED!』
Release Date:2026.08.14 (Fri.)
Tracklist:
1. ÉPiPHANiE
2. HAD ENOUGH
3. EXiT
4. SiLHOUETTE
5. GROWiNG OLDER
6. SOME THiNGS NEVER CHANGE
7. RAiN
8. SMALL EYES
9. LOVELY MASQUERADE
10. PUZZLE PiECES
11. PHANTOM THREAD
12. OUT OF SYNC
13. CONCERTiNO (FOR PiANO, DRUMS & ORCHESTRA)
14. CLiMBiNG HiGH
15. ÉPiLOGUE

配信/購入リンク


【イベント情報】


『DOMi & JD BECK WHO ASKED? TOUR』
2026年12月15日(火)東京 豊洲PIT
2026年12月17日(木)大阪 Yogibo META VALLEY
2026年12月18日(金)愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO

来日ツアー詳細

DOMi & JD BECK 日本オフィシャルサイト


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