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【REPORT】DATS メジャーデビュー・アルバム最速試聴会


「DATSにしかできないことをどんどんやっていく」――待望のメジャーデビュー作最速試聴会&トーク・セッションの様子をレポート

2018.05.11

ここ数年、東京を中心とするインディ・シーンを騒がせていたバンド/アーティストたちが、続々とメジャーという大きな舞台へと羽ばたき始めているなか、このMONJOE、早川知輝、伊原卓哉、大井一彌からなる4人組、DATSも遂にメジャーデビューを果たす。

DATSは〈UK.PROJECT〉から〈Rallye Label〉への移籍を経て、現在に至るだけでなく、メンバーのMONJOE、大井一彌がyahyelの一員としても活動していたりと、やや特殊な出自、経歴を持つバンドだ。2017年には砂原良徳をマスタリング・エンジニアに迎えた「SNS世代のリアル・日常・生活」をテーマとした1stアルバム『Application』をリリースし、“FUJI ROCK FESTIVAL”のメイン・ステージのひとつである「RED MARQUEE」に出演を果たすなど、大きな脚光を浴びた。

そんな彼らの2ndアルバムであり、待望のメジャーデビュー作となる『Digital Analog Translation System』は、6月20日(水)のフィジカル・リリースに先駆け、本日5月11日(金)から先行配信がスタートした。

そんな話題の作品を、世界最速でフル試聴することができるスペシャルなイベントが5月1日(火)に開催された。先行配信されるオリジナル楽曲10曲(CD版にはさらにそのオリジナル楽曲の全10曲のリミックスが収録される)をフル尺でじっくりと試聴した後、メンバーのMONJOE、伊原卓哉を招いてトーク・セッションを敢行。今作に込められた想い、そして制作の裏側に迫った。

今回は、そのトーク・セッションの様子をレポートしつつ、この『Digital Analog Translation System』という作品を紐解いて行きたいと思う。

Text by Takazumi Hosaka
Photo by Izumi Gibo


――すでに本作を客観的に聴けるようにはなりましたか? もし聴けるようになったのであれば、今改めてどんな感想を抱いているかを教えてください。

伊原:う〜ん。でも、確かに完成してからある程度時間が経ったので、自分たちの作品だという想いとは別に、ひとつの作品として聴けるようにはなりましたね。その上で、感想を言うとなると……すごく、いい作品だなと(笑)。

MONJOE:本当かよ(笑)。

伊原:ハハハ(笑)。でも、本当に色々な挑戦ができた作品で。ボーカルなしのインスト曲「Interlude」があったり、日本語詞がメロディックに歌われている「Alexa」があったりと、多種多様な楽曲が揃っていて、おもしろい作品になったんじゃないかなと思っていますね。

MONJOE:卓哉のちゃんとしたアルバムの感想聞くのが初めてで、普通に今ちょっと恥ずかしかったです(笑)。

伊原:普段ね、あんまり面と向かってこういうこと話さないからね(笑)。

MONJOE:ちょっと照れましたね(笑)。だって、言ってしまうとおれは前作『Application』ですらもまだ客観的には聴けてないので。

伊原:MONJOEはトラックもメロディもリリックも中心になって作り上げているので、なかなか客観視するのは難しいですよね。

MONJOE:やっぱり自分の作品は特別な目で見てしまうし。もちろん、制作中には色々と客観的な目線とか分析は交えてるつもりなんですけど。

伊原:確かに、いつも自分の曲に対して「カッコいいのできた」しか言わないもんね(笑)。

MONJOE:そんなことないだろ(笑)。

――EPとして先にリリースされていた「Heart」でも少しだけ日本語をリリックの中に取り入れていましたが、今作ではその他の楽曲でも大々的に日本語詞を取り入れています。なぜ、日本語詞に挑戦してみようと思ったのでしょうか?

MONJOE:日本語詞に挑戦しようと思った最大の理由は、自分たちの中で、「DATSってどういうバンドなんだ?」っていうことを端的に説明できる言葉がなかったっていうことが大きくて。例えば、これまでの自分たちのことを客観的に見ると、要素的には「最近の洋楽っぽいサウンドを取り入れて」「英語で歌って」「東京で活動しているバンド」っていうのが挙げられると思うんですけど、これって悪い見方をすると、「東京で洋楽の真似事をしているバンド」っていう風にも説明できてしまうんじゃなかいなって。そういうちょっとどっちつかずな印象を振り切りたいという課題があったんです。やっぱり僕らは今後も日本で活動していきたいし、日本の音楽市場を活性化させたいっていう目標もある。それを達成するためには、もっと振り切れなければいけない。しかも、メジャーデビューするということで、より多くの人にアプローチできる機会も得られた。なので、このタイミングで日本語詞にトライしてみました。

伊原:そもそも、2年くらい前からリリースや披露はしてないけど、日本語詞の曲もいくつか作ってたんですよね。その時から、別に自分たちの中でも日本語詞に対する抵抗もなくて。

MONJOE:元々特に理由があって英語で歌っていたわけでもないんですよ。ただ、カッコよく歌えると思うから英語で詞を作っていただけで。

――実際に日本語詞で曲を作っていく上で、苦労した点などはありますか?

MONJOE:そもそも日本語、英語にかかわらず作詞っていうプロセスがすごく苦手で、毎回苦労しているんです。その上で、今回は日本語っていう選択肢が増えたことで、逆に楽になったんですよね。単純に使える言語が増えることで、表現やメロディの幅も広がるし。

――よく日本語はメロディに載せにくいという話を聞くのですが、そういった点は?

MONJOE:確かに、日本語、英語、それぞれに合うメロディ、合わないメロディっていうのがあるんですよね。

伊原:MONJOEに関しては結構英語で歌い慣れている部分があって、日本語も英語っぽいフロウで歌いがちなんですよね。それがいい方向に作用する曲もあれば、そうでない曲もあって。今回はそうやって曲毎に少し矯正したりしながらボーカルを録音していたんですけど、端から見てて、僕としてはそれがすごくおもしろいなって思ったんですよね。ほんのちょっとの違いで、リリックがスムーズに入ってくるようになったりするんです。

MONJOE:極論、何語で歌っても関係ないと思うんですよ(笑)。ただ、日本にフォーカスして活動していく身として、英語で歌っていることで聴かれる機会を損失しているのだとしたら、それはもったいないことだし、積極的に日本語詞を取り入れるべきだなと。

――今作の作詞クレジットを見ると、以前から交流の深い荘子itさんと、TITANさんと言う方が数曲参加していることがわかります。彼らとはどういった形で共作していったのでしょうか。

MONJOE:彼らはDos Monosっていうヒップホップ・クルーのメンバーなんですけど、僕とはもう中学からの付き合いで、ずっと友人としても、音楽的にも繋がっている人たちで。当然僕のこともよく知ってくれているし、お互い信頼していて。今回、僕の考えていること、表現したいことを言語化するにあたって、色々とアイディアや意見をもらうことにしました。

――今作『Digital Analog Translation System』という言葉に込められた意味、想いというものを教えてもらえますか?

MONJOE:そもそも僕らは、クラブ・カルチャーとライブハウス・カルチャー、洋楽と邦楽、そういった対立しがちな2つのものを、行き来できる存在になりたいと思って活動してきたので、今回メジャーデビュー作となるアルバム・タイトルを考えている時に、「改めてDATSっていうバンドを一言で表せるものって何なんだろう」ってことを考えて、出てきた言葉になります。
元々この言葉(Digital Analog Translation System)は、ラジオとかに出たときに、「DATSっていうバンド名の由来は?」って聞かれた時に、正直バンド名には何にも由来とか理由とかないんですけど、半分冗談みたいな感じで、「Digital Analog Translation System」ですって後付で答えてたんですよ(笑)。それで、その言葉が出てきて半年くらい経ってから、「あれ、これってDATSを表すのに最適な言葉なのでは?」って思うようになったんです。

伊原:とんでもない伏線の回収の仕方だよね(笑)。

MONJOE:長い年月を経て、ようやく(笑)。メジャーデビューってやっぱり多くの人から注目してもらえる機会だと思うので、DATSの名刺みたいな作品が必要だなって思ったんですよね。だから、タイトルもバンドを一言で表せる言葉にしようと。アナログのものをデジタルの世界で再解釈し、その逆もまた然りで。我々はそういう対立事項を行き来できるシステムなんだと。

伊原:『Application』は結構打ち込みメインだったのに対して、今作はギターや生のベースがガッツリ入っていたり。あと、「Interlude」に関しては、打ち込みのドラムと一彌の生のドラムが両方入っていて。じっくり紐解いて聴いていくと、タイトル通りの音作りになってるんじゃないかなって思います。

MONJOE:前作も色々な挑戦をしたつもりですけど、今作ではより一層「DATSにしか出せない音」っていうことを意識しました。あと、前作のツアーとか、たくさんライブを重ねてきた上でのフィードバックも表れているなと思っていて。例えば、ライブ中に「もっと早川のギターが聴きたいな」とか、「ここはもっと生のベーシストっぽいベースライン入っていてもいいな」とか。そういうアイディアみたいなものは、今作に活きていると思います。

伊原:早川すごい活き活きしてたもんね(笑)。

――ざっくりした質問となってしまうのですが、今回一番難産だった曲を挙げるとすると?

伊原:「Pin」かなぁ。

MONJOE:トラックが良すぎてメロディが書けないっていう現象に陥ったんだよね(笑)。

伊原:結構、完成まで長くかかったよね。トラック自体はわりと早めにできてたのに、MONJOEがずっと「できないできない」って言ってたのを覚えていて。

MONJOE:逆に「Alexa」とか「Memory」は早かったね。「Memory」なんてトラックもメロディも完成図込みで最初から降りてきた感じだった。

伊原:このアルバムの中でも最速でライブで披露したよね。

――6月20日にリリースされるCDには今回試聴したオリジナル楽曲全曲のリミックスが収録されます。これはどういったアイディアや考えから実現したのでしょうか?

MONJOE:そもそもはアルバムの初回特典は何にするかっていうのを考えていたところからスタートしていて。例えばステッカーや缶バッチとかを付けるのでもいいけど、すでに多くのアーティストさんたちがやってるし、どうせならDATSならではのこと、DATSがやるからこそ意味があることをやりたいなと思って。僕らの曲を色々な人にリミックスしてもらうのって、さっきも言ったクラブ・カルチャーとバンド・カルチャーを繋げるうえでもすごく意味のあることだなと思って。

伊原:例えばサブスク全盛の今の時代、誰々の楽曲を誰々がリミックスした、コラボしたっていうことで、それぞれのファン層が拡大するっていうことが多いですよね。そういう時代の空気感にもDATSの楽曲って合うんじゃないかと思っていて。

MONJOE:エレクトロニックなサウンドだけどバンドだし、トラックメイカーだけどバンドのフロントマンをやっていたり、yahyelでも叩いてるドラマーがいたり。そういう何かひとつに括ることのできない存在である僕らの強みのようなものを活かしていきたいなって。それが僕らのステートメントでもありますし。

伊原:本当に僕らが好きな人たちにリミックスしてもらったので、楽しみにしてもらえたらと。

MONJOE:ただただ自分たちが大好きなアーティストからこれからフックアップしたいアーティスト、僕らの友達だったり、色々な人が参加してくれています。とにかく、めちゃくちゃ豪華です。

伊原:早く発表してえ〜(笑)。

MONJOE:ヤフオクでプレミア価格で出回っちゃうんじゃないかってくらい(笑)。

伊原:メルカリとかでね。まぁ、転売はやめてもらって(笑)。

――(来場者からの質問)今作の中で、ふたりが最も気に入っている曲は?

MONJOE:おれは……「404」かな。この曲は歌詞がおもしろくて。今回、アルバムのタイトルが『Digital Analog Translation System』っていうことで、曲名はひとつの言葉で相反する感情、物事を同時に表せるものを中心にセレクトしていて。例えば「Memory」は、「記憶、思い出」っていう意味と、CPUメモリーっていう「容量」の意味もあって。デジタルな用語でもありながら、人間のアナログな感情も表しているっていう。そういった意味で、「404」っていう曲はよくできたんじゃないかなって。この曲の歌詞は早川が最初の叩きを作ってくれたんですけど、自分的にも引き出しが増えた曲だと思います。

伊原:メロディの譜の置き方も今までにあまりなかった感じだよね。

MONJOE:3回サビがあるけど、全部音の割り方が違うというか。結構新鮮な印象を感じてもらえるのかなって。

伊原:おれは「Pin」か「TOKYO」なんだよね……。トラックは「Pin」で、歌詞が「TOKYO」なんですけど……すいません、ここは「TOKYO」でいいですか(笑)。
たぶん、「TOKYO(東京)」っていうタイトルの曲ってこれまでにもたくさんあったと思うんですけど、例えばくるりさんとかケツメイシさんとか。でも、そういう曲って、大体上京してきてくれた人が描いた東京なんですよね。故郷いる家族とか、恋人とかを思い出しながら東京について歌う、みたいな。でも、MONJOEの場合は東京生まれ東京育ちなんですよね。それを踏まえて「東京の空が青くなるのはいつだろう」っていう歌詞とかを聞くと、めちゃくちゃ響くものがあって。

MONJOE:がっつりサビのとこだね(笑)。

伊原:そうそう。僕は上京してきた組なんですけど、そういう人間から見た「東京の空」とは絶対に違うんですよね。言ったらその空しか見たことないわけで。

MONJOE:これはメロディもすぐできたよね。

伊原:確か一緒にお風呂入ってる時に、「たっちゃん、ちょっと良いメロできたんだけど」って(笑)。

MONJOE:メロディ先行でできたくらいだからね。ただ、この曲はアルバムに入れるまで最後まで悩みました。ちょっと、恥ずかしくて(笑)。

――確かにこれまでのDATSのイメージから大きくはみ出た楽曲とも言えますよね。

MONJOE:そうですね。DATS史上最もJ-POPと言ってもいいんじゃないかなって。そういう意味でも最初は迷ったんですけど、そんなこと気にしてたらメジャーデビューする意味ないだろうって。

伊原:しかもこの曲、ライブ・アレンジがめっちゃいいんですよね。まだ披露したことはないんですけど、リハの時点で早川くんがめちゃくちゃいいギターを弾いてて。作品には入ってない、ライブでしか鳴らさない音っていうDATSらしい部分がすごい出ています。なので、期待してもらえると(笑)。

――(来場者からの質問)メジャーにいくということで、何か変わったことはありますか?

MONJOE:メジャーデビューということで特に変わったことはないですけど、どちらかというと、マインドの方に変化はあったと思います。それこそさっき言った、振り切れなくちゃっていう話に繋がるんですけど、個人的に、今の時代は中途半端であることがすごくダサく映ってしまうんじゃないかなって思っていて。インディであるならとことんインディ然とするべきだし、メジャーに行くって決めたなら、メジャーでやれることをどんどんやらなければいけない。

伊原:いい機会っていうのも変ですけど、メジャーにいくタイミングだからこそできることっていうのもあると思ってて。

――(来場者からの質問)2nd EP『FRAGMENT』に収録されていた「Cool Wind」が収録されているのはなぜなのでしょうか?

MONJOE:「Cool Wind」は歌詞的には「絶望と共に道を切り開いてきたよね」っていう感じなんですけど、ちょっと「絶望」っていうと大げさだけど、メジャーデビューするにあたって、今まで切り開いてきたもの、積み重ねてきたものっていうのを忘れずに。いつまでもおれらがバンドを立ち上げた最初の頃の精神、人間関係とかを、今後も変わらずに大切にしていきたいなっていう思いがあって、今回歌詞は変えずに新録しました。

伊原:ライブで言うと「Candy girl」とかをリメイクしてライブでやってたりしていて。過去に出した『DIVE』とか『FRAGMENT』とかも、もちろん今でも僕ら大好きで。ただ、今の自分たちの表現ではなかなか再構築するのが難しいものもあって。そういう曲はたまにあるアコースティック
・セットとかで披露させてもらってるんです。その中でも「Cool Wind」って僕らにとってはすごく大事な曲で。〈Rallye Label〉に移る前の体制ではずっと最後に披露してたりして。MONJOEが言ったとおり、自分たちが忘れたくない想いとか、大切にしたい気持ちとかが込められていて。なんていうんだろう……やっぱり、大事な曲なんですよね。

MONJOE:ありがとうございます(笑)。

伊原:ハハハ(笑)。

――では、最後に、DATSとしての今後の展望を教えてもらえますか?

MONJOE:重複してしまうんですけど、展望っていう意味では「DATSにしかできないことをどんどんやっていく」。それに尽きるかなと思います。具体的に考えているのは、自分たちが主催するイベント、パーティ、もしくはフェスみたいなものをやりたいなってことで。どういう形になるのかはわからないですが、東京の音楽シーンっていうものを、ひとつの側面からアーティストがカタログ化すること。

――シーンを可視化したいと。

MONJOE:そうですね。今まで色々なひとが試みたことだと思うんですけど、イマイチ機能していないというか。自分たちの世代感とか、連帯感って別に感じる必要もないと思うし、実際自分たちもそういうものは全然感じていない。でも、むしろそれがないことが自分たちの世代の誇りだと思うんです。それぞれが好きなことを、自分たちがカッコいいと思うものやっていればいい。そういうそれぞれのスタンスも含めて、世間に提示することができればなって。そしてそれをアーティストがやるっていうことにも大きな意味があると思っているので。


【リリース情報】

DATS 『Digital Analog Translation System』
Release Date:2018.06.20 (Wed.) ※
Cat.No.:SECL-2296~7
Price:¥3,200 + Tax
Tracklist:
[DISC 1]
01. Memory
02. 404
03. Dice
04. Interlude
05. Cool Wind
06. JAM
07. Alexa
08. TOKYO
09. Pin
10. Heart
 
[DISC 2] ※CDのみ
全10曲リミックスver.収録

※5月11日(金)より先行配信中(オリジナル曲のみ)


【イベント情報】

DATS 『Message EP』 ワンマン・ツアー ファイナル
日時:2018年5月11日(金) 開場 18:00 / 開演 19:00
会場:東京・恵比寿 LIQUIDROOM
料金:前売¥3,000 税込み(1D代別/ALL STANDING)

ぴあ(P:107-425)、ローソン(L:74457)
☎03-3444- 6751(SMASH) http://smash-jpn.com/

■DATS オフィシャル・サイト:http://www.datstheband.com/


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