iri、最新EP『Seek』を引っさげたホールツアー終幕｜ファイナル公演のレポート到着

シンガーソングライターのiriが、7月21日（月）にLINE CUBE SHIBUYAにて、全国10公演からなるホールツアー『iri Hall Tour 2025 “Seek”』のファイナルとなる追加公演を行った。

前年2024年に行った初の日本武道館公演において、これまでの歩みを総括したiriは、5月におよそ2年ぶりとなるパッケージ作品となる新作EP『Seek』をリリース。国内外で活躍する気鋭のサウンドプロデューサーたちとコラボレーションを繰り広げ、変化の季節に身を投じた現在の心境がこのツアーにおいても歌われてきた。

その最終公演は開演と共に、キーボードの村岡夏彦、ベースの村田シゲ、ドラムの上原俊亮、ギターのTAIKING（Suchmos）、マニュピレーター／シンセサイザーのジョージからなる敏腕なバンドメンバーが横一線に並んだ。彼らの揺るぎな演奏をバックに、ステージに登場したiriは、瑞々しいグルーヴと共に心機一転を図る新曲“harunone”でライブをスタートした。高揚感に満ちたダンストラックと聴衆に呼びかけ、鼓舞するようなメッセージが一体となった“friends”や“Pick you up”に象徴されるライブ前半を印象付けたのは、変化をポジティブに捉え、喜び楽しむiriの溌剌とした歌声だ。

「今回のツアーは新しいEP『Seek』がリリースされて、その新曲たちを初お披露目しているんですけど、自分にとっても特別な1枚になったなって。内面的なところに深く入り込んだ作品になったなと思っていて。昨年末から自分のなかで色々変化していって、さらにこのツアーのなかでも心境の変化が少しずつあって。ただ、その結果、自分が変われたのか、強くなれたのか、正直分からないんですけど、常に変化を求めて人は生きていくんだなと勉強になったりもしました」。MCでそう語った中盤は、ローファイヒップホップの春めいたグルーヴと切ないギターのアルペジオが別れと新たな出会を暗示するかのような楽曲“Butterfly”をはじめ、iriの内面に深く踏み込んでいく。バイラルヒットを記録した“会いたいわ”、ドラマ『わかっていても the shapes of love』主題歌“Faster than me”、人生という大きな流れを自ら切り拓こうという強い意志が加速する新曲“river”など、悩みながらもその先に向かっていく音楽家のひたむきな思いが強く感じられた。

そして、インターパートのバンドアレンジが輝きを強めた“Sparkle”を皮切りに、ライブ後半は会場全体がピークへと誘われていく。日本レコード協会の「ゴールド認定」を獲得した“Wonderland”ではオーディエンスの歌声が加わり、“rhythm”では繰り返される日常のグルーヴがアグレッシブな演奏によって非日常的な熱狂へと生まれ変わった。本編のラストはしっとりと締め括ることが多いiriのライブであるが、この日、新曲のトライバルなハウスチューン“otozure”を最後に持ってきたのは、止まらずに進んでいきたいという彼女の意志の表れなのだろう。アンコールでは、夏らしいメロウネスをたたえた“SUMMER END”と熱いファンクロックナンバー“Swamp”という久々にライブ披露した2曲を経て、オーディエンスからハンドクラップの歓待を受けたゴスペルソウル“24-25”で溢れるようにエネルギーを振り撒き、この日のライブを清々しく終えた。

今回のツアー準備期間から曲作りを継続的に行っていたというiri。曲間のMCでは、元BAD HOPのラッパー・Benjazzyとマイクを分け合ったSTUTS on the WAVEの“雨”やYOSA & TAARのアルバム『Modern Disco Driver』にフィーチャリングで参加しながら、今夏発表予定の「夏曲」を準備中であることを明かした。さらにデビュー10周年を迎える2026年のアニバーサリーイヤーの幕開けとして、1月28日（水）に大阪フェスティバルホール、1月30日（金）に東京ガーデンシアターでワンマンライブを開催することを発表。よりアクティブに、クリエイティブに、そしてナチュラルに、iriが響かせる新たな音楽はデビュー10周年の節目を見据えて、さらに広がり、深まっていくことになるはずだ。

Text by 小野田雄
Photo by 後藤壮太郎