showmoreが7月16日に開催した2部制の公演『on & off』のアーカイブ映像の販売がスタートした。
■2020.7.16 live concert “on & off” archive video
今回販売されるアーカイブ映像は、ライブ配信時の録音をshowmore作品ではお馴染みの向啓介が再度ミックス。1部、2部、そしてMCも含めたノーカット完全版となっている。東京都の緊急事態宣言は解除されたものの、まだまだ新型コロナウイルスの感染拡大が声高に叫ばれるなか開催された本公演では、事前に収録したトーク・プログラム、そして2部の様子をYouTube Liveにて生配信。様々な理由により来場できないファンへも配慮しつつ開催された。
「now」の7インチ・リリースを記念し、ゲストにSIRUP、Shin Sakiuraを迎えて行われた貴重なパフォーマンスの様子をお届けする。
Text by Takazumi Hosaka
Photo by Nanami Shinkai
会場では関係者も含めソーシャル・ディスタンス、消毒を徹底し、通常700人ほどの最大キャパシティに対し、78席限定の着席スタイルを採用。集団感染などが疑われた場合の追跡、連絡手段として名前や電話番号を登録するなど、挙げればキリがないほど感染症対策が徹底されていた。
【感染症対策について】
新型コロナウイルスへの
渋谷duoの対策をまとめました。動画もあります。https://t.co/yc0UF8IdTL
まだまだ不安もある中ですが、ご来場いただいた皆様に安心して過ごしていただけるよう、取り組んでいきます。
よろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/5UuOWQ3nvP
— showmore (@showmore_tokyo) July 5, 2020
開演前、慣れない様式のライブに大なり小なりのぎこちなさを感じていた方も少なくないだろう。SEとして流れていたのはオルタナティブなジャズ〜R&Bを行き来するLAのシンガー、Niiaの作品。シルキーな質感がまさにshowmoreにぴったりだ。定刻を過ぎた頃、会場の暗転と共にメンバーが姿を現す。この日はベースに玉木正太郎(Lululu)、ドラムにタイヘイ(Shunské G & The Peas)を迎えた編成だ。
「こんばんは。showmoreです。今日はありがとう。元気ですか?」と語りかける根津まなみの表情には、およそ5ヶ月ぶりだという有観客ライブに対しての嬉しさが早くも溢れているかのようであった。1曲目は「rinse in shampoo」。パワフルなリズム・セクションに井上惇志による華やかな鍵盤、そして根津の感情表現豊かな歌声が会場に響き渡る。開演前のぎこちなさ、どこか窮屈な空気を吹き飛ばすような力を感じさせた。
続く「spotlight」では緩急を効かせた複雑なリズムでオーディエンスを揺さぶり、「devilgirl」では昭和歌謡ばりに情感たっぷりの根津のボーカルに圧倒される。未音源化の2曲を経てのMCでは、井上も前のめり気味で「みんな元気?」と語りかける。「みんなマスクだから、表情が全然わからない(笑)。みんな楽しんでくれていると信じて、今日はやり抜きます」と根津は力強く宣言した。
また、2部制での開催となったこの日の公演についても言及。「嬉しさのあまりセットリストを攻めた感じにした」「2部は無料配信も行うけど、1部は来てくれた方のみ。しかも普段あまりやらないような曲ばかり」とコメント。途中、根津はコロナ禍で激変した環境について語りつつ、言葉が出てこなくなるシーンも。予期せぬパンデミックに対しての怒り、やるせなさ、そして諦念。そんな根津が「この時期にピッタリの曲」と言ってプレイしたのは、1stアルバム『overnight』収録曲「unitbath」。恋愛モチーフの曲だが、<正しい答えがほしいはずなのに/正解なんてどこにもなくて>といった一節はこの日、これまで以上に痛切に響いたような気がした。
メロウな「unitbath」から一転、玉木によるエレクトリック・アップライト・ベースがグルーヴの核を作る「bitter」では、まるでシャンソンのような妖艶な雰囲気を湛えていた。終盤のベース、ドラム、鍵盤がアグレッシブに絡み合うスリリングな展開は、思わず息をするのも忘れるほどの迫力であった。さらに、感動的なバラード「baby」で舞台を整え、第1部は早くもクライマックスへ。
MCでは「ライブハウスが一番安全な場所って思えるくらい」と、本日の感染症対策について改めて言及。井上の発言を根津がたしなめるといった一幕も久しぶりのファンにとっては嬉しい瞬間だったであろう。ここでShin SakiuraとSIRUPを呼び込み、7インチ・シングル『now』のカップリングとして収録されている「now (Shin Sakiura REMIX)」を本邦初披露。ソーシャル・ディスタンスを考慮し、アーティストの立ち位置も決められていることを明かしつつ、SIRUPは「“今はできない”じゃなくて、“今だからこそできる”って考えましょう」とポジティブな言葉を投げかける。
原曲よりもビートを強調し、どこかヒップホップ的なニュアンスを加えたリミックスを生演奏で再現。Shin Sakiuraのギターも加わりアーバンな都会の景色を描き出す。根津とSIRUPの掛け合いも見事だ。「2部は多少は盛り上がっても……いいよね?」と井上、「手は挙げたらダメなん? 垂直だったらOK?」とSIRUPが返し、会場は笑いに包まれたまま休憩を挟んで2部へ。
2. spotlight
3. devilgirl
-MC-
4. unitbath
5. bitter
6. baby
7. now (Shin Sakiura REMIX)
第2部は2ndアルバム『too close to know』の「solitude」〜「I don’t love you」から開幕。アグレッシブな曲の多かった前半と敢えて差別化するかのように、しっとりとスタート。しかし、軽快な「1mm」、人力ブレイクビーツのようなビートと流麗なメロディの対比が美しい「red」と、徐々に熱を帯びていく演奏で、早くも会場の空気を塗り替える。
「伝わってきた。マスクで顔が見えなくても、みなさんの表情が見えるようになってきました。温かいエネルギーを感じて、とても幸せです」と、根津は改めてオーディエンスへ感謝を伝えつつ、「やっぱり(生の)ライブが一番」との言葉には、バンド・メンバーも一様に頷いているように見えた。
再度Shin Sakiuraを招き、showmoreの2人と仲の良さが垣間見れる“脱線”トークで笑いを誘った後、彼が制作に携わった「dryice」へ。音の抜き差しを大事にしながらも、4人の演奏はクライマックスへ向けて盛り上がっていく。余韻をたっぷり残しつつ、「2ndでもやるよ。SIRUP!」と根津が呼び込み、今度は「now」のオリジナルVer.を披露。リミックスとは異なり、オーガニックな質感の演奏ながら、フック部分ではフューチャー・ベースのようなシンセベース、遊び心の効いたサンプル音など、音楽的な遊び心もたっぷりとみせつける。
「友達だからさ、楽しくなっちゃうんだよね」と、再び脱線しまくりのトークを挟んで、「最後はこの曲。みんな声は出さなくていいから、心で歌って下さい」とのMCから「circus」へ。印象的なピアノ・リフを中心に、リズム隊との息の合ったライブならではのアレンジも白眉だ。繰り返される<一晩中 音を止めないで/一晩中 僕と手を繋いで>というラインで、これ以上ないほどに見事なエンディングを演出。オーディエンスへ何度も感謝の言葉を告げ、ステージを後に。途中、井上も語っていた通り、ライブのオーディエンスからエネルギーを受け取ったのだろう。潔く去っていくメンバーの顔にはみな希望が満ち溢れていたように見えた。
2. I don’t love you
3. 1mm
4. red
5. dryice
6. now
8. circus
【イベント情報】
showmore x duo MUSIC EXCHANGE x Spincoaster 『on & off』
日時:2020年07月16日(木) OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京・渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
出演:
showmore
[Talk Session Guest]
SIRUP
Shin Sakiura
主催・お問い合わせ:duo MUSIC EXCHANGE tel.03-5459-8716 (12:00~19:00)