REPORT&INTERVIEW

Lucky Kilimanjaro

ついにメジャー・デビューを果たしたLucky Kilimanjar。Spincoaster Music Barで実施したメジャー・デビュー記念イベントの様子をレポート

Lucky Kilimanjaroがついにメジャー・デビューを果たした。2015年の1stミニ・アルバム『FULLCOLOR』のリリース時から、彼らの動向を気にかけていた私にとって、彼らのメジャー・デビューは2018年の最も嬉しいトピックスのひとつであった。メジャー・デビューが必ずしも正しい選択とは言えなくなってきた今日ではあるが、彼らはこれまで周囲の環境にあまり恵まれず、長い期間、足踏みを強いられていたことも事実である。バンドにとって信頼の置けるスタッフに出会えたということが何よりもよかったと思う。

〈dreamusic〉から昨年11月にリリースしたメジャー1st EP『HUG』は、Lucky Kilimanjarの魅力をしっかりと残しながらも、新しいチャレンジが随所に見られる快作であった。時代と適度な距離を取りながらも、非常に彼らしいポップ・ミュージックを完成させることができたと言えるだろう。

そんなLucky Kilimanjaroを迎えて、『HUG』のリリース当日にSpincoaster Music Barにてメジャー・デビュー記念イベントを実施した。1部ではトーク・セッションとミニマル・セットでのライブ、2部では星原喜一郎をゲストにDJイベントを実施。彼らのメジャー・デビューをお祝いしようと、多くのファンが駆けつけた。

今回は1部で実施した、フロントマンである熊木幸丸とのトーク・セッションの一部始終とライブの様子写真でお届けする。

また、1月18日(金)に渋谷TSUTAYA O-nestにて『HUG』のレコ発ツアーのファイナルが開催される。ぜひこのインタビューを読んでライブに足を運んでみて欲しい。

Text & Photo by Kohei Nojima

熊木幸丸(Vo.)


――メジャー・デビューおめでとうございます。本日が『HUG』のリリース日なのですが、まずは率直な今の気持ちを聞かせて下さい。

熊木:ありがとうございます。こういう日を迎えることができて素直に嬉しいです。ただ、『HUG』のリリースに先行して、シングルを配信リリースしていたということもあって、今日が“メジャー・デビューの日”という強い実感はないですね。

――今回、〈dreamusic〉からのメジャー・デビューとなりますが、これまでにも色々な所からお声がけもあったのではないかと思います。〈dreamusic〉に決めた理由は?

熊木:担当されている方との相性ですかね。とても気が合いました。あとはご縁ですかね。もっと広いところを目がけてやりたいと思っていたので、このメジャー・デビューがそういうキッカケになればいいなと。

――これまで自主制作という形で作品をリリースされていましたが、今回の一連のリリースにおいて、これまでのやり方との違いなどはありましたか?

熊木:自分たちでコントロールできない部分というのは意外となかったです。むしろ自分たちで「こういうことをしたい」とか「こうやっていきたい」というしっかりとした意志がないといけなかったので、感覚としてはこれまでの延長線上にある感じでしたね。手伝ってくれている人が増えただけというか。

――作品を作るにあたって、レーベルの担当の人にはどういう言葉をもらいましたか?

熊木:元々僕らの音楽が好きで声をかけてくれていたので、「好きにやっていいよ」って感じでしたね。

――具体的に、ラッキリの音楽のどんなところに魅力を感じているか、などはおっしゃっていましたか?

熊木:僕が作るメロディに魅力を感じてくれたみたいです。シンセの音にしっかりメロディが乗っている感じも新鮮だったみたいで。

――あと、ロゴやアートワーク、ホームページも一新されましたね。

熊木:元々ロゴを変えたいって話はずっとありました。あれは僕がバンド結成時にイラレで適当に組んだやつなので。あれはあれで好きだったんですけど、やっぱり新しくしたいなと思っていて。このタイミングで変えることにしました。古屋遥さんというデザイナーの方に作って頂いたのですが、実はこれには裏設定があって、ハートが斜めに埋まっているというデザインになっていているんです。そんなハートフルなバンドを目指しております(笑)。

――色も中間色というか。絶妙な色ですよね。

熊木:何パターンか候補をもらって決めました。今日の僕の服も赤ともオレンジとも言えない微妙な色ですが、こういう色が好きなんでしょうね(笑)。

――なるほど。それでは作品についてお伺いしたいと思います。昨年『Favorite Fantasy』をリリースした時に、「めちゃくちゃ曲を作った」と言っていましたが、今回の5曲はその時に作ったものなのでしょうか?

熊木:いえ、当時作った曲で『HUG』に入っているのは一曲だけですね。「Purple Dancer」という曲なんですが、これは元々『Favorite Fantasy』に入れようと思っていた曲なんです。他の4曲は今回、新しく作りました。なるべく鮮度のある作品にしたいという想いがあったので、古い曲を入れたくなくなっちゃって。

――まさに、ラッキリの今のモードが詰まったEPだと。今回、リリース前に毎週一曲ずつ先行配信を行っていましたが、こういったリリース方法は海外では当たり前のように行われていますよね。

熊木:そうですね。僕、自信もSpotifyとかで音楽を聴くことが殆どになって、配信は前倒しでやりたいなと。そこはレーベルも同じ認識で。「せっかくなら1週間毎に1曲ずつ出して、盛り上げていったほうが楽しいよね」という話になり、今回こういう形になりました。

――毎週Spotifyの色々なプレイリストに入って、アルバムが出る前から色々な人に聴いてもらえているという状況ができていましたよね。反響はどうですか?

熊木:Twitterとかでも色々な反応を見られるので嬉しいですね。今回は特に、歌詞にこだわっていて。これまでよりメッセージ性のある歌詞を書いたのですが、そういう部分にしっかり引っかかってもらえてる感じがしました。

――歌詞はかなり変わりましたよね。今作では固有名詞や具体的な言葉、直接的な表現方法が増えた印象を受けます。ただ、元々熊木くんは「生温いのが嫌だ」「自分を誤魔化して生きるな」といったメッセージを強く発信している人で、今作もその辺りは変わらないのかなと。

熊木:そうですね。その根幹の部分は今回も変わっていないと思います。自分がそうしてきたというのが大きいとは思うのですが、みんな好きなように生きればいいと思っているので、そうことを提案していけたらと思っています。昔はもう少し抽象的な言葉でそういったことを表現していたのですが、今回は一回で聴いて意味が入るように、「言葉はできるだけ具体的に」とか「暗喩とかは使わないで、難しくしない」ということは意識しました。

――「Sweet Super Market」のような、情景描写が具体的な歌詞も今まであまり書いていませんでしたよね。

熊木:そうですね。裏テーマとしては「Burning Friday Night」のような、ほんわかとした空気のあるものを書きたくて。そういうほんわかとした空気ってどこにあるんだろうと思った時に、この歌詞の設定を思いついたんです。付き合いたての男女が初めて家デートをするっていう歌詞なんですけど、そういうのを「いいなぁ」って想像しながら書いたので具体性があるんだと思うんです。

――「ハーゲンダッツ」といった固有名詞が入るのも新鮮だなと思いました。

熊木:ただ単純に、楽しいなと思って。固有名詞が入ったほうが具体的にイメージが出来るじゃないですか? 「ひとりの夜を抜け」でも「スタン・スミス」という言葉を使いましたし、具体的なモノを挙げた方が、その音楽が聴いた人の生活に馴染むのかなと。

――なるほど。あとは音楽面で言うと構成がおもしろい曲が多いですよね。「ひとりの夜を抜け」はサビから始まってAメロ、Bメロ、サビと間髪入れずに歌が続いていきますが、agehaspringsのTwitrterアカウントが「完全にストリーミング時代に合わせた構成だ」と指摘されていました。Spotifyは30秒以上再生された時に、再生数にカウントされるんですよね。あと、サブスクではスキップが当たり前なので、最初の5秒でリスナーをいかに引きつけられるかが大事だとも言われていて。この辺りはどこまで意識していましたか?

熊木:正直、そうしようという意識は全く持っていませんでした。ただ、自分も普段、頭数秒でおもしろくなかったらすぐにスキップしてしまうような聴き方をしているので、ド頭からカッコいい曲を作りたいという意識はあったのかもしれませんね。

――この曲以外もイントロ→Aメロ→Bメロ→サビといったJ-POPの王道的な構成の楽曲は今回ありませんね。

熊木:今までよりも言葉が多くなった分、そういう構成の境目をなくそうっていう意識があったように思います。

――「ひとりの夜を抜け」は歌の譜割りやフローも独特ですよね。これはどうやって生まれたのでしょうか?

熊木:うーん、再現性がないので、あまりロジカルに説明はできないのですが、この曲は初めから言いたいことが決まっていて、先に歌詞を書いたんです。

――歌詞先行なんですね。

熊木:最近ちょっと変わりました。以前はメロディ先行だったんですが、最近は歌詞とメロディをわりと同時に作るようになりました。

――ギターを弾きながら出てくる感じではないですよね。

熊木:そうですね。最近、鍵盤で作曲することが多くなったのも影響しているかもしれません。

――今回、サウンド面でも新しいことに挑戦していますよね。特に「新しい靴」が僕は好きなのですが。

熊木:「新しい靴」はDetroit Swindleというハウスのアーティストがいるんですが、彼がTom Mischをフィーチャリングした楽曲があって、それを意識しました。オールドな感じの楽器の音をハウスに乗せていくというのをやりたくて作りました。

――なるほど。あとは「Beautiful」。これはトラップを取り入れた楽曲ですね。

熊木:トラップは僕も最近ハマっている音楽で。ただ単純にトラップだけだとおもしろくないなと思って、生っぽさとかトライバルな音を使って作りました。Childish Gambinoの「This is America」とかDisclosureの「Ultimatum」もそうでしたが、トライバルな音楽が次は来ると僕は思っていて、そういうのをやると楽しそうだな、と。生っぽいけどトラップっぽい要素があるというものを意識して作りました。

――なるほど。他に制作期間中にリファレンスとなったような音楽はありますか?

熊木:今回は『Favorite Fantasy』よりも曲数は少ないのですが、リファレンス量は圧倒的に多いと思います。具体的に「この曲がこれ」みたいなのはあまりないんですが、「こういうのをやってみたい」っていうインプットがたくさんあったので、どの曲も新しい要素があるんじゃないかなと思います。あと、そういう制作の仕方が板についてきたのもあるかもしれません。

――ちなみに、メンバーとの制作スタイルは変わりましたか? 特にリズム・パートはかなり大変なんじゃないかなと思いました。「Beautiful」は人力でやるようなリズムじゃないような(笑)。

熊木:そうですね。ひとりではまず無理ですね。うちはドラムとパーカッションとリズム・パートがふたりいるんですけど、ふたりででギリ叩けるようなものになっています。パーカッションのラミちゃん最初は全然叩けなかったもんね。「こんなん無理だよ! ふざけんな!」って(笑)。

――今回のEPについて、リスナーの人たちにこんな風に聴いてほしい、こんなことを感じほしい、といったものはありますか?

熊木:今までの作品はお客さんに聴いてもらうまでをゴールにしていたのですが、今回の作品はお客さんが聴いてから、どういうことを思ったか、とか。どんな行動をしたかとか、そういう現象にも興味があって。だから、僕らの音楽を聴いて「元気になった」とか「状況がよくなった」みたいなことがあったらTwitterとかで教えて欲しいです。僕らも元気になれるし、みんなのために音楽がやれているのだという感覚を持てるので。それで、またいい音楽を書いて、みんなが受け取って、っていういい循環が生まれたらいいなと思います。「微妙だったな」とかでも全然いいんで、反応があることが何よりも嬉しいですね。

――それでは最後に、これからの目標や今後に向けて考えていることを教えて下さい。

熊木:メジャーになって今までと違う速度でバンドが進むかもしれないのですが、自分たちの音楽でちゃんと踊ってくれて、聴いた人の生活が少しでもよくなるということを大事にしたいと思っています。みんなと一緒に新しい作品を作ったり、未来に繋げていけたらいいなと。あんまりどこでやりたいっていうのはないんですが……あ、でも“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”には出たいですね(笑)。

――熊木くんは元々ロック・キッズですもんね。

熊木:そうなんです。でも、やっぱりサマソニにも出たいし、フジロックにも出たいですね(笑)。


【イベント情報】

Lucky Kilimanjaro 1st EP 『HUG』 レコ発ツアー ファイナル
日時:2019年1月18日(金) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京・渋谷TSUTAYA O-nest
料金:前売 ¥3,000 / 当日 ¥3,500 (各1D代別途)
出演:
Lucky Kilimanjaro
MINT mate box
showmore

チケット購入:
楽天チケット

お問い合わせ:
ドリーミュージックアーティストマネジメント TEL.03-6452-8234


【リリース情報】

Lucky Kilimanjaro 『HUG』
Release Date:2018.11.21 (Wed.)
Label:DREAMUSIC
Cat.No.:MUCD-1419
Price:¥1600 + Tax
Tracklist:
01.ひとりの夜を抜け
02.新しい靴
03.Sweet Supermarket
04.Purple Dancer
05.Beautiful

Lucky Kilimanjaro オフィシャル・サイト

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