韓国のインディ・ロック・バンド、SURL(ソル)の2度目の来日公演が9月5日(火)に東京・代官山UNITにて開催される。
SURLはブリッティッシュ・ロックとブルースをベースに、幅広いジャンルの音楽を独自のスタイルにまとめ上げる、韓国出身の4人組。キャッチーなメロディと聴くものの心を掴む歌詞でリスナーの共感を誘い、2018年のデビュー直後より韓国国内で数々の新人賞を受賞し、海外公演を多数実現させるなど、名実ともに韓国バンド・シーンのスーパー・ルーキーとして脚光を浴びてきた。これまでにカナダ(Canadian Music Week)、ドイツ(Reeperbahn Festival)台湾(LUCfest)、シンガポール(Baybeats Festival)、タイ(Big Mountain Music Festival)、アメリカ(SXSW)などの海外有数のフェスティバルの出演実績があるほか、Jay ParkやHash Swanなどヒップホップ・ミュージシャンとのコラボレーションを通じて、ジャンルを融合したヒット曲を生み出してきた。
2022年にはMnetのバンド・サバイバル番組『Great Seoul Invasion』に出演し、惜しくも2位に終わったものの、その知名度をさらに高めることとなる。同年10月には初のフルアルバム『of us』をリリース。その後、韓国6都市を巡る全国ツアーを行い、さらに2023年4月には13都市で北米ツアーを敢行。韓国にとどまらず、グローバルで注目を集めている。
そんなSURLにメール・インタビューを敢行。2019年の初来日公演から現在に至るまでの道のりや近況、来月に迫る来日公演の意気込みを訊いた。
Interview & Text by AKARI(from BUZZY ROOTS)
「日本は心の故郷のような感じ」
――2019年11月の初来日公演から現在に至るまで、SURLの皆さんに変化はありましたか?
ホスン(Gt. / Vo.):2019年の日本公演から今まで、たくさんのことがありました。北米ツアーも含めて、海外のいろんな場所に足を運び、初のフルアルバムもリリース。Mnetのバンド・サバイバル番組『Great Seoul Invasion』にも出演しました。『YOUNG & ALIVE』という、僕たちが主催するフェスティバルも2回開催しています。
ホスン:2019年に日本に来たときは、バンドを始めてからまだ1年しか経っておらず、年齢も22歳で知らないことも多かったのですが、そこから精神的にもいろいろと変化がありました。以前は楽しくて好きだからバンドを組んで曲を作り、ライブをしていましたが、最近は他の要素についても考えることが多くなったように思います。どうすればファンの皆さんがもっと喜んでくれるのか、どんな変化を見せるべきかを前より考えるようになりました。新たな見せ方を試してみたり、他のスタイリストや作家の方を探したりもしました。
まだまだ悩みは尽きません。2020年以降、トレンドがものすごく早く変化しているので、今の流行に沿っていて、かつSURLにも合うものをしっかりと見つけたいです。
――今年4月に行われた初めての北米ツアーはいかがでしたか?
ホスン:今までに経験したことのない世界でした。『SXSW』のショーケースでアメリカに行ったことがあるのですが、そのときとは異なり、今回は1ヶ月間のツアーでした。北米ツアーに行けただけでも嬉しかったのですが、各会場で僕たちの曲が好きなファンがたくさん集まってきてくれて、胸がいっぱいになりました。アメリカには様々な人種、民族の方がいるので、その分音楽も実に多様で、それを直接全身で感じて経験したことで以前よりも多くのことを学び、多くのインスピレーションを受けました。
ツアーで学んだことを上手く活かして、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、どこにおいても、今よりもっとたくさんの方々に僕たちを知ってもらいたいし、知ってもらえるように頑張ります。
ハンビン(Ba.):(北米ツアーは)本当に大変でした! でも、また行きたい 🙂
ミョンソク(Dr.):幸せな日々でした。もちろん体力的にはすごく大変でしたが、毎日違うホテルに泊まり、違う会場でライブをして、アメリカ全土を回るのはとても幸せなことでした。一緒にライブをしたKaz Moon兄さんのことを時々思い出します。
ドヨン(Gt.):一生に一度はやってみる価値があったんじゃないかと思います。
――およそ4年前の初来日公演のときの思い出を教えてください。
ホスン:そのとき日本で起こったほぼすべての出来事が、良い思い出として記憶に残っています。特にライブ当日、ゲスト出演してくださったミツメの皆さんと会えたのが本当に嬉しかったです。20歳の時にYouTubeで知って以来ずっと好きだったバンドだったので、直接お会いできて不思議な気分でした。今でも日本語は上手ではありませんが、当時はほとんど話せなかったし、恥ずかしさもあって上手く話しかけられなかったことを後悔しています。
ライブ中、観客の皆さんがステージを観る様子も印象に残っています。激しく動くことはなかったのですが、集中して聴いてくれているのが感じられて嬉しかったし、興味深かったです。実際はそういうことを抜きにして、僕たちを観に来てくれたこと自体に本当に感謝でした。そして、一番前にいた韓国から来てくれたファンの方々もありがとうございました。初の日本公演ということで、「上手くやれるかな」と少し不安だったのですが、皆さんのおかげで緊張もほぐれ、自信も出ました。
ハンビン:ミツメの皆さんと一緒にライブができたことが強く印象に残っています。それから、泊まっていた宿が日本の民家のような雰囲気でとても居心地がよく、特別な感じがしました。ライブではお客さんの反応がとてもよかったです。
ミョンソク:じっと集中してステージに耳を傾けようとする日本の皆さんの姿がとても印象的でした。
ドヨン:ミツメのパフォーマンスが印象的でした。日本の皆さんがライブを楽しむ姿も新鮮でしたね。
――Instagramを拝見していたところ、コロナが落ち着いてきてから何度か日本に来ていたようですね!
ホスン:2019年の公演以来、2回ほど日本に行きました。そのうちの1回は、ツアーでアメリカに行く前に経由地として羽田空港で7時間くらい滞在したんです。そのときは、羽田空港で自販機やコンビニを回って楽しみました。
その前にも一度東京に行ったのですが、それは個人的な旅行ではなく、会社のワークショップで5日間ほど滞在しました。2019年の日本公演で会った関係者の方々を思い出して、挨拶を兼ねて連絡してみたのですが、皆さん僕にディズニーランドに行ったかどうか聞いてきておもしろかったです。
お台場、新宿、渋谷、ディズニーランドなどいろんなところを回りました。新宿西口の思い出横丁に行ったときは、人が多くてびっくりしました。宿が品川駅のすぐそばだったのですが、4日目にひとりで横浜にある「吉村屋」に行きました。いつか必ず行ってみたいと思っていたラーメン屋さんで。品川から横浜駅まで30分かかり、到着して40分も列に並んで待ちましたが、美味しくて感動しました。目の前に吉村さんがいたので、すごく緊張もしました。また行きたいです。
ハンビン:2月に会社のワークショップで東京に遊びに行きました。ディズニーランドもすごく楽しかったし、ショッピングもたくさんしました。日本の美味しいお店もたくさん行きました。
ミョンソク:僕はそのとき、ひとりで日本の街を歩いたのですが、かなり韓国と似ている感じがしました!
ドヨン:日本は心の故郷のような感じで、いつも楽しく過ごしています。日本に行って日本料理を食べるのが楽しみなのですが、特に長芋をすりおろして作った料理を食べると口が喜びます。
「ヒップホップを最近はバンド・シーンが追い抜いているような気がします」
――最近はどんな音楽を聴いていますか?
ホスン:いろいろ聴いているのですが、最近よく聴いているのは The Kooks、Dijon、The Drumsです。Oasisもよく聴いています。今年前半はペトロールズ、Tempalay、millennium parade、never young beachなど日本のバンドと、The Chats、Sex Pistolなどのイギリスのパンクをよく聴いていました。
ハンビン:M.I.L.K、Light & Salt(光と塩)のようなグルーヴのいい音楽に惹かれます。
ミョンソク:最近は運動を頑張っているのですが、運動するときはSlipknotのようなハードなメタルやロックをよく聴いたりします。また、運動しながらドラム、ベースが跳ねるような深みのあるディープ・ハウスもよく聴きます。どうやら運動が僕の音楽人生に影響を与えているようで悩んでいます。
ドヨン:ここ数年、電子音楽に関心が深まり、YouTubeで僕が作った電子音楽系の作品をアーカイブしています。それに伴い、自然とテクノ、ハウス、IDMなどいろんな電子音楽を聴くことが増えました。
――韓国では、日本の音楽シーンはどのように伝わっていますか?
ホスン:最近、韓国で日本の音楽をよく耳にするようになりました。Instagramリール、YouTubeショート、TikTokでよく聴くようになったみたいですが、米津玄師の「KICK BACK」、imaseの「NIGHT DANCER」、あいみょんの「愛を伝えたいだとか」といった曲がショートフォームのコンテンツとして流行り、韓国人にとって日本の曲が以前より身近になったように思います。
ハンビン:最近、韓国で日本の音楽はとても人気があります。あいみょん、Vaundy、King Gnuなどさまざまなアーティストが人気です。
ミョンソク:個人的にVaundyが好きなのですが、最近ではVaundyやimaseのような歌手もTikTokやリールで流行っています。こうして多くの歌手が有名になり、来韓していい思い出を作って帰っていくのを見ていて、僕もうれしいです。
ドヨン:ショート動画のプラットフォームに様々な日本の音楽が溶け込んでいるので、自然に接することができるようになりました。「これは日本の音楽だから聴き慣れない!」と思っていた昔とは違い、壁を感じることなくスムーズに鑑賞できるようなイメージです。
――今の韓国の音楽シーンについては、どのように感じていますか?
ホスン:以前と比べて、音楽のスタイルがかなり多様化したと思います。新しいジャンル、形式の音楽がどんどん出てきていて、最近はアイドル音楽がより盛り上がっているような気がします。韓国だけでなく、世界的にショート動画でのヒットを狙ってたくさん音楽を作っていますが、それに合わせて曲の長さもどんどん短くなり、その短い尺の中で強いインパクトを与えようとしていますよね。
ハンビン:韓国の音楽シーンは日々変化していると思います。今一番ホットなNewJeansは世界的にも認められているし、韓国のインディ音楽は国外でも聴く人が増えているようです。韓国の音楽をこんなに多くの人が好きになってくれて嬉しいです。
ミョンソク:常に主流はアイドル・シーンですが、ずっと盛り上がっていたヒップホップを最近はバンド・シーンが追い抜いているような気がします。カッコいい音楽を鳴らすバンドが増えていて、いい音楽がたくさん耳に入ってきます。
ドヨン:ここ数年、音楽の多様化が進んでいますが、特に最近では、いわゆる“ポンキ(뽕끼)”という少し古臭く感じていた領域が再びトレンドになりつつあるように感じます。
——今回の来日公演は、どんな内容を予定していますか?
ホスン:今回のアジア・ツアーのタイトル『review of us』ですが、これは僕たちの初フルアルバム『of us』に関連するタイトルです。このアルバムに収録された曲をライブではたくさんお見せする予定ですし、その他にも海外のファンの方々が好きそうな曲も披露する予定なので、楽しみにしていてください。一緒に楽しめる曲も用意するので、周りを気にせずみんなで盛り上がりましょう。
――今回の来日公演に向けて、日本のみなさんに予習しておいてほしい曲はありますか?
ホスン:定番曲は一度全部聴いてもらえたらと思います。「Dry Flower」や「Don’t Say No」のような海外で人気がある曲もたくさん聴いてほしいです。
ミョンソク:「Dancing on the Rooftop」や「WHAT TIME IS IT NOW?」のような、一緒に歌いやすい曲を聴いて来ていただけたら嬉しいです。
ドヨン:特に事前準備をしなくても、ただ来て楽しんでいただけるとありがたいです。
――今回の来日公演への意気込みをお願いします!
ホスン:2019年以来、およそ4年ぶりの日本公演なので、より成長した姿を見せたいですし、日本のリスナーにSURLというチームがどんなチームなのかをしっかり見せたいと思います。今後も日本で多くの公演ができるように、もっともっとみなさんと一緒に楽しめたらいいなと思います。
ハンビン:久しぶりの日本公演がとても楽しみです。今まで会えなかった分、素敵な公演をお見せできるように万全の準備をして臨みます!!!
ミョンソク:久しぶりの日本公演なので、より充実していて聴き応えのある楽しい時間になるように頑張ります。期待していてください!
ドヨン:待ちに待った日本公演です。皆さんにとっても僕たちにとっても、楽しい思い出になりますように。
【イベント情報】
『SURL JAPAN TOUR 2023』
日時:2023年9月5日(火) OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京:・代官山UNIT
料金:ADV. ¥5,000 / DOOR ¥5,500 (各1D代別途)
出演:
SURL
リーガルリリー
主催:月見ル君想フ
問い合わせ:03-5474-8115(月見ル君想フ)
・チケット
一般発売(e+):7月1日(土)10:00〜9月4日(月)18:00