FEATURE

REPORT | Shingo Suzuki L.Y.P.S『Liquid Yellow Portraits』


「残り時間は限られている」──Shingo Suzukiソロプロジェクト・L.Y.P.S初ライブ

PR
2024.10.17

Text by Naoya Koike
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)

Shingo Suzuki(Ovall)が10月1日(火)、東京・丸の内COTTON CLUBにてソロプロジェクト・L.Y.P.Sでの初ライブ『Liquid Yellow Portraits』を開催した。

本公演はOvallのメンバーであり、BTS“WAKE UP”などのプロデュースも手がけるShingo Suzukiのおよそ16年ぶりとなるソロアルバム『Liquid Yellow Portraits』の世界観をリリースに先駆けて披露するもの。ピアニスト・渡辺翔太、ドラムス・守真人 & FUYU、トランペット・寺久保伶矢、ラッパー・5lack & Kojoe、シンガー・Ruri Matsumura & Nenashi、そしてOl’Kらが参加した同作のヒントとなるステージから、2ndショウの模様を本人のコメントと共にお届けしたい。

演奏は3拍子のシンプルなビートの“Beatrice”からスタート。美麗なグランドピアノの旋律が開幕を彩った。ピアノの音数が増えると、他ふたりも反応して熱い展開を聴かせる。全幅の信頼を置くというサポートメンバーは上手のドラムス・守真人、下手のピアノ・渡辺翔太のふたり。渡辺が浮遊感のあるサウンドでバトンを繋ぐと、守が基本拍を3から4に変換するポリリズミックなプレイで圧倒した。

この日、とにかく驚いたのは守の切れ味である。続くビート的なアプローチの“All in your palms”では、Suzukiの旋律的なソロとエレピを躍動的に聴かせた渡辺に続いて、ユニークなスネアの16分音符によるリムショットから乱打。Shingo Suzukiがポエトリーリーディングと歌唱を担当した“You don’t know what life is”では2拍5連系のフロウを披露するなど、グルーヴのなかで自由自在に泳ぐ。

「作曲やアレンジで全体の世界観を見せたいので、ゴリゴリなベースソロは要らないし、自分のプレイスタイル自体も弾きまくる感じではありません。前に出るときは出ますが、ふたりが和声とリズムで展開する隙間に入って、サウンドのルートとグルーヴを支える役でいようと」(Shingo Suzuki:以下同)──ステージ全体を通して漂っていた「前衛:守/中盤:渡辺/後衛:Suzuki」といった雰囲気はリーダーの采配だった。

4曲目“Backwards”からは盟友と言っても過言ではない類家心平(Tr.)が合流。ハーモナイザーを使ってファンキーにテーマをなぞった後、持ち味であるフリーキーさを交えてソロを吹きまくる。そしてトランペットとドラムスのデュオになる場面からベース & ピアノが復帰する瞬間の一糸乱れぬアンサンブル、そして情熱的な内容から転じてシックにターンを閉じる類家のわびさびにも惚れ惚れ。

John ColtraneやPharoah Sandersらの名演で知られるバラード“Naima”は3拍子のメロウなビートで。深いリヴァーブをかけたメロディの後に類家節で畳みかける。Herbie Hancock“Butterfly”のカバーは、リズム隊がグルーヴで集団即興的に盛り上げるシーンがハイライトだった。──「4拍子でジャズスタンダードを演奏すると面白味に欠けるんですよね。そこでアラブとかオリエンタルな要素をドラムに落とし込みました」。

もうひとりのゲストであるシンガー・Nenashiは、本編最後の曲“Be there”から参加。彼の英語でシックに始まった。ソウルフルに歌い上げるメロディが中心になると、バンドのダイナミクスや雰囲気が先ほどまでと変わっておもしろい。

アンコールはゲスト両者を迎えた“Love is word-less beat”。渡辺のアナログ味のあるシンセの2コードに他の奏者が集まってくるような冒頭から、手元に設置したエフェクトを効かせたゆったりとしたボーカルも印象的だった。天に上るようなトランペットの音がディレイで響き、Nenashiがウィスパー、そしてピアノの優しい響きでエンディング。初ライブとは思えない濃い余韻を残した。

それにしても、なぜSUZUKIはL.Y.P.Sを立ち上げたのか。「前から曲をストックしていましたが、Ovallが忙しいなかで形にできずにいました。でも世界情勢や社会の大きな変化、父親の死や子どもの誕生などをきっかけに『今この瞬間を大切にしたい』と思うようになったんです。残りの時間は限られている。そのなかで少しでも自分のアウトプットをしたい」。

なんとコロナ禍以降に起きた社会の激動が、16年ぶりのソロプロジェクトを要請したのである。さらに、長いブランクは何だったのか、彼はすでに次作へ取り掛かっているという。次なるリリースも遠くないはずだ。歴史が証明したように、世の中が混迷するほどに創造してしまうのがアーティストなのかもしれない。

Setlist
1. Beatrice 
2. All in your palms
3. You don’t know what life is
4. Backwards(with 類家)
5. Naima(with 類家)
6. Butterfly(with 類家)
7. Be there(with Nenashi)
8. Everybody loves the sunshine(with Nenashi)
[Encore]
9. Love is word-less beat(with Nenashi, 類家)


【イベント情報】


Shingo Suzuki L.Y.P.S 1st LIVE 『Liquid Yellow Portraits』
日程:2024年10月1日(火)
会場:東京・丸の内COTTON CLUB
出演:
Shingo Suzuki(Ba.)
守真人(Dr.)
渡辺翔太(Pf.)

[GUEST]
類家心平
Nenashi


【リリース情報】


Shingo Suzuki 『Liquid Yellow Portraits』
Release Date:2024.10.29 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
01. New morning
02. You don’t know (what life is)
03. Backwards
04. Flower dance
05. Daisy
06. All in your palms
07. Miss you already
08. The world is his world
09. HARIUSU I
10. HARIUSU II
11. Your journey goes on as my journey continues
12. Love is word-less beat

▼参加アーティスト
5lack (Rap),
FUYU (Drums)
守真人 (Drums)
渡辺翔太 (Piano)
寺久保伶矢 (Trumpet)
Nenashi (Vocal)
Ruri Matsumura (Vocal)
Kojoe (Rap)
Ol’K (Poetry Reading)

予約リンク

Shingo Suzuki オフィシャルサイト


Spincoaster SNS