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特別対談 / sankara × DJ HASEBE


4度目のコラボ作を上梓したsankaraとDJ HASEBE。コロナ禍での活動や意識の変化、そしてそれらが反映された新作について語ってもらった

2021.04.06

ラッパーのTossとシンガーのRyoからなるsankaraが、DJ HASEBEとのコラボ曲「Best Distance」を3月24日(水)にリリースした。

昨年よりニューリーと韓国出身のベーシスト・DONGGEONによる別名義・Rough Talkerを迎えた対になる連作「HIDE AND SEEK」「hide and seek」、そして大先輩に当たるMACKA-CHINとコラボした「Closely」など、シングルをコンスタントに発表してきたsankara。また、コロナ禍においても新イベント『SIMCITY』を立ち上げるなど、精力的な活動を展開している。

今回は「Best Distance」で4度目のタッグとなるDJ HASEBEとのsankaraの対談を実施。90年代から国内のヒップホップ/R&Bシーンを見てきたベテランとの対話を通して、sankraの個性を紐解くことに。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Assistant:Ai Kumagai
Photo by 遥南碧


「色々なトラックを乗りこなせる柔軟性」――DJ HASEBEから見たsankaraの特性

――sankaraのおふたりと、HASEBEさんが最初にお会いしたのはいつ頃なのでしょうか。

Toss:最初はkoe(東京・渋谷hotel koe tokyo)のイベントでしたっけ?

HASEBE:いや、最初はミーティングじゃないかな。

Ryo:あ、そうですね。最初に「Callin」(2019年発表のシングル曲であり、翌年リリースのEP『SOP UP』にも収録)でダメ元でオファーさせてもらって。それで制作のミーティングをkoeで行いました。

HASEBE:そんなハードル高くないですよ(笑)。知人を通してお話を頂いて。

Toss:そのミーティングで快諾してくれて、僕らはもうガッツポーズですよ。

HASEBE:その時は「よろしくお願いいたします」という感じで、制作に関するお話をしたという感じで。それ以降、イベントとかでもお会いするようになって、徐々にふたりのキャラクターがわかってきたという感じです。

――HASEBEさんからみたsankaraの印象は?

HASEBE:ラップ & ボーカルのバイリンガルなスタイルで、英語の割合も多い。そのバランス感がここ最近だと新鮮だなと思いました。90年代後半辺りにはそういグループも多かったのですが、そこから少し落ち着いて。最近だと特にラッパーは日本語を軸としている人が多いなと感じていて。

――sanakraのおふたりにとって、DJ HASEBEさんはどういう存在でしたか?

Toss:僕らにとってはまさにレジェンドっていうイメージで、そんなHASEBEさんにオファーできるってなったときはめちゃくちゃテンション上がりました。その後イベントで乾杯させてもらって、一緒にお酒も飲んで、喋って。シンプルに嬉しさしかないです。ただ、その分いい曲を書いて認めてもらわないとっていう緊張感もありましたね。

Ryo:背筋が伸びる思いというか。言ってしまえば“テレビの人”みたいな感じ。遠くから眺めていた方と、十何年経って一緒に曲を作れる。こんなワクワクすることはないですよね。

Toss:あと、周りからの反響も大きかったですね。同世代で昔一緒に音楽をやっていた仲間から「HASEBEさんとやってるの!?」って言われたり。若い時、僕らはとにかくずっとクラブにいて。まだ先輩のレコード持ちとかをしているような時代、クラブの現場でゲストとして出演しているHASEBEさんを遠くから眺めていて。とにかく手が届かない存在でした。

――そんな憧れの存在であるHASEBEさんとの、最初の打ち合わせの感想は?

Ryo:シンプルに……めちゃくちゃいい人だな、と(笑)。

Toss:そう、めちゃくちゃ優しい(笑)。

Ryo:僕らの若い頃のクラブの先輩って、怖い人が多くて。正直、HASEBEさんに対してそういうイメージも少しあったんです。それこそHASEBEさん世代の人たちって、ちょっと言い方悪いですけど、いかつい人とか怖い人多いじゃないですか。

HASEBE:確かにそんな感じだったかも。でも、みんな歳取って丸くなっていくから(笑)。

Ryo:お会いできたのが今でよかったです(笑)。

――最初のオファーで制作したのが、2組の初コラボとなる「Callin」ですよね。あの楽曲がどのようにして生まれたのかを教えてもらえますか?

HASEBE:最初はほぼお任せ的な感じでオファーをもらったので、まずは当時の自分のビート感と、sankaraに合うテイストの重なる部分を探りながら作っていった記憶があります。個人的に、sankaraって色々なトラックを乗りこなせる柔軟性があるんじゃないかと思っていて。なので、言い方悪いかもしれませんが、こちらがクオリティの高いビートを渡せば、後はどうにでもなるだろうという考えもありました(笑)。

一同:(笑)。

Ryo:そう言ってもらえて嬉しいです(笑)。

――sankaraのお2人は、トラックを受けてからリリックのテーマなどを膨らませていったのでしょうか。

Ryo:「Callin」のテーマは、HASEBEさんからいただいたんじゃなかったでしたっけ?

Toss:恋愛だけでなく、家族や友情、仲間やコミュニティなども含めた大きい括りでの“愛”

HASEBE:あ、そうだったね。サンプリング・ネタやオケを何回も聴き返しているうちにインスパイアされて、ざっくりとしたテーマが見えてきた感じです。

Toss:僕らはそれまで、ラブソングだったり、そういった“愛情”、“LOVE”みたいなテーマを敬遠していたところがあったんですけど、それをHASEBEさんから提示してもらえたことで、“LOVE”な曲を書く理由ができた。変な言い方になっちゃうんですけど、“LOVEの伝道師”から「LOVE書かない?」って言われたら、そりゃ書くでしょ! っていう(笑)。

HASEBE:“LOVEの伝道師”って(笑)。

Toss:あくまで僕らの勝手なイメージです(笑)。それまでは、結構ミニマムなテーマが多かったんです。自分たちのことだけを見ているというか。“頑張っていくっしょ!”みたいな。そんな中、HASEBEさんからテーマを頂いて、作品の幅が広がったように感じました。実は今、もう1曲作っているのですが、その作品に関してはHASEBEさんがトピックをくれて、それに対して僕らが“こんな感じでどうですか”と相談するという感じで進めています。

HASEBE:「2100」、「Best Distance」ともう1曲。3曲分のオファーを頂いた中で、僕から提案したり、2人からアイディア出してもらったり、色々な方法を試しながら作っています。流石に3曲同じ方法で作るっていうのも芸がないので、せっかくだったら毎回新鮮な感じでやりたいなと。

――「Callin」でそれまであまりやってこなかったテーマに挑戦したことは、sankaraのおふたりにとってもターニングポイントになりましたか?

Toss:さっきHASEBEさんがおっしゃっていた“柔軟性”、何にでも合わせられるという部分は、僕らにとっては褒め言葉でもあり、同時に悩みの種でもあったんです。でも、だからこそ僕らにとってはトラックの選択がとても大事で。テーマ云々というよりは、カッコいいトラックにカッコよく乗せていく、それをがむしゃらにやってきた感じ。なので、あまり新しいテーマに取り組んだからといって、自分たちが変化したという感覚はなかったですね。

Ryo:でも、確かにいいチャレンジにはなったと思います。自分たちのことにしかフィーチャーできていなかったおれらは、素直に“愛”を歌えた。それは間違いなくHASEBEさんのトラックのおかげですし。

HASEBE:僕の過去作では露骨にエロティックな曲とかもいっぱいあったから、その“愛”を違う方向性に持っていけたので、僕にとってもおもしろい試みになりました。

――2組にとっての次のコラボは、HASEBEさんのアルバム『Wonderful tomorrow』(2020年)収録の「One Wish」ですよね。

HASEBE:はい。DJ活動30周年を記念したアルバムということで、ここ3年くらいの作品も入れつつ、新録も入れようと思って。せっかくだったらここ最近絡んだ人たちに入ってもらいたいなという思いがあって、sankaraにもお願いした感じです。テーマに関しては、コロナ禍に影響された部分も大きいのですが、sankaraには夜の変わりゆく街や自分の居場所、そういったものをリリックに落とし込んでもらいつつ、“また一緒に踊れるときがくるよ”というようなメッセージ性の曲になったと思います。

Ryo:リリックはすごく書きやすかったですね。今おっしゃったように、まさに今な内容だったので。

Toss:それに加えて、僕らだけでなく、HASEBEさんと一緒にそういうメッセージを発信できたことに意味があったというか。こういったメッセージって、それを発信するアーティストの立ち位置などで説得力が変わってきてしまうと思うんです。「One Wish」ではHASEBEさんの胸をお借りできたので、すごく書きやすかったですね。僕の場合、コロナ禍である現状も考慮しつつ、同時に過去の話――昔、自分たちがクラブで遊んでいたときのことにも想いを馳せながら書いたのを覚えています。

HASEBE:この前のDJ配信でもプレイしたんですけど、この曲の持つメッセージ性ってまだまだ今の世の中で機能するというか、刺さるなって思っていて。たぶん、今後もガンガンかけていくんじゃないかなと。

Ryo:嬉しいですね。

――続いて昨年11月にリリースされた「2100」は、タイトル通りSF的世界観のコンセプチュアルな曲ですよね。

HASEBE:あれはsankaraからもらったアイディアというか、リファレンスから膨らませていきました。一緒に飲みに行ったときに話していた僕が好きなSF映画だったり、そういった宇宙的なイメージと、今の時代性が繋がったというか。

Ryo:恵比寿の飲み屋ですよね(笑)。そこに僕らが最近聴いている曲だったり、気に入っているテイストの曲をリファレンスとして送って。それをSF的な世界観で料理してもらったっていう感じです。

――こういったファンタジー的な世界観の曲やリリックも、これまでのsankaraにはなかった要素ですよね。

Ryo:初めてでしたね。

Toss:恵比寿で飲んでテンション上がっちゃって、そのままのテンションでリリックを書いたら思いっきりSFな曲になってしまった。たぶん、Ryoは最初驚いたんじゃないかなって。

Ryo:あまりコロナ禍のことを意識しているつもりではなかったんですけど、やっぱり体は正直で、今の現状が反映されたリリックになりました。ただ、そういった自分の気持やメッセージを、ファンタジー的な世界観に落とし込んで描くことができたと思います。


コロナ禍で起きた“距離感=Distance”の変化

――では、現状での最新作となる「Best Distance」についてもお聞きしたいです。タイトルにも「Distance」という言葉があるので、最初はコロナ禍のことが頭によぎりつつ、リリックを読み込むとそれだけではない。一聴するとラブソングと捉えることもできるし、多様な受け取り方ができるなと思いました。

HASEBE:ストレートなラブソングはちょっと書きづらいけど、今おっしゃったようにパッと聴いた時にラブソングのように感じられる作品がほしいなと思って。今、大切なものだったり、守りたいものを女性に例えて描くのはどうか? っていう提案を僕からしました。

Toss:そういったリリックの書き方はめちゃめちゃおもしろいなと思ったし、「One Wish」からの地続きなメッセージ性もある。

HASEBE:「One Wish」では切なさだったり、喪失感が漂いつつも、そこに希望がちょっと見える、みたいな感じだったんですけど、そこからさらにポジティブな要素を増やしたかった。

Ryo:パッと聴きラブソングって思えてもらえたならもうこっちの勝ちですよね。

――すごく野暮な質問ではあるのですが、sankaraのおふたりは実際にどういった物事に想いを馳せながらリリックを綴ったのでしょうか。

Toss:コロナ禍になって、色々な意味での距離感=Distanceが変化したじゃないですか。それこそちょうどこの前、ライブハウスでとある収録ライブをしたんですけど、アーティストだけでなくリスナーのみんなもライブハウスやクラブとの距離感が大きく変わったと思うんです。そういった自分の大切な場所や物事に対して、憂うよりも今の距離感で楽しもうよっていう、そんなイメージで書いた曲ですね。自分にとっての大切な存在を、曲中では女の子として描いている。HASEBEさんがおっしゃったように、“最終的な落としどころはポジティブに”っていうのは打ち合わせのときに決めていて。この状況が収束したら、そのときはおもいっきり楽しもうぜっていうピースな内容です。

Ryo:僕も同じく。フックでは<優しい音で kiss me>って歌っているんですけど。それも“音楽”を女性に例えた表現で。Tossが言っていたように、今はライブハウスやクラブになかなか行きづらい状況だけど、それでも音楽に対する気持ちは変わっていないよと。そういう音楽との距離感を恋愛に当てはめています。

――こういったリリックの書き方は、sankaraにとっては得意な手法と言えますか?

Ryo:そうですね。比較的多いかもしれません。

Toss:暗号的な仕掛けというかね。こういう表現方法って、アーティスト同士でも競争心があるというか、「おれらの方が上手く表現できてるっしょ」みたいな(笑)。ここのふたり(TossとRyo)の間でもそういう負けたくないっていう気持ちはありますし。

Ryo:でも、「深ぇ〜」って言われたい人と、シンプルに言った方が強いっしょっていう人とで意見が分かれたりもするんだよね。

Toss:あと、本当のテーマをカモフラージュし過ぎて、全然伝わんなかったりね(笑)。

――そういったリリックにおける比喩表現のバランスって、おふたりの間では話し合ってバランスを取っているのでしょうか?

Ryo:特別話し合うわけではなく、それぞれが勝手にバランスを取っているんだと思います。Tossがわかりにくかったら、僕がわかりやすくするし、その逆のパターンもある。延々と何の話をしているのかわからないと、曲として成り立たないと思うので。ただ、どちらかというと僕の方がわかりやすくすることが多いですかね。

――リリックを書く段階で、お互いの意見は出し合いますか?

Toss:書いている途中ではあまり相談しないかもしれません。でき上がったものをお互い共有してみて、意見を言い合う、みたいなパターンが多いかなと。

Ryo:仮録りしたデモに対してフィードバックを返しますね。「ここいいね」とか「ここは変えた方がいいんじゃない?」とか。

――なるほどです。では、HASEBEさんは「Best Distance」のトラックに関して、どういったイメージで組んでいったのでしょうか。

HASEBE:BPMは105くらいで、これも「One Wish」と繋がるように意識しました。最初、80年代みたいなシンセ使いのイメージはあって、単純に今の自分の中のブームというか、使いたい音色感に素直に従いつつ、なおかつsankaraにとっても新鮮なトラックになることを狙いました。80年代後半から90年代、ディスコ〜ニュー・ジャック・スウィング的なサウンドともリンクしつつ、それを今っぽくアップデートしたらどうなるだろうかっていう感じで制作しました。

――煌びやかな音使いが印象的な反面、意外と抜くところは抜いた、シンプルな構成もお見事だなと思いました。

HASEBE:そうですね。一時期、自分の中でも音数が増えていったタイミングがあったんですけど、今はもうちょっと引き算的な作りが多くなりました。(DTM上の)トラック数も少なめにして、音色をどう動かすか。その変化でいかにグルーヴを作るか。そういったことを意識していますね。

Ryo:引き算の美学ですね。

HASEBE:足し算より引き算の方が自分としては難しいんですけど、でもその方が今の自分にとっては濃いトラックが作れるというか。生音だったら音数少なくても成立しやすいんですけど、それをいかに打ち込みで実践していくか。それが楽しくてやっている部分もあります。

Ryo:昨年のHASEBEさんの作品から、80’s感、あとはシティポップ的な要素だったりを感じていたので、なんとなくは想像できていたんですけど、それでも最初にトラックを聴いたときは「あ、これは新しいかも」って思いました。今までのクラブ・サウンドっぽい感じでもなく、僕らもこれまでやったことがない感じ。

HASEBE:洋楽の80’s感と邦楽のシティポップ、あとは単純に歌謡曲的な要素も自然と通ってきているので、そういった展開、メロディは意識せずとも出ちゃうんですよね。ただ、昔はそういう要素を極端に拒絶して、ハードコアでサグいものを目指していた。それが時代の流れとともに変化してきて。今は自分の中にある要素を全て出して、色々な組み合わせを試した方がおもしろいんじゃないかって考えています。あり得ない組み合わせだったり、一見ミスマッチなチョイスの方が今っぽいサウンドになったりもするし。

Ryo:そこに寄っていったわけではないんですけど、僕ら的にもちょっと日本語増やしてみようかっていうタイミングだったんですよね。そういった自分たちの変化にも今回のトラックはフィットしたというか。普段だったら英語にしそうな箇所も、今回は敢えて日本語にしていたり。結果として、普遍的な邦楽っぽさも出ているんじゃないかなと。

Toss:今までは無意識に英語と日本語の割合を同じくらいにしていた部分があるんです。でも、最近になってその割合も曲によって変化させていいんじゃないかって思うようになって。曲やリリックのテーマによって最適なバランスを探って、最終的にカッコいい曲に仕上げる。そんな話をしていたタイミングだったんです。

――では、今お話できる範囲で、次に控える曲についてもお聞きしてもいいですか?

HASEBE:作業的には僕が今止めてしまっていて(笑)。

一同:(笑)。

HASEBE:「Best Distance」の流れを汲んで今度はスロー・ジャムはどうかなって。80’s後半から90’sのR&B――BabyfaceやR. Kelly、Guyみたいなベッタベタな感じで提案しつつ、ふたりからもらったリファレンスを聴いてみると、「あ、こういう感じも確かにスロー・ジャムだな」っていう発見と、ジェネレーション・ギャップもあって(笑)。

Toss:僕らはMasegoとかLouis Mattrsなど、新世代のR&B〜ソウル・シンガーをリファレンスとして挙げさせてもらったんですけど、でも、今おっしゃったような80’s〜90’sのR&Bは元々僕らのルーツにもあって。Ryoなんて高校生のとき、カラオケでBabyfaceとR. Kellyめっちゃ歌ってた記憶がある。

Ryo:はい、大好きです。

HASEBE:そうそう。なので、僕が元々持っていたスロー・ジャムと、彼らから提示された今のサウンドを上手く混ぜられたらなと考えつつ、ちょっとお待たせしている状態です。

Ryo:僕らはもうワクワクして、餌もらう前の犬みたいな感じで待機しています(笑)。

Toss:ドロドロのスロー・ジャムもおもしろそうですけどね。めちゃめちゃ低い声でラップしたり(笑)。

一同:(笑)。

――トラックがまだできていないということは、リリックのテーマなどもこれから考えるっていうことですよね。

Toss:そうですね。トラック送ってくれる段階で、いつもHASEBEさんがテーマとかをある程度まとめて提案してくれるので、それを受け取って、僕らなりに噛み砕いていく。

Ryo:HASEBEさんがトラックと一緒にいつも書いて送ってくれる文章も個人的には楽しみで。イメージしているテーマに対しての解説なんですけど、時には短編小説みたいにもなっていて。

HASEBE:箇条書きみたいな場合もあるんですけど、パっと思い浮かんだストーリーというか、情景だったりを綴ることもありますね。4、5行くらいの文章をババっと送ったり。

Toss:でも、ちゃんとサンプリング・ソースについても書いてくれたりして。これはこういう曲からサンプリングしていて、こういうイメージの曲ですっていう、マジでコラムみたいな感じの文章なんです。

HASEBE:頭の中にあるイメージをまとめられないから、とりあえずバッて書いて渡しちゃう感じ。長々と書いちゃう場合もあるし、僕からの説明は最低限で、あとはふたりに考えてもらう、っていうケースもある。


「止まらずに、走り続ける」

――では、HASEBEさんとsankaraの今後の活動についてもお聞きしたいです。これまでのお話にも何度も出ていますが、去年からコロナ禍が続いており、未だに先行きの見えずらい世の中ですが、今年はどのような活動を視野に入れていますか?

HASEBE:では僕から。室内よりはリスクが低いとされている野外イベントなど、人数制限をかけたり、感染症対策を徹底した上での大規模イベントの開催も徐々に見えてきたのかなと思っていて。そういうイベントなどは機会があれば前向きに出演させてもらいたいですね。あとは去年から始めたDJ配信も続けていきたい。配信の準備から本番、スイッチングまで全部ひとりで行っているのですが、今は2カメのシステムに落ち着いていて。ただ、今後も試行錯誤しながら、ひとりでどれくらいアップデートしていけるかにも注力したいです。

HASEBE:制作面では引き続き色々な人と絡んで行きたいなと思っていますし、常に作っていないと感覚が鈍っていくような気がして。なので、とにかく作り続けたいですね。あと考えていることとしては、自分で原盤権を持って、レーベル的な動きをしたい。自分で権利を持つことは、スピーディーに配信リリースしたり、YouTubeでDJ配信している上でも役に立つと思いますし、これまでとは違う形でのマネタイズも実験的に考えていきたいですね。

――原盤権を自ら保有するというのは、今っぽいアーティストの動き方ですね。

HASEBE:たぶん、若いアーティストさんの方がそういうことを積極的に、当たり前のようにやっているんじゃないかなとは思うんですけど、僕らの世代は一昔前の音楽業界のやり方が身に付いていたりして。それが今の時代に適していないなと感じることも増えてきているんです。今は配信が主流なので、楽曲提供などはたいてい買取、つまり最初の報酬のみという形が多いんですけど、それだとモチベーションにも限界があるなと。

――それこそストリーミング・サービスでは、リリースからしばらくしてヒットするパターンや、SNSでのバズから再度過去曲に火がつくケースも多いですし。

HASEBE:そうですね。あと、やっぱり作品の質はもちろんなんですけど、数も大事だなと。インスト楽曲が海外の人気プレイリストにピックアップされたことをきっかけにヒットする、なんてケースもありますし。でも、バランスが大事だと思っています。原盤権を自分で持ったり、あくまでそういう選択肢もあるっていうだけで。どちらが良い/悪いは一概には言えない。自分に適したバランスを見て動いていきたいですね。

――なるほど。では、sankaraのおふたりはいかがでしょうか。

Toss:こんな状況ですし、僕らも曲を作ってリリースをしていくことが大事かなと思っています。ライブ面では、本当は去年の3月から延期していたワンマン・ライブが2月に予定していたのですが、結局中止という判断を下すことになって。ずっとライブはできていなかったのですが、ありがたいことに今後は少しずづライブ出演も決まってきていたので、そこへ向けて曲を作りつつ、しっかりと1本1本こなしていきたいですね。

Ryo:やっぱりワンマンはやりたいですね。そこが一番引っかかっています。年内にリベンジ開催できたら、そこが一番の爆発になりそうです。

Toss:あと、こういう状況だからこそ、何かおもしろいいことできないかなっていう考えは持っていたい。やっぱり「Best Distance」の流れじゃないですけど、ポジティブな思考をちゃんと体現していきたい。止まらずに、走り続ける。そんな2021年にしたいですね。

Ryo:HASEBEさんの配信にもお邪魔したいですし。

HASEBE:そうそう。今度ね、呼ぼうかなーって思ってました。

Toss:お願いします、酒飲み過ぎないように気をつけるんで(笑)。

HASEBE:でも、飲んじゃうでしょ(笑)。

Toss:はい、飲みます(笑)。

――コロナ禍になって外に出られなくなったり、生活様式が変わったことで創作活動におけるインプットに影響が出たミュージシャンも多いとお聞きします。お三方はいかがでしょう?

Ryo:正直、僕は逆にインプットが増えました。単純にコロナ禍になって時間が増えて、自分で収集できる情報量が増えた。確かに日々の生活における感情の動きは少なくなったのかもしれませんが、音楽に触れる時間と、観れる映画の本数が増えたことが何よりも大きいです。

Toss:僕は元々出歩くことが多いタイプだったんですけど、もちろんコロナ禍になってからは自粛するようになって。ただ、逆に数少ない出歩く機会をより大事にするようになった気がします。たまの外出や人と会えることを愛おしく感じるようになった。だからこそ、コロナ禍以降に作った曲には感謝の気持ちというか、ポジティブなヴァイブスが表出している気がしますね。

――なるほど。では、最後にHASEBEさんは?

HASEBE:音楽的なインプットじゃなくて申し訳ないのですが、僕はYouTubeとOBS(OBS Studio:オンライン配信ソフト)の使い方をめちゃくちゃ調べてました。あとはカメラについて。これもある種のインプットかなと。おかげさまで、今ではワンオペで出張配信もできるような環境を構築できました(笑)。


【リリース情報】

sankara 『Best Distance』
Release Date:2021.03.24 (Wed.)
Tracklist:
1. Best Distance

sankara オフィシャル・サイト


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