華やかで、軽快なラテンのリズムを感じさせる――それ一辺倒でないのがフランスの良いところ。時に物寂しく、憂いを帯びた表情を見せてくれるその音楽文化は、イギリスやドイツの奇才・天才たちと比べても、決して引けを取らないと私は思っています。
でもそれは、コールドウェイヴの象徴するParisに限ったお話……? いえ、そんなことはありません。今回ご紹介するVenin Carmin(ヴナン・カルマン)は、フランスの南東部に位置する都市・Lyonを拠点に活動するバンドで、どちらかと言うとラテン気質が強いこの街においても、その内省的なサウンドで静かに人々の心を熱くしています。
7月11日(火)新宿Zircoにて火蓋が切られるジャパン・ツアー、これは見逃せませんよ。
Dark 80’sファンの心を奪うのに、ものの5秒もあれば十分と言えるベースの音色とテンポ感は、3rdアルバム『Faith』の頃のThe Cureを彷彿とさせますね。この金属的な唸りとともに、ボーカルも兼務するCamille(カミーユ)のパンキッシュな歌唱がオーディエンスの体動を煽ります。そのベース・ラインやリードと絡み合い、時に駆け引きするように鳴るシンセを操るのはFrançois(フランソワ)とValentine(ヴァロンティン)。彼女の手元で弾けるパッドの電子音もまた、80’sダンス・ミュージックに欠かせません。ちなみにFrançoisは、Castrati.というデスロック・バンドでフロントに立つ存在でもあります。
前衛的でパワフルに歌い通すのかと思いきや、楽曲によってはウィスパー・ボイスで。繊細さと”暴力”を映し出すそのコントラストの前に、自らの嘆きもすべて吐露してしまいたくなります。ただ、それには及びません。3人の織りなす音楽はまさに”ダークポップ”と呼ぶに相応しく、私たちが閉ざした未完了の感情をも昇華させてくれます。ポスト・パンク/ダーク・ウェイヴ/ゴスなどのもたらすカタルシスに加えて。
また、バンド名にある”venin”は毒や毒液という意味ですが、それはまさに「使いよう」と言ったところで、その辺りも”cure”と近いかもしれませんね。
私は以前Lyonに住んでいたので実際に彼女たちのライブを観ましたが、文句無しにカッコいいです。知ったキッカケは、トルコが生み出した現代最高峰のゴス・バンド、She Past Away(シー・パスト・アウェイ)のLyon公演。その対バンが彼女たちで、かなり盛り上がっていました(上の写真はその時の様子です)。ちなみにココに限らず、Lyonではたくさんのライブハウスやバーが川面に浮かぶボートの中にあるんです。初めて訪れた時は驚きましたが、なんかイイですよね。
なお、港町・Marseilleでは、日本から世界へ活動を拡げ、アンダー・グラウンドを賑わすPLASTICZOOMS(プラスティックズームス)と宵を共にしていました。
という訳で、自信を持ってお勧めできるライブバンドです。Venin Carmin、ぜひ。
【イベント情報】
Venin Carmin Japan Tour 2017
7月11日(火) @ 新宿 Zirco Tokyo
7月12日(水) @ 立川 Babel
7月13日(木) @ 阿佐ヶ谷 Gamuso
7月14日(金) @ 横浜 7th Avenue
7月15日(土) @ 静岡 Numazu Poco
■ツアー詳細:https://www.farchannelrecords.com/single-post/2017/06/21/Venin-CarminFRANCE-JAPAN-TOUR2017
【リリース情報】
Venin Carmin 『Glam is gone』
Release Date:2015.06.20 (Sat.)
Label:Seja Records
Tracklist:
1. Pure & Alive
2. Mirror dirty mirror
3. Suckers (are you?)
4. The Perfume, The Poison
5. Fade & Forget
6. Drawing down the moon
7. All you got is the sun
8. July ain’t summer
9. The Spiral Dance
10. Glam is gone