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「更新し続けてきた最高到達点」──KID FRESINO単独ライブ『21』レポート到着


2026.02.14

Header Photo by Daiki Miura
Text by Yu Onoda

ラッパーにしてプロデューサー、DJのKID FRESINOが2月8日(日)に東京ガーデンシアターにて単独ライブ『21』を開催した。

Photo by Daiki Miura

2018年1月に代官山UNITで行ったバンド形態での初ライブを皮切りに、2021年、2024年の『FUJI ROCK FESTIVAL』をはじめとする音楽フェス出演や単独ツアーを重ねながら、会場規模を着実に拡大してきた彼は、2018年に『ài qíng』、2021年に『20, Stop it.』というアルバム2作をリリース。発表当初は、ヒップホップのトレンドから切り離された孤高の作品とも捉えられがちであったが、多様化が進む近年のヒップホップシーンにおいて、後進アーティストにとってのマイルストーンとなり、その響きは近年の音楽潮流にも違和感なく溶け込んでいるように感じられる。

言い方を変えるなら、その先進性が広く浸透するまでに何年もの歳月が必要だったのだろう。満員のオーディエンスがひたむきな眼差しで注視する今回のステージは、KID FRESINOが更新し続けてきた最高到達点を象徴するものだ。

Kazuhiko Fujita (Photo by Ray Otabe)

そして、Fla$hBackS第4のメンバーとも評されるデザイナーのKazuhiko FujitaがバックDJとしてブースに立つと、ステージ登場曲としてプレイしたのは米国フォークロックグループ、The Mamas & the Papasの“Dedicated To The One I Love”。大切な人に捧げる祈りと遠く離れていても変わらない絆を歌ったこの曲は、急逝した2人の大切な仲間、FebbとJJJへの思いを託したもの。登場したKID FRESINOは曲が終わるのを待って、そのJJJが残した“Kids Return”の渾身のカバーからライブの口火を切った。

Photo by Ray Otabe
Photo by Ray Otabe

驚きと熱狂が渦巻くなか、続いたのは正式リリースされていない代表曲のひとつ“Eazy Breezy”。所属していたFla$hBackSを離れ、ソロ活動の決意を込めたリリックに改めて向かい合うと、客演で登場したISSUGIが自身の楽曲“XL”を披露した。KID FRESINOはこの日のために新たに書いたリリックでISSUGIのラップに呼応。以前と変わらず〈Dogear Records〉に所属しながら、音楽性の大きな変化が象徴する彼にとってのヒップホップのリアルを熱く激しくスピットすると、客演を迎えず、自身のパートにみラップした2曲、Daichi Yamamotoとの2ステップアンセム“Let It Be”、IOとのエレクトロファンク“Special Radio”が続いた。

ISSUGI & KID FRESINO (Photo by Ray Otabe)

後者の楽曲ではドラマーの石若駿がトラックに生演奏を重ね、そのパートを呼び水に不動のバンドメンバーたちが登場。そのままDJセクションからバンドセクションへとスムーズに移行した。

三浦淳悟(Ba.)、佐藤優介(Key.)、斎藤拓郎(Gt.)、石若駿(Dr.)、小林うてな(Steel Pan, MainStage)、西田修大(Gt.)という日本屈指のプレイヤーが集結したKID FRESINOバンドは、長年にわたって練り上げられたアンサンブルが物語る通り、バックバンドの域を超えた有機的な音楽磁場を形成している。

「ワン、ツー、スリー、フォー」というドラムのカウントからぐんぐん高度を上げる“No Sun”を皮切りに、ラテンリズムを刻むクールなアレンジを初披露した“Cherry Pie”からトランシーなギターとドラムンベースのリズムパターンが絡み合う新曲に雪崩れ込むと客演で登場した折坂悠太がジャパンブルースの息吹きを注入。続く“AOS”はJoy OrbisonやOvermonoのガレージトラックに共鳴したタイトなグルーヴをたたみ掛けるようなラップと生演奏で具現化した画期的な1曲だ。

ここからスリリングな流れを一端切って、肩の力を抜いた“Salve”、カネコアヤノのパートを会場の大合唱が担った“Cats & Dogs”を挟み、ラップと演奏が生み出す複数の変拍子が織りなす代表曲“Coincidence”へ。

Photo by Daiki Miura

そして、再びDJセットにスイッチすると、今度はバックDJにCH.0が登場。最初にプレイされた電気グルーヴの“Upside Down”からシームレスなミックスで新たなフロアアンセム“USD”へ。そこにKID FRESINO同様、ヒップホップとダンスミュージックの融合を推し進めてきたNENEが加わり、代表曲“Arcades”では2人が体現するヒップホップの自由な精神性が瑞々しく花開いた。

NENE & KID FRESINO (Photo by Ray Otabe)
NENE (Photo by Daiki Miura)

その後もラウンジーな“rose”、KEIJUにUKマナーのビートを提供した“SAYSUM”、C.O.S.A.のヴァースもひとりで歌いきったJJJ作の“LOVE”と続き、DJセットを締め括ったのはJJJがFebbに捧げた“Beautiful Mind”のカバー。ステージには光の柱が浮かび上がった。

彼らの美しい魂を浄化するように、再度のバンド形態で演奏されたのは“that place is burning”。客演で登場したハナレグミのスウィートでピースフルな歌声とオーディエンスの大合唱、そして、スピードを上げて加速するラップの疾走感が一体となり、得も言われぬ高揚感が生み出された。

そして、ソロヴァージョンの“Incident”、“youth”を挟み、レゲエのグルーヴを織り込んだ最新曲“back for me”で大歓声に迎えられたのは客演のYONCE。2014年に渋谷のライブハウスでFebbと同じステージに立ったSuchmos、そのボーカリストがKID FRESINOと時を経て感情を共鳴させることになるとはどんな巡り合わせなのだろうか。

YONCE & KID FRESNO (Photo by Ray Otabe)
YONCE (Photo by Daiki Miura)

続く、“Freed Up”ではDJ SCRATCH NICEのビートをバンドでリアレンジし、そこに客演の仙人掌をフィーチャー。2人のラップが人生の予期せぬ出来事からもたらされた耐えがたい痛みや苦悩を乗り越えようと日々をタフに生きる躍動感を伝えると、“Rondo”からJJJの死に直面した自身の心境をありのままに投影した“hikari”へ。

頭上から差した2本のスポットライト、その一本が際立たせる不在は光そのものでもあり、コラージュされたリリックと相まって、様々な記憶や思いの乱反射がどこまでも悲しくも例えようもなく美しいと感じられた。そして、ライブを締め括ったのは自身の空虚さを歌った“Retarded”。

Photo by Daiki Miura

死は尊いものであるからこそ、死に値する生をどう高めていくか。ネガティブではあっても、そう考えればバッドではない。この曲について、アルバム『ài qíng』のインタビューでそう語っていたが、『20, Stop it.』の『20』からカウントをひとつ重ねた今回のライブタイトル『21』が指し示す通り、その音楽世界がここに来て、さらに高まりつつある、そんな手応を感じさせる最高の一夜だった。

かつて“Coincidence”のMVが鮮烈な衝撃をもたらした、雪の新宿を走るKID FRESINO。前夜から降った雪が周囲に残るこの日の東京ガーデンシアターにおいても、彼はヒップホップに対する変わらない思いを胸に、依然として走り続けている。

Photo by Daiki Miura

【番組情報】

『KID FRESINO ワンマンライブ「21」』
日時:2026年3月25日(水)23:00〜24:00
放送局:スペースシャワーTV

番組詳細


【イベント情報】


KID FRESINO 『21』
日時:2026年2月8日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京ガーデンシアター
出演:
KID FRESINO

KID FRESINO オフィシャルサイト


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