RBMA TOKYO Participant Special Interview

Alejandro Paz

「僕の音楽や歌詞にとって、愛、リスペクト、人を思いやる気持ちは重要な要素だね。」— Alejandro Paz インタヴュー

ライトアップを最小限に抑えたほぼ暗闇ともいえる旧東京電機大学跡地の地下に、国籍の異なる5人のRed Bull Music Academy参加生が登場したパーティー『Terabyte Transfer』は、とんでもなく盛り上がった。一番最後にドイツ人のPalms Traxがプレイしている時には、テンションが上がり過ぎたアカデミー生とスタッフたちがDJブースの側でリンボーダンス大会を繰り広げたほどだ(僭越ながら、僕もAlejandro Pazに誘われて1度リンボーさせていただいた。確か、Just Blazeが上手だった)。

ニューディスコをベースにプレイした長身のノルウェー人のOlefonkenと、ディスコ~ハウスをプレイしたハンサムなフランス人のLa Mverteも良かったが、ラストの異常な盛り上がりの起爆剤になったのはチリ人のAlejandro Paz(アレハンドロ・パス)だった。トラックの隙間から時々聴こえるスペイン語やパーカッションがフロアに暖かなラテンの風を吹き込み、彼のヴォーカルが更なる熱を加えた。ライヴスタイルは、Matias Aguayoに少し似ている。そのMatias AguayoやRebolledoといった南米産ダンス・ミュージックのトップ・アーティストを擁するレーベル〈Cómeme〉が目をつけたのもよくわかるラテンなハウス・サウンドだが、彼の場合はそれに加えて、パーカッションやシンセ、ディレイやエコーによって、Hot ChipやHoly Ghost!もしくは〈100% Silk〉のアーティストが持っているようなロウなフィーリングを閉じ込めている。そしてこの日の、マイクを持ってフロアに降りて、軽快にステップを踏んだり、飛び跳ねながら、「El House」を熱唱する姿はJames MurphyやNic Offerさながらだった。……と例えるのは少し言い過ぎかもしれないが、彼から感じられるインディー・バンドのダンス性みたいなものは、『Terabyte Transfer』に出演した他の4人や〈Cómeme〉のアーティストたちと一線を画する良い要素だ。

Alejandro Pazにインタヴューをしたのは後日。それも最終課題の制作に追われてスタジオに入っている時だったが、彼はスペイン語訛りの英語で熱心に答えてくれた。

Alejandro Paz Interview

(Interviewer & Header Photo : Hiromi Matsubara)

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

ー出身はどちらですか?

チリのサンティアゴ・デ・チレ。“サンティアゴ”って省略して言うんだけど、「サンティアゴ・デ」って付く地名がたくさんあるから、いつも正式名称で答えてるんだ。

ー音楽との出会い、また音楽を始めたきっかけは何ですか?

僕が幼いころ、休みの日に家族で過ごしている時に父親がクラシックのレコードをよくかけててね。一緒に聴いているうちに、音楽の複雑な美しさはどういう仕組みでできているのかってことに興味が湧いたんだ。幼い時は音楽の色んなことにいつも驚かされていたね。それから歌を歌い始めて、ギターを弾くようになって、その後にクラシックを勉強するための学校に行って、音楽好きの友達が増えていって、人と一緒に音楽を作り始めて……って、だんだんとパズルが完成していくように色々なことを経験したんだ。それで、音楽、友達、コミュニティってどんどんサークルを広げていくうちに、ある時エレクトロニック・ミュージックを見つけて、そしてクラブが特別な場所だということを知ったんだ。
クラブに来る人はみんな“愛”という名のもとに集まっていて、その場で愛を分かち合っている仲間だから、何をしても自由だし、ゲイでもレズでも薬物中毒者でも誰が来ても何の問題もなく受け入れられるんだ。社会には決まりごとが多くて、チリではうるさくしたり叫ぶことはできないし、ドラッグも認められてない。でもクラブは何をしても自由だから、特別な、素晴らしい場所なんだ。

©Yusaku Aoki / Red Bull Content Pool

©Yusaku Aoki / Red Bull Content Pool

ーでは、あなたが作品やDJを通して表現したいのは“愛”ですか?

その通り。Loveは色んな形で表現できる思うんだ。例えば、誰かとずっと一緒にいることで愛を感じ合えることもある思うし、人のことを気にかけたり、人のために何かするのも愛情あってのことだと思うしね。僕は愛するが故に、時に批判的なことを音楽に取り入れることがあるんだ。例えば、経済体制。チリは経済があまり安定していなくて、お金が払えないと教育も医療も受けられなくて、全て自己負担なんだ。お金をたくさん払わないと良い教育を受けられないとかっていうのは、僕は不公平だと思うし、一部の人間のわがままでしかないと思うんだ。「Free」っていう曲の歌詞は今の話が元になっていて、非常にシンプルな意見なんだけど、「僕は自由になるためにお金を払いたくない」と歌っているんだ。僕の音楽や歌詞にとって、愛、リスペクト、人を思いやる気持ちは重要な要素だね。ステージに立つ時も意識しているよ。こないだのイベントの時も、僕だけが何かを示したというよりは、僕のDJでみんながアクションを起こしてひとつになることで、まさに理想的な愛の形を作れたと思うんだ。

ー影響を受けたアーティストを教えてください。

Jorge González(ホルヘ・ゴンザレス)だね。チリのシンガー、ソングライターで、僕が大好きなLos Prisioneros(ロス・プリシオネロス)っていう3人組バンドの1人でもあるんだ。チリは17年間、アウグスト・ピノチェトによる独裁政権だったんだけど、その中で唯一彼らが市民の声を音楽にして代弁していたんだ。彼らは勇気があるし、僕に大切なことを教えてくれた重要なバンドなんだ。

ーエレクトロニック・ミュージックのアーティストで影響を受けた人はいますか?

たくさんいるんだけど、Ralphi Rosario、Mario Diazとかラテンの人たちのシカゴ・ハウスと、ガレージ・ハウスだとLittle Louie Vegaとかかな。ほとんどのラテンの要素が含まれているハウスに影響を受けたと思うよ。あと、Liaisons Dangereuses(リエゾン・ダンジェルーズ)やDAFのガビ・デルガドの、クレイジーな音楽に強烈な政治的メッセージを込めていて、それをスペイン語で歌われているエレクトロニック・ボディー・ミュージックだね。スペイン語で歌われていると、彼らが僕に語りかけているような感覚になるんだ。いま挙げた2つの音楽が表現していることは、Los Prisioneros、Pinochet Boys(ピノチェット・ボーイズ)、Upa!(ウーパ)といったバンドが歌っていることと共通しているんだよ。

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

ーRBMAに参加して、2週間過ごしてみて学んだことは何ですか?

人と繋がるのには本当色んな形があるということを学んだね。例えば、フランス人のアレクサンドル(La Mvrerte)とは好きな音楽が同じということで繋がることができて、ラウロ(LAO)やミッキー(Mickey de Grand IV)とかラテン系の参加者同士は作っている音楽はそれぞれ違うんだけど、持ってる文化が一緒だから彼らとも繋がれるしね。あと、日本人が持っている人を思いやる気持ちは凄い素敵だと思ったし、こうして一緒に活動できて嬉しかったし、影響されたよ。


Alejandro Paz : Website / Twitter / Facebook / SoundCloud

Alejandro Paz ライヴレコーディング@Terabyte Transfer


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