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REPORT / “音楽 × ファッションのイイカンケイ”を探る一夜


スクランブルスクエアで行われた観客参加型のトーク・セッション/DJパーティをレポート

2023.03.29

Photo by Yu Nakamura

3月18日(土)に東京・渋谷スクランブルスクエアにて『SCRAMBLE MUSIC SHOW PREMIUM FASHION NIGHT』が開催された。

“GOOD MUSIC × FASHION”をテーマに、観客参加型のトーク・セッション/DJ/ライブの複合型パーティとして開催された同イベントのレポートをお送りする。


ポストコロナ時代における“音楽 × ファッション”

Text by Naoya Koike

OUR’s(L→R:ローズ / 深水光太 / モーガン蔵人)
菅野結以

オープンして間もなく、感度の高い来場者がまずはスタイリスト・RIKU OSHIMAとモデル・ユニット/YouTuberのOUR’s(モーガン蔵人/深水光太/ローズ)によるトーク・セッションからスタート。MCを務めるモデル・菅野結以も交えて“音楽とファッションのイイカンケイ”をテーマに意見が交わされた。

ファッション・ピープルとして知られる4名だが、OSHIMAはミリタリーシャツにブーツカットのデニム、OUR’sのモーガンは素材の切り返しが効いたボトム、深水は茶色いレザージャケット、ローズはウォッシュドのブルーデニムといった出で立ち。この日のテーマ・カラーである緑のアイテムもそれぞれしっかり押さえる。

最初のトピックは、それぞれが普段聴いている音楽。OSHIMAは天気のいい日にHarry Stylesを聴くそうだ。OUR’s側はモーガンがブラック・ミュージック、深水がDaft PunkやAphex Twin、ローズがポップスやロックを挙げ、グループ内でも好みが分かれているようだった。

音楽ディグの方法については、OSHIMAが「気になったアーティストのインタビューを読んで、影響を受けた音楽をたどります。それの繰り返し」と振り返る。OUR’sはインスタやストリーミングなどのレコメンドで新たな音楽で知ることが多いという。また中盤に用意された来場者のファッション・チェックのコーナーでは、おしゃれ上級者の多さに思わず登壇者たちからも驚きの声が上がる。

終盤のトピックは渋谷文化の未来について。SOUND MUSEUM VISIONとContactの閉店から始まり、Spotify O-EAST/O-WEST/O-Crest/O-nestが繋ぐクラブとライブハウス・カルチャー、ポストコロナ時代にファッションや音楽で人を集めるには、など興味深い意見が上がる。

最後は「そこで見かけた人のファッションに影響されたり、刺激を受ける場所があると人生がより豊かになると思う」(OSHIMA)、「みんなで集まる場が増えてきているので、ファッションと音楽で楽しみましょう」(ローズ)、「ちょっとしたイベントや一張羅でおしゃれをする場所が増えてほしい」(深水)、「対面で会える機会が少なかったのでこうやって集まれるのが嬉しい」(モーガン)とそれぞれが一言コメント。これを以て、トーク・セッションは幕を閉じた。


ヒップホップ〜ディスコへ、パーティ感満載の前半戦

Text by Takazumi Hosaka

矢部ユウナ

トークショーが終わり、MCの菅野結以からの紹介受けて一番手として登場したのはDJの矢部ユウナ。ラッパー・Daichi Yamamotoの2ステップ調のナンバー「Let It Be feat. Kid Fresino」から始まり、最初は国内ヒップホップ〜R&Bを丁寧に繋ぎ、会場の空気を温める。ネオンの電飾と両脇に飾られた観葉植物、そしてバックの渋谷の街並みによって彩られたDJブースに、この日のテーマ・カラーである緑系のストライプジャケットがよく映える。

自身も心地よく揺れながら、グッド・ヴァイブスな楽曲をプレイする姿に、会場にいた小さな子どもたちも踊りだす。中盤ではグッとBPMを抑え、バウンスするビートが心地よいゾーンに突入。以降もクイック気味に繋ぎながら、ヒップホップ、R&Bを中心に様々なジャンルを横断。終盤では再び4つ打ちへと戻るシーンも。アゲ過ぎない絶妙な温度感をキープし、次のアクトとなる15MUSへとバトンを渡した。

この日唯一のライブ・アクトとなる15MUSは緑のスウェットとキャップというカジュアルな格好で登場。「こんなでっけえガラス、八景島(シーパラダイス)でしか見たことないですね。こんな素敵な会場で歌わせてもらえるなんて最高です」とまずは挨拶で会場からの笑いを誘う。

そして「今日は生憎の天気で星は見えないと思いますけど、星空みたいな街が見えるので、そんな曲から始めます」と語り、「星空が見えるなら」からライブはスタート。絶妙なオートチューンを駆使した歌唱でメロウなトーンを演出。疾走感溢れるビートにオーディエンスも体を委ねる。

続いてラップのみのアカペラからスタートした「脳裏」ではメロディックなフロウでセンチメンタルな感情を刺激し、TikTokで大きなバズを獲得した「Your Song」では一つひとつ言葉を丁寧に紡ぐようなスタイルが印象的だった。フックでは自然とオーディエンスのハンズアップも見られた。

「今日はありがとうございました。まだイベントは続くので、この後も楽しんでいきましょう」とのMCから、ラスト・ナンバーは「伝えなくちゃいけない」。短いセットながらもガッチリとオーディエンスの心を掴み、ステージを後にした。

DJ / プロデューサー・ユニットのYOSA & TAARは「This Is MODERN DISCO」というシャウトが印象的な、お馴染みのSEからスタート。後ろには2021年に休止したAttractionsのフロントマンとしても知られる盟友・Taro Abeの姿が。そのまま1曲目は彼とのコラボ曲「T.B.T.」でスタート。シンガー兼MCのような立ち位置で、オーディエンスを煽り、一気に会場の空気をパーティ仕様に塗り替える。

L→R:TAAR、Taro Abe、YOSA

アッパーなディスコ・チューンを繋ぎながら、彼らがレジデントを務める人気パーティ『MODERN DISCO』にも出演経験のあるPurple Disco Machineなどのアンセムに加え、同じくTaro Abeを迎えた自身の楽曲「Perfect Fire」なども投下。コール・アンド・レスポンスも行われるなど、ライブ・セットさながらの盛り上がりをみせる。

中盤ではこのイベントの数日後にリリースされることになる新曲「ENDLESS (feat. ザ・おめでたズ)」もプレイ。洒脱な4つ打ちトラックに乗せて、5MCを擁するザ・おめでたズのラップとフックが次々と繰り広げられるキラーな1曲だ。最後はこちらもTaro Abeとの楽曲であり、SIRUPも所属するSoulflexのメンバー・KenTによるサックスが冴え渡る「Liquid Girl」で鮮やかにピーク・タイムを更新した。なお、Taro Abeは現在ソロ作を制作中とのこと。彼の今後の動きにも期待したい。

Taro Abeが高らかにネーム・ドロップし、登場したDÉ DÉ MOUSEは初っ端からアクセル全開。YOSA & TAARからのディスコ・ヴァイブスを引き継ぎつつ、より華やかなフィルター・ハウスやフューチャー・ファンク色の強いサウンドでフロアを引っ張る。

また、予てより彼のセットで披露されてきた自身の楽曲「baby’s star jam」とYOSA & TAARによるパーティ『MODERN DISCO』への出演も記憶に新しいTodd Terjeの特大アンセム「Inspector Norse」のマッシュアップでは思わずフロアから大きな声が上がる。この日のタイムテーブルの流れを汲んだニクい選曲だ。

DÉ DÉ MOUSE

その後もStardust「Music Sounds Better With You」やThe Phantom’s Revenge「DJ BFF Slideshow」といった大ネタを使用しつつ、AZKと作り上げた自身の楽曲「Disco Revenge」を矢継ぎ早に繰り出し、休む暇を与えない。いずれもエディットだと思われるが、Daft Punkの「One More Time」、ABBA「Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)」、Michael Fortunati「Give Me Up」といったポップなナンバーを投下するとフロアから大きな歓声と合唱が起こる。また、吹き抜けの会場の上階を通るお客さんも思わず足を止めてDJプレイを楽しんでいる姿も見受けられた。


ディープな音世界を展開、フロアはナイト・クラブへと変貌

Text by Takazumi Hosaka

パーティはまだまだ続く。続くLicaxxの硬派なセットは、DÉ DÉ MOUSEがぶち上げた熱気を一旦整えるのに最適な役割を果たした。序盤はフロアの熱量を引き継ぎつつ、BPM早めのベース・ハウス〜テック・ハウスで固めつつ、途中からはジャージーやバイレの香りも漂う多様なビート・パターンで遊びを加える。

キャッチーかつポップな流れから一転、ストイックなダンス・ミュージックへと移行するも、オーディエンスもしっかりとノリ方を変えて楽しんでいる。遊び慣れた人が多い印象を受けた。

Licaxxx

トライバル・テクノやグライム、ダブステップ、レイヴなどジャンルを横断させながらも、UKのクラブ・シーンとの接点を強く感じさせるセットで、スクランブルスクエアからUKのアンダーグラウンドなクラブへとトリップしてしまうかのような感覚に包まれる。複数回共演のある盟友的存在、Mall GrabによるSkrillexのリミックスを経て、この日のトリを飾る大沢伸一へとバトンを繋いだ。

準備するためにブースに入っただけで歓声が上がった大沢伸一。オーディエンスもその一挙手一投足を見逃しまいと前方へと集結する。グッとBPMを下げ、インダストリアルなテクノからスタートし、音の抜き差しやエフェクト使いで魅せつつ、じわじわとフロアを再加熱していく。

ダブルのスーツを身に纏ったスタイリッシュな出で立ちだが、トライバルも交えつつ、ダークなトーンのサウンドでフロアの空気を操る様はさながら魔術師のようでもある。ある種の緊張感にも包まれた雰囲気の中、オーディエンスは思い思いのステップで大沢伸一のDJプレイに応える。途中で「目瞑って踊ってもいいですよ」と気の利いた言葉を投げ掛け、セットは中盤へ。選曲はより鋭利に加速する。

大沢伸一

3台のCDJを駆使し、ストイックなプレイを続ける大沢伸一。この日、何度目かのピークを更新したのは、まるでShinichi Osawa名義を彷彿とさせるようなエレクトロの名曲を使用したシーン。深くかけられたエコーからBen SterlingによるTiga「Mind Dimension」のリミックスが浮上した際には大きな歓声が沸き起こった。

また、終盤には音を止めてしまうという珍しいミスも。「今のは僕のミスです」「まぁ、こういうこともあるんだって(笑)」と軽やかに語りかけていたが、こういったハプニングも一晩限りのパーティのおもしろさだと言える。MONDO GROSSOの「惑星タントラ」のドープなエディットも挟みつつ、KiNK「Clap On 2」からレイヴ/アシッドな流れを汲んでのどんぐろっそ(MONDO GROSSO & どんぐりず)による「RAVE (Hungry Driver)」で大団円。妖艶なラップと高揚感溢れるアグレッシブなトラックで最高のフィニッシュを演出し、アウトロ的に最後に差し込まれたのは注目の新鋭ラッパー、JUMADIBAの「ASIAN」。ベテランでありながらも常にディグを欠かさない大沢伸一らしさ溢れるプレイをじっくりと堪能することができた。

イベント冒頭のトーク・セッションでも語られていたとおり、クラブやライブハウス、フェスといった場所は音楽を楽しむだけでなく、ファッションにおいても刺激を受ける場所として機能する。ファッションと音楽がクロスオーバーするような場は今後も増え続けるだろう。この日の会場となった渋谷スクランブルスクエアも、きっとそのひとつだ。今後も同施設が手がける『SCRAMBLE MUSIC SHOW』に期待したい。


【イベント情報】

『SCRAMBLE MUSIC SHOW PREMIUM FASHION NIGHT』
日時:2023年3月18日(土) 17:00〜
会場:渋谷スクランブルスクエア12Fイベントスペース Scene12

『SCRAMBLE MUSIC SHOW』 オフィシャル・サイト


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