イースト・ロンドンを拠点とするグライムMC、Trimが15年近いキャリアにして初となるアルバムを遂に今週末、James Blake主宰でお馴染みのレーベル〈1-800 DINOSAUR〉からリリースする。今回はそのアルバム『1-800 DINOSAUR Presents Trim』から先行公開されているJames Blakeプロデュースのシングル、「RPG」を紹介。
少なくともJames Blake名義の楽曲では聴けないような熱を持ったバウンシーなトラックは、Trimのバースに合わせるかのように後半に進むにつれ音数が増え混沌とした雰囲気に。もちろん不規則なビートに格闘するTrimも、トラックの奇抜さに埋もれることのないハードなフロウを展開している。
また、先日公開されたMVはBasement Jaxxの「Back 2 The Wild」も手掛けていたNatalia Stuykによるもので、楽曲の先鋭性をより際立たせているようだ。
グライムの本拠地イースト・ロンドン出身のTrimは、グライムのゴッドファザー、Wileyを初め、かつてはSkepta、Dizzee Rascal、Tinchy Striderなど大物MCも在籍したグライム・クルー、Roll Deepのメンバーとして2003年に活動を開始し、数枚のアルバムやミックステープに参加した。2007年にクルーを離れてからは、前述のMCたちが半ばセレブ化するのを余所に、SkreamやMark Pritchardと共演するなど、よりインディペンデントな形でのリリースを重ね、2012年、James BlakeとTrimbal名義でのEP『Confidence Boost』を発表し自身の新境地を拓いていた。
一方の〈1-800 DINOSAUR〉は2013年にJames BlakeがDan Foatと共に設立したが、フル・アルバムのリリースはこれが初めてとなる。本作ではJames Blakeの他にもAirhead、Dan Foat、 Happa、Klaus、 BoothroydやBullionといった、これまでも〈1-800 Dinosaur〉から作品を発表してきたアーティストが各楽曲でTrimのラップのビートを手掛けているが、その様はまさに”グライム x 先鋭的なビート”という化学反応をアルバム全体を通して展開しているかのようだ。インストグライムのムーブメントがそうだったように、こうした作品がグライム・シーンも刺激するとより面白くなるかもしれない。
「RPG」と両A面としてリリースされたAirheadプロデュースの、「RPG」とは対照的に全編に渡って音数は少なめな「Man Like Me」も合わせてどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=Znl38ekImpQ
また、James Blakeといえば新作『The Color in Anything』では現行のヒップホップ・R&Bからの影響も感じられたが、今夏中のリリースが噂される西海岸のラッパー、Vince StaplesのEP『Prima Donna』のプロデュースも行っており、相変わらずの型にハマらない活動域の広さに改めて才能を感じてしまう。
Trim 『1-800 DINOSAUR Presents Trim』
Release Date: 2016.07.29
Label: 1-800 DINOSAUR
01. Stretch (Airhead)
02. Before I Lied (Happa)
03. Man Like Me (Airhead)
04. Waco (Airhead)
05. Among The Living (Bullion)
06. RPG (James Blake)
07. White Room (Boothroyd)
08. 13th Apostle (Dan Foat)
09. Seeker (Klaus)
10. No Manners (Boothroyd)
()内はトラックを手掛けたプロデューサー
(Text By Daichi Yamamoto)