ノルウェーのプロデューサー/SSWのLidoが2ndアルバム『Peder』を9月18日(金)にリリースした。
SoundCloudなどを中心に、2012年頃より盛り上がったフューチャー・ベース・シーンで同郷であり盟友のCashmere Catと共に名を馳せたLido。しかし、近年の作品では徐々にフューチャー・ベース的な要素――派手なドロップや暴力的なサブベースは鳴りを潜め、よりソングライティングとボーカルに重きを置いた作風へとシフトしている。
そんな中、現名義での1stアルバム『Everything』よりおよそ4年、いくつかのリミックスやコラボ曲、そしてコンセプチュアルなEPを経てリリースされた本作では、彼の本名(Peder Losnegård)をタイトルに冠し、幻想的な世界観を演出。ロンドン出身のラッパー/シンガー/プロデューサーのEbenezer、Juice WRLDやGunnaの作品も手がけるプロデューサー・Heavy Mellow、メンフィスの兄弟デュオ・Mulherin、そしてJoJo、Santell、Col3traneら実力派シンガーらが参加し、作品に華を添えている。
果たして、Lidoの新作『Peder』はどのようにして生まれたのか。そこに込めた思いを紐解くべくメール・インタビューを敢行した。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Interpreter:Aoi Kurihara
Photo by Michael Drummond
――コロナ禍のなか、どのように過ごしていますか?
Lido:大部分は多くの音楽を制作して過ごしています。それから、ガーデニングをしたり料理もしていました。
――今作『Peder』は『星の王子さま』(The Little Prince)からインスピレーションを受けたのことですが、あなたと『星の王子さま』との出会いは?
Lido:私が子供の時、母親がこの本を見せてくれて、それ以来お気に入りの本になりました。この本を読み直す度に影響を受けています。
――アルバム『Peder』の制作に向けて動き始めたのはいつ頃なのでしょうか? また、何か特定のきっかけなどはありましたか?
Lido:いくつかの曲のアイディアは3年前からありました。でも、アルバムの大半については2年前にマリブとロンドンで6ヶ月以上かけて制作されたものです。音楽を作るにあたって、私の心にあったある特定の温かく素朴な気持ちからインスパイアされました。
――『Peder』はあなたの本名に由来していますよね。本作は、あなたにとってこれまでで最もパーソナルな作品という位置付けになるのでしょうか。
Lido:音楽的には、イエス。このアルバムは私が音楽を愛していること、私が音楽ファンであることの全てを表しています。でも、ストーリーは私の他の作品ほどパーソナルではないかなと思います。
――今作は“宇宙船で生まれた男の子が、音楽が存在しない環境の中で育っていく様”をコンセプトとしているそうですが、このようなコンセプトが生まれてきた経緯を教えて下さい。
Lido:『星の王子様』とノルウェーで育ってきたことからインスパイアされました。私は小さな人里離れた町で育ったので、子供のころはアメリカの音楽からは離れた銀河系にいるような気分だったんです。
――プロデューサーのHeavy Mellow、PRETTYMUCHのBrandon Arreaga、Mulherin、JoJo、Col3trane、Ebenezer、Bearfaceなどが参加しているようですが、それぞれレコーディングはどのように行いましたか?
Lido:どのレコーディング・セッションもユニークなプロセスでした。ロンドンでCol3trane、Ebenezerとレコーディングし、他はLAの様々なスタジオでレコーディングを行いました。私は一緒に音楽を作れる才能豊かな友人がたくさんいて、とても幸運だと思います。
――今作で一番印象に残っているコラボレーション(制作プロセス)を教えて下さい。
Lido:このプロジェクトをミックスしたTony Masseratiとのプロセスは素晴らしかった。このプロセスの間、彼から学ぶことはとても多かったです。
――3月に先行リリースされた「Postclubridehomemusic」では<Life feels like a stampede>(人生はスタンピードのようだ)、<Oh, why am I living so fast?>(なぜ、私はこんなにも生き急いでいるのか)といったリリックが印象的です。これはあなたが実際に感じている感情でしょうか。もしそうならば、このような考えに至ったのはなぜでしょう?
Lido:その通りです。時々、私たちはみんな世界に少し圧倒されているように思います。私の歌詞は全て、大部分が自分のリアルな気持ちや感情に由来しています。この曲は夜遊びした後に家に帰る途中で、頭の中をかけ廻るような考えについて書いたものです。
――あなたは現名義にて、2013年頃から“フューチャー・ベース”のジャンル/シーンで注目を集めてきました。今作も含め、近年のあなたの作品からは徐々にフューチャー・ベースの要素は鳴りを潜めていますが(2018年発表の2部作の『I O U』では少しだけその要素が垣間見れますが)、今のあなたの視点から“フューチャー・ベース”というサウンド、ジャンルはどう映っていますか? もしくは、当時(2013〜2014年頃)のフューチャー・ベース、SoundCloudシーンを振り返ってみて思うことはありますか?
Lido:エレクトロニック・シーンやフューチャー・ベースのジャンルは今でも大好きです。でも、私が探究したい音楽ジャンルは他にもっとあって。ただ、あの時代は私に新しい音楽の世界を紹介してくれ、音楽制作について多くのことを教えてくれました。
――――活動初期から今に至るまで、あなたのサウンドの特徴のひとつに個性的なボイス・サンプルの使い方が挙げられると思います。自分自身、もしくは他者の声を細かく刻んだり、もしくはピッチを変化させたりすることは、ただ必要なサウンドを求めた結果生まれたのでしょうか。それともそこには他の意図などが含まれているのでしょうか。
Lido:様々なジャンルで様々なクリエイティブやボーカル・サンプルを切り刻むミュージシャンからインスピレーションを受けているからだと思います。私にとって、サンプリングはとても楽しい行為です。サンプルして新しい音楽に組み込む楽器のひとつとして、自分の音声を使うことも大好きなんです。
――Lidoとしての今後の展望を教えて下さい。
Lido:友人と一緒に音楽を作り続けることにワクワクしているし、多くのアイディアと進行中のプロジェクトがあります。でも、将来がどうなるのか、どのプロジェクトが最初に出てくるかはわかりません。
【リリース情報】
Lido 『Peder』
Release Date:2020.09.18 (Fri.)
Label:Because Music / Caroline International Japan
Tracklist:
01. Yellow Bike (intro)
02. Rise
03. Please Fasten Your Seatbelt
04. Grouptext
05. Layaway
06. 5 Songs (interlude)
07. Part Time
08. University
09. How To Do Nothing
10. BEST4U
11. Postclubridehomemusic
12. Pure/Santiago